久しぶりにマルチカメラ録画&配信の仕事が来たので、長らく活用できてなかったRODE Caster Video(以下RCVを最新版にアップデートして色々設定を詰めてみました。
Webカメラの対応大幅拡大(MJPEGコーデックをサポート)
まず大きなトピックとしては2026年3月のアップデートでWebカメラをUSB4/5ポートに挿して映像ソースとして使う際の対応コーデックが非圧縮コーデックに加え非常に一般的なMJPEGコーデックに対応したことです。従来の非圧縮コーデックはUSB3.0に対応した高価格帯の一部Webカメラしか対応しておらず、日本で流通しているものだと1桁種類くらいしかなく公式にも対応Webカメラリストが出ていました。
しかしMJPEGという大昔からあるコーデックに対応したことで実質的にUVC規格のほぼ全てのWebカメラに対応したことになります(実際には対応解像度が1080pとか画素数やフレームレートの対応要件はあるかも知れません)。ウチでも今まで使えてなかったOBSBot Meet2やTiny 4K、Tail Airといったモデルが使えるようになり、2カメラ構成までならWebカメラのみで対応できることに。HDMIコンバーターもいらないので通常のOBS Studioベースの構成にRCVをポンと挿入できる形になり、活用しやすくなりました。神アップデートです。
NDIに対応
NDIとは?
それより少し遡り2025年の夏頃にNDIの送受信にも対応しました。NDIとはIP伝送、つまりWi-FiやLANケーブルを使ってネットワークで映像と音声を送受信する業界標準規格です。ネットワーク経由、特にWi-Fiを使うなんて帯域が枯渇したら映像が止まったりカク付いたりするんじゃないの?と思いますが、プロの世界でも割と当たり前に使われるようになってきているようです(その場合は通常のインターネットとは別のネットワークを組んだりしますが)。
IPネットワークを使う意義としてはケーブルを長く引き回しやすい点があります。リピーター無しで安定伝送できるのが5m程度のHDMIと違って、理論上はスイッチングハブを経由するなどすれば別フロアでも届かせられます。更にいえばインターネット経由でも使えたりするバージョンもありますが、RCVとは関係ないので割愛します。HDMIだと5m超える時はリピーターを入れたり光ファイバー式のケーブルを使用したりと一気にコストが上がりますが、LANケーブルなら10mとか30mとか普通に買えてしまいます。
LAN内で使う場合、パケットはブロードキャストされるので、1つのカメラからの映像を複数のデバイス(RCVとモニターとか)で受けることも可能です(その意味でも通常のPCなどとは別のネットワークを組むのが理想です)。送信側で流しはじめると、受信側機器のリストに名前が現れるので選択するだけ、というお手軽さです。
RCVはNDIの送受信双方に対応
RCVのアップデートで送受信ともに対応しており、LAN内のカメラ映像をソースとして受信するだけでなく、RCVで合成したプログラム映像を他の端末で受信するといったこともできます。例えばOBS StudioにNDI受信プラグインを入れればネットワーク上にあるRCVの映像を受け取ることができます。
ただし注意点として、RCVのNDI機能はEthernet接続時のみで、内蔵Wi-Fiでは使用できません。
ちなみに最も簡単に試すのであれば、同じRODEからリリースされているRODE Captureというカメラ映像をNDI送信するiOSアプリがあります。これは執筆時点でAndroid版はなさそうですが、NDI準拠のアプリは他にも色々あります。
OBSBot Tail Airとつないでみる
今回の実務で送信側に活用したのはOBSBot Tail Air。
Webカメラを多く出しているブランドですが、Tail Airはスタンドアローンでバッテリー駆動、HDMI出力、そして別売のUSB-EthernetアダプターとNDIライセンスでNDI送信に対応していまる。またPTZ(パンチルトズーム)対応で専用ワイヤレスリモコンだけでなくNDI経由でもアングル、画角を操作できます。
NDI専用ネットワークを用意する
Tail AirはWi-FiでもNDI送信できます。RCV側が有線LANに接続していれば一応接続は成立しますが、
- より安定した伝送
- 客先のゲストネットワークだとWi-Fi端末間の通信がブロックされていたりそもそも有線LANが用意されてない可能性を考慮
- PoE給電(後述)
などの理由から専用ネットワークも自前で構築することにしました。
使用したルーターは5G SIMフリールーターに別売りのUSB-LANアダプターをつけたもの。
今回はZoomへの映像中継も必要でしたが、その端末は客先が用意しており、こちらからはRCVのUSB出力をクライアントのPCに渡すだけで、このルーター配下はほぼインターネット通信を使用しないNDI専用にすることができました。厳密には自分のMacBook ProもつないでRCVの設定ツールであるRODECaster AppもLAN経由で接続しています。
PoEでカメラにケーブル1本で給電する
RCVから話が逸れますがOBSBot Tail AirのUSB-LANアダプターはPoE(Power over Ethernet)規格に準拠しており有線LANケーブルから電力を受けてカメラ本体を稼働させられます。カメラ設置位置まで有線LANケーブルと別にUSB-Cケーブルを引き回す必要がなくなるので楽そうだということで数年ぶりにPoEについて調べて導入してみました。
PoEのスペック違いの規格は現在、PoE、PoE+、PoE++があります。
| 規格 | IEEE表記 | 策定年 | 最大供給電力 | 最大距離 | 最大速度 | 要求ケーブル |
| PoE | IEEE802.3af | 2003 | 15.4W(Class 3の場合) | 100m | 1Gbps | Cat3 |
| PoE+ | IEEE802.3at | 2009 | 30W | 100m | 1Gbps | Cat5e |
| PoE++ | IEEE802.3bt | 2018 | 90W(Class 8の場合) | 100m | 10Gbps | Cat5e |
最新規格では90W、10Gbpsまで使えてしまうんですね。ただし今回はOBSBot Tail AirのLANアダプターがPoE(802.3af)止まり、速度も10Mbpsなので、上位規格は不要。安価に実現できるなら使ってみようかな?くらいでインジェクターを物色してみました。インジェクターはLANポートのIN/OUTがついた電源供給装置でスイッチングハブと端末の間に介在させることで、LANケーブルに電力を注入(インジェクト)する装置です。インジェクターを内蔵したスイッチも存在しますが、基本的に業務用の大型のものが多く、今回のように出張鑑定に持ち込むには不向きだと考えていました。のですが、、
小型で安価なPoEインジェクター内蔵スイッチ TP-LINK TL-SG1005P
見つけたのがこちら。
- 5ポート/金属筐体ギガビットスイッチ
- ルーター用を除く4ポートがPoE(IEEE802.3af)対応
- 4ポート合計60W給電
- 専用ACアダプター
というスペック。PoE対応でこんなに小さいのは初めてお目にかかりました。ポータビリティを考えるとUSB-C給電だったら神なのですが、さすがに安定したDC給電が必要なのでそう。そしてなんとお値段が6,000円程度。私の知識は1ポートのインジェクターが1万円ほどしていた10年前で止まっていたのでビックリ。スイッチ一体型で4ポートも給電できて数千円だとご家庭用のセキュリティカメラ用途にも普通に選択肢になり得ますね。ただし60Wというのは最大供給可能電力で、4ポートの合計値です。IEEE802.3afはMax15.4Wなのでギリギリ足りはしそうですが合計が上限に達すると制御が入るっぽい。
調べたら前乗りで泊まっていたホテルに近いヨドバシAkibaに在庫も潤沢にあるということが判明。現場入りの前にサクっと買っていきました。
調べた限りこの製品のコスパはズバ抜けており、同じ5ポートのサンワサプライLAN-GIGAPOE51が1.5万、PLANEXの8ポートタイプがもっと安くて1.4万くらいといところです。しかもこれらは体積が倍くらい大きい。宗教的な理由でTP-LINKが使えないという人以外はTL-SG1005Pでいいんじゃないでしょうか。
PoEに専用ケーブルはある?
規格上は”ない”というのが正解らしいですが、なぜかBUFFALOやELECOMのサイトをみると対応とそうでないものがあります。保証、検証済み、みたいなレベルの話でしょうか。手持ちがフラットケーブルだったので、ClaudeやGeminiに確認してみたところ、大電流を流すなら純銅のケーブルである程度太いものの方が抵抗値が低くて発熱しづらいからお勧め、とはされたものの、現実として低電力消費のIEEE802.3afで7mなら問題にならないだろう、ということでそのまま使用しました。国産の主要メーカーならたいてい純銅だろうとも。今後もしPoE用にケーブルを買うことがあれば、フラットは避けるかな、くらい。
結果として、この組み合わせで2時間近く流してみましたが問題なく伝送できました。
音声はRODE Wireless PRO
RCVの話に戻します。今回は1on1のインタビュー(ユーザーテスト)途中で室内移動を伴うため、ワイヤレスマイクを使用。RCVは同じRODE製のワイヤレスマイクをレシーバーなしで直接受信することができます(2台まで)。すっかり忘れていたペアリング操作を再学習して使用。改めてやってみるとボタンの長押しとかも不要で簡単に親機をRCVと専用レシーバーに切り替えできて便利。正直、e-inkディスプレイやAIノイズ除去、小型化が魅力でInsta360 Mic Proに買い換えたいなとも思ってましたが、RCV連携を考えるとWireless PROもまだまだ捨てがたいです。
まとめ
改めて発売時より機能も強化されたRODE Caster Videoを現場投入してみました。その前に使っていたATEM Mini Extreme ISOと比べて、
- マルチカメラのスイッチングが大きな6ボタンで素早く操作可能
- ワイヤレスマイクをレシーバー不要で受信可能
- NDI経由でケーブル敷設を簡素化
- OBSBot TailのPTZ(パンチルトズーム)操作まで可能
- SSDを選ばないで録画可能
- マルチアングルレイアウトの設定がGUIベースで直感的(ATEMはXYWHを数値で指定)
などメリットだらけでした。特に熱暴走とかも今のところなく。
NDI入力は4系統までできるので、いずれ望遠に強いOBSBot Tail 2も導入できたら最強だなぁと思いつつ、最近あんまりこの手の仕事が来ないので思案中。
もっと注目されてもいい製品だと思いますが、RODEって音響製品では実績ある老舗ですが、映像機器としてはあまり知られていないせいか全然話題になってないですね。
ちなみにHDMI入力が4から3に、USB入力が2から1に削減された下位モデルのRØDECaster Video S(RCVS)もあります。
NDIは同じ4系統なのでNDI前提ならコスパは良いと思います。自分も今買うならこっちにしてたろうなと思います(当時はまだ存在してなかった)。
