2021年、配信時代のUTビデオカメラの期待の星を予約しました SONY ZV-E10

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以前、「UTに向きそうなビデオカメラ2020」と題して、UT撮影用カメラの要求仕様を解説しつつ、PanasonicのVX992Mというモデルを買ったという記事を書きました。

2019年のモデルですが、いまだ現役モデルで先日もばっちり活躍してくれました。

ちなみに、その前には2015年にもUT視点の要求仕様をまとめつつ、SONYのCX670を購入した記事を出しました。

これもまだウチでは現役。6年も経ってますがあれから1世代しかモデルチェンジしてなくてCX680がフルHDランナップでは現役スタンダードモデルというからビデオカメラ業界の衰退ぶりはドン引きするレベルです。

(しかしメーカー長期欠品中でAmazonではプレ値がついてるっぽいのでご注意ください)

その他、ブログ書くのすっかり書き忘れていたようですが、SONYの業務用ビデオカメラHXR-NX80というのも導入してみました。

かなり清水ダイビングなお値段でしたが、さすが業務用だけあってきめ細かな設定ができるし安定感あります。SDカードが2スロットあって録り逃しを不正でくれるところなんかもまさに業務用という感じ。XLRマイクがつなげられたり、HDMI出力端子がミニやマイクロではないフルサイズのコネクタなところなんかも良いです。

そんなビデオカメラ事情ですが、コロナ禍におけるUTの実施スタイルも大きく変わることとなり、要求仕様も段々変化してきているように思います。前回2020年1月のまとめから1年半。改めて最新のオススメスペックをまとめつつ、個人的に新しく予約したカメラの紹介をしたいと思います。

■UT配信時代に求められるビデオカメラの仕様とは?

ウィズコロナUTの大きな違いは密室に見学者が集まることを避けリモート見学になったことと、感染防止対策(マスク、アクリルシールド、ソーシャルディスタンス、換気、etc.)による音声収録の重要性が増したことじゃないかと思います。スマホアプリ等のフルリモートでUTが実現できる案件やインタビュー調査の場合はともかく、やはりハードウェアを伴うUT案件だと会場調査が必要で、感染拡大状況と綱引きしつつどうにか実施している現場も多いのではないでしょうか。その際に少しでも人が集まる機会を避ける為、見学者はネットワーク中継された映像を見る形式が増えています。本記事ではこの形態をセミリモートUTを呼んでおくことにします。参加者とモデレーターは会場に集まるものの、その様子はリアルタイムでZoomやTeamsなどのオンラインミーティングツールを使って中継し、見学者はそれを見ながらチャットで議論したりモデレーターに追加質問を投げたりといったスタイルです。

こうした配信に適したビデオカメラのスペックという観点が2021年のカメラ選びには必要な気がしています。配信の場合、ビデオカメラ単体で本体に直接録画できる映像はあまり重要ではなくて、OBS Studioのようなツールに映像ソースの1つとして入れるキャプチャ前提の映像出力デバイスという位置づけになります。UTでは大抵複数の映像ソース(手元、表情など)を扱い、それをOBS上で合成して録画したり配信したりという形になります。極端なことを言うと録画機能を持たないWebカメラを使う手もありますが、それだと

  • 光学ズームがないので設置範囲に制限がつく(邪魔になるような近くに置くなど)
  • USBケーブルが直付けで長さが適切に調整できない(延長ケーブルは不安定化の原因になりがち)
  • 露出やホワイトバランス調整ができないと画面を映した時に白トビしたりおかしな色味になる

などの限界もあり、個人的にはやはりビデオカメラを使いたいなと思います(一部のWebカメラの中にはこれらに対応できるものもあります)。表情カメラなどあまり画質や厳密なフォーカス調整を要しない部分にWebカメラを組み合わせるのはアリでしょうし、要は適材適所だと思います。

で、配信前提のUT用ビデオカメラとして私が重視したいポイントは、

  1. HDMI出力がクリーンである
  2. 本体で録画してなくてもデモモードや省電力モードにならない
  3. 各種マニュアル調整ができる(露出、ホワイトバランス、フォーカス)
    • それを電源切っても記憶してくれるか、設定セットとして保存できる
  4. 外部給電で安定して動く
  5. HDMI端子がフルサイズだとなお良し

辺りかなと思います。

・HDMI出力がクリーンである

正式な機能名ではないのですが、HDMI出力時に、本体液晶画面に出るようなOSD(操作UI)を含まない純粋な映像を取り出せるかどうかです。当然ながらOBS側で受け取る映像に録画インジゲーターや残量表示、操作ボタンなどがあっても邪魔なだけです。しかしこれ、地味すぎてカタログページの仕様表とかみても載っていないし、共通した機能名すらないので調べたり店員さんに聞いたりしてもわからないことが多いです。一般にある程度より上のグレードや業務用はOK。また最近めの機種では大丈夫なことが多い気がしますが、断言は難しいです。ネット掲示板などで既にもってる人に聞いてみるなどするしかない気がします。新製品を予約で買う時はこれが一番不安です。

・本体で録画してなくてもデモモードや省電力モードにならない

配信形態ですと、カメラのHDMI出力を使うだけで本体に録画する必要はありません。まぁ録っておけばOBSがコケた時にバックアップになるというのもありますが、どちらかというと、録画開始するのを忘れて本番中に電源が切れたり店頭デモモードに切り替わったりする方が問題かなと思います。また基本カメラ側をあまり見ないので録画可能残量を見落としがちで、これまた本番中意図しないタイミングでトラブルになったり。

バックアップ録画してもしなくても電源が落ちない、というのが理想かなと。割と最近の機種ならHDMI出力中は落ちないものが増えた気がします。2015年に買ったSONYのCX670は落ちたりデモモードに入ったりしがち。

・各種マニュアル調整ができる(露出、ホワイトバランス、フォーカス)

これはあまり配信かどうかと関係ないですが、UTでは自発光デバイスである液晶画面をアップにして撮ったりします。こういう時、通常のオート撮影だと問題が起きがち。部屋の明るさ基準で画面部分が白く飛んでしまったり、ホワイトバランスが極端に青白い方に寄ったり。またオートフォーカスも大抵まともに機能しないです。したとしても、参加者の手がかぶった時にいちいち手にピントが映ったりするとフラストレーションです。これらは全てマニュアルで固定しておける方が安定した映像になります。

・それを電源切っても記憶してくれるか、設定セットとして保存できる

UTは1時間セッションをして30分休憩、といったことの繰り返しです。あるいはお昼休みだったり空のセッションスロットなどもまたぐし、なんなら日を超えて連日実査ということも少なくありません。その時はさすがに一旦電源を落としたくなります。この場合に上記の設定が毎回リセットされてしまうと再調整が面倒くさいしトラブルの元になります。電源を入れ直しても設定を復帰してくれたり、いっそユーザプリセットのような機能で丸っと状態を保存し、いつでも呼びだせる機能があると重宝します。セッテイングの日にいた詳しい人が実査当日にいない、なんて場合でも、設定呼び出し手順さえわかっていれば簡単にその日の担当者が設定を復元することができます。

これはそもそもマニュアル操作があるカメラとセットなことが多いですが、やはりある程度上の機種になる気がします。デジタル一眼カメラなら割とありますが、ビデオカメラだと家庭用はそうないかも知れません。

・外部給電で安定して動く

これも配信するかどうかあまり関係ないですが、ビデオカメラならほぼ問題ないと思います。後述のデジタル一眼カメラの場合、仕様としての連続撮影時間がそう長くなかったり、本体の温度が上がりすぎると暴走を防ぐために強制的に録画を停止してしまうものもあります。

またリチウムイオンバッテリーは常時フル充電だと劣化が早く進行します。ほぼ室内、外部電源ありでしか使わないUT用カメラの場合、バッテリーは抜いてACアダプタのみで稼働できた方が、バッテリーの無駄な劣化も防げるし、本体の発熱源を減らせるメリットもあります。これまたカタログではなかなか判断できない要素です。

・HDMI端子がフルサイズだとなお良し

これは一部の業務用モデル以外は望むべくもないという感じですが、本体についているHDMI出力端子がmini HDMIやmicro HDMIといった特殊サイズでない方が、ケーブルを選ばずに使えて便利です。mini/micro HDMIケーブルだとどうしても選択肢が限られますし、変換アダプタはトラブルの元です。特にmicro HDMIのような小さな端子に変換アダプタ+HDMIケーブルのプラグという荷重が長時間かかることは破損の可能性が高まりまます。三脚のように高い位置につけたカメラだとケーブルの床面までの重さも上乗せされてしまいます。ケーブルを上手く固定してコネクタへの負担が軽減されるよう配慮しましょう。

■ミラーレス一眼カメラがいいかも?

そもそも最近ビデオカメラというカテゴリが衰退期になっており、各メーカーとも新製品をほとんど出していません。Canonに至っては家庭用ビデオカメラからは撤退しています。「スマホでいいじゃん」層と「デジタル一眼カメラで高品質な”作品”を録りたい」層の二極化のあおりでしょうか。コンデジ同様元気がないジャンルです。最新のセンサー技術や画像処理技術もスマホかデジタル一眼カメラに投入され毎年のように新型モデルが登場している一方、いわゆるビデオカメラの方は数年単位で更新が滞ってる”冬の時代”となっています。2019年のVX992M以降、これといって興味を惹かれる機種も出てないですね。この機種は上記要件、microHDMI端子であること以外はほぼ満たしているので、現状オススメしやすい機種ではあります。

そんな折、先日実務でカメラを3,4台使う必要があって、プライベートで猫撮りメインで買ったミラーレス一眼カメラのSONY α6600を投入してみたんですが、なかなか良かった。HDMIクリーンだし、マニュアル設定は微妙な色味も含めてかなり細かく調整効くし、それをユーザプリセットで保存できる。レンズを交換すれば適正な画角と明るさが得られる。ビデオカメラよりセンサーサイズが大きいので室内でもノイズを抑えた映像になるなど。ちょっと割高だけどHX80みたいなガチ業務機よりは(レンズを合わせても)安いし、別売りアクセサリでXLRマイクも付くし、もうちょいだけ安いヤツをCX670とのリプレイスでほしいなーなんて思い始めました。

■UTに最適かも知れないミラーレス機が出た!

そんあタイミングで噂だけ聞こえていた動画志向のミラーレス機が出ました!SONYのZV-E10というモデルです。

ZV-1というVlog向けのコンパクト機があったんですが、それをセンサーサイズをAPS-Cにしてレンズ交換可能にした感じの上位モデルという位置づけです。

ガチのVlogerには手振れ補正が弱いとかクロップが大きい(手振れ補正や4K/30Pにすると実効画角が狭くなり望遠寄りになってしまう)とかお値段なりの残念仕様が指摘されていますが、UTで三脚に載せて撮るにはさして弱点ともなりません。むしろメリットとして、

  • バッテリー抜いて外部電源アダプタが使える
  • Youtuberに神マイクと崇めらているデジタルガンマイクECM-B1Mや、BluetoothマイクECM-W2BTがデジタル接続で使える
  • Webカメラモードに音声が付き、専用ソフトが不要になった(UVCモード)
  • リアルタイム瞳AFや「商品レビュー用設定」など定評のあるAF性能
  • キットレンズ付きで8万とビデオカメラ+αくらいの実売価格

といった点が挙げられます。

  • バッテリー抜いて外部電源アダプタが使える

本機はSONY初(?)のUSB Type-Cポート搭載機で、Power Delivery対応かどうかは不明ですが、より安定した給電ができそうです。バッテリーを抜いてUSB給電動作できるかは不明ですが、少なくとも下記の給電アダプタが使えるようです。

ソニー ACアダプター AC-PW20

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ダミーバッテリー形状のコネクタをバッテリーの代わりに差し込みタイプです。以前からあるアクセサリですが、うちのα6600はバッテリー形状が異なり使えませんでした。ちょっと高いですが、これが使えるのであればバッテリー無し、常時AC駆動ができるとみて間違いありません。バッテリーも劣化しないし、充電の熱で動作が不安定になることもなく安心して長時間運用できそうです。

  • Youtuberに神マイクと崇めらているデジタルガンマイクECM-B1Mや、BluetoothマイクECM-W2BTがデジタル接続で使える

SONYカメラの大きなアドバンテージはマルチインターフェースシューだと思います。通常ストロボをつけるところですが、SONYはここに通信端子を搭載し、マイクを接続できるようにしています。少し前の高級機からデジタル通信でより高音質な収録ができるようになったんですが、私のα6600含めAPS-Cモデルは対応しておらず、いわゆる神マイクと言われるECM-B1Mもアナログモードでの使用に限定されていました。これが初めてAPS-C機でデジタル対応となりました。言っても直結ですしUTなど業務用途に影響するレベルの違いではないかもですが、個人的にはB1Mの本来の性能が引き出せる点は楽しみです、

ソニー ショットガンマイクロフォン ECM-B1M ILCE-1対応

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またBluetoothマイクも新型ECM-W2BTが登場しています。ECM-W1Mから送信機の使用時間が3->9時間となり充電式になったのが大きな違いですが、こちらもデジタル接続できます。

  • Webカメラモードに音声が付き、専用ソフトが不要になった(UVCモード)

従来の一部機種ではテレワークブームにImaging Edge Webcamというツールを介してUSBカメラ化できるようになりました。しかし、後付けの機能なので解像度がイマイチだったり音声はとれなかったり、そもそもカメラを認識しなかったりと無理矢理感が否めない仕様でした。

本機ではソフトウェア不要でネイティブにUVC規格の外付けカメラとして振る舞うことができるようになっており、OBS StudioなどへHDMIキャプチャアダプタ無しに映像、そして音声も入力できます。解像度はカタログみてもわかりませんでしたがZV-1で1280×720に上がっていたようなので、それより下がることはないんじゃないかと思っています。できればフルHDくらいいけるといいなと。

  • リアルタイム瞳AFや「商品レビュー用設定」など定評のあるAF性能

SONYのデジカメはAF(オートフォーカス)が速度、精度ともに優秀です。人物を録る際には瞳AFで正確に人物の顔にフォーカスが合います(残念ながら動物は動画時には対応しないんですが…)。表情用カメラなどにするのに有用でしょう。

一方瞳を認識する故にその状態でなにかをかざして見せるような動作をした時にそちらにピントが合わない(顔にあわせたまま)という問題がありましたが、ZV-1およびZV-E10では「商品レビュー用設定」が追加されています。Youtuberがよくやる手のひらを後ろにかざして瞳を隠すようにする動作が不要になるわけですね。UTで使う機会があるかという微妙ですがインタビューとかに共用するならアリかも知れません。

いずれにせよそこらのビデオカメラよりはAFは優秀と考えて良いでしょう。

  • キットレンズ付きで8万とビデオカメラ+αくらいの実売価格

オススメのビデオカメラVX992Mが現在6万円台後半くらい。ZV-E10のキットレンズ付きが8万ちょうど位。キットレンズの仕様がUTに最適かどうかはなんともですが、とりあえずそんなに大きな違いでもない気がしています。OBS Studio用と考えるとビデオカメラだと別途HDMIキャプチャアダプタを買わねばなりません。千数百円の激安品は遅延など品質面で問題があるのでやはり1万円くらいの出費にはなるでしょう。そう思えば更に差は縮まります。まぁZV-E10のWebカメラモードの解像度が720pだとしてそれで足りるかってのもありますが。

私はとりあえずCX670をこれにリプレイスしていくつもりで予約してみました。発売は9月中旬なのでまだ結構先なのですが、手に入ったらまたレビューしていきたいと思います。

[オマケ] レンズ周りのスペックを比較

ビデオカメラとデジタルカメラではレンズ性能の表記が違っていて直接比較が難しいのですが、カタログでわかる範囲でキットレンズのE PZ 16-50mm F3.5-5.6 OSS(型番SELP1650)の仕様をVX992Mと比べて見ます。

SELP1650の画角(ズーム範囲)は文字通り16-50mm。APS-C基準なので、いわゆるフルサイズ(35mm換算)というのにすると24-75mmになります。VX992Mは広角端が30.8mm(4K撮影時)ということなので、24mm vs 約31mmでZV-E10+SELP1650の方がちょっぴり広角スタートになります。一方そこからの光学ズームはVX992Mが20倍なので桁違いに望遠ということになります(16-50は3倍強)。ここはやはりセンサーがマメ粒みたいに小さく、形状が前後に長いビデオカメラの方が倍率を伸ばしやすいということですね。APS-Cで20倍を目指したらメチャメチャデカいレンズになりますし、お値段も本体の何倍にもなります。5倍とか7倍でも本体くらいの価格になります。おそらくUTのような室内撮りで20倍が必要になることはまずないですが、5倍くらい、画角でいえば100mmくらいあるとカメラ設置位置に自由度が出てよいかなと思います。先日は18-105mmレンズでiPadのディスプレイの2m後方くらいから撮って、目一杯まではズームしなかった感じでした。それくらいはあるといいかもですね。

ただそれでも結構デカくなってくるので、参加者の正面から撮るにはちょっと存在感ありすぎかもです。使い分けですね。

あとは50mmでも4Kでキャプチャして必要な画角で切り出して使うのもアリかなと思います。