ZOOM F3を使ってた所感

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先日「ユーザーインタビューのやさしい教科書」のイベントがあって、大阪に行って来ました。

ユーザーインタビューのやさしい教科書

ユーザーインタビューのやさしい教科書

奥泉 直子, 山崎 真湖人, 三澤 直加, 古田 一義, 伊藤 英明
2,465円(04/16 06:48時点)
発売日: 2021/09/24
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基本的に配信は主催のHCDNetさんが引き受けてくれて自分はノータッチだったんですが、後日一部ダイジェストなら書籍のYoutubeチャンネルにアップしても良いということだったので、録画用に自前機材を持ち込みました。その時に初投入したのが前回の記事で書いたZOOMのF3です。

貸し会議室にはPA設備があり、そのミキサーからこちらのケーブルを使って音をもらいました。

https://www.soundhouse.co.jp/products/detail/item/225818/

ステレオの標準プラグまたはミニプラグからXLR x2に変換するケーブルです。他にもRCAプラグからとる事態になるかも知れないと、こちらのアダプタと懐かしの赤白オーディオケーブルも持参。

https://www.soundhouse.co.jp/products/detail/item/24906/

どちらもサウンドハウスのオリジナルブランド品でお手頃です。

イベントは契約の関係で開始30分前にしか入室できず、かなりバタバタでした。持ち込んだカメラからのHDMI信号がATEM Miniで認識できなかったり(Video Assistでは映った)、PAからの音が配信PCに入らなかったりとトラブルの連続で前半はリモート視聴者さんにもご迷惑をおかけしてしまいました。

そんな中でもこのF3で録ってた音は非常にクリアで、途中からは配信用に転用したくらいです。Windows PCにオーディオドライバも必要なくUSBケーブルでつないだだけで(配信の方の)Zoomで認識されました。ただし残念ながらF3内録音とUSB I/Fは排他らしく、録音を止めないと配信には使えませんでした。16bitや24bitでもいいので同時録音できると良かったなと思います(もしかしたら設定でできるかも?)。ともあれPAからの音を(XLRのソース設定をマイクからラインに切り替えはしましたが)デリケートなレベル調整なしでポンと録音できたのは非常に良かったなと。コンパクトで大阪までのスーツケースでさほど容量を食わなかったのも有り難かったです。バッテリーもリチウム電池で余裕でした。

昨今のUT現場ではマスク対策もあってワイヤレスマイクを使うことが多いですが、いずれピンマイクやガンマイクで録る現場があったらまた活用したいです。

■PAを録音してみて気付いたこと

通常の業務UTでは、今回のようにPA(会場の音響設備)経由で音をもらって録音するといった機会はなく、貴重な経験となったのでついでにメモを残しておきます。

まず上に書いたとおり32bit float録音ができたのは良かったです。PA側のミキサーを一切触らずにジャックにケーブルを挿すだけで音が録れました。今回は音声スタッフはおらず会場備え付けのミキサーを勝手に使え、というスタンスの会場でしたが、やはり勝手がわからないのでいじるのは気がひけるものです。

今回登壇者は自分を含めて5人おり、ワイヤレスx3、ワイヤード2を用意してもらいました。ワイヤレスはマイクスタンドにつけて卓上置き。ワイヤードはミキサーよりの2席に普通に転がしておきました。このマイクスタンドがクセモノだなと思います。我々話者もそこまでこういう場に慣れていないので、必ずしもマイクに向かって話すということを意識しきれず、スクリーンや隣の話者に顔を向けて話してしまいがち。そうすると集音範囲の狭いダイナミックマイクでは途端に声が小さくなってしまいます。後編集をしていてマイクスタンドを使っていた人達の声が大きくなったり小さくなったりを繰り返していて「あちゃー」という感じ。今後こういう機会があった時にはできればスタンドは避けたり、必ずマイクに向かってしゃべるよう話者に念押ししときたいなと。程度の差はあれピンマイクでも同じことが起きるのかなと思います。顔につけて常に口元にマイクがくるヘッドセットタイプが最強かも知れません。

あと、そうしたダイナミックマイクだけで話者の音を録ったPAの出力は、ノイズがなく聞き取りやすいものの、会場の空気感が抜け落ちた音声になってしまうので、イベントのライブ感みたいなものを出したい時は所謂”エア”のような環境音も録って軽くミックスしてあげるのが大事だなと思いました。ちょうど客席の一部においた引きアングル用のビデオカメラの内蔵マイクの音が録れていたので、今回はそれを流用しました。

実は今回F3との組み合わせでもよく挙げられるBEHRINGERのC-2というペアコンデンサマイクを買いました。2本で1万円切りの良コスパのXLRコンデンサガンマイクです。

べリンガー C-2

べリンガー C-2

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さすがにF3に2本直差しだとあまり意味ないでしょうが、付属スタンドで少し角度を開くようにして使えば良いステレオ収録にもなります。メインの音声をワイヤレスマイクを録る片割れ、このF3とC-2の組み合わせでエア兼バックアップを録って置くのも良さそうだなと思いました。

スマホアプリでレベルメーター付きで確認できたのも良かったです。登壇者席にいながらにしてこっそりチェックしたり録音の開始/停止ができるのは大きなメリットでした。(別売りBluetoothユニットが必要)。

■まとめ

小型で32bit float録音ができるZOOM F3で、レベルを気にせずまさに録音ボタンだけで綺麗な収録ができました。どんな音が出てくるかわからないPA経由の収録では大きなメリットかなと思います。

しばらく色々な活用法を模索してみたいと思います。

音割れしないレコーダーZOOM F3とマーカー機能の話

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2年ほど前、凄く大きい音から小さい音まで収録できる32bit float録音に対応したZOOM F6というレコーダーを購入しました。

32bit float録音について詳細はこちらの記事をどうぞ。

F6は6入力を備えてガチめのフィールドレコーダーでしたが、今年一月に32bit float録音に対応しつつ、入力を2系統に絞り、より小型化したF3が発売されました。同社の32bit float録音対応ラインナップが、6ch入力のF6、2ch入力のF3、ピンマイク用のF2となったわけです(F2=2系統ではないのでご注意ください)。

しかしまぁこれが当初から大欠品祭りで、全く買えなかった。本来3.5万円くらいのものが5万円以上で売られてたりしました。Amazonで7月くらいに一応注文可能になってるのを見たものの納期は未定っぽかったので悩んでいたら即消えてしまい、もう一度8月に一瞬復活したので、とりあえず注文だけいれけ!と思ってポチ。それがようやく届きました。

■ZOOM F3の特徴

単にF6の入力数を減らしたモデルかと思いきや、F3にしかない機能などもあったりします。個人的に注目の機能を挙げると、

  • 32bit float録音
  • よりシンプルなオペレーション(F3のみ)
  • 音声波形表示(F3のみ)
  • Bluetooth経由で専用スマホアプリによる遠隔制御(要オプション)
  • サウンドマーカー機能
  • マーカー機能(スマホアプリからのみ、F3のみ)
  • 32bit float対応オーディオI/F機能

辺り。F6はかなり込み入った設定ができる分、小さなパネルでの操作がかなり難解でした。一方F3は32bit floatで録ることを前提としており、「何も考えずに録音ボタンを押せば音割れしないで録れる」というユーザ体験ありきで設計されている印象(F2もそうでしょうけど)。実はF6はマニアックすぎて、あえてこちらのブログではなく個人の趣味ブログの方でのレビューとしていましたが、F3はガジェットマニアではないUT/インタビュー実務家の人にも選択肢に入りうる製品だと思いこちらで紹介させていただくことにしました。

音声波形表示もありそうでなかった機能。世の中のICレコーダーは通常(なにもないか)いわゆるレベルメーターというL/R 2本のバーグラフで入力レベルを視認します。これだと瞬間瞬間の音量チェックしかできません(最大ピークが一定時間残ったりはしますが)。これに対してF3は音声編集ソフトのように横軸に時間をとった棒グラフで数秒分の履歴を見られますので、平均的な音量をチェックできます。「音割れしないんだからチェックもいらないんじゃ?」という考え方もできますが、やはり安心感が違います。またこの画面上でちょうどいい感じにズーム倍率を設定しておくと、書き出される音量のデフォルト倍率に反映されるので、編集ソフトにいれてすぐに適当なゲイン設定がなされた状態になります(もちろん32bit floatの解像度は維持されてるので後で無劣化で再変更もできます)。何本も録る時は一応のズーム倍率を現場であわせておくと、後でちょびっと楽できるというわけです。よく考えられていますね。

サウンドマーカー機能とは録音開始時に「ピー」という音を0.5秒間入れる機能です。これは録音ファイルにも出力にも入るので、例えば本機からビデオカメラやPCなどに音を引き回しておけば、後で音声だけ本機で録った32bit floatの音声に刺し替えたいという場合の位置あわせが劇的に楽になります。これまたシンプルでアナログな工夫ですが強力です。

32bit floatのオーディオI/F機能は文字通りPCなどから32bit float対応のUSBデバイスとして認識させられるということです。PremiereやAuditionなどの32bit float対応ソフトに直接録音ができるというわけです。こちらは上位モデルのF6でも対応していない機能でファームウェアVer2.0から追加されました。F6でもアップデート来るかな?と期待してましたが、やはり32bit float x 6chとなると帯域の問題もあるのか今のところ気配はないみたいです。ので、現状PCに32bit floatをダイレクトに入れられるのは本機だけなんじゃないかと思います。

・インタビュー中にインデックスが打てるマーカー機能

やはり個人的に気になるのはマーカー機能です。録音中に「ここ!」ってタイミングでボタンを押すとWAVファイルにチャプターを打てます。残念ながら本体ボタンでは実行できず、別売りのBluetoothアダプタBTA-1を本機に挿し、スマホアプリZoom F3 Controlから操作する形になります(iOS/iPadOS/Android)。

録音中に「MARK」ボタンを押すと、01、02と連番付きでWAVファイル内にチャプターが埋め込まれます。Adobe Auditionで開くとこんな感じ(赤丸部分)。

Adobe Audition 2022で開いた様子

残念ながらPremiere Proでは認識されませんでした。Audacityもダメ。

ただ個人的にはAuditionからCSVでタイムコード一覧を書き出せたので動画眼に読み込ませることはできそうなので重畳。左の「マーカー」パネルで全マーカーを選択し、「ファイル」->「書き出し」->「選択したマーカーをCSVに変換…」でこんな感じのCSVにエクスポートできました。

Name Start Duration Time Format Type Description
01 0:07.991 0:00.000 decimal Cue
02 0:30.940 0:00.000 decimal Cue
03 1:12.283 0:00.000 decimal Cue
04 1:36.552 0:00.000 decimal Cue

F3で録り、ビデオカメラやOBS Studioで録った映像と合成、書き出したCSVを動画眼に食わせれば、UT/インタビュー動画の頭出しインデックスとして簡単に利用できそう。動画眼のインポート形式にこのCSVファイルも加えたいと思います。

ちょっと気になるのは、アプリ上の「MARK」ボタン(右下)が小さい点、そして録画(停止)ボタンと近い点。MARKするつもりでうっかり録音止めてしまったら大変です。残念ながらHOLD状態にするとMARKも打てない模様。ひたすらMARKだけ打てるようボタンを大きくしたレイアウトが選べたらなーと思います。

スマホアプリZOOM F3 Controller

・電池の話

本機は単三電池x2本、またはUSB給電(5V/1A)で駆動します。F6のようにSONYのビデオカメラ用バッテリーはつきません。

電池駆動時間は外部マイクにファンタム給電するかどうかで大きくかわるようです。48KHz/32bit float録音で、

ヘッドフォン無し
ファンタム給電OFF
ヘッドフォン有り
ファンタム給電ON
アルカリ乾電池8時間2時間
ニッケル水素蓄電池8.5時間3時間
リチウム乾電池18時間7.5時間
公式仕様より

となっています。2段目のがいわゆるeneloop的な充電池です。3段目のリチウム乾電池は見た目は同じですが内部の原理が別もので軽くて長時間保ち、ちょっとお高い乾電池になります。

ヘッドフォンもファンタム(マイク)給電もなければアルカリ電池で余裕ですが、それらを使用した場合で2〜3時間となるとちょっとしたイベントでは微妙。終日電池のことを忘れたい、と思うと、単三型のリチウム乾電池を使っておくのが無難そうですね。軽いし、最近ではそこまで高くもないので。ちなみにZOOMのレコーダーは電池種別毎に細かな制御をしているのか、単に残量表示を正確に出すためかわかりませんが、設定でどの種別の乾電池を使うか選ぶようになっています。違う種類の電池に替えた場合は忘れずに設定もあわせましょう。

もしくは室内使用ならUSB給電が無難でしょう。5V/1Aなのでかなり初期のスマホ充電器やモバイルバッテリーでも足りる計算です。端子はUSB-Cです。

■まとめ

一般的なICレコーダー並の簡単操作で、現場で細かいレベル調整をせずとも音割れ、小さすぎ問題が起きず、マーカーで後から聞き直しを効率化できるという、UT/インタビュー現場でも活躍しそうなZOOM F3を入手しました(ちなみにオンライン会議のZoomとは縁もゆかりもない音響メーカーで、何ならこちらの方が老舗です。混同する人がいて困り果てているようなのでしっかり識別してあげてください)。

強いて言えば、元々普通のICレコーダーで済ましているような現場ではXLR接続の外部マイクを運用するのはやや壁が高いかも知れません。でもまぁ感染症対策もまだまだ続く現場ではマスク、アクリルパーティション、空調、窓開けなど音声収録の阻害要因が山盛りです。録画録音品質をランクアップしたいという方はそこも含めて検討の価値はあるんじゃないでしょうか。