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22. ナンチャッテ・カー・シミュレータでテストを安く実施しよう!
〜 最近の家庭用ゲームはスゴいんです
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古田一義
2003年07月26日

 コラム18でもご紹介したRolf Molich氏の「230 Tips and Tricks for Better Usability Testing」の日本語訳の発売が決まりました(詳細は最後に)。σ(^^)も翻訳のチェックなど多少お手伝いさせていただいているので、この場を借りてご紹介し、本コラムでも記念連動企画としてTips的な話題を取り上げようと思います。

 ネタは、「自動車内インターフェイスのユーザ・テストの為のナンチャッテ・カー・シミュレータに関する考察」です。ユーザ・テストでは、できるだけ実際の使用場面に近い状況での実施が望まれるのですが、カーナビ、カーステのような製品を実際に走行する車でテストするのは困難が伴います。運転中の被験者に操作をお願いして、それがきっかけで事故でも起きたら大変です。ン億円規模の超リアルなシミュレータもあるところにはありますが、繰り返しの実施が肝要なユーザ・テストでいちいちそういったものの手配をするのもやはり現実的ではありません。そこで我々は、実際の走行風景を撮影したビデオ映像や、コンシューマー・ゲーム機のカーレース・ゲーム画面を被験者の目の前にプロジェクターで大映しにする、という手を使います。特に後者は、被験者の運転操作と画面が連動するので、より現実味があります。今時のゲーム映像は十分にリアルですしね。

 今回のコラムの趣旨は、そういう場合に向くゲーム・タイトルの仕様について考察してみようというモノです。

 σ(^^)の過去の経験から、こういったナンチャッテ・カー・シミュレータには以下のような要求仕様が挙げられると思います。

・BGMをオフにできる

 多くのレース・ゲームはグルーヴィーでイケイケでノリノリなBGMが流れます。これは被験者の気分を急かしてしまうので、カットしたいものです。単に音量を絞るだけでもいいんですが、それだとエンジン音などの効果音も無くなってしまい現実味が薄れるので、やはり設定でBGMだけをオフできることが望ましいと言えます。

・画面上のステータス表示をオフにできる

 多くのレース・ゲームは画面上にスピードメータ、シフト・インジケータ、順位、ラップタイム、コースマップ(自車位置表示付き)などの表示がでます。基本的にこういった現実のドライバーが目にしないものはやはりオフにできることが望ましいでしょう。特にメータ・パネル周りのテストをする場合は、画面上にもうひとつ別のメータがあったらマズいですよね。

・GAME OVERにならない

 ユーザ・テストで利用する場合は、ゲーム・プレイ時に比べ、遥かにスローなペースで長時間走行することになります。制限時間が設けられていて、その時点でセッションが終了されてしまっては話になりません。いわゆるタイム・アタックや練習走行といった好きなだけ走り込めるモードが必要です。

・ライバル車両がいない状態で走れる

 時速百数十キロでビュンビュン抜かれながらでは落ち着きません。これもタイム・アタックや練習走行といった単独走行できるモードが利用できる必要があります。ただし、あらかじめ保存した走行データをゴースト・カーとして表示できるものもあります。こういった機能であれば、「前走車について、追突しないように走行して下さい」といったタスク設定も可能で、役に立つかも知れません。

 また2台のゲーム機でネットワーク対戦ができるような仕組みがあれば、実験者がリアルタイム操作した前走車を出すことも可能でしょう(1台で画面分割するタイプは厳しいでしょう)。ただ、元々のゲーム・コンテクストでは対戦しつつタイム・アタック、練習走行ということはあり得なさそうなので、前項目と両立できるタイトルは無さそうですね。

・ステアリング&ペダル・コントローラーに対応

 これまた必須でしょう。通常のコントロール・パッドでプレイさせるワケにはいきません(^^;)。最近のコンシューマ機やWindowsならオプションでコントローラーが容易できるものがほとんどでしょう。ただ欲を言えば、もう少しステアリングの径が乗用車サイズに近いものがあるといいですね。ゲーム用のものはフォーミュラ・カーのサイズでちょっと小さすぎます。

・景観が市街地など一般道

 これは他の項目に比べれば優先順位は低いですが、やはりサーキットなどよりは実際の(あるいは架空の)一般道が望ましいでしょう。幸い最近の公道レース・モノでは、ご丁寧に現実の新宿や首都高といった道路を再現することに力を入れてるものも増えて来ていますね。センターラインが描かれているだけでも、それをはみ出ないようにといった教示ができて良いです。

 信号交差点や横断者の飛び出しなどあればなお良しですが、やはりレース・ゲームでは一本道が基本でしょうね。以前アーケード・ゲームで本当にミスすると対向車と衝突したり歩行者を轢いてしまい、最終的な賠償額の小ささを競うというようなものもありましたが、アレはコンシューマ機に移植されないんですかねぇ。

・ドライバー・ビューで表示できる

 通常、レース・ゲームでは自車をやや後方の視点から眺めた画面デザインが基本となっていますが、設定で運転席からの視界を再現できるものも多いです。やはり実際の運転席の状況の再現という意味ではそちらを使いたいところです。

■結構使えます

 カーレース・ゲーム業界が我々に気を使ってくれてるのか(んなワケない)、ここに挙げた仕様は個々には満たしているタイトルは数多くあります。問題は、いくつ満たしているか、なんですよね。お手持ちのタイトルの対応状況や、その他の要求仕様など、下記フォームにて情報交換ができればと思います。

 参考までにσ(^^)が今までに目をつけた、上記をほぼ満たすタイトルをご紹介しておきます。

PlayStation2用ソフト「峠3」(株式会社アトラス)

 赤城など峠道でやや傾斜路でカーブが過多な気もしますが、公道の再現度はなかなかで、フォースフィードバック対応のステアリング・コントローラーなら、センターラインを踏んだ時にガタガタ振動までしてくれます。残念ながら対戦は画面分割方式のみです。

PlayStation2用ソフト「アウトモデリスタ」(株式会社カプコン)

 市街地コースとして新宿、その他にも実在の峠道データを何点か収録しています。トゥーン・シェーダーという描画技術で、自車がイラストちっくな見た目をしている印象が強いですが、背景はそうでもなく、ドライバー・ビューなら全く問題はないでしょう。ネットワーク対戦は機能はありますが、機材がないので試してません。マッチング・サーバ経由で不特定の相手としかプレイできないようなヨカンも。



「ユーザビリティテストの秘訣230」日本語版の発売について

 株式会社ユー・アイズ・ノーバスより、2003年8月1日発売に向けて、現在最終調整中です。残念ながら一般の書店ルート流通とはなりませんで、同社Webサイトより注文を受付け、郵送にての販売となります。ただし、本家のPDFダウンロード販売に比べ、日本語版では製本版をお届け。更にはPDFファイルに加え、視覚障害者向けスクリーンリーダーで扱い易いプレーンテキストのデータも収録したCD-ROM付きも選べます。その上、本家より安い(^^)/!気軽に読めて役に立つ内容なので、読んだ人が知り合いに薦めたりプレゼントしたくなるような価格設定を目指しました。

 詳細ページを以下に。「道具眼で見た」とお書き添えくだされば、割り引きも、、、ないかな(^^;)。

「ユーザビリティテストの秘訣230」詳細ページ:http://u-eyes.novas.co.jp/hiketsu230/hiketsu230.html

 サイトでは一部ページの「立ち読み」も可能です。是非一度ご覧下さいませm(..)m。


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