憧れのアイトラッカーが2.5万円で!steelsseries SENTRY GAMING EYE TRACKERレビュー

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■長い前振り〜アイトラッカーとは?(読み飛ばし可)

ユーザビリティ業界やWeb界隈にいれば、アイトラッカー/アイマークレコーダーについて一度は耳にしたことがあると思います。文字通り視線をセンシングしてモニタのどこを見ているかを判別するデバイスです。心理学レベルでいえば、視線が向いていることと“見て”いることとはまた別なんですが、まぁそれでも「ここのボタンは一瞬たりとも視線が向いてないな」的なことはユーザーテストで調べられるので、UI評価手法として一定の認知度はあります。ただあんまり一般的でない理由として装置がお高い、というのがありました。老舗Tobiiの製品なんかはシステム一式でン百万するんですよね。そのくせソフトが専門的でちょっと難しかったり、なにより出てくるデータの扱いが難しい。視線の座標ログが生で出てきてもHuman Readableではないので、ヒートマップと言われる画面写真に視線対流位置を可視化した映像を出力してくれたりはするんですが、じゃぁそれをどう扱ったらいいか悩ましい。先に書いたように「ここのボタンは一瞬たりとも視線が向いてないな」は見ていて言えるんだけれども、じゃぁ何秒滞留してればいいんだとかあまり根拠のある定量化が難しい。専門でやってる方に言わせればなにかしらの指標があるかも知れませんが、個人的には冒頭に書いたように究極的には身体レベルの視線と認知レベルの注意の相関ってそんなには高くないと思うので、やっぱり「ふーん」位の納得感しか得られないんじゃないかと。そして、この「ふーん」という微妙な納得感にン百万とかなかなか出せないのが実情でした。また、ユーザ毎にキャリブレーションという初期設定作業が必要で、貴重なセッション時間が数分消費されるというデメリットもあります。

σ(^^)も長いユーザビリティ屋人生の中で、アイトラッカーを使った評価は2,3度しか経験がありません。クライアントが持ち込んだ機材を使ってデータはとったけど、あとはクライアントが持ち帰ってゴニョゴニョした、とか、それこそ「ふーん」で終わったもののみです。

ただじゃぁ被験者に「ここのボタン見てました?」って聞くのもビミョーで、見てなかったけど見たって言っちゃったりその逆もあったりと精度に限界があります。これは被験者が故意にウソをつくってことではなく、ヒトの記憶の精度の限界というか、人間はそういうことを正確に思い出して言葉にすることがそもそもあんまり得意じゃないということが心理学的にわかっています。「一昨日のお昼ご飯のメニューを思い出すまでの過程をあまさず説明してください」と言われても難しいですよね。無意識でやってることを言葉で説明するのは大変だし、仮にできてるつもりでも結構あやふやで不正確である、ということを示す心理学研究はたくさんあります。

あとはまぁ、「見てたか否か」のクローズドな再認課題ではなく、「ここになにがあったか」をオープンな再生課題として聞くという手もあります。以前、事後アスキングで肝心な部分にボカしを入れた画面写真を見せて、なにがあったか/なんて書いてあったか、を問うという手法を考案したことがありました。アイトラッカーよりもう少し認知レベルに踏み込んで、理解や記憶も込みで測定できる点が優れていると思います。

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ただいつ聞くのかが悩ましいですね。一度聞いたら次から「あ、そういうこと後でテストされるのね。次から意識して憶えとこう」と警戒されてしまうかも知れません。

さてまぁ色々なやり方にそれぞれ一長一短あるわけですが、ともかくアイトラッカーは長年コスパが大きな障壁でした。そこに颯爽と登場したのが今回ご紹介するSteelSeries社のSENTRY GAMING EYE TRACKERというわけです。

■製品概要

サムネイル写真みてもなんだこりゃって感じですが、ありもののモニター下部に貼り付けて使うUSB接続のアイトラッカーデバイスです。SteelSeriesは知る人ぞ知るゲーミングデバイスの海外ブランドです。ガチゲーマー/eスポーツ向けのマウスとかマウスパッドとかマニアックな製品を作っています。そこが入力デバイスの1つとして発売したのが本製品です。ゲーム用品と聞くとオモチャ的な響きがありますが、競技ゲームはミリ秒のレスポンスを競う世界で、マウスにCPU搭載してたり、摩擦抵抗を究極まで減らしたマウスパッドとか、BUFFAL○やサンワ○プライとは次元が違うもの作りをしている界隈です。そんなブランドが出した製品なので、なんとセンシングエンジンやドライバーはあの老舗Tobiiが担当しています。というかたぶんTobii自身が開発社向けに販売していたTobii EyeX ControllerのOEM品にゲーム用ソフトをバンドルしたものでしょう。EyeXはGoogle Glassなどと同じ開発者向けという位置づけでついぞ一般向け販売はされていなかったと記憶しています。その同等品がいつのまにやら日本のAmazonでも気軽に買えるようになっていた、ということで、これはレビューせねばと脊椎反射的に購入してしまいました。

原理的にはKinnectとほぼ同じです。アレの焦点距離が短くなった感じでしょうか。ハードウェアとしてはWindows向けで、USB3.0とCore i5程度の処理性能が必要とされています。逆にいうとそれを満たしていればノートPCでもOKということですね。対応モニタサイズは27インチまでとされています。

ただしソフトウェアは基本ゲーマー向けのもので、即ユーザテストに使えるヒートマップツールが付属しているわけではないので注意が必要です。標準のTobiiドライバーで視線位置を画面上に表示はできますが、それだとユーザテストでは被験者自身にも見えてしまい違和感ありまくりです。こっそり録画または配信する画面にだけ合成するには適切なソフトと組み合わせる必要があります。その辺りは後述。

現在Amazon.co.jpの価格は2.5万円ほど。本家公式では€139.99に値下がりしているようなので、海外取引を厭わない人は個人輸入も有りかも知れません。

■ハード周り

背面はこんな感じ↓。中央の膨らんだ部分が斜めになっていて、この面でモニタ下部につきます。つまりレンズが顔を見上げる形になるわけです。実は最初なかなかσ(^^)の目を拾ってくれなかったんですが、モニタがデスクに垂直になっててカメラが顔を向いていませんでした。視線に対して液晶画面が垂直になるくらいにすると、このセンサーも顔の辺りを見てくれるようになるイメージです。

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左右の濃い色の部分がマグネットで、付属の金属プレートをモニタ側に貼り付けておけば、簡単につけはずしができます。スリムとはいえ、更にスリムな最近のノートPCの狭額縁液晶では表示部分にかってしまうのは否めません。小さいスタンド穴らしきものが2つありますが規格は不明です。

こちら↓がその金属プレート。裏面に粘着テープ付き。2枚付属。あちこちで使うにはちと心許ないです。まぁいざとなれば両面テープとかでも問題ないと思います。

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端子はなんとminiUSB↓(PSPとかPS3コントローラーで使うヤツ)。最近あまり手元にないことが多いですね。できればmicroUSB(AndroidやPS4コントローラーで使うヤツ)にしてほしかった。というかminiUSBでUSB3.0なケーブルなんて存在するんですかね。とりあえず付属ケーブルはかなり長い上に太くて曲がりにくくて扱いづらいです。そして市販品では2本ほど試した限りでは認識しませんでした。付属ケーブルはたぶん無理矢理USB3.0で認識するようカスタマイズされてるのかも知れません。

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そして装着した状態ドン↓。机汚いってツッコミは無しで…

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27インチまでとのことでしたが34インチ超ワイドでも一応キャリブレーションできました。ただし湾曲モニタなのでマグネット板のくっつきがいまいち。お手持ちのモニタの額縁下部の平滑さをチェックしておくと良いでしょう。たいていロゴバッチがついてるところです。このモニタも結構額縁細いのでちょっとはみ出してる(画面に食い込んでる)感あります。やはり前述のネジ穴を使ったスタンドなど欲しいところです。

ちなみにWindows10に搭載された生体認証基盤のWindows Helloに対応しており、普段は顔認証カメラとしても利用可能です。Windows Helloの顔認証は顔写真で不正アクセスされないよう、立体物としてデプス計測が行えるカメラが必須なので、普通のWebカメラではダメなんですよね。Windows10が出て1年余、ようやく試すことができました。

■とりあえずのサンプル動画

てことでとりあえずそれっぽい動画を作って見ました。先に書いた通り、録画や配信機能があるソフトが付属されていません。もちろんデータ解析なんかもできません。しかしフリーソフトでもとりあえずこんなことはできますよ、っていうサンプルとして、今回はOpen Broadcaster Software(以下OBS)Classicを使ってみました。詳しい手順やオススメ設定などはもう少し検証してから別途記事にしたいと思います。

OBSはこれまたゲーム配信用のビデオミキサー的なフリーソフトで、こいつからみると本機のドライバーが吐き出すマーカーが透明レイヤーとしてインポートできます。これを画面キャプチャと重ねて配信したり録画したりするわけです。配信はTwitchやYouTube Liveなどに送信したり、自前のRTSPサーバーを用意して使うこともできます。録画はmp4やflvなど配信でよく使う系のフォーマットが選べます。エンコーダーはソフトエンコーダーのx264に加え、Nvidia NVEncやIntel QSVのようなハードエンコダーが使えます。なので、最近めのGeForceやIntel Core系CPUを使っていればCPU性能が劣るノートPCなどでも比較的負荷を抑えて動かすことができるでしょう。フリーなのにスゴい!

お待ちかねの動画がこちら。自分で少しの間適当にWebをブラウジングしたものです。設定間違えてflvで録画したせいか画質がイマイチですが、ボリュームなどのUI部品を操作している時はちゃんとそこを見ていることになってたり、精度はまずまずじゃないでしょうか?一度画面外にバヒューンと飛び出していくのは、そこにある操作パネルを見てしまったからです。それ以外はちゃんと追えてる気がします。ほとんどしゃべってませんが、Windowsが出力する動画再生音と、マイクの音がミックスして録画できています(これって普通の画面録画ソフトでやろうとすると結構面倒くさかったりするんですよね)。

もちろんこれは操作者の画面には表示されていません。録画を開くと入ってるという感じなので、ユーザーテストの被験者にも見えてしまうなんてことはないです。

とりあえず、標準モノで完結はできないものの、追加費用なしでこんな映像は撮れますよ、というデモでした。OBSには最近ゼロから新規で開発されているOBS Studioというバージョンもあったりなので、そこら辺を追々検証していきたいと思います。また今回はCore i7/GeForce GTX1080級のデスクトップ機で試しましたが、より非力なノートPCでも動かしてみたいと思います。乞うご期待。

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