ATEM Miniシリーズで黒画面を一瞬出し自動で戻す

前回の「OBS Studioで黒画面を一瞬出し自動で戻す」のATEM Mini版です。

動画眼の次期バージョンで「真っ黒い画面を検出してチャプターを打つ」という仕組みを研究しているので、UT/インタビュー中に最低限の操作で録画データに黒画面を挿入する方法として紹介します。

できるだけATEM Miniシリーズどれでも使える方法になるよう考えていますが、手元にATEM Mini Extreme ISOしかないので、もしかしたら他機種では上手くいかないかも知れません。その際はコメントでお知らせいただければできるだけフォローしたいと思います。

■ATEM Miniシリーズで黒画面にする方法(手動操作編)

ATEM Miniで黒い画面を出すにはいくつか方法があります。ざっと

  • 「BLACK」ソースに切り替える
  • 「FTB」(Fade To Black)ボタンを押す
  • PinPで現在のソースの上にBLACKソースをかぶせる

の3つがあるかと思います。一長一短あるので1つずつ解説してみます。

・BLACKソースに切り替える

BLACKソースは文字通りなにも映像がない真っ黒な画面を映すだけのソースです。ATEM上では4〜8系統ある入力ソースと同じ入力源(ソース)として扱うことができ、ソースボタンの並びにある「BLACK」ボタンを押すだけで切り替わって真っ黒になります。

ソース切り替えボタンの並びの1つである「BLACK」ボタン

ただこのハードボタンは「BLACKソースに切り替える」動作なので、もう一度押しても元のソースに戻ってくれません。例えばソース「1」を表示していた時に「BLACK」を押した後は、もう一度「1」を押す必要があります。これは「一瞬だけ黒画面にして戻す」という場面ではやや扱いづらいでしょう。

よって今回はこのボタンは使いませんが、概念として「ただ真っ黒画面を表示するだけのBLACKという特殊なソースがある」ということだけ覚えておいてください

・「FTB」(Fade To Black)ボタンを押す

次はFTBボタンです。こちらはソースではなくトランジション(画面変化時の効果)の1つです。押すと真っ黒な状態にフェードアウトし、もう一度押すと元のソールにフェードインします。今回の目的にはピッタリです。

ただフェードイン、フェードアウトに少し時間がかかってしまいます。このフェード持続時間(レート)はATEM Software Controlで赤枠の数値で変更できます。

単位は「秒:フレーム」のようです。例えば1080/30p(秒30フレーム)の設定なら「0:15」にすれば0.5秒かけてふわんと黒くなる/戻るという感じです。

なお、効果がかかっている間、音を途切れさせたくない場合は、画面右の「パレット」タブの一番下にある「フェード・トゥ・ブラック」の中の「Audio Follow Video」のチェックを外せば良いはずです。

同じボタンで黒->戻すが行えるので指を置いたまま2度押しすればいいので、これを短めのレートで使うのが第一選択かなと思います。

・PinPで現在のソースの上にBLACKソースをかぶせる

3つめの方法はピクチャインピクチャ(PinP)を使います。PinPの使い方は検索してください。子画面ソースはBLACKで良いでしょう。特徴としては黒くする範囲を自由に設定できるという点。まだ検討中なのですが動画眼3の黒検出機能では、画面全部を真っ黒にしなくても、「左上隅の一定範囲が黒になったら」という判定条件も組み込もうかと思っています。配信などをしている場合、画面全部が真っ黒になると見ている人が「あれ?」と気になってしまいますので、さりげなく片隅だけ黒くするだけでも検出できるようにしたいなと。その場合はPinPを使って画面の隅にBLACKソースを表示すれば良いでしょう。

■黒くして一定時間後に自動で元の画面に復帰する

ATEM Miniでは所定の操作を自動で実行できるマクロ機能があるのでこれを使います。ATEM Mini Extremeシリーズには写真のように6つのマクロ実行ボタンがついているのでサクっと押せます(ちょっと密集している上に小さいですが…)。

非Extreme系統だとATEM Software Controlのマクロウインドウから実行するか、MixEffectのようなネットワーク経由で操作するリモコンアプリを使うなどする必要があります。

・マクロ設定手順

ATEM Software Controlで「マクロ」メニューから「マクロ」を選びウインドウを開きます。

「マクロ」ウインドウ

①「作成」タブを選択

②「+」ボタンを押し、マクロ名称(ここでは「Blank & Back」としましたがなんでもOKです)を設定。

するとメイン画面に赤枠が出て手順指示待ちになります。

ここでまずFTBをオンにするため一度クリックします。

次に画面の上の方に出ている「ポーズを追加」を押し、継続時間として秒とフレームを指定します。

これも30p設定なら30フレーム=1秒なので、0:15なら0.5秒相当です。そしてFTBを解除して元の画面に戻すためもう一度「FTB」をクリック。

その後、マクロウインドウに戻り、②で押した「+」の位置が赤丸ボタンに変化しているのを押すと記録終了で、③のように指定した名前が空欄に追加されます。

FTBのレートも「0:15」にした場合、

  1. フェードアウトに0.5秒
  2. 待ち0.5秒
  3. フェードインに0.5秒

で計1.5秒のトランジションが自動で実行されるかと思いますがちょっと違うようです。マクロは指定秒数待ってボタン操作を実行するので、1.と2.は同時にカウントされます。言い換えれば待ち時間よりFTBレートが長い場合は、フェードアウトが終わるのを待たずにフェードインが始まります。

今回の用途では全体として目障りでないくらい効果が持続しないと同時に、ソフトウェアが確実に黒画面を検知できるよう、真っ黒の時間を最大化する、という観点では、

  • FTBのレートを0:01〜0:05など短め
  • マクロの待ち時間を0.15(0.5秒)くらい

にするのが良さそうです。

FTBを他のことにも利用するのでレートは1:00にしておきたいという場合は、

  • FTBのレートを0:05に変更する
  • FTB(フェードアウト)実行
  • 待ち時間
  • FTB(フェードイン)実行
  • 待ち時間(フェードアウトが終わるのを待つ為0:05以上)
  • FTBのレートを1:00に戻す

のようにレート変更までマクロに含めておけばいいでしょう。

マクロを設定した後は、「ファイル」->「本体に設定を保存」してATEMの電源を切っても消えないようにしておくのを忘れずに!

完全オーバースペック!! 録画対応小型モニター、BMD Video Assist 7″ 12G HDRを導入

現状の課題

普段UTやインタビューの実査業務で録画/中継をする際、ミスや破損に備えて二重で録画するよう心がけています。ちなみにZoomやTeams、Meetなどで中継することが多いですがクライアント(発注元)のライセンスで使うことが多く、クラウド録画機能は容量や個人情報管理の観点で使えないことが多いです。後者は例えば参加者の顔が映った映像をクライアントが保持するのがNGで、後日ボカシをかけて納品するような場合、一時的にもクライアントがアクセスできるストレージにデータを保存できない、みたいな事情です。そんなこんなで手元での録画を多重化することが多いです。具体的には、ATEM MINI Extreme ISOでマルチカメラの映像を合成したPGMを作り、ATEM自身で作りつつ、中継用PCに入れてOBSで録画&Web会議サービスに中継、という感じです。

で、OBSのPGM映像(合成後の出力)を配信に載せる場合、映像だけが出ているウインドウが欲しくなるのですが、なぜかMac版OBSで作ったプレビューウインドウがMeet(ブラウザ)の共有画面選択一覧に出てこない問題があったりします。そこで自分はサブモニター全体にPGBを映す「全画面プロジェクター」を使用します。

が、ここに罠があって外付けの小型モニターの電源がなんらかの理由で落ちるなどして外付けモニターをロストするとOBS自体がクラッシュしてしまうのです。そうはならんやろ、と思うかもですがUSB-C電源で動いているモバイルモニターだとわりとちょっとコネクタに力がかかったくらいで瞬断することがあったりして、コネクター周りをパーマセルテープでガチガチに固定するなどしています。

ちなみにWindows版OBSだとこの辺りどうなのか検証できてないですが、たぶん全画面プロジェクターでなくウインドウプロジェクターでもたぶんブラウザの共有画面として使えたと思います。

てことで長い前フリですが、「安定した外部モニターが欲しい」が課題の1つ目。

もうひとつは小型の録画機が欲しいというもの。3つ以上のカメラソースを合成する場合、ATEM MINI Extremeに処理を投げられるのはPCの負荷軽減もでき安心感があります。一方、そこまで複雑な合成が必要ない場合や、車で行けない現場の場合、Extremeを持っていかずにPC+OBSで済ませたいなということもあります。実際来月そういう案件があるのでこの時期に動いたというのもあります。ということで、ATEM MINI Extreme ISOをもってくほどでもない軽合成案件でも、OBSとは別に録画系統を確立したい、というのが2つ目の課題というか目標です。

ということで今回の要求使用は

  • HDMI入力された映像をSDカードやSSDなどのシリコン媒体に保存できる
  • 現場にもってく負担にならないよう、なるべく小型で配線なども簡略化できると良い
  • 業務グレードの信頼性
  • 1案件まるごと(90分x12セッションくらい)を単一のメディアに不安なく収録できるビットレート、コーデックが理想

みたいな感じで探しました。画質はFHD/30pくらいで充分ですが、4Kとかも使えるとホビーでも流用できるかもなぁ、くらいで。あくまで前線にATEMやOBSがいてのバックアップ用なのでマイクが直接つくか、などはさほど優先度は高くない感じ。

■なるべく小型で長時間録画ができ信頼できる録画機を求めて

まず1万円前後で買える安い「PC不要」を謳う録画機は端から除外です。

こういうのは2GBとかでファイルが分割されるものばかりで、ファイルの扱いがめんどくさくなるからです。小さいのでバックアップ録画用としては悪くないのですが、このクラスの新製品をみつけてはメーカーサイトにいって説明書をチェックすると、たいていどこかにちっちゃく「2GB毎に分割されます」って書いてあります。大抵はH.264でビットレートもそれほど高くないので、割と長く録っても2GBにいかないとかはあるかもですが、、

そして挙がったメンバーがここら辺。業務製品なのでややお高いですが信頼性も担保されるだろうと。

・HyperDeck Shuttle HD

Blackmagic Design HyperDeck Shuttle HD (HYPERD/PTSHD)

Blackmagic Design HyperDeck Shuttle HD (HYPERD/PTSHD)

81,312円(12/22 02:47時点)
Amazonの情報を掲載しています

フルHDの再生と録画ができ、シャトルで頭出しがしやすい点が特徴。駆使するとUTの回顧法とかでも使えて面白いかなーと思ってかなり悩みました。小型でATEM MINIシリーズと並べて置きやすい形状もGood。お値段も手頃です。保存はSDカードかUSB SSD。

一度ほぼ決めかけたんですが、「どうせならモニターと一体化してれば10インチモバイルモニターもってかなくて良くなるんじゃね?」と閃いてからモニター搭載機にぐぐっと傾いて、今回は見送りました。でもいずれ欲しいかも知れない。

・HyperDeck Studio HD Plus

同じくHyperDeckシリーズの録画HD、再生4K機。この下のminiだとHDMI入力がないので自動除外。4K再生もできるので提示刺激映像(クルマ案件で走行映像とか)を高画質で映せるのが魅力だなと思ったんですが、ちょっと持ち出すにはサイズが大きいなということで断念。一応ちっさいながら液晶モニターとスピーカーもあるので画角などは確認はできるんですが、ピントがあってるかとかまでは厳しい。

ちなみにちょっとした動画を見せるだけならPCでもできるんですが、こういう機器だと再生制御UIとかを一切画面に映さずに済むので運転シミュレーターなどで使うには没入感を出しやすいというメリットがあります。ATEM MINIと組み合わせてソースにするとATEMのスイッチャーで選択したら再生が始まる、みたいな連動ができるのもHyperDeckシリーズの良いところです。ATEM以外からもネットワーク経由で再生制御ができるので、アプリでリモート制御したり、スクリプト書いて自動化したりもしやすい。

・Video Assistシリーズ

Video AssistとNINJA Vは録画もできるモニターとして双璧というか、他に選択肢がないくらいメジャーです。ただしガチプロすぎてコーデックもプロくてビットレートが高いProResとかBlackmagic RAWとかになってしまうのが難点。SDやSSDのコストが高くついてしまいます。

Video Assistは5インチと7インチ、FHDと4Kで4製品あります。今が10インチでモニタリングしてるので、5インチはさすがに厳しいかなと思います。合焦箇所を色付けして可視化する機能(ピーキング)などはあるとはいえ。あと7インチだとSDスロットがデュアルになり(溢れたらもう片方で録る)、ミニXDRで高音質マイクを直結できるといった違いも。

H.264/265といった圧縮率の高いコーデックが使えないので、先に書いた十数時間分の映像をメディア交換なしで録るのが難しい(大きくて高いSDやSSDが必要)のが最大の難点。

・NINJA Vシリーズ

ATOMOS(アトモス) NINJA V ATOMNJAV01 ATOMNJAV01 ブラック

ATOMOS(アトモス) NINJA V ATOMNJAV01 ATOMNJAV01 ブラック

118,800円(12/22 02:47時点)
Amazonの情報を掲載しています

こちらは5.2インチ。19インチとか大きいモデルもありますが2,30万するのでさすがに除外。4Kモデルと8Kモデル(V+)があり、拡張モジュールで機能を足せるのもガジェット好きとしてはたまらない。ちょうど悩んでた時にネットワーク経由でプロキシ映像(編集作業用の低画質映像)をframe.io(クラウド編集サービス)にリアルタイム送信するモジュールが発表され、その記念としてアメリカで$399になったのでかなり悩みました。日本で18万くらいするV+でも$599です。無印VはH.265ライセンスを$99で買う必要があるので、V+との差が$100。日本代理店で同じセールが来るかもわからず、米Amazonでカートにいれるところまでいきました。

こちらのメリットは背面にSATA SSDが装着できる点。Video AssistはUSB-Cで外付けなのでケーブルがややゴチャつきます。そのかわりあちらにはSDカードがあるので大容量SDが買えるなら補えます(NINJAはSDスロットなし)。

ただいまいち踏み切れなかったのはH.265収録がイマイチ不安定という指摘と、ファン音がVideo Assistよりも大きいというレビュー。UTで無言で操作してもらってる時のファン音は意外と気になります(マイクが拾うと後処理もしたくなる)。ATEMを冷やす外付けファンとかも使用を躊躇うことがあるので、やはり音は静かなのにこしたことはない。H.265収録は後付けの機能でもあり、低画質ファイルを編集ソフト上でランダムシークすると真っ黒になることがある、と公式でもアナウンスしてたりして、せっかく容量小さくでも扱いにリスクやフラストレーションが伴うのはイヤだな、という印象。

■Blackmagic design Video Assist 7 12Gに決めた!

ということを延々と悩み抜いて、

  • 老眼来てる目は大きな画面が良い、ピント来てるかチェックしたり、クライアントにちょい見せするにも大きいは正義!
  • ProResで一番画質が低い ProRes Proxyで512GBストレージならどうにか要求仕様の収録はできそう。最悪1TBのSDかSSDを買う。
  • FHDで足りるけど、いつかBlackmagic RAW出力に対応したカメラを買ったりしたら試してみたいので12G

としました。

正直FHDでのバックアップ録画には過分なスペックですが、そもそもの「画面付きレコーダー」に選択肢がほとんどないので致し方なし。けっこうずっしり重いですが、Hyperdeck Shuttle HD + 10インチモバイルモニターを持ち歩くことを思えば似たり寄ったりで配線も簡略化できるのでいいかなと。できればSDカード運用で外付け機器は最低限にしたいところ。また上下に3つずつ三脚穴があるので、ケージをつけなくてもSSDやマイクレシーバーを固定できてよさげ。卓上三脚ともどもヨサゲなのを物色していきたいと思います。

■ファーストインプレッション

・外観

実使用想定イメージ

USB-Cポートが下部にあるので、外部SSDを使う場合は三脚などで本体を浮かせる必要があります。傾斜もあった方が見やすいし、卓上で使うならミニ三脚はマストでしょう。SSDなどの付属物を入れると1kg位になるので、三脚も割としっかりしたものが安心です。手近にあったSONYのシューティンググリップをつけてみたところかなりしっくり来ました。つなぐ先がαなどSONY製対応カメラの場合、グリップのリモコンでカメラ側のズームや録画開始停止ができるのもアリかも知れません。

右側面

右サイドは電源ボタン。ヘッドフォンジャック、SDカードスロットx2、電源ポートなどが並びます。7インチモデルはSDカードスロットが2つあることで容量溢れた時に別スロットに継続録画してくれるので安心感。電源コネクタはがっちりネジ止めするタイプなので多少面倒ですが収録中にうっかり抜ける心配もなく、これぞ業務用という感じです。

左側面

逆サイドにはミニXLR、SDI入出力、HDMI入出力が並びます。SDIは当面利用する機会はなさそう。HDMIよりもケーブルが長くなっても安定するのですが出力機器(カメラ)をもっていないので、コンバーターをかましてまで使うような遠距離設営の現場機械があるかどうか。HDMIのINだけでなくOUTもあるのが地味に重宝しそう。さらに大きなモニターにつなぐとか。ミニXLRは高音質収録に良いですが、最近はDJI MicやWireless GO2といったワイヤレスマイクを使うことが多いのでこれもまだ活用の場面は訪れなそう。いつか感染対策とか不要になってバウンダリーマイクで収録できるようになったら、ですかね。

・使用感

起動が瞬時で、全体的な動作もサクサク。BlackmagicOS製品ですがメニュー構成もシンプルで見ればわかる直感的操作で良い。画面が大きいのでボタンも指で普通に押せるのがスマホやタブレット感覚で、ダイヤルやジョイスティックでちまちま操作するミラーレスカメラのUIとは違うところ。BMPCC欲しまる。頻繁に切り替えそうな項目は画面上にショートカットが設けてあり、練り込まれている感じ。自分でカスタムできるとなお良いですが、多分できなそう。

電源はネジ締めロック付きで不用意に外れたりしなそうな安心感。さりとてATEM MINIシリーズと違って電源ボタンもあるのは良い。現場は日を跨いで設営しっぱなしということも多いので、毎回ケーブルを外すのは地味に面倒なんですよね。

重量はバッテリーをつけなければそれほどズッシリ感はないです。基本屋内使用なのでとりあえずバッテリーは手配せず。SONYのビデオカメラ用バッテリーが2つセットできますが(なぜかこの界隈でSONYバッテリーがデファクトみたいな扱い)、買うとしてもさすがに純正でなくてもいいかな?あんまり怪しいのもなんですが。

5インチモデルだと三脚穴とUSB-Cポートが違すぎるとよく指摘されてますが、7インチモデルならその心配もなさそう。そもそも底面なのはどうかと思いますが。なんらか三脚やリグに組み込むの前提みたいな作りです。

録画データに影響なくタッチでズームできるのが良い。PinPの子画面でピントが合ってるか調べたい時、ソースを切り替えなくてもサクッと拡大して(録画データに影響与えず)確認できます。リアルFHD液晶なのでFHD収録ではそこまで必要ではないかもですが、4Kで撮る時なんかは重宝しそうです。

・タッチ操作によるズーム

画面の映像部分をダブルタップすると2倍のズームモードになります。そこからさらにピンチで拡大も可能。ピントがあってるか不安な時に重宝します。しかも録画に影響しないし、カメラに触れてブレが発生してしまう心配もない。これは普通の外部モニターでは適わないメリットかなと思います。

・ストレージ周り

SanDiskの256GBの入れてVideo Assist側でexFATに初期化直後で、

  • ProRes Proxyで713分
  • ProRes LTで325分
  • DNxHR LB MFXで716分
  • 同SQ MXFで210分
  • Blackmagic RAW固定品質 Q5で507分
  • 同Q0で131分
  • 同 固定ビットレートの12:1で507分
  • 同 3:1で131分

という予測収録可能時間表示に。品質固定は映像の動きや細かさで大きく違うので、参考値として固定ビットレートの12:1や3:1の場合の数値を出してるっぽいですね。まぁいずれにせよBM RAWは対応カメラがないと使えないので当分宝の持ち腐れです。DNxHRはあまり使ったことがないですがProResに比べてアドバンテージがなさそう?当面はProRes Proxyかな。実際に録ってみないとですが、713分だと90分x12セッションは録れない。512GBのSDを買えば足りそう。ProRes LTだとそれでも足りない。

512GBや1TBのSDカードはV30の並行輸入品は結構安いですが、Blackmagic design社の動作検証済みモデルリストに載ってないものは業務で使うのはちょっと不安。買うならコレかな?と。

これでも最もビットレートの高い収録は無理。そもそもUHS-IIの大容量モデルってまだ存在してないぽいですね。FHDでProResの比較的低ビットレート収録専用なら外付けデバイスなしでたっぷり録れるこれか512GBがいいかな。

でも今回はコスパとそろそろ入手困難になるかもという恐怖心で、同じ値段出すならと外付けSSDの2TBモデルを買ってしまいました。(リンク先は1TB)。AmazonではSAMSUNGの正規代理店のものは2TB在庫なし。海外配送のものは不安だったので避け、Joshinに残っていたのをゲット。3万ちょうどくらいだったので、SDカードメディア単価は半額程度です。

さすがに2TBあると、残収録時間表示が

ProRes Proxyで5576分
ProRes LTで2546分
ProRes 422で1785分
ProRes HQで1196分

となって、LTや422の使用も視野に入ってきそう(90分x12本として余裕みて1200分くらいほしい)。実際には映像の動きなどで圧縮量がかわるので実際に録ってみないとなんともですが、UTやインタビューは動きはさほど激しくないので、大幅に上回ることはないんじゃないかと。

T5は2017年発売の500MB/sモデルで、すでに1050MB/sのT7シリーズに置き換わりが進んでます。T7の方が安いことすらあります。ただATEM MiniといいVideo AssistといいなぜかT7は動作確認リストに載ってないばかりか、海外のコミュニティでも「T7はアカンかった、認識しない」みたいな書き込みが目立ちます。ウチではATEM Mini Extreme ISOで短時間のISO収録まで試して一応T7 Touchで録れてた気がして、T5とT7 Touchをローテしてますが、そういえば録画中に停止ボタンをおしてもランプが消えず、結局電源ブチ抜いて録画をロストしてことが何回あって、あれT7のことだったかなぁという感じ。

BMD社がT7についてなんらかアップデートを出してくれない限り、終息モデルのT5が争奪戦になっていきそう。

他社製品もリストにあるんですが日本であまり馴染みのないメーカーやモデルだったり。あとSAMSUNG T5/T7はSmallRigのクランプが色々あっていいんですよね。2245を使ってマウントしています。

下部の三脚穴にSmallRigのクランプでSSDを固定した例

試しにMacBook ProのHDMI出力をつなぎ、1080/30pのProRes Proxyで2時間ほど録画してみましたが、R170MB/s、W90MB/sのSanDisk Extreme Pro(256GB)でも止まること無く録画できました。ファイルサイズは50GBほど。デカいはデカいですが、どのみちこのまま納品することはほぼなく、簡単なカット編集や顔ボカシ入れ、音声ノイズ除去など加工してトランスコードしてから渡すことがほとんどなので個人的にはストレージに入りすれば良し。むしろPremiere Proに食わせた時の動作の軽さに驚きました。動画編集性能が売りのM1 Max MacBook Proを買ったものの、いまいち快適に編集できずにフラストレーションでしたが、Pro Resだとサクサクです。H.264だと1ファイルのシークくらいなら問題ないですが、複数の動画をPinP合成したり早回し効果を入れたりすると途端に重くなりがち。まだ4Kでは試してないですがFHD 2ストリームで10倍速のシークエンスを作ってみた限りではシークもサクサクでした。これはもうH.264/5ソース運用には戻れないかも…もうこっちがメイン?

ストレージで悩ましい点としては、SDカード/SSDのファイルシステムにexFATとHFS+が選べる点。当然Mac/Windows混在運用ではexFATがいいと思ってたんですが、ジャーナリングシステムのあるHFS+だと万一ディスク障害が出た時に復旧可能性が高まるっぽいんですよね。悩ましいですがやはりWindowsで扱えないのは困るのでexFATかな…

■キャリングケース探し

大きな液晶画面がついた機器なので運搬時はしっかりと保護できるものを物色しました。とはいえ、さらに大きな機材ケースに入れていくのであまり容積が増してしまうのもなんなので、ハードケースは除外。本機は19cm x 13cm 4cm程度なのでヨサゲに思って買ってみたものがこちらの2つ。

かなりいい感じにACアダプタ、SSD、HDMIケーブルまで収まったんですが、SmallRigのSSDクランプつけたままでは閉じられませんでした。SmallRigつけない人にはかなりオススメできます。下側は仕切りを好きな位置に移動できるのでピッタリの位置で固定できます。上蓋は厚みがあるのでACアダプタなどをメッシュ側に入れれば問題なく閉じられます。

通常はHDMIケーブルは色々な長さを別で用意していく感じなので、かわりに取り外したクランプと六角レンチを入れておくのもアリですね。

ちなみにSmallRig製品全般で使う太さの六角レンチを網羅したこちらが便利です。

もうひとつはこちら。

ポイントは上下二段構造になっている点。

下段に本体がギリギリ収納。またもSmallRigクランプが微妙ですが、ソフトケースなので多少変形しつつもファスナーは閉じられました。空きの部分にHDMIケーブルをいれてクッション代わりに。
上段に付属品

で、上段側にACアダプタ、SSD、USBケーブルを。これもかなり微妙ですが一応ファスナーは閉まります。上段のマチ(厚み)が思ったほどなく、ACアダプタはちょっとこんもりしちゃう感じ。

2022.7.1追記:最終的にこれに落ち着きそうです。ACアダプタやミニ三脚、ケーブル類まできっちり収まる感じ。ソフトケースなので保護力はさほどではないですが、大型ハードケースに入れるバッグインバッグとしてはピッタリなサイズ感でした。フタが半透明なのもいいかと思いましたが、取り外し式のポケット付きボードが上に収まるのでVideoAssistは見えない感じです(見えるようにVideoAssistを上にすると、さすがに保護力が不安)。

■まとめ

一般的なユーザテストやインタビューには明らかにオーバースペックでかなり趣味が入った選択をしてしまいました。しかし、

  • 出張実査に持っていける小型、高信頼性録画デバイス
  • タッチ(ピンチ、スワイプ)で任意箇所のズームできピントなどの確認が手早くできる
  • 後編集が快適なProResで録画可能
  • いざとなれば4Kで撮ったりバッテリー駆動で使えたり汎用性が高い

という観点で満足度は高いです。頑張って元取ってこうと思います。

3画面以上合成できるATEM MINI Extreme ISOを導入しました

最近のUT録画/配信案件ではゲーミングノートPCやM1Max MacBook Proなど高性能ノートPCとOBS Studioを使って実施することが多かったです。特にHDMI-UVC変換がいらないWebカメラのOBSBot TinyシリーズがUTにかなり便利だとわかってからは4Kモデルも追加購入し、かなりシンプルに構成が組めるようになっていました。

ただ今回100セッション超の大規模調査をお手伝いすることになり、さすがに1人で回せないので進行役と機材操作をワンオペでシフト制で回すことなったので、「なるべく決まったスイッチON/OFF」だけで録画管理を済ませられる環境を構築することを目指し久しぶりにATEM MINIシリーズを活用することにしました。ちなみに配信は無し。結果的にOBSもバックアップ系として構築することになりました。

■3カメ合成にはEXTREME/ISOが必要

今回収録する映像は、PC画面(参加者に見せているプロダクト)+2カメラ(表情+α)でした。ATEM MINI/Pro/ISOはHDMI入力が4系統ですが、実のところ一度に画面に配置して合成できるのは2画面までです。1つがベースとして全画面表示、もうひとつはPinPで合成となります。位置やサイズは自由に変えられるものの、ベース画面のどこかに重ねる感じ。これでは今回の要求を満たせません。

これができるのは8入力の上位機種ATEM MINI ExtremeまたはATEM MINI Extreme ISO(以下まとめてExtreme/ISO)が必要です。

発売から2月でちょうど1年。そろそろ新型出るんじゃないかとドキドキでしたが、まぁ同等の機能を4Kでやろうとしたら同じ価格、サイズでは1年では無理だろうと信じて、新型出るとしてもマイナーチェンジ程度じゃないかと思いイヤな時期だけど購入することに。まぁ最悪そこまで値落ちもしないんじゃないかなとか。

Extreme 無印とISOの違いは個別系統の同時録画ができるかどうかです。Extreme無印ではスイッチング操作やテロップを入れた最終結果(PGM出力)のみが録画されますが、ISOだと8入力が独立のMP4ファイルとして残り、後の編集素材、バックアップとして使えます。録画/ストップは完全に連動で、例えば一部を常時録画して取り忘れを防ぐ、みたいな使い方はできないので使う機会はあまりないかなと思ったんですが、各チャンネルの音声も独立でWAVで保存されることがわかったので、そっちは割とあとで「別のマイクの方が音声が聞きやすかった」「うっかり複数マイクをミキシングしたら時間差でエコーになってしまった」みたいなことで役に立つかもと思い、どうせこんだけ出すならということでISOを選びました。購入時はさほど差額がなかったのもあります。残念ながらチャンネル毎に録画するかしないかを選ぶことはできず、なにも繋がっていない系統も真っ黒映像のMP4ができちゃうみたいです。まぁ途中から信号がくるソースもあるかもなので、妥当なところかもですが、なんかストレージと帯域の無駄遣いな気がしますね。それなりに高速なUSB SSDが必要になる点も注意。最近の動作保証リストをみるとSAMSUNGではいつのまにかT7が消えてT5 1TBのみになってるようです。T7の方がスペックは上なんですが掲示板みてるとトラブルが多かったみたいですね。ウチはT5 512GBとT7 Touchしかなくて微妙ですが、ISO録画しない分には今のところどちらもきちんと使えています。

容量的に1TBはいらないですが一般にSSDは容量で書き込み速度がかわることがあるので、これから買うならメーカーが対応を謳っている1TBが無難かも知れません(まぁ以前リストにあったT7がひっそり消されてたりするようですが…)。

・スーパーソースで4画面合成

で、Extreme/ISOはただ端子数が増えただけでなく、内部的にスーパーソースという機能がついたことで4画面を好きにレイアウトすることが可能になりました。1つ1つのHDMI映像やメディアプレーヤーからの画像や動画が”ソース”という呼称なのに対し、スーパーソースはそれの1つ上というかメタな存在であり仮想的なソースでもあります。スーパーソース上に任意の4ボックスを配置し、それぞれに好きなソースを割り当てられます。その結果できた映像を1つのソースとして扱うことができます(スイッチャーの並びの中に「S/SRC」ボタンがあり出力としては同格)。試してないですが、スーパーソースで4画面合成したのをソースとしてPinPなどすれば理論上5画面以上もできるぽいです。

スーパーソース(S/SRC)はソースの1つとして再入力できる

ともあれ、8入力ってなかなかUTでは使い道ないからイラネって思いがちですが、合成が3画面以上というのは割と普通になるので、筐体がデカいのとお値段が張るのが難ですが、やはりExtreme/ISOは汎用性が大きいなと。

・設定の保持により専門外のスタッフで運用しやすくなった

初期のATEM MINIシリーズは本体に設定を保存することができず、毎回ATEM Software Controlから流し込んでやる想定でした。つまり機材に弱いスタッフにいきなり使わせるのはやや壁が高い感じでしたが、今は本体にきちんと設定を保存でき、電源を入れ直しても同じ状態(最後に保存した状態)で立ち上がるので、事前にセッテイングするスタッフがいれば、実査当日は電源オン、RECボタンポチ、で運用しやすくなりました。初代無印だけ保存ができないのか、今はアップデートで対応したのかわかりません。ExtremeでないProでも今は保存ができています。

また少し凝ったことをしようとするとATEM Software Control(PCソフト)から操作する必要があることが多いATEM MINIシリーズですが、Extreme/ISOではマクロボタンが6つ装備されました。マクロ機能は元々ATEM Software Controlからならたくさん作って呼び出すことができましたが、本体からダイレクトボタンで呼び出すことができるようになったのがポイントです。これで大抵のことは操作スタッフがPCソフトを使わずにできるようになります。欲を言えばもう少し複雑なスクリプトが組めるとなおよいのですが。例えばテロップでセッション番号を入れたい、なんて時に「P01」から「P10」というテロップをあらかじめ画像で作ったとして、それを「次へ」「前へ」的に切り替えるマクロは書けません。あくまで「指定した画像を表示する」マクロしか作れないので10個個別につくりボタンも10個必要になります。今回は100セッション超なのでセッション番号を入れるのは諦めましたw。

・ヘッドフォン(モニタ)端子がついた

これがめちゃめちゃ重宝します。マイクの音がどのように拾えて収録でできているか、いままでは

  • 録画してみて、SSDをPCに刺し替えて再生してみる
  • HDMIに外付けモニタ(イヤホン端子付き)をつける
  • USBでPCに入れてOBSなどで聞く(基本PC入力音声をリアルタイムでスピーカーに出すのに向いてない

などが必要でした。Extreme/ISOでは本体背面に直接ヘッドフォンを挿すことができます。

・USBとHDMI出力も2つずつに増えた!

これも地味に制限を取り払ってくれます。USBが1つだと、SSD録画とPCへの映像(UVC出力)のどちらか片方しか使えませんでした。Zoomで中継しながら録画したい、とかは普通にあるので、いままではUSBで録画して、HDMI出力からのPGM出力をHDMIキャプチャアダプタ経由でPCへ、とかやっていましたが、USBケーブルだけで済むようになりました。

しかもHDMIが2系統になったことで、M/Vによる全ソースモニターと、最終出力であるPGMを別々のモニターに映し出せるようになりました。ATEM自体には映像をモニタできるところはないのでM/Vで全体をウォッチするのは重要です(ストレージ残量、録画時間、配信ステータス、レベルメーターなどもM/Vをみておく必要があります)。M/Vのレイアウトも8入力になったことで細分化、カスタマイズ対応していますが、残念ながらレベルメーターなどのステータス画像は大きく表示することができなさそう。

■使ってみて。熱暴走はあるのか?

Extreme/ISOでもっともアイコニックな特徴はHDMI入力が8系統に増えたことですが、実はそこはあまり重要ではなく、上記のスーパーソース、ヘッドフォン端子、USBとHDMI出力が2系統ずつに増えた、といったところが実用性向上に寄与していると思います。正直、入力4のままでいいから中間サイズ/価格みたいなモデルが理想な気もします。Extreme/ISOは多機能なのは良いですが、フットプリントはボタン数がハンパないことになってて、機材弱い人に使ってもらうにはちょっとビビらせてしまうレベルです。カメラコントロール系のボタンもBlackmagic Designのカメラを使ってない環境では無駄でしかありません。でもまぁとにかく入手して設置してみると、あれもこれもできるぜ!な万能感はあります。

もうひとつ懸念だった熱暴走ですが、確かに背面からの排熱はかなりあります。3入力をスーパーソースで合成し、非ISOで録画している状態ですが、背面の排熱はかなりムラがあります。全然熱くないこともあれば温風が出ていることも。室温との相関もあまりないように思います。映像機器なのでファンノイズを嫌って静音ファンにしてあるのでしょうがいささか不安。購入していきなり実戦投入なので安全第一で先人の例に倣ってこちらのファンを同時購入してみました。

これをサイドの吸気口(排気口?)に密着させパーマセルテープで固定して使っています。このファン、吸い出し専用なので、ATEMのエアフローに逆らってる気がしなくもないですが、冷えてる実感はあります。電源を入れるとデフォルトで風量が7になり少し音が聞こえます。たいていはそこまで必要無くて2とか3くらいに落としてほぼ無音にしてても平気。

そもそも一度も熱暴走、熱停止を経験していないので本当に必要かもわかりませんが、処理内容、季節(室温)、設置環境の風通しなどにもよるでしょう。今の現場から回収してきたら自宅であれこで検証してみたいと思います。

■リモート操作に便利なiOSアプリ「MixEffect」

ATEMにしろOBSにしろ、世界中にユーザがいて、サードパーティの支援ソリューションが充実している点も見逃せません。今回、録画機材は衝立の陰に隠して設置し、進行役が自席からREC操作をリモートでできるようにするため、iPad/iPhoneアプリのMixEffectを活用しました。ネットワーク経由での操作になるので、ATEM Miniもネットワークにつなぐ必要があります。客先のゲストWi-Fiを利用する時は有線接続がなかったりするので、自前でルーター持ち込んだり、イーサネットメディアコンバーターが必要かも知れません。

進行役席にスマホスタンドをおいてiPhoneを写真のように置くことで、席を立たずに録画操作ができるようになりました。録画ステータスも目立って確認しやすいです(まぁそれでも見落として録画漏れしちゃいましたがw)。

MixEffectの録画操作画面

ミキサー画面では録音レベルメーターがリアルタイムで確認できるので、これを持ち歩いて実際の参加者席、モデレーター席で声を発しながらレベル調整ができます。写真はiPhone13ProMaxです。iPhone7/8/SE 2世代目など4.7インチ級の画面サイズだとちょっと手狭で上のRECステータスと下のRECボタンをスクロール無しで見渡すのは無理でした。Plus系やホームボタンがない機種の方が良いかも知れません。

MixEffectのミキサー画面

またスーパーソースの画面レイアウトも純正PCソフトのATEM Software Controlよりグラフィカルで使いやすい気がしました。詳しい技術スタッフ以外が操作する時はiPad + MixEffectが良いかも知れません。

6,000円くらいしますがそれだけの価値を感じます。Androidではここまでできるものは見つけられていません(ご存じでしたら是非教えてください!)。

■まとめ

発売当初から「いやいやさすがにこのサイズと値段は…」と敬遠していたATEM MINI Extreme ISOをついに買ってしまいました。ちょうど1年で新型が出ないことを祈るばかりです。

持ち出しにはかなり厳しいサイズなのは間違いないです。非ExtremeシリーズはNintendo Switchのケースがピッタリという話が知られていますが、Extreme/ISOについてはそういう話がなく今後運搬をどうしていくかも課題です。とりあえずこのカバーは注文しましたが納期が長いようです。

ともあれ機能的には大満足。自分のPCを持ち込んで、自分が目の前にいて操作/サポートできるならOBS Studioの方が自由度は高いですが、何日も設営しっぱなしになるような現場で自分のデータを満載したPCを置いていくのは憚られます(さすがに貸し出し専用の高性能PCは常備しづらい)。その点ATEM + SSDなら録画データ以外に現場に残ることはないので安心して残して帰れます。また自分がモデレーターやっていて、録画操作やスイッチング操作を見学者などと分担したいという時や、今回の案件のようにそもそもシフト制で自分がいない日もあるなんて時、あらかじめ設定を組んで保存しておけば電源ONでスタンバイになり、RECボタンで録画開始できるのはOBSよりずっと楽です。

仮にクライアントが自社で一式揃えたいという場合、たぶんまずはOBSを進めると思います。ATEMは複雑な設定に必要なATEM Software Controlがやや専門的でリサーチが本業の人に薦めるのはやや躊躇われます。とはいってもPCもOBSの要求仕様を満足する機種選定から、常にアップデート管理をして正常稼働することを保証するのはそれなりに大変ですし、PCを買うとなると情シスが絡んできて面倒という企業さんも多いのは確か。誰か1人根性いれて操作をマスターして、事前に設定を作れる人がいるのであれば、逆に組まれた設定で起動してRECポチするまではATEMの方が断然楽。そんな事情毎の最適解があるような気がします。

道具眼ではそうした機材コンサルや設定補助、操作方法の勉強会なども随時受け付けておりますので、是非ご相談ください。

OBS StudioをUTで初めて導入したい人向けの資料も公開してますが、そのうちATEM MINI版も作れるといいなと思います。

■次期モデルに期待すること

一番欲しいのはXLR入力かなぁ。同社のカメラみたいにミニXLR端子でいいので今のマイク入力の代わりにつけるか、なにかしら外部拡張ポートみたいなので対応してくれると有り難い。なんだったらUSB端子にオーディオI/Fでつくようにしてもいいかも。

USBといえばWebカメラ入力もできたら神。絶対買い換える。HDMI x4 USB(UVC) x2くらいで。究極全部USBでWebカメラとUSBマイクつなぎまくれるようなのも面白いかも。

あとMixEffectのようなツールがより手軽に使えるようWi-Fiは載せてほしい。そしてプレビュー画面もストリーミングで流せるとなお良し。

また実務ではあまり必要ないですが、個人的には4K対応は欲しいなと思います。仮に合成や録画、配信は4K非対応だとしてもHDMI入力は4K対応でクロップして使えたりするだけでも意味はあるかなと。でもまぁ仮にExtremeの機能をすべて4K対応しようとすると値段は当たり前ですが処理プロセッサの発熱がエラいことになるので冷却系統にも余裕をもたせる必要が出てきて巨大化したり、爆音化してしまいそうな気はします。今のサイズでやろうとしたら3-5年はかかりそう。

最適化という意味ではスーパーソースついて、USBとHDMI出力が2系統、ヘッドフォンを維持しつつHDMI入力は5系統止まりくらいのちょい小型モデルがあると嬉しいですね。

YoloBoxみたいなモニタ一体型ソリューションも考えてたりするんですかね。これはこれでいいかも。

YOLOLIV YoloBox Pro ライブストリーミングエンコーダー

YOLOLIV YoloBox Pro ライブストリーミングエンコーダー

125,400円(12/21 19:58時点)
Amazonの情報を掲載しています

Raspberry Pi 4でUSBカメラ映像をHDMIに変換できるか実験(ATEM Miniと使いたい)

最近、ユーザテストの撮影用カメラとしてOBSBot Tinyが小さくて画角調整がしやすくて大変気に入っています。この製品はUSB接続のWebカメラなので、PCでOBS Studioなどで録画/配信するには適していますが、HDMI入力しかないATEM Miniシリーズには使えません。

そこで、Raspberry Pi 4(以下RP4)でUSBカメラとして認識してそのリアルタイムスルー画をHDMIというかX上でフルスクリーン表示すればATEM Miniシリーズでキャプチャできるんじゃないかという発想です。しかもRP4にはHDMI出力が2つあります。複数のUSBカメラを接続し、それぞれを個別のHDMI出力に出せれば、2カメを1台のRP4で変換できるんじゃないか、とか。

■RP4の設定

今RP4は半導体不足の煽りで品不足、価格高騰気味なようですが、幸い少し買ったものがありました。

確か1万強くらいだったと思うので、お急ぎでない方は価格が落ち着いてから買った方がよろしいかと思います。

ケースはこちら。RP4のボードより一回り大きくなりますが、内部変換ケーブルによってフルサイズのHDMIポートが2つになる点が魅力です。

+1,000円でUSB電源アダプタが付属するセットもあるようです。自分は当初適当なUSB充電器を使えばいいやと買わなかったんですが、実際にUSBにWebカメラを接続してキャプチャしたりすると電圧不足警告が表示されました。一般的な非PDの5V充電器だと2.0Aが上限なので、やはりRP4に売られている3.0Aのものを買った方が良さそうということで結局追加しました。少し割安なので最初からセットで買うのがオススメです。

また派生モデルとして下部にM2 SSD(USB接続)を追加したモデルもあるようです。録画なども考える場合はこちらも良さげです。

ウチはとりあえずこちらのSDカードでセットアップしました。

小さいmicroSDは「あれ、どこいった?」となりがちですが、そんな時この水色のカラーが目立つので扱い易いです。

■OSインストール

ちょうどRaspiOSの64bit版が正式扱いになったというニュースをみたので、これを機に新規セットアップしました。公式から2022-01-28-raspios-bullseye-arm64.zipを落としてきて解凍し、これまた公式ツールのRaspberry Pi Imagerを使ってSDカードに展開しました。

当初X-WindowのないLiteで軽量なシステムを構築できないかもトライしましたが、色々ツールを入れるのが大変で断念。キーボードやらネットワーク設定やらもひと手間です。結局あきらめてフルバージョン(X-Windowsあり)で仕切り直し。結果的に必要なツールは揃っており苦労なく表示できました。

■USBカメラの映像をウインドウに表示する

当たり前っちゃ当たり前ですが、OBSBot tinyの初代および4Kモデル双方とも差すだけで認識しました。

表示ツールはVLCなども試したんですが遅延が大きく、ffplayがマシという感じです。ただしフルHDにするとかなり遅延が出てATEM Miniへの入力ソースとしては致命的。1280×720ならほぼ気にならないですがフレームレートは10fpsに強制的に落とされてしまいました。

起動はターミナルからこんな感じ。

-iで入力デバイス。OBSBot Tiny初代と4Kを同時に挿した場合、それぞれ/dev/video0と/dev/video2にアサインされました。

-video_sizeは1280×720や1920×1080のように書いてもいいですし、hd720、hd1080のような略記も使えます。

-anは音声無効化、-fsは全画面表示です(ESCで終了)。

-framerate 30などとつけるとフレームレート指定ができますが、hd720でも強制的に10fpsに落とすよ、というウォーニングが出て上書きされてしまいます。

実験したところ、サイズをwvgaにすると950×540になり15fps、vgaなら640×360で30fpsになりました。30fpsあると明らかに残像感がなく綺麗ですが、遅延としては差は感じません。HD720/10fpsかWVGA/15fpsが実用上バランスが良いかなと思います。

正直もうちょっと行けるかと思ってたんですが微妙な結果でした。もしかするとハードウェアデコーダーを使うなど何かしら設定で改善する余地もあるかもですが、吊しの状態だとこれが限度でした。

追記:

オプションでMotionJPEGを明示したところ改善がありました。v4l2-ctlコマンドで対応コーデックを調べたところ、こんな結果が。

先に書いた上限値はYUYVモードのもののようで、MotionJPEGとH.264ならばMax 60fpsが目指せそうだったので追加検証してみた結果、

  • H.264は重く、MotionJPEGが良いカンジ
  • それでもフルHDは遅延発生

ということで、現状のベストコマンドは、

ということになりそうです。これで30fpsになりました。-framerate 60を明示的につけるとlow voltage警告が出て絵が止まったりシステムがフリーズしたので、こちらは別途3A電源が届いてから実験します。とりあえず720p/30fpsが出ればATEMなどでPinPするソースとしては充分かなと思います。

・デュアルディスプレイに同時表示は無理そう

残念ながら1台のRP4でHDMI 2系統にそれぞれWebカメラ映像を出すことは現状ダメぽいです。上記の限界があるので単純に負荷2倍だと厳しいというのもありそうですが、どもそもffplayが現状マルチストリームに対応してないようです。別々のターミナルから同時起動しても、最初のプロセスを閉じるまで2つ目が開かない感じです。

■まとめ

Raspberry Pi 4を使って、USB接続のWebカメラを簡単にHDMI出力デバイスとして扱うことができました。ただしせっかくHDMI出力が2系統あるRP4でも並行出力は無理そう。そろそろ日本でも出回るRaspberry Pi Zero 2で同等のことができるなら、Webカメラ1台ごとにこちらを装着するのも良いかも知れません。結局電源がいるという意味ではビデオカメラを使うのとかわらないですが、物理サイズが大きく違うので、運搬が楽になったり、撮影中の存在感を減らすことができる点はメリットかと思います。なにか3DプリンターでOBSBot Tinyと一緒にマウントできるケースを作ってみたいです。

今後の課題としては、

  • 電源オンでHDMIに全画面出力が出るところまで起動処理の自動化
  • SDカードを損耗を防ぐためにシステムのRead Only化
  • 長時間耐久テスト

などを行っていきたいと思います。

HDMIの伝送距離を気にして光ファイバー型ケーブルにしてみたら思わぬ効用もあった

その昔、デジタル信号をやりとりするケーブルにそう品質差はないやろと思っていました。しかし年々高度化、高速化するUSBやHDMIケーブルなどはやっぱり安物はトラブルになりがちですし、昨今は充電ケーブルとしてもスマホはおろかPCまで充電するようになってきたUSBケーブルなんかは品質気をつけないと危ないですよね。

さて今回はHDMIケーブルについてなんですが、最近こちらも5m、10mという長さになってくると低品質のケーブルでは機器を認識しないなどトラブルの元になりやすいという情報を耳にしました。例えばATEM MINI Proなどでは4つあるHDMIポートの1番と2~4番では回路がわかれていて、後者は結構動作がシビアなんだとか。ケーブル長が長くなり信号品質が落ちると、1番では認識するのに2~4番のHDMIポートでは映らない、みたいなことが起きるんだそうな(これ現場で助けになるかも知れない豆知識ですね。いざとなったら長いヤツを1番につなげ!と憶えておきましょう)。

そもそもそうならないよう、長尺のケーブルは特に品質に気を配らないといけないなと思った次第。プロの方々は5mを超えたらリピーター(信号増幅器)をかましたり、中に制御チップの入ったHDMIケーブルを使うんだとか。

リピーターはこんなヤツでしょうか。

電源不要なヤツと外部給電に対応できるヤツがあるようです。USBハブなんかと同じで給電した方がより安定するんでしょうか。そんなに高いものでもないですが、できれば余計な機器や電源は増やしたくないものです。

そこで出てくるのはチップ入りのHDMIケーブル。メタルケーブルだけどなんらかの制御チップが入っているもの。例えばAmazonブランドのコレ。

こういうのは特長として入力側と出力側が決まっているようです。こちらも10mとしては値段はそう高くはない感じ。さすがAmazonベーシック。「音声に遅延が出る」とレビューに書いてる人もいて少し不安。やはり単なる電気的な結線ではない分、制御/変換処理でレイテンシーがあるんでしょうか?

次に今回初めて知ったのが内部的に光ファイバーを用いたHDMIケーブル。両端のコネクタ部分に変換基板的なものがあって一旦光信号に変換して伝送するっぽいですね。ビックリです。特長として(最近原材料費が高騰している)金属線と比べてメートル単価は安いので、両端の変換基板の分は割高なものの、例えば10mから20mになった時の価格差は小さい、と。長くなればなるほど光ファイバータイプの価格デメリットは小さくなっていく(逆転までは行かない?)ぽい。また光ファイバーなのであまり深く折り曲げるとポキっと折れて回復不能になるという取り扱いの注意点もあります。またAV機器マニアの間では短尺のケーブルでも映像や音質が良くなるというメリットも囁かれているようです。さすがに2mとかだとかなり割高感あるので気軽には試せないですね。むしろHDMI切り替え時の信頼性やレスポンスが上がるなら買ってみたいですが、、

で、こちらも当然変換基板や光ファイバーの品質に差はあろうかと思いますが、とにかく試してみないとと思い、とりあえず手が届くものを1本買ってみました。

買ったのはこちら。

1万円近くしますが、購入時点で20%引きクーポンが出ていて割安感があったのと、別の更に安いものに比べて皮膜が編み込みタイプで頑丈そうだったのがポイント。しかも「無料で終身交換と払い戻しを保証」と書かれています。

ちなみに以前買って現場でも現役で使っている10mケーブルがこちら。

2018年に3,000円くらいで買ってますが、今は更に下がって2,000円くらい。つい先日も現場で問題なく使えてはいましたが、考えてみると以前セミナーで受講生に貸し出した時に映らなかったみたいなことを言われたような気も。

で、光ファイバーのものが届いたんですが、明けてビックリ。「細っ!ちっさ!」って感じ。比較写真をどうぞ。

左が今回購入した光ファイバータイプのケーブル。どちらも10m!

銅線は長さに比例して抵抗により信号が減衰していくので長いケーブルほど太く作らないと品質を担保できないというのはあるんでしょう。10mなんてこなもんだ、という考えがあったんですが、見事その考えを吹き飛ばされました。重さも明らかに軽いです。これがきちんと機能するんもであれば現場に持っていくのも、床に養生テープで配線したりするのも随分楽になります。

外皮をアップにするとこんな感じ。

ケーブル皮膜の質感

ナイロン的な樹脂でしっかり編まれていて摩耗にはかなり強そう。折り曲げにもある程度は抵抗してくれそうな雰囲気はあります。ちなみにAmazonの商品ページを見る限り最小折り曲げ半径などは記載されていませんでした。とりあえずこの直径に巻くのはOKと理解していいんじゃないでしょうか。

コネクタはやはり向きが決まっているようです。

コネクタに「SOURCE」「DISPLAY」の表記があり、向きが固定であるとわかる

うっかり逆向きに設営してしまうと引き直しが大変なので注意が必要ですね。

コネクターはやはり一般ケーブルよりは長いです。機器から突出が長く荷重もかかりがちなので少しドキドキです。うっかり力をかけてコネクタ破損ならまだいいですが、機器側の端子を壊してしまったらエラいことです。

軽くてコンパクトですが、設営時はコネクタ部分や折り曲げ箇所に多少気を遣う必要がありそうです。

一応、相性が出やすいというATEM MINI ProにPCをつないでみましたが、1番でも3番でも問題なく映り、目に見えて気になるような映像の遅延は感じられませんでした。

■まとめ

信号品質が向上し、機器の安定動作が見込めるならばと購入してみましたが、思わぬ副産物として「コンパクトにまとまり軽い」というメリットを発見しました。

当面はメタルのケーブルもバックアップとして用意しつつですが現場での品質評価をしていきたいと思います。問題なさそうなら長尺ケーブルは適宜置き換えていきたいし、クライアントから相談受けたりした時にも自信をもってオススメできるようになっておければと思います。

あとお手頃な短い光ファイバーケーブルがあったらリビングのAppleTV 4KやPS5なんかで映像や音質に違いが出るか検証してみたいなとも。