ワイヤレスマイクのレシーバーを見やすい角度で保持できるスタンドを自作

みなさん、小型ワイヤレスマイク使っていますか?Rode Wireless Go辺りから始まったバッジ型(?)小型ワイヤレスマイクの潮流は、ユーザーテストや1on1のインタビューでとても手軽に良質な音声収録を可能にし、かつマイク本体に録音もできる機種であればバックアップ録音や、事後の音量バランス調節なども行える保険として有益です。

私もこの辺りを実際に現場に投入して一長一短ありつつも便利に使っています。

されこれらのマイクの共通の特徴として、マイク子機(トランスミッター)2台とPCやビデオカメラに有線でつなぐ親機(レシーバー)から成り立っています。レシーバーにはリアルタイムの音量(レベル)やバッテリー残量など重要な情報が表示されています。これをごちゃつきがちなモデレーターのデスクに見やすい位置に置いて、ステータス確認したい時にat a glance(チラ見)でチェックできるようにしておきたい、というのが本記事のトライアルです。

これらのレシーバーは軽量な上に背面や底面にカメラのコールドシュー(ストロボを取り付けるレール)につけるクリップがついていて、安定性がよろしくない。カメラの上にとりつける時はありがたいスタンドが、安定悪くしていて机の上に置いておくとケーブルに引っ張られたりしてすぐにクルクル明後日の方を向き出してしまいます。また仮に自分向きに置けたとしても、RODE製品は上面、DJIやHollylandはフロント面にディスプレイが来るので、覗き込むなりしないと見えなくて微妙なストレス!

これを解決するスタンドを3Dプリンターで自作してみました。その完成品がこちら!

「コールドシューを斜めにしただけの台~」(CV.のぶ代)

RODE型のレシーバーは下から差し込むようにつけます。

RODE Wireless Pro取り付け例

DJI/Hollylandのように薄い面がモニタの機種は台を180度逆向きにして差し込みます。

Hollyland Lark Max取り付け例

PCにUSBケーブルでつないで脇に置いておけば安心です。ままでクリップでそのケーブルに挟んで固定してたりしましたが、それだと下を向いちゃったりでいまひとつでずっと気になってたんですよね、、

なおコールドシューのパーツはRemix OKで公開くださっていた拾いものをベースに、両側から刺さるように改造した上で流用させていただいています。

さらに3DプリントのPLA素材なんてスカスカで軽いのでちょっとなにかにぶつかっただけで動いてしまいます。そこで、テテーン!

底に穴をあけてジンバル用のウェイトを入れてみました。

買うとちょっと高いですが、前に別のことで買って使わなくなっていたものを流用。これでズッシリさあが増して動くにくくなった気がします。さらに底に滑り止めのシートも貼ってみてもいいかも知れません。これがぴったり刺さる穴径がなかなか作れなくて三度目の正直でやっとピタっとはまりました。手ではもう抜けません、、必要なら三脚ネジになにかネジこんで引っ張るとかすればいいかも。

stlファイル置いておきます。ほしいという奇特な方はどうぞ。利用せていただいたコールドシューパーツのライセンスが改変OK、商用NGなので直接の販売はできません、送料実費くらいでならどうだろ…まぁいざとなればもっと緩いライセンスの部品をくっつけなおすだけなんですが。

今回利用した元パーツもクレジットせねばなりません。こちらの作品です。Ratasichさんありがとう。

そして再頒布は同じ条件で公開しなければならないので、ご利用になる方は以下をお願いいたします。クリエイティブコモンズライセンスのBY-NC-SA 4.0 DEEDです。

  • 再頒布、改変はOK
  • 元製作者のクレジット必須
  • 商用不可

■市販品で作る

今回の計画段階で、ありものを組み合わせるだけでも近いものはできるなと思いました。

コールドシュー部品はこれがおすすめ。両側から差し込めます。三脚ネジ互換のネジも付属しています。

これを何か小さめのミニ三脚に装着するだけです。三脚側もネジが出ているのが多いので、メス-メスのアダプタ。

あとは向きが変えられる雲台がついたミニ三脚ですね(もしくは三脚+雲台)ですね。個人的にはあまり背が高くなりすぎず、値段もそこそこに抑えるとこんなんかなぁ。

百均とかにいけばなんかあるかも。個人的には「これ!」ってのがなくて「作っちゃえ」となりました。結果的にフットプリントが小さくできたので、色々なものがあって渋滞しがちなモデレーター、オペレーターのデスクで邪魔にならなくていいんじゃないかなと思います。

動画眼3のVer 2.12.1を公開しました

GitHubのリリースはこちらです。

https://github.com/do-gugan/do-gagan_electron/releases/tag/2.12.1

今回はバグ修正以外にいくつか機能改善や変更も含んでいます。

再生ステータス表示

まず再生中にスキップや速度変更、一時停止、画面キャプチャをした際に映像フレームの右上にステータス表示(アイコン、文字)を表示するようにしました。キーボードショートカットで不意に速度がかわったりしてると気付きにくいので。右上というのがこだわり。昨今の動画サイトやアプリは一時停止とかスキップボタンをデカデカをコンテンツのど真ん中に出すのがデ・ファクトになっていて異を唱えたかった。普通に考えて邪魔でしょと。小さい画面でタッチ操作するスマホはまだわからなくもないけれど、画面全体の輝度を落とすのもいらない。一時停止って視聴を止めるってだけでなく映像をしっかり確認したい、って場面もあると思うんですよね。そういう時に邪魔をするUIはいらない。一時停止してまっせ、ということだけが伝われば良い。てなことでスタータス表示は右上に控えめに。ブラックアウトももちろんなし。技術がないとか面倒だったとかじゃないんだからねっ!

キーボードショートカットの変更

次に大きな変更としては、前後ジャンプのショートカットキー割り付けを変更しました。従来のCtrl + W/Qに慣れてらっしゃる方がいらしたら申し訳ないですが、まぁたぶん世間の誰も使ってないから大丈夫だろうと…

変更意図はこちらの図をみるとわかっていただけるかと思います。

こちらが変更前。

そして下が変更後です。

もともと動画眼3でCtrl + WとQがペアで前後だったところにEを追加。更に下段に速度制御系をいれて、ほぼ同じ動作をするCtrl + EとCtrl + Sがズレてるのがわかりにくいなとなりました。

ちなみに速度制御系はPremiere Proなどで一般的なJ/K/Lキーでも行えます。ただモディファイアキー無しは文字入力中などには使えないので、別途Ctrlを使い、左手一本で扱い易い位置としてCtrl + A/S/Dをもってきたという経緯です。ただここはもともとWindowsでは全選択や上書き保存に使われてたりするので悩みましたが、本ツールにおいての操作性を優先してみました。上書き保存はShift +Ctrl + Sとちと面倒になってますが、定期自動保存もあるしな、と。

あとCtrl + Q/EはShiftを押しながらだとn倍ジャンプするんですが(何倍かは設定画面で指定)、macOS + ATOKではShift + Ctrl + Eで単語登録ウインドウが開いてしまうようです。自分は必要ないのでATOK側でアサインを変更しようと思います。

このように特定環境や習慣とバッテイングするのも問題なので、将来的には有効無効を切り替えたりカスタマイズできるようにしたいなとは思いますが、まぁ現状自分以外に利用者いなさそうだし優先度低め。

動画眼Liteの方も近日中に新アサインに更新予定です。

ログ・インポート時のダイアログの挙動変更

動画眼上で作成した.dggn.txt形式ファイル以外のデータで読み込めるのは、csv、srt、そして旧動画眼形式の.txtですが、インポートするファイルを指定するダイアログで拡張子による絞り込みのプルダウンメニューがありました。自分は最近Whisperで生成したsrt形式を使うことが多く、毎回プルダウンの一番下を選ぶのが面倒になってきました。最後に使った形式を記憶しておいてデフォルトでそれが選択された状態にできないかと思ったんですが、APIの仕様上、HTMLのselectタグのselectedのような指定はできなそうで、順序を一番上に持ってくるしかないとのこと。プルダウンの順番がコロコロかわるのもなんだなということで、デフォルト(一番目の選択肢)は.txt、.csv、.srtがすべて選べる状態にしました。フォルダ内にファイルが多すぎる時だけプルダウンで絞り込んでね、という形。macOSの場合、この拡張子セレクタはボタンを1つ押さないと出現しなくてさらに手間だし気付かれないこともあると思うので、その意味でも良い変更なんじゃないかと。

まだまだ改善中ですがよろしかったらお試しください。

動画眼3 2.11.0をリリースしました

先日、AI書き起こしツールのWhisperとstable-tsを試し、その認識精度は実用レベルだなと感じました。

ただ気になったのは、書き起こしたテキストがPremiere Proに比べて細切れになる傾向がある点。文章や単語の途中でも切れまくっていいます。Whisperにはregroupというオプションがあるんですが、これを有効にしてもやや細切れのままなケースが散見されるので、もう少しオプションを詰めて行きたいと思いつつ、とりあえずの緊急措置として、動画眼3で取り込んだ後で、簡単にメモ(セル)を連結できるようにしました。

任意のメモを選択して、Ctrl+Fすると、直後のメモの内容を末尾に連結し、そのメモ行を削除します。MergeのMが使用済みだったのと、連続した押しやすさを考慮してFにしました。FusionのFとでも覚えてくださいw。

その他、細々とした使い勝手や不具合修繕も含んでいます。

最新版のダウンロードはこちらからどうぞ。

https://do-gugan.com/tools/do-gagan3/install.html

ショートカット一覧を作成

今回、操作ガイドとしてショートカット一覧を作成しました。動画眼3の「サポート」メニューから呼び出すことができます。

また表だけだと位置関係がわかりづらいので、再生操作系のショートカットを可視化するイラストも用意しました。文字ではピンとこないと思いますが、この当たりは運指のしやすさも含めてこだわっている部分なので、是非これでイメージを掴んで活用していただければと思います。

CtrlキーがAの左にあることを想定しているので、WindowsでCapsLockを使わずに遊ばせてる方は是非キーリマップツールを導入してCtrlキーとして使えるようにカスタマイズすることをオススメします(もちろんCtrlキーが左下のままでも使えます)。変更にはPowerToysCtrl2CapsなどどちらもMicrosoft謹製ツールです。

最近では、スイッチ切り替えでCapsLockをCtrkキーとして使用できるキーボードなんてのも登場しているようです。

動画眼3 2.10.3をリリース(不具合修正)

動画眼3にバグを見つけたので修正版をリリースしました。

https://do-gugan.com/tools/do-gagan3/install.html

Premiere ProのAI書き起こしデータをインポートできなくなる不具合で、以前一瞬だけ書き起こし時のタイムコードの区切りが「;」になっていた気がしたので2.10.1で対応してあったのですが、あらためて最新版をみると「:」に戻ってました。なんだったんだろう。夢?

対応したのが随分前でそのままPremiereが何度かアップデートしてたのに検証しきれていませんでした。該当機能をご利用の方にはご迷惑をおかけしました。

RODE Wireless Pro用のネックストラップハンガーを作成

UT/インタビューで2人の音声を明瞭に収録するのに、RODE Wireless GOシリーズのような小型ワイヤレスマイクは重宝します。ただUTやインタビュー調査のように参加者が入れ替わり立ち替わりして、かつセッテイング時間もない、服装も様々、という場面では、クリップやマグネットで衣服に固定しづらいことも。

そこで、当サイトでは3Dプリンターでネックストラップにとりつけられるハンガーを設計して活用していました。直接クリップ部分にヒモをひっかけるよりも姿勢が安定し、マイクが常に上(口元)を向きやすいメリットがあります。

ハンガーを使ってストラップに吊り下げた様子

しかし、2023年秋に発売されたRODE Wireless Proでは専用の充電ケースが付属しており、このハンガーパーツと相性問題が発生しました。

ハンガーが干渉して充電スロットに刺さらない

7時間程度保つというカタログスペックですが、慎重を期して60~90分のUTセッション毎に充電しておこうと思うと、都度ハンガーを付け外しする手間はばかになりません。

そこでWireless Pro充電ケース対応の新しいハンガーを再設計することにしました。

完成したPro用ハンガーがこちら。

RODE Wireless Goシリーズでは別売りだったマグネットがProでは標準で付属していますので、これを活用するスタイルです。今回はスマホケースなどで使われる柔らかいTPU素材で出力してみました。マグネットを固定する仕掛けが最低限なので、より摩擦が大きく外れにくいことを期待しています。

実際にとりつけたのがこちら。本体側上部が一応引っ抱えるようになっているので、見た目よりはスッポ抜けにくくなっています。普通にブラブラ振り回すくらいでは外れなさそうです。

Proケース対応の新ハンガーをMagClip Goマグネットにとりつけた様子

そして問題の充電ケースですが、こんな感じで収まります。

充電ケースにセットした様子

送信機のスロットはセンターと左側です。センターはそのまま刺さりました。左側も外周のフレームが干渉してしまいマグネットがズレるものの刺さります。実用上は問題なさそう。そもそもマグネットなので最悪付け外ししても手間はほぼありません。

ちなみに受信機も同じ形状ですが、ネックストラップで吊る必要はないと思うのでここでは考えないことにします。右の受信機とセンターの送信機の隙間はギリギリなのでつけたままセットするのは無理っぽいです。

これでストレスなく実査中に充電ができそうです。

こちらのハンガーを使ってみたいという方で、3Dプリンターをお持ちの方は以下のSTLファイルをご自由にご利用ください。また自身で出力できる環境がないが欲しい!という方がいらっしゃいましたらコメントからお問い合わせください。送料実費くらいで頒布いたします。

こちらのストラップで検証しております。

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390円(10/10 05:24時点)
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動画眼マーカー→動画眼3→動画眼Liteの最新ワークフロー解説(時刻同期方式)

動画眼マーカーと動画眼3が時刻で同期可能になったので、改めて動画眼ファミリーの使用方法を解説してみたいと思います。ユーザーテストやインタビューの動画記録にインデックス(チャプター点)をつけて、特定の箇所を素早く見返したり、プレゼンしたりといったことを目的としたソフトウェア群です。

■登場人物紹介

動画眼3(動画にインデックス付け)

中核となるソフト。Windows & Mac対応。要インストール。

動画ファイルを再生しながら特定の位置(話題やタスクの切れ目や注目箇所など)にインデックスを打て、それをダブルクリックすることでその箇所を瞬時に頭出しできます。できるだけ省力化できるよう再生操作(指定秒数スキップなど)などはキーボードショートカット化してあり、また定型文をFnキー1~5で一発挿入することも可能。

動画眼マーカー(リアルタイム記録)

Webアプリ。PCやスマホのブラウザからURLにアクセスするだけで使えます(データーはサーバーには一切保存しませんし、必要なら一式GitHubからダウンロードしてローカル環境で動かすこともできます。ただし非SSL環境ではモバイルブラウザのセキュリティ制約でコピー、共有がでません)。

動画眼3が録画したファイルに対してインデックスをつけるソフトなのに対し、こちらはUTやインタビューのセッション中にリアルタイムで「今ここを区切りたい!」って時にマーキングすることができます。作成したデータをファイルで保存し、別で録画した動画ファイルと一緒に動画眼3に食わせると、すぐに動画にインデックスがついた状態で見返し分析作業ができます!

動画眼Lite(配布用ビューワー)

WebアプリというかHTMLファイルセット。原則PC向け(スマホは想定していません)。

動画眼3でインデックスをつけた状態でチームで閲覧したりクライアントに納品したいことがあると思いますが、「動画眼3をインストールしてください」とは言いづらいことも多いでしょう(企業さんでは申請が必要だったり)。そこで編集機能はもたないものの簡単に、動画ファイル、HTMLファイル、インデックスデータファイルの3点セットで渡すだけで、ブラウザ上で即閲覧可能にするビューワーを作りました。動画眼3から簡単に生成することができます。

■ワークフロー解説

0. 動画を撮る

セッション中、なにがしかの動画は撮っているものとします。今ですとOBS Studioで様々な映像ソース(画面キャプチャ、手元、表情など)を合成して1つの録画に撮るなんてことも簡単ですし、リモート実施ならZoomなどの録画機能で記録しているかも知れません。

ポイントはその動画の録画開始時刻が正確にわかることです。OBS Studioならデフォルト設定でファイル名が録画開始時刻なので「2023-12-10 16-46-36.mp4」みたいなファイル名になると思うので、それで大丈夫です(.mkvで保存している場合は、「録画の再多重化」でmp4に変換しておいてください)。

ビデオカメラで録画したMP4ファイルを使う場合、そのファイル名や作成日時が録画開始時刻を指しているかどうか確認してみてください。もしそれも難しい場合は、秒まで正確な電波時計やスマホの時計アプリなどを映した状態で録画ボタンを押しておくでも良いです。とにかく録画開始した瞬間の正確な日時が重要になります。

また動画でなくICレコーダーなどで録った音声ファイル(mp3、wavなど)でも使用可能です。

1. 動画眼マーカーでセッション中に記録する

こちらが動画眼マーカーの画面です。PCでもスマホでも基本は同じです。余裕があればモデレーターが操作してもいいですし、見学者、記録係が担当しても良いでしょう。

下の方に青字で表示されているのが現在時刻です。

ピンクの部分になにかテキストを打ち込んでEnterキーを押すか、右のペンボタンをクリックすると薄緑のエリアにチャプターが書き込まれます。特にメモは不要でチャプターだけ打てれば良いという時は単にペンボタン押していくだけでもOKです。

タイムスタンプは修正不可能ですが、メモはクリックすると編集できます。

一番下段のF1~F5ボタンは定型文ボタンです。現在のバージョンでは内容をカスタマイズはできません(GitHubからソース一式をダウンロードしていただいてHTMLファイルを直接編集すれば可能です)。

セッションが終わったら右上のローカル保存ボタン(下向き矢印アイコン)を押して、テキストファイルとして保存します。スマホの場合は共有ボタンになっているので、ご利用のアプリやサービスなどにアップロードするなどして保存してください。その左のボタンでクリップボードにコピーもできます。ようはただのテキストデータなので、最終的に動画と同じフォルダに同じファイル名で保存し、拡張子を「.dggn.txt」にします。例えば上のOBS Studioで撮った動画が「2023-12-10 16-46-36.mp4」なら「2023-12-10 16-46-36.dggn.txt」にして同じフォルダに置きます。

こんな形になっていればOKです。

なお.dggn.txtという拡張子ですが、末尾は.txtです。つまるところメモ帳やテキストエディタで開けるしタイムコードと形式さえ変えなければメモ部分は編集しても大丈夫です。

2. 動画眼3に読み込んで確認する

では動画ファイル(MP4)とチャプター記録ファイル(DGGN.TXT)を合わせて動画眼3で読み込んでいきます。

まず動画ファイルを動画眼3の黒い部分にドラッグ&ドロップします。これで同じフォルダ、名前の.dggn.txtファイルも自動的に読み込んでくれます。ただしタイムスタンプが動画眼マーカーで記録した時刻形式だった場合、写真のような「時刻変換」ダイアログが出てきます。これがVer 2.10.1のキモです。

ファイル名から録画開始時刻を取得した状態

ここに動画の録画を開始した時分秒を入れてあげればOKなわけですが、それを支援するボタンが2つあります。

・動画ファイルの生成日時から取得

動画が記録後に変換や編集を一切してない生ファイルの場合、おそらくファイルのタイムスタンプは録画開始時点になっていると思います。その場合はこのボタンを押して取得できます。

ただし録画ソフト/機器によっては録画終了時点になるものもあるかも知れません、mkv->mp4などの変換を行ったり編集をした場合はその作業をした時点のタイムスタンプに書き換わってしまうので、この方法は使えません。

・動画ファイル名から推測

OBS Studioのように録画開始時点の日時をファイル名に入れてくれるものの場合、こちらのボタンを押せば推測して入れてくれます。「推測」と書いたのはそのファイル名の記載ルールが多岐に渡るため、すべてのパターンには対応しきれないからです。特に「:」はファイル名に使えないので、かわりにハイフンだったりアンダーバーだったり、区切らずに6桁数字だったりします。日付との区別も問題です。現状OBS Studio形式をはじめ何パターンかに対応させていますが、上手くいかなかったらごめんなさい。「こういうファイル名ルールに対応してほしい」などリクエストを上げていたらければできる限り対応していきたいと思います。

以上、どちらの方法も上手くいかなかった場合は、手入力で録画開始の時分秒を入れてください。

下の写真が時刻同期が成功した状態です。

動画の録画開始が16時46分36秒でした。そして動画眼マーカーで記録した最初のチャプターは16時49分47秒でした。チャプターの時刻から録画開始時刻を引き算してあげることで、動画開始から3分11秒目が1つ目のチャプター位置、ということになっています。これで「3:11」となっている水色の部分をクリックすれば、当該箇所にジャンプできるはずです。

もちろん動画眼3上で新しいチャプターを追加したり、既存のチャプターをクリックして編集したりもできます。

ちなみにチャプターは最終的にタイムスタンプとメモテキストのペアがあれば良いので、必ずしも動画眼マーカーや動画眼3上で作成する必要はなく、例えば動画音声を文字起こししたデータを使って作ることもできます。現状はPremiere Proの書き起こし出力ファイルからの変換や字幕データの標準フォーマットであるSRT形式からインポートすることもできます。

3. 動画眼Lite形式で配布する

さて、動画眼3上で良い塩梅にチャプターが打てたとします。これをそのまま閲覧可能な状態で誰かに渡したいとします。もちろん相手に動画眼3を入れてもらって、mp4とdggn.txtファイルをセットで渡せば良いのですが、相手によってはソフトのインストールは難しいケースもあると思います。その時は、動画眼3の「ファイル」メニューから「動画眼Lite形式で書き出し…」を選び、次いでダイアログで「ダウンロード」を選択してください。

そうすると、同じフォルダに.htmlファイルと.json.jsという2つのファイルが生成されます。

この状態でhtmlファイルを開くと、お使いのブラウザが開いてこのような画面になるはずです。これが動画眼Liteです。

標準ブラウザが使われるので、お手元のPCの設定次第でEdgeだったらいChromeだったりFireFoxだったりで開かれますが、基本的にはどれでも使えるはずです。編集機能はありませんが、

  • チャプター該当箇所の頭出し
  • ショートカットによる指定秒数スキップ
  • 特定文字列を含むチャプターの検索、絞り込み

などは動画眼3と同じように使えます。

必要があるのは赤枠で囲んだ.html、.json.js、そして.mp4の3点です。(.dggm.txtは動画眼3で編集を行わないなら不要)。動画以外のファイルのサイズなど誤差レベルですし、ソフトウェア自体は含んでいないので、気軽に渡せるんじゃないかと思います。使用時は必ず同じフォルダに同じファイル名(拡張子違い)で置いてもらってください。

■まとめ

以上、2023年12月時点の最新版を使った時刻同期によるワークフローを解説してみました。パッと見ややこしく見えるかも知れませんが、流して感覚を掴んでもらえればそこそこシンプルで汎用性も高い方法なんじゃないかと自負しています。それでもわかりづらい、使いづらいなどありましたらご意見いただければと思います。

本ツール群が製品開発のためのUT/インタビュー業務にお役立ていただければ幸いです。またこんな用途で使っています、などありましたら是非お聞かせください。

動画眼3 2.10.1と動画眼マーカー2.0をリリースしました

春のはほぼ完成していたのに、なかなか配布ビルド環境の更新とかマニュアル書いたりとかする時間がとれずにいましたが、ようやく更新できました。

ダウンロードか配布ページGitHubリポジトリからどうぞ。

今回の目玉は動画眼3と動画眼マーカーの連携をより簡単にする時刻同期機能です。詳細は以前の記事にまとめてあります。

簡単に書くと、いままでは録画環境(OBS Studioやレコーダー)と動画眼マーカーのタイムコードを手動で「せぇの!」で合わせる必要がありましたが、動画眼マーカー側は時刻で記録するようにしました。そして動画眼に動画とメモをインポートする時点でその動画が何時何分に録画開始されたかを指定することで帳尻をあわせます。バタバタしがちなセッション開始時点の作業が減るので使いやすいんじゃないかなと。動画の録画開始時刻も動画ファイルのファイル名やタイムスタンプから半自動で取得する工夫もしてみました。よろしければお試しください。

■その他の更新内容

新機能

  • Premiere Proで書き出したcsv形式のマーカーのインポートに対応
  • Premiere Proの書き起こしデータの新フォーマットに対応(v21辺りからの:区切り->;区切りへの変更等)
  • 「ヘルプ」メニューに動画眼マーカーへのリンクを追加

修正

  • 100分を越えるタイムコードが正しく表示できなかったのを修正
  • Shiftキーを押しながらジャンプでn倍動作がキーボードショートカット(Ctrl+W/Q)では効いていなかったのを修正

仕様変更

  • macOSでも全てのウインドウを閉じたらアプリケーションを終了するようにした(Windowsは元から)
  • Windowsのインストーラー形式が変更。Setup.exeをダブルクリックするだけでインストールが完了し、スタートメニューの登録されるようです。一度起動したらSetup.exeは削除してOKです。

今回から配布パッケージの作成と署名にElectron-Forgeという仕組みを使用しています。その関係で

  • 英語環境でもアプリ名が漢字で「動画眼3」と表示されるようになったかも(以前はdo-gagan3)
  • 内部名称がかわって設定が引き継ぎされないかも
  • Windowsでインストール手順が変わった

1つ目は色々いじってみたんですが解決できず。たぶん海外で使ってる人はほぼいないと思うので、漢字表記で統一することにしました。実際に英語環境でテストできてないですが、たぶん「動画眼3」って見えてると思います。日本語以外の環境の方、ご不便をおかけします。

またWindowsはインストーラーが完全に別モノになりました。Squirrel.Windowsという仕組みを使っています。特長として、

  • Setup.exeをダブルクリックするだけで、「次へ」など押さずにインストール完了する
  • インストールはユーザごと(単一PCでも複数ユーザが使いたい場合、各々でSetup.exeを実行する必要があります)
  • (試した範囲では)電子署名していなくても警告が出ない?
  • ブラウザのように操作なしで自動更新できる(仕組みを用意できる)

という雰囲気です。Setup.exeを実行するだけで動画眼3が開くと思います。この時点でスタートメニューにもショートカットが登録されていると思うので、次からはそちらで起動します。Setup.exeは捨てても大丈夫だと思います。

自動アップデートについてはmacOS環境もあわせて追々検討します。業務アプリなのである日勝手に更新されたのがバグってたりするとご迷惑おかけするので慎重姿勢です。ただこのブログで更新をウォッチしている人ばかりでもないと思うので、なんらかアップデートが通知される仕組みは作りたいです。

ATEM Miniシリーズで黒画面を一瞬出し自動で戻す

前回の「OBS Studioで黒画面を一瞬出し自動で戻す」のATEM Mini版です。

動画眼の次期バージョンで「真っ黒い画面を検出してチャプターを打つ」という仕組みを研究しているので、UT/インタビュー中に最低限の操作で録画データに黒画面を挿入する方法として紹介します。

できるだけATEM Miniシリーズどれでも使える方法になるよう考えていますが、手元にATEM Mini Extreme ISOしかないので、もしかしたら他機種では上手くいかないかも知れません。その際はコメントでお知らせいただければできるだけフォローしたいと思います。

■ATEM Miniシリーズで黒画面にする方法(手動操作編)

ATEM Miniで黒い画面を出すにはいくつか方法があります。ざっと

  • 「BLACK」ソースに切り替える
  • 「FTB」(Fade To Black)ボタンを押す
  • PinPで現在のソースの上にBLACKソースをかぶせる

の3つがあるかと思います。一長一短あるので1つずつ解説してみます。

・BLACKソースに切り替える

BLACKソースは文字通りなにも映像がない真っ黒な画面を映すだけのソースです。ATEM上では4〜8系統ある入力ソースと同じ入力源(ソース)として扱うことができ、ソースボタンの並びにある「BLACK」ボタンを押すだけで切り替わって真っ黒になります。

ソース切り替えボタンの並びの1つである「BLACK」ボタン

ただこのハードボタンは「BLACKソースに切り替える」動作なので、もう一度押しても元のソースに戻ってくれません。例えばソース「1」を表示していた時に「BLACK」を押した後は、もう一度「1」を押す必要があります。これは「一瞬だけ黒画面にして戻す」という場面ではやや扱いづらいでしょう。

よって今回はこのボタンは使いませんが、概念として「ただ真っ黒画面を表示するだけのBLACKという特殊なソースがある」ということだけ覚えておいてください

・「FTB」(Fade To Black)ボタンを押す

次はFTBボタンです。こちらはソースではなくトランジション(画面変化時の効果)の1つです。押すと真っ黒な状態にフェードアウトし、もう一度押すと元のソールにフェードインします。今回の目的にはピッタリです。

ただフェードイン、フェードアウトに少し時間がかかってしまいます。このフェード持続時間(レート)はATEM Software Controlで赤枠の数値で変更できます。

単位は「秒:フレーム」のようです。例えば1080/30p(秒30フレーム)の設定なら「0:15」にすれば0.5秒かけてふわんと黒くなる/戻るという感じです。

なお、効果がかかっている間、音を途切れさせたくない場合は、画面右の「パレット」タブの一番下にある「フェード・トゥ・ブラック」の中の「Audio Follow Video」のチェックを外せば良いはずです。

同じボタンで黒->戻すが行えるので指を置いたまま2度押しすればいいので、これを短めのレートで使うのが第一選択かなと思います。

・PinPで現在のソースの上にBLACKソースをかぶせる

3つめの方法はピクチャインピクチャ(PinP)を使います。PinPの使い方は検索してください。子画面ソースはBLACKで良いでしょう。特徴としては黒くする範囲を自由に設定できるという点。まだ検討中なのですが動画眼3の黒検出機能では、画面全部を真っ黒にしなくても、「左上隅の一定範囲が黒になったら」という判定条件も組み込もうかと思っています。配信などをしている場合、画面全部が真っ黒になると見ている人が「あれ?」と気になってしまいますので、さりげなく片隅だけ黒くするだけでも検出できるようにしたいなと。その場合はPinPを使って画面の隅にBLACKソースを表示すれば良いでしょう。

■黒くして一定時間後に自動で元の画面に復帰する

ATEM Miniでは所定の操作を自動で実行できるマクロ機能があるのでこれを使います。ATEM Mini Extremeシリーズには写真のように6つのマクロ実行ボタンがついているのでサクっと押せます(ちょっと密集している上に小さいですが…)。

非Extreme系統だとATEM Software Controlのマクロウインドウから実行するか、MixEffectのようなネットワーク経由で操作するリモコンアプリを使うなどする必要があります。

・マクロ設定手順

ATEM Software Controlで「マクロ」メニューから「マクロ」を選びウインドウを開きます。

「マクロ」ウインドウ

①「作成」タブを選択

②「+」ボタンを押し、マクロ名称(ここでは「Blank & Back」としましたがなんでもOKです)を設定。

するとメイン画面に赤枠が出て手順指示待ちになります。

ここでまずFTBをオンにするため一度クリックします。

次に画面の上の方に出ている「ポーズを追加」を押し、継続時間として秒とフレームを指定します。

これも30p設定なら30フレーム=1秒なので、0:15なら0.5秒相当です。そしてFTBを解除して元の画面に戻すためもう一度「FTB」をクリック。

その後、マクロウインドウに戻り、②で押した「+」の位置が赤丸ボタンに変化しているのを押すと記録終了で、③のように指定した名前が空欄に追加されます。

FTBのレートも「0:15」にした場合、

  1. フェードアウトに0.5秒
  2. 待ち0.5秒
  3. フェードインに0.5秒

で計1.5秒のトランジションが自動で実行されるかと思いますがちょっと違うようです。マクロは指定秒数待ってボタン操作を実行するので、1.と2.は同時にカウントされます。言い換えれば待ち時間よりFTBレートが長い場合は、フェードアウトが終わるのを待たずにフェードインが始まります。

今回の用途では全体として目障りでないくらい効果が持続しないと同時に、ソフトウェアが確実に黒画面を検知できるよう、真っ黒の時間を最大化する、という観点では、

  • FTBのレートを0:01〜0:05など短め
  • マクロの待ち時間を0.15(0.5秒)くらい

にするのが良さそうです。

FTBを他のことにも利用するのでレートは1:00にしておきたいという場合は、

  • FTBのレートを0:05に変更する
  • FTB(フェードアウト)実行
  • 待ち時間
  • FTB(フェードイン)実行
  • 待ち時間(フェードアウトが終わるのを待つ為0:05以上)
  • FTBのレートを1:00に戻す

のようにレート変更までマクロに含めておけばいいでしょう。

マクロを設定した後は、「ファイル」->「本体に設定を保存」してATEMの電源を切っても消えないようにしておくのを忘れずに!

OBS Studioで黒画面を一瞬出し自動で戻す

次期動画眼での機能追加について書いたばかりですが、またひとつ思いつきました。

動画眼はUT(ユーザテスト)やインタビュー録画にチャプターを打って分析を効率化するというツールですが、後で見返す時ではなく、その実査中(録画中)にどうやって誰が手軽にチャプターを打つかというのも大きな課題です。そのひとつにWebアプリと時計を同期してポチポチしていく動画眼マーカーがありますが、今回全く別の方法を思いついて実験を始めました。

それは「動画の真っ黒なフレームを検出してチャプターにする」というアプローチです。例えばATEM MiniですとFTB(Fade To Black)ボタンがあります。1回押すとフェードアウトで画面が真っ暗になり、もう一度押すと解除されてフェードインで元の映像に戻ります。モデレーターなり録画オペレーターがタスクの切れ目などでこれを押しすぐ解除することで、録画/配信される映像が一瞬暗くなります。これを動画眼側で検知することでチャプターに自動変換できるのでは、と考え実証コードを書きました。どれくらいの黒を閾値とするかなどチューニングは必要ですが基本的に動いてる感じです。

■OBS Studioで黒フレームを作る

UT/インタビューの収録でATEM Miniを使っているモノ好きはそう多くはないので、OBS Studioを使った場合も検討してみます。単に画面を真っ黒にするだけなら何もないシーンを作ってそれに切り替えるだけです。ホットキーを設定しておけばキー操作1つで実現可能です。ただそこから戻すのにもう1操作必要になります。空シーンに切り替える->1秒待つ->元のシーンに切り替える、という手間が生じるのは不便です。戻し忘れたらコトです。これを1操作で自動化するのが本記事のテーマです。

真っ黒いシーンを作る

シーン一覧の「+」ボタンで新規シーンを作ります。名前をBlackとかBlankとかわかりやすいものにしておきます。中身(ソース)は空っぽのままでOKです。

ホットキー(キーボードショートカット)を割り当てるには「設定」画面から「ホットキー」を選び、作成したシーンに対する「シーン切り替え」の欄に希望のキー操作をセットします。

ちなみにOBS StudioのホットキーはOBSがバックグラウンドにいても反応します。録画中、同じPCでメモ取りなども兼ねる場合、CommadやCtrlキーなどの組み合わせにするとか、ファンクションキーなど間違って押さないキーアサインにしておきましょう。ここでは録画中他の操作はしない想定で「B」キーを割り当てます。

なおOBS Studioではシーンをかえると音声セッテイングも独立になるので、そのままだと音がなにも鳴らない状態になってしまうのでご注意ください。音声系ソースを元シーンからコピーするとか、このシーン自体を新規で作らず、「元シーンを複製して映像系ソースを消す」などして作った方が良いかも知れません。シーンを作り分けるか、特定ソースのON/OFFを制御するかどちらが楽かはケースバイケースだと思います。

プラグイン「Advanced Scene Switcher」をインストール

OBS Studio単体では実現できなそうなのでプラグインの力を借ります。Advanced Scene Switcherを使います。最新版はOBS Studio 28〜対応です。OBS Studioは27までと28以降でプラグインの規格が変更され互換性がありません。Advanced Scene Switcherの最新版を使う場合はOBSも28以降にしてください。どうしてもまだOSBを28以降にできない人はプラグイン側の旧バージョンを探してみてください。今回はOBS Studio 29.0.2にAdvanced Scene Switcher 1.20.5を使用しています。

またMac版だとOBS、プラグインともにAppleシリコン(M1/2)版とIntel版が分かれています。お使いのOBS Studioにあわせてプラグインをダウンロードしてください。GitHubのダウンロードページにはmacos用だけでもx86(Intel用)、arm64(Appleシリコン用)、Universal(両用)があります。.pkgはインストーラー版でしかるべきフォルダに自動でインストールしてくれますが、セキュリティチェックが厳しい端末だとかえって手間かも知れません。そういう場合は.zipを落として自分でプラグインフォルダにD&Dで入れると良いでしょう。

自分(M1 Max機)はOBSをAppleシリコン版にするのを忘れていて、プラグインだけAppleシリコン用を入れてメニューに出現しないなと思って悩みました。

インストールに成功すると、OBS Studioの「ツール」メニューに「Advanced Scene Switcher」が出現します。

「自動シーンスイッチャー」というのが標準であって紛らわしいですが別モノです。

Advanced Scene Switcher設定 〜マクロ設定(Macroタブ)

「ツール」メニューから「Advanced Scene Switcher」を開き、「Macro」タブに移動します。

ここで、「Blackシーンに切り替えられたら1秒後に元のシーンに戻す」というマクロを作成していきます。いきなり完成形がこちら。

まず①のブロックで「+」から空の新規マクロを作成し、名前を決めます。ここでは「Blank and Back」としましたがなんでも良いです。

次に②のブロックでマクロ処理が発動する条件を定義します。ちょっと手順がややこしいですが、まず「If(もし)」「Scene(シーンが)」を選びます。すると下段に「Current scene is(現在のシーンが)」が選ばれて「–select scene–(シーンを選択)」が選択可能になるので、「–select scene–」を真っ黒シーンである「Black」にします。これで「シーンがBlackになった時」という発動条件が定義されました。更に冗談で時計マークが「No duration modifier(遅延指定なし)」にかわると思いますのでこれを「For at least(少なくとも)」に変更し「1.00」「seconds(秒)」にします。これで、「シーンがBlackになって最低1秒経過したら」という意味になります。

最後に③のブロックで「その時何が起きるか」を設定します。まず上段で「Switch scene(シーンを切り替える)」を選びます。すると下段に3つのセレクターが出るので、それぞれ「Previous Scene(前のシーン)」「Current Transition(今のトランジション)」「0.20」などとします。「Previous Scene」はBlackシーンにする前に選択されていたシーンを覚えておいてその状態に戻してくれます。もちろん特定のシーンを選べばそちらに移ってくれます。そこは好き好きで。2番目は切り替わり時の効果に関するもので「カット」ならスパっと瞬時に切り替わります。「フェード」ならふわんと切り替わります。「Current Transition」は普段スタジオモードでデフォルトで使っているものが自動で選ばれるんだろうと思います。3番目の秒数はフェードする場合にかける時間です。カットだと突然映像が途切れた様にも見えるので、ごく短めのフェードくらいがいいんじゃないでしょうか。

これで「Blackシーンが選ばれたら1秒後に元に戻す」という動作のマクロ「Blank and Backが完成しました。

Advanced Scene Switcher設定 〜一般設定(Generalタブ)

最後に忘れてならないのがAdvanced Scene Switcherプラグイン自体の動作をオンにするという操作です。このプラグインは動作条件に当てはまる状態にあるかどうかを常に監視するために多少なりとも負荷がかかります。ので必要な時だけオンにする方が良いんじゃないかと思います。

タブを「General」にします。

赤枠の「Start」をクリックすれば起動します。すぐ上の「Inactive」が「Active」になっていれば起動中ということです。その下の項目で起動の自動制御ができます。

On startup of OBS: OBSの起動時

Automaticaly start the scene swither when: 録画や配信を開始した時

また先のホットキー設定画面でON、OFF、ON/OFF切り替えのショートカットを割り当てて手動操作することもできます。

個人的には録画や配信を開始した時に一緒にスタートするようにしておくのが無難な気がします。

■まとめ

ということで、かなりニッチなニーズだと思いますが、OBS Studioで「画面を一瞬真っ黒にして戻す」を1操作で実行する設定を解説しました。

動画眼で自動認識するのに、画面全体が真っ黒になるのをキーにするか、いやそれだと見ている人がびっくりしちゃうので、例えば画面の片隅だけちょこっと黒くなるのを探させるか、なども思案中ですが、仮に「画面の片隅だけ黒い」状態を作ろうと思えばそういうシーンを作るだけなので応用は効くかなと思います。ただ元々複数シーンを使い分ける実査の場合、それぞれのシーンに対して隅が黒いバージョンを用意するのは管理上、手間が大きいかなと思っていて、とりあえずは画面全体を黒いことを条件にする形で実装を進めていく可能性が大です。ATEM MiniでもFTBを使う方が簡単ですし。

ATEM Miniで自動復帰をするにはマクロを使えば良さそうですが、ハード的にマクロキーがあるのはExtremeシリーズだけなのが悩ましいかもですね。

動画眼の次期アップデートについて

今月中にリリースを目論んでいる動画眼3の新機能について解説します。

動画眼は動画ファイルに対して頭出し用のチャプターを打ってUTやインタビューの見返しを楽にするツールです。チャプター情報はシンプルなフォーマットのテキストデータで生成するのですが、これを別のツール、別の時間で作っても良いぞということで、UT/インタビューの実査中にリアルタイムでチャプター打ちするツールが動画眼マーカーです。

チャプター情報をもつ.dggn.txtファイルは動画の先頭を0分0秒基点としてそこからの経過秒数で管理されています。中身をテキストエディタで見ると、

のようなタブ区切り形式で、1項目がチャプターの位置を示す秒数、2項目がメモ、3項目は話者を示す1桁の数値となります。

さて、これを動画眼マーカーでリアルタイムに作るには、動画の録画開始(0秒点)と同期してタイマーをスタートさせる必要がありました。これが慌ただしい実査現場では負担になってしまったり、うっかりブラウザを終了させてしまったり、録画システム(OBS Studioやクラウド会議ツールの録画機能)側が止まってカウンターがリセットされたりといったトラブルにも弱いということがあります。

そこで新バージョンでは「動画眼マーカー側では一旦時刻をベースにしたタイムスタンプでデータを作り、動画眼3に読み込む時点でその動画の録画スタート時刻を引き算して同期する」というアプローチを取り入れてみました。

例えばセッションが朝10時に開始されたとすると、

みたいなログになります。PCの内部時計を参照するので記録開始時に特別な操作は不要になります。

そして事後に動画眼3で動画ファイルとこのログファイルを読み込んだ時に、動画の正確な録画開始時刻(ここでは10時00分00秒とします)を引き算して、

とする仕掛けです。セッションの開始時間は予定より早まったり遅れたりしがちですし、必ずしもそのタイミングで録画開始するとは限りません。必要なのはあくまで録画をスタートした時刻です。その正確な録画開始時刻を機械的に知る方法は3つくらいあるかなと考えています。

  1. 動画ファイルの生成時刻
  2. 動画ファイルのファイル名
  3. 動画内にタイムスタンプを合成しておく

1.はmacOSでもWindowsでもファイルのメタ情報として自動的に記録されます。2.は録画に使うツールによりますが例えばOBS Studioなら標準設定でファイル名に月日時分秒が入るようになっています。これら2つは特に意識しなくても取得できる可能性が高いので次期動画眼3もこれらを反映させるボタンを実装しています。3.については少し準備が必要ですが、これまたOBS Studioでいえば、こちらの記事を参考にしていただくなどして動画の片隅に時刻を入れておき、あとで先頭フレームに映る時分秒を読み取って同期ダイアログに打ち込んでいただく形が考えられます。

単純に映像に時計を映しこんで置くだけでもいいかも知れません。

いずれにせよ、録画側(映し込む時計を含む)と動画眼マーカーを使うPCとで時計が一致していることが望ましいので、PCのNTP(時刻合わせ)サーバーをしっかり設定しておく、電波時計を使うなど時計合わせは気を遣うに越したことはないしょう。

というわけで、

  • 動画眼マーカーで時刻ベースのログを出力できるようにする
  • 時刻入りログを動画眼3で開いた時に、動画ファイルのメタデータなどを使って換算補正する

と両ツールの同時アップデートにて対応する計画です。

一応実装は完了していて動作チェックしている段階なので、3月中に出せればと思っています。

■その他の機能追加、バグフィクス

同時に長らく対応できずにいたバグ修正や機能追加も色々しています。

  • Premiere Proで書き出したcsv形式のマーカーのインポートに対応
  • 100分を越えるタイムコードが正しく表示できなかったのを修正
  • Premiere Proの書き起こしデータの新フォーマットに対応

是非お試しいただければと思います。