マイク録り比べ2016

Pocket

昨年共著で機材周りのことを書かせてもらった「マーケティング/商品企画のためのユーザインタビューの教科書」でも「マイクをケチるべからず」ということを強く書かせていただきました。UTにせよインタビューにせよ、(映像はまだしも)音声が聞き取りやすくないと分析のストレスが半端ないです。また実査中の観察者、記録者、翻訳者、クライアント、そして「もっと大きな声で」と言われる被験者、それを言わされるモデレーターと全員が不幸になる。それがマイクです。

たまたま我が家に新しい洗濯乾燥機が届いて、いい感じに乾燥中の音がしていた上に、上面がまだ片付いていたので、機材をありったけ持ち込んでWebページを朗読する声を録り比べて見ました。

 

      iPhone6s
iOS標準の「ボイスメモ」アプリで録音。マイクを話者に向けてあります。洗濯機に直置きなせいもあるでしょうが、かなり動作音を拾ってますね。実査でも机上の紙のワシャワシャやマウス、キーボードの操作音が入りがちなので、スマフォ平置きは推奨しかねます。

声もちょっと歪んでて聴きにくい気がします。
 

      ICレコーダー SONY ICD-SX2000
この2月に出たばかりの最新モデルです。三脚穴がついているので写真左奥のように机上から持ち上げて話者に向けて設置が可能。また本機種の特徴としてBluetooth経由でスマフォアプリから操作(録音/停止、マーカー打ち、レベル確認)ができる点に惚れて購入。

モードはおまかせから会議、音楽など色々なモードがあり、今回はインタビューモードで収録。AGCというレベル自動調整はオン。LPCM録音もできますが今回はMP3/320Kbpsです。

思ったより環境ノイズを拾います。ハイレゾ対応ICレコーダーとしては環境音まで忠実に拾うのは正しい姿ですが、「インタビューモード」としてはもう少し人間の声に絞ってくれるといいなと思います。ただ再生時にはクリアボイスというノイズキャンセル機能があったり、付属のWindowsソフトでも同様の処理をして再生できます。残念ながらノイズを除去した状態で保存はできなそげ(かなり不満)。

さすがに声に歪みはなく聴きやすい方かなと。

 

      SONY_HDR-CX670.aac
これだけやや不公平ですが、UTを想定して背後に設置した状態で録っています。ゲインはとても高いですがその分環境ノイズも拾いまくり。また脱衣所の反響音で聞きづらいです。一番情景が浮かぶという意味で、ビデオカメラ内蔵マイクとしては正しい仕様だと言えます。が、人の声の内容をしっかり聞きたい、というケースではやや不向き。多くの現場でまずはこういう形で録ってみるところも多いと思いますが、是非他と比べてみてください。

SONYのビデオカメラは外部マイクがつなげられるので純正のBluetoothマイクを愛用していますが、これはいつのまにかひっそりバッテリーが切れてて無音状態になりがちなので、それを回避したくて先日SX2000を購入しました。単にバックアップとして録音しておくも良し、CX670はマイク端子もあるので、内蔵マイクの代わりにSX2000をつないでミキシングすることもできます。この辺りの使い勝手は次の実査で試してみたいと思っています。

 

      MacBook Pro 15’ Retina Late2013 内蔵マイク
ノートPCの内蔵マイクです。Windowsノートは千差万別ですが、Macのマイクは昔から比較的優秀です。キーボードをタイプしてもあまり音が拾われないです。今回の洗濯機の音もいい感じに抑えられてると思います。ただ聞きづらいとまでいうレベルじゃないですが、微妙に声が歪んでる気がしなくもないです。ビットレート絞りすぎた時みたいなワキャクチャいう感じ。

Windowsノートはもっとずっとヒドいものもあるので、実査に先立ってよくテスト録音してみてください。

 

      Logibool WebCap Pro9000(同上)
「インタビューの教科書」でもコスパ高いとオススメしたLogicool c270の系列の最上位モデル(当時)です。

やはりゲインは高め。ノートPCのマイクでは拾えない小さい声もしっかり拾います。ただし環境音もそれなりに入りますね。Macで使う場合専用ドライバを使わないので、Windowsでドライバを入れた上で使う場合に比べるとノイズ除去が弱いのかも知れません。ちょっと今回はそこが比べ切れてません。下位機種のc270は相変わらず2,000円しないでコスパ高いので、なかなか予算ないけどWidnows内蔵マイクもちょっと、という人にはまずオススメ。下手なアナログマイクより少なくともゲインの面では有利です。
 

      YAHAMA PJP-10UR(同上)
ドライバいらずでWindowsでもMacでも使えるマイク&スピーカーです。本来は電話会議用の製品ですが、マイク単体としてみてもノイズカットが優秀です。最近購入して電話会議に活用してますがハンズフリーでも会話がすごく楽です。

さすがにノイズカットはほぼ完璧。反響音もせず「狭い部屋で録ってるな」という風景が綺麗さっぱり断絶されています。ビデオカメラCX670と対極の音作りというか、とにかく電話会議専用ですね。これだけ加工しまくってるのに声として不自然さが感じられないのがスゴい。すべてハードウェアで処理しているので、USB通って出てくる音がこの音質で、CPU処理の負荷もないし専用ソフトウェアのセッテイングも不要。できれば後継モデルではこのサイズ感のままアナログ出力をつけてほしいです。そしたらビデオカメラの外部マイクとしても使えるのに。
 

いかがでしょう?どれも短時間だし原稿が同一なので、一旦内容を把握してしまえばトップダウン認知で聞き取れてしまうとは思いますが、これが長時間になってくると疲労度合いが違ってきたりすると思います。またこれははっきり聴きやすいペースで意識して朗読していますが、たまたま話者の声が小さかったり早口だったりすると更に聞き取りは難しくなると思います。また環境音的に狭くて反響音が入りやすく、”机”自体が盛大にノイズを出しているという劣悪な環境ですが、実際にも空調の音なんかがやたらうるさい会議室で実施することもあったりするので、あながちあり得ないセッティングでもないんじゃないかと思います。

というわけで、個人的イチオシはYAMAHAのPJP-10URです。PCで録画する場合は迷い無くこれ。電源もUSBバスパワーでとれるので、増える荷物はこれとUSBケーブルだけです。ただビデオカメラなどにアナログで入れたい時は使えないので、コストとサイズが問題ならなければ上位機種のYVC-300なんていいんじゃないでしょうか。複数話者の声の大きさも平均化してくれたりするそうで、個人的にもいつか欲しいです。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

日本語が含まれない投稿は無視されますのでご注意ください。(スパム対策)