ATEM Miniシリーズで黒画面を一瞬出し自動で戻す

前回の「OBS Studioで黒画面を一瞬出し自動で戻す」のATEM Mini版です。

動画眼の次期バージョンで「真っ黒い画面を検出してチャプターを打つ」という仕組みを研究しているので、UT/インタビュー中に最低限の操作で録画データに黒画面を挿入する方法として紹介します。

できるだけATEM Miniシリーズどれでも使える方法になるよう考えていますが、手元にATEM Mini Extreme ISOしかないので、もしかしたら他機種では上手くいかないかも知れません。その際はコメントでお知らせいただければできるだけフォローしたいと思います。

■ATEM Miniシリーズで黒画面にする方法(手動操作編)

ATEM Miniで黒い画面を出すにはいくつか方法があります。ざっと

  • 「BLACK」ソースに切り替える
  • 「FTB」(Fade To Black)ボタンを押す
  • PinPで現在のソースの上にBLACKソースをかぶせる

の3つがあるかと思います。一長一短あるので1つずつ解説してみます。

・BLACKソースに切り替える

BLACKソースは文字通りなにも映像がない真っ黒な画面を映すだけのソースです。ATEM上では4〜8系統ある入力ソースと同じ入力源(ソース)として扱うことができ、ソースボタンの並びにある「BLACK」ボタンを押すだけで切り替わって真っ黒になります。

ソース切り替えボタンの並びの1つである「BLACK」ボタン

ただこのハードボタンは「BLACKソースに切り替える」動作なので、もう一度押しても元のソースに戻ってくれません。例えばソース「1」を表示していた時に「BLACK」を押した後は、もう一度「1」を押す必要があります。これは「一瞬だけ黒画面にして戻す」という場面ではやや扱いづらいでしょう。

よって今回はこのボタンは使いませんが、概念として「ただ真っ黒画面を表示するだけのBLACKという特殊なソースがある」ということだけ覚えておいてください

・「FTB」(Fade To Black)ボタンを押す

次はFTBボタンです。こちらはソースではなくトランジション(画面変化時の効果)の1つです。押すと真っ黒な状態にフェードアウトし、もう一度押すと元のソールにフェードインします。今回の目的にはピッタリです。

ただフェードイン、フェードアウトに少し時間がかかってしまいます。このフェード持続時間(レート)はATEM Software Controlで赤枠の数値で変更できます。

単位は「秒:フレーム」のようです。例えば1080/30p(秒30フレーム)の設定なら「0:15」にすれば0.5秒かけてふわんと黒くなる/戻るという感じです。

なお、効果がかかっている間、音を途切れさせたくない場合は、画面右の「パレット」タブの一番下にある「フェード・トゥ・ブラック」の中の「Audio Follow Video」のチェックを外せば良いはずです。

同じボタンで黒->戻すが行えるので指を置いたまま2度押しすればいいので、これを短めのレートで使うのが第一選択かなと思います。

・PinPで現在のソースの上にBLACKソースをかぶせる

3つめの方法はピクチャインピクチャ(PinP)を使います。PinPの使い方は検索してください。子画面ソースはBLACKで良いでしょう。特徴としては黒くする範囲を自由に設定できるという点。まだ検討中なのですが動画眼3の黒検出機能では、画面全部を真っ黒にしなくても、「左上隅の一定範囲が黒になったら」という判定条件も組み込もうかと思っています。配信などをしている場合、画面全部が真っ黒になると見ている人が「あれ?」と気になってしまいますので、さりげなく片隅だけ黒くするだけでも検出できるようにしたいなと。その場合はPinPを使って画面の隅にBLACKソースを表示すれば良いでしょう。

■黒くして一定時間後に自動で元の画面に復帰する

ATEM Miniでは所定の操作を自動で実行できるマクロ機能があるのでこれを使います。ATEM Mini Extremeシリーズには写真のように6つのマクロ実行ボタンがついているのでサクっと押せます(ちょっと密集している上に小さいですが…)。

非Extreme系統だとATEM Software Controlのマクロウインドウから実行するか、MixEffectのようなネットワーク経由で操作するリモコンアプリを使うなどする必要があります。

・マクロ設定手順

ATEM Software Controlで「マクロ」メニューから「マクロ」を選びウインドウを開きます。

「マクロ」ウインドウ

①「作成」タブを選択

②「+」ボタンを押し、マクロ名称(ここでは「Blank & Back」としましたがなんでもOKです)を設定。

するとメイン画面に赤枠が出て手順指示待ちになります。

ここでまずFTBをオンにするため一度クリックします。

次に画面の上の方に出ている「ポーズを追加」を押し、継続時間として秒とフレームを指定します。

これも30p設定なら30フレーム=1秒なので、0:15なら0.5秒相当です。そしてFTBを解除して元の画面に戻すためもう一度「FTB」をクリック。

その後、マクロウインドウに戻り、②で押した「+」の位置が赤丸ボタンに変化しているのを押すと記録終了で、③のように指定した名前が空欄に追加されます。

FTBのレートも「0:15」にした場合、

  1. フェードアウトに0.5秒
  2. 待ち0.5秒
  3. フェードインに0.5秒

で計1.5秒のトランジションが自動で実行されるかと思いますがちょっと違うようです。マクロは指定秒数待ってボタン操作を実行するので、1.と2.は同時にカウントされます。言い換えれば待ち時間よりFTBレートが長い場合は、フェードアウトが終わるのを待たずにフェードインが始まります。

今回の用途では全体として目障りでないくらい効果が持続しないと同時に、ソフトウェアが確実に黒画面を検知できるよう、真っ黒の時間を最大化する、という観点では、

  • FTBのレートを0:01〜0:05など短め
  • マクロの待ち時間を0.15(0.5秒)くらい

にするのが良さそうです。

FTBを他のことにも利用するのでレートは1:00にしておきたいという場合は、

  • FTBのレートを0:05に変更する
  • FTB(フェードアウト)実行
  • 待ち時間
  • FTB(フェードイン)実行
  • 待ち時間(フェードアウトが終わるのを待つ為0:05以上)
  • FTBのレートを1:00に戻す

のようにレート変更までマクロに含めておけばいいでしょう。

マクロを設定した後は、「ファイル」->「本体に設定を保存」してATEMの電源を切っても消えないようにしておくのを忘れずに!

OBS Studioで黒画面を一瞬出し自動で戻す

次期動画眼での機能追加について書いたばかりですが、またひとつ思いつきました。

動画眼はUT(ユーザテスト)やインタビュー録画にチャプターを打って分析を効率化するというツールですが、後で見返す時ではなく、その実査中(録画中)にどうやって誰が手軽にチャプターを打つかというのも大きな課題です。そのひとつにWebアプリと時計を同期してポチポチしていく動画眼マーカーがありますが、今回全く別の方法を思いついて実験を始めました。

それは「動画の真っ黒なフレームを検出してチャプターにする」というアプローチです。例えばATEM MiniですとFTB(Fade To Black)ボタンがあります。1回押すとフェードアウトで画面が真っ暗になり、もう一度押すと解除されてフェードインで元の映像に戻ります。モデレーターなり録画オペレーターがタスクの切れ目などでこれを押しすぐ解除することで、録画/配信される映像が一瞬暗くなります。これを動画眼側で検知することでチャプターに自動変換できるのでは、と考え実証コードを書きました。どれくらいの黒を閾値とするかなどチューニングは必要ですが基本的に動いてる感じです。

■OBS Studioで黒フレームを作る

UT/インタビューの収録でATEM Miniを使っているモノ好きはそう多くはないので、OBS Studioを使った場合も検討してみます。単に画面を真っ黒にするだけなら何もないシーンを作ってそれに切り替えるだけです。ホットキーを設定しておけばキー操作1つで実現可能です。ただそこから戻すのにもう1操作必要になります。空シーンに切り替える->1秒待つ->元のシーンに切り替える、という手間が生じるのは不便です。戻し忘れたらコトです。これを1操作で自動化するのが本記事のテーマです。

真っ黒いシーンを作る

シーン一覧の「+」ボタンで新規シーンを作ります。名前をBlackとかBlankとかわかりやすいものにしておきます。中身(ソース)は空っぽのままでOKです。

ホットキー(キーボードショートカット)を割り当てるには「設定」画面から「ホットキー」を選び、作成したシーンに対する「シーン切り替え」の欄に希望のキー操作をセットします。

ちなみにOBS StudioのホットキーはOBSがバックグラウンドにいても反応します。録画中、同じPCでメモ取りなども兼ねる場合、CommadやCtrlキーなどの組み合わせにするとか、ファンクションキーなど間違って押さないキーアサインにしておきましょう。ここでは録画中他の操作はしない想定で「B」キーを割り当てます。

なおOBS Studioではシーンをかえると音声セッテイングも独立になるので、そのままだと音がなにも鳴らない状態になってしまうのでご注意ください。音声系ソースを元シーンからコピーするとか、このシーン自体を新規で作らず、「元シーンを複製して映像系ソースを消す」などして作った方が良いかも知れません。シーンを作り分けるか、特定ソースのON/OFFを制御するかどちらが楽かはケースバイケースだと思います。

プラグイン「Advanced Scene Switcher」をインストール

OBS Studio単体では実現できなそうなのでプラグインの力を借ります。Advanced Scene Switcherを使います。最新版はOBS Studio 28〜対応です。OBS Studioは27までと28以降でプラグインの規格が変更され互換性がありません。Advanced Scene Switcherの最新版を使う場合はOBSも28以降にしてください。どうしてもまだOSBを28以降にできない人はプラグイン側の旧バージョンを探してみてください。今回はOBS Studio 29.0.2にAdvanced Scene Switcher 1.20.5を使用しています。

またMac版だとOBS、プラグインともにAppleシリコン(M1/2)版とIntel版が分かれています。お使いのOBS Studioにあわせてプラグインをダウンロードしてください。GitHubのダウンロードページにはmacos用だけでもx86(Intel用)、arm64(Appleシリコン用)、Universal(両用)があります。.pkgはインストーラー版でしかるべきフォルダに自動でインストールしてくれますが、セキュリティチェックが厳しい端末だとかえって手間かも知れません。そういう場合は.zipを落として自分でプラグインフォルダにD&Dで入れると良いでしょう。

自分(M1 Max機)はOBSをAppleシリコン版にするのを忘れていて、プラグインだけAppleシリコン用を入れてメニューに出現しないなと思って悩みました。

インストールに成功すると、OBS Studioの「ツール」メニューに「Advanced Scene Switcher」が出現します。

「自動シーンスイッチャー」というのが標準であって紛らわしいですが別モノです。

Advanced Scene Switcher設定 〜マクロ設定(Macroタブ)

「ツール」メニューから「Advanced Scene Switcher」を開き、「Macro」タブに移動します。

ここで、「Blackシーンに切り替えられたら1秒後に元のシーンに戻す」というマクロを作成していきます。いきなり完成形がこちら。

まず①のブロックで「+」から空の新規マクロを作成し、名前を決めます。ここでは「Blank and Back」としましたがなんでも良いです。

次に②のブロックでマクロ処理が発動する条件を定義します。ちょっと手順がややこしいですが、まず「If(もし)」「Scene(シーンが)」を選びます。すると下段に「Current scene is(現在のシーンが)」が選ばれて「–select scene–(シーンを選択)」が選択可能になるので、「–select scene–」を真っ黒シーンである「Black」にします。これで「シーンがBlackになった時」という発動条件が定義されました。更に冗談で時計マークが「No duration modifier(遅延指定なし)」にかわると思いますのでこれを「For at least(少なくとも)」に変更し「1.00」「seconds(秒)」にします。これで、「シーンがBlackになって最低1秒経過したら」という意味になります。

最後に③のブロックで「その時何が起きるか」を設定します。まず上段で「Switch scene(シーンを切り替える)」を選びます。すると下段に3つのセレクターが出るので、それぞれ「Previous Scene(前のシーン)」「Current Transition(今のトランジション)」「0.20」などとします。「Previous Scene」はBlackシーンにする前に選択されていたシーンを覚えておいてその状態に戻してくれます。もちろん特定のシーンを選べばそちらに移ってくれます。そこは好き好きで。2番目は切り替わり時の効果に関するもので「カット」ならスパっと瞬時に切り替わります。「フェード」ならふわんと切り替わります。「Current Transition」は普段スタジオモードでデフォルトで使っているものが自動で選ばれるんだろうと思います。3番目の秒数はフェードする場合にかける時間です。カットだと突然映像が途切れた様にも見えるので、ごく短めのフェードくらいがいいんじゃないでしょうか。

これで「Blackシーンが選ばれたら1秒後に元に戻す」という動作のマクロ「Blank and Backが完成しました。

Advanced Scene Switcher設定 〜一般設定(Generalタブ)

最後に忘れてならないのがAdvanced Scene Switcherプラグイン自体の動作をオンにするという操作です。このプラグインは動作条件に当てはまる状態にあるかどうかを常に監視するために多少なりとも負荷がかかります。ので必要な時だけオンにする方が良いんじゃないかと思います。

タブを「General」にします。

赤枠の「Start」をクリックすれば起動します。すぐ上の「Inactive」が「Active」になっていれば起動中ということです。その下の項目で起動の自動制御ができます。

On startup of OBS: OBSの起動時

Automaticaly start the scene swither when: 録画や配信を開始した時

また先のホットキー設定画面でON、OFF、ON/OFF切り替えのショートカットを割り当てて手動操作することもできます。

個人的には録画や配信を開始した時に一緒にスタートするようにしておくのが無難な気がします。

■まとめ

ということで、かなりニッチなニーズだと思いますが、OBS Studioで「画面を一瞬真っ黒にして戻す」を1操作で実行する設定を解説しました。

動画眼で自動認識するのに、画面全体が真っ黒になるのをキーにするか、いやそれだと見ている人がびっくりしちゃうので、例えば画面の片隅だけちょこっと黒くなるのを探させるか、なども思案中ですが、仮に「画面の片隅だけ黒い」状態を作ろうと思えばそういうシーンを作るだけなので応用は効くかなと思います。ただ元々複数シーンを使い分ける実査の場合、それぞれのシーンに対して隅が黒いバージョンを用意するのは管理上、手間が大きいかなと思っていて、とりあえずは画面全体を黒いことを条件にする形で実装を進めていく可能性が大です。ATEM MiniでもFTBを使う方が簡単ですし。

ATEM Miniで自動復帰をするにはマクロを使えば良さそうですが、ハード的にマクロキーがあるのはExtremeシリーズだけなのが悩ましいかもですね。

動画眼の次期アップデートについて

今月中にリリースを目論んでいる動画眼3の新機能について解説します。

動画眼は動画ファイルに対して頭出し用のチャプターを打ってUTやインタビューの見返しを楽にするツールです。チャプター情報はシンプルなフォーマットのテキストデータで生成するのですが、これを別のツール、別の時間で作っても良いぞということで、UT/インタビューの実査中にリアルタイムでチャプター打ちするツールが動画眼マーカーです。

チャプター情報をもつ.dggn.txtファイルは動画の先頭を0分0秒基点としてそこからの経過秒数で管理されています。中身をテキストエディタで見ると、

のようなタブ区切り形式で、1項目がチャプターの位置を示す秒数、2項目がメモ、3項目は話者を示す1桁の数値となります。

さて、これを動画眼マーカーでリアルタイムに作るには、動画の録画開始(0秒点)と同期してタイマーをスタートさせる必要がありました。これが慌ただしい実査現場では負担になってしまったり、うっかりブラウザを終了させてしまったり、録画システム(OBS Studioやクラウド会議ツールの録画機能)側が止まってカウンターがリセットされたりといったトラブルにも弱いということがあります。

そこで新バージョンでは「動画眼マーカー側では一旦時刻をベースにしたタイムスタンプでデータを作り、動画眼3に読み込む時点でその動画の録画スタート時刻を引き算して同期する」というアプローチを取り入れてみました。

例えばセッションが朝10時に開始されたとすると、

みたいなログになります。PCの内部時計を参照するので記録開始時に特別な操作は不要になります。

そして事後に動画眼3で動画ファイルとこのログファイルを読み込んだ時に、動画の正確な録画開始時刻(ここでは10時00分00秒とします)を引き算して、

とする仕掛けです。セッションの開始時間は予定より早まったり遅れたりしがちですし、必ずしもそのタイミングで録画開始するとは限りません。必要なのはあくまで録画をスタートした時刻です。その正確な録画開始時刻を機械的に知る方法は3つくらいあるかなと考えています。

  1. 動画ファイルの生成時刻
  2. 動画ファイルのファイル名
  3. 動画内にタイムスタンプを合成しておく

1.はmacOSでもWindowsでもファイルのメタ情報として自動的に記録されます。2.は録画に使うツールによりますが例えばOBS Studioなら標準設定でファイル名に月日時分秒が入るようになっています。これら2つは特に意識しなくても取得できる可能性が高いので次期動画眼3もこれらを反映させるボタンを実装しています。3.については少し準備が必要ですが、これまたOBS Studioでいえば、こちらの記事を参考にしていただくなどして動画の片隅に時刻を入れておき、あとで先頭フレームに映る時分秒を読み取って同期ダイアログに打ち込んでいただく形が考えられます。

単純に映像に時計を映しこんで置くだけでもいいかも知れません。

いずれにせよ、録画側(映し込む時計を含む)と動画眼マーカーを使うPCとで時計が一致していることが望ましいので、PCのNTP(時刻合わせ)サーバーをしっかり設定しておく、電波時計を使うなど時計合わせは気を遣うに越したことはないしょう。

というわけで、

  • 動画眼マーカーで時刻ベースのログを出力できるようにする
  • 時刻入りログを動画眼3で開いた時に、動画ファイルのメタデータなどを使って換算補正する

と両ツールの同時アップデートにて対応する計画です。

一応実装は完了していて動作チェックしている段階なので、3月中に出せればと思っています。

■その他の機能追加、バグフィクス

同時に長らく対応できずにいたバグ修正や機能追加も色々しています。

  • Premiere Proで書き出したcsv形式のマーカーのインポートに対応
  • 100分を越えるタイムコードが正しく表示できなかったのを修正
  • Premiere Proの書き起こしデータの新フォーマットに対応

是非お試しいただければと思います。

OBSのウインドウプロジェクターを画面共有できない時の覚え書き

皆さんOBS Studio活用してますか?

私はUT(ユーザテスト)で被験者の手元、表情、製品などをマルチカメラで撮って合成した映像を記録したり見学者に配信するといったことを行います。

その際、OBSは複数映像ソースをパワポやドローツールのような感覚で自由にレイアウトした合成映像が作れるので重宝しています。

OBS StudioにはYoutube LiveやFacebook Live、RTMPなどで配信する機能も備わっていますが、UTではあまりそういう一般配信用プラットフォームを使うコンセンサスは得られず、TeamsやZoom、MeetのようなWeb会議ツールに流すことを求められます。そういった場合困るのは、これらの画面共有機能では特定のモニタやウインドウ単位でしか共有対象を指定できないという点。そのままOBSのウインドウを共有すると余計なUIが映ってしまい、肝心な映像部分の実効解像度が落ちてしまいます。

以前の記事では、外部モニタをつなぎ、OBSから「全画面プロジェクター(プレビュー)」という機能でプログラム映像を全画面表示し、それを画面共有する方法をご紹介しました。

一方ノートPCで運用する場合など、外部モニタを用意できない場合は代わりに「ウインドウプロジェクター(プレビュー)」を使って、独立のウインドウを作ることができます。しかしここで1つ問題があって長年外付けモニターを用意せざるを得ないと思っていました。何故なら、ブラウザやZoomアプリの画面共有対象ウインドウ選択画面に、このOBSのウインドウプロジェクターが出てこないのです。たぶんこれはmacOSだけだったと思います。「Macで画面共有する時、OBSのウインドウプロジェクターが選べない」という状況です。

この解消方法がようやくわかったので記事にしました。

解説は1行で済みます。ウインドウプロジェクター上で右(副ボタン)クリックをして「常に手前に表示」をオフに(チェックを外)します。

一度共有画面選択ウインドウを閉じて開き直すと、

Boom! ちゃんと選べるようになっているんじゃないでしょうか。

想像ですが常に表示に昇格したウインドウはOS的な扱いが例外的になって他アプリでオーバーレイできないということなんですかね。どのみちこういう用途では「他のウインドウが被ってもキャプチャ(配信)される映像に影響が出ない」方が好都合なので、デメリットもないと思います。このウインドウがバックグラウンドに回ってしまってもZoomなどに配信される内容は影響を受けません。

とてもニッチなトラブルだと思いますが、困っている方の参考になれば幸いです。

ZOOM F3を使ってた所感

先日「ユーザーインタビューのやさしい教科書」のイベントがあって、大阪に行って来ました。

ユーザーインタビューのやさしい教科書

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奥泉 直子, 山崎 真湖人, 三澤 直加, 古田 一義, 伊藤 英明
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基本的に配信は主催のHCDNetさんが引き受けてくれて自分はノータッチだったんですが、後日一部ダイジェストなら書籍のYoutubeチャンネルにアップしても良いということだったので、録画用に自前機材を持ち込みました。その時に初投入したのが前回の記事で書いたZOOMのF3です。

貸し会議室にはPA設備があり、そのミキサーからこちらのケーブルを使って音をもらいました。

https://www.soundhouse.co.jp/products/detail/item/225818/

ステレオの標準プラグまたはミニプラグからXLR x2に変換するケーブルです。他にもRCAプラグからとる事態になるかも知れないと、こちらのアダプタと懐かしの赤白オーディオケーブルも持参。

https://www.soundhouse.co.jp/products/detail/item/24906/

どちらもサウンドハウスのオリジナルブランド品でお手頃です。

イベントは契約の関係で開始30分前にしか入室できず、かなりバタバタでした。持ち込んだカメラからのHDMI信号がATEM Miniで認識できなかったり(Video Assistでは映った)、PAからの音が配信PCに入らなかったりとトラブルの連続で前半はリモート視聴者さんにもご迷惑をおかけしてしまいました。

そんな中でもこのF3で録ってた音は非常にクリアで、途中からは配信用に転用したくらいです。Windows PCにオーディオドライバも必要なくUSBケーブルでつないだだけで(配信の方の)Zoomで認識されました。ただし残念ながらF3内録音とUSB I/Fは排他らしく、録音を止めないと配信には使えませんでした。16bitや24bitでもいいので同時録音できると良かったなと思います(もしかしたら設定でできるかも?)。ともあれPAからの音を(XLRのソース設定をマイクからラインに切り替えはしましたが)デリケートなレベル調整なしでポンと録音できたのは非常に良かったなと。コンパクトで大阪までのスーツケースでさほど容量を食わなかったのも有り難かったです。バッテリーもリチウム電池で余裕でした。

昨今のUT現場ではマスク対策もあってワイヤレスマイクを使うことが多いですが、いずれピンマイクやガンマイクで録る現場があったらまた活用したいです。

■PAを録音してみて気付いたこと

通常の業務UTでは、今回のようにPA(会場の音響設備)経由で音をもらって録音するといった機会はなく、貴重な経験となったのでついでにメモを残しておきます。

まず上に書いたとおり32bit float録音ができたのは良かったです。PA側のミキサーを一切触らずにジャックにケーブルを挿すだけで音が録れました。今回は音声スタッフはおらず会場備え付けのミキサーを勝手に使え、というスタンスの会場でしたが、やはり勝手がわからないのでいじるのは気がひけるものです。

今回登壇者は自分を含めて5人おり、ワイヤレスx3、ワイヤード2を用意してもらいました。ワイヤレスはマイクスタンドにつけて卓上置き。ワイヤードはミキサーよりの2席に普通に転がしておきました。このマイクスタンドがクセモノだなと思います。我々話者もそこまでこういう場に慣れていないので、必ずしもマイクに向かって話すということを意識しきれず、スクリーンや隣の話者に顔を向けて話してしまいがち。そうすると集音範囲の狭いダイナミックマイクでは途端に声が小さくなってしまいます。後編集をしていてマイクスタンドを使っていた人達の声が大きくなったり小さくなったりを繰り返していて「あちゃー」という感じ。今後こういう機会があった時にはできればスタンドは避けたり、必ずマイクに向かってしゃべるよう話者に念押ししときたいなと。程度の差はあれピンマイクでも同じことが起きるのかなと思います。顔につけて常に口元にマイクがくるヘッドセットタイプが最強かも知れません。

あと、そうしたダイナミックマイクだけで話者の音を録ったPAの出力は、ノイズがなく聞き取りやすいものの、会場の空気感が抜け落ちた音声になってしまうので、イベントのライブ感みたいなものを出したい時は所謂”エア”のような環境音も録って軽くミックスしてあげるのが大事だなと思いました。ちょうど客席の一部においた引きアングル用のビデオカメラの内蔵マイクの音が録れていたので、今回はそれを流用しました。

実は今回F3との組み合わせでもよく挙げられるBEHRINGERのC-2というペアコンデンサマイクを買いました。2本で1万円切りの良コスパのXLRコンデンサガンマイクです。

べリンガー C-2

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さすがにF3に2本直差しだとあまり意味ないでしょうが、付属スタンドで少し角度を開くようにして使えば良いステレオ収録にもなります。メインの音声をワイヤレスマイクを録る片割れ、このF3とC-2の組み合わせでエア兼バックアップを録って置くのも良さそうだなと思いました。

スマホアプリでレベルメーター付きで確認できたのも良かったです。登壇者席にいながらにしてこっそりチェックしたり録音の開始/停止ができるのは大きなメリットでした。(別売りBluetoothユニットが必要)。

■まとめ

小型で32bit float録音ができるZOOM F3で、レベルを気にせずまさに録音ボタンだけで綺麗な収録ができました。どんな音が出てくるかわからないPA経由の収録では大きなメリットかなと思います。

しばらく色々な活用法を模索してみたいと思います。

音割れしないレコーダーZOOM F3とマーカー機能の話

2年ほど前、凄く大きい音から小さい音まで収録できる32bit float録音に対応したZOOM F6というレコーダーを購入しました。

32bit float録音について詳細はこちらの記事をどうぞ。

F6は6入力を備えてガチめのフィールドレコーダーでしたが、今年一月に32bit float録音に対応しつつ、入力を2系統に絞り、より小型化したF3が発売されました。同社の32bit float録音対応ラインナップが、6ch入力のF6、2ch入力のF3、ピンマイク用のF2となったわけです(F2=2系統ではないのでご注意ください)。

しかしまぁこれが当初から大欠品祭りで、全く買えなかった。本来3.5万円くらいのものが5万円以上で売られてたりしました。Amazonで7月くらいに一応注文可能になってるのを見たものの納期は未定っぽかったので悩んでいたら即消えてしまい、もう一度8月に一瞬復活したので、とりあえず注文だけいれけ!と思ってポチ。それがようやく届きました。

■ZOOM F3の特徴

単にF6の入力数を減らしたモデルかと思いきや、F3にしかない機能などもあったりします。個人的に注目の機能を挙げると、

  • 32bit float録音
  • よりシンプルなオペレーション(F3のみ)
  • 音声波形表示(F3のみ)
  • Bluetooth経由で専用スマホアプリによる遠隔制御(要オプション)
  • サウンドマーカー機能
  • マーカー機能(スマホアプリからのみ、F3のみ)
  • 32bit float対応オーディオI/F機能

辺り。F6はかなり込み入った設定ができる分、小さなパネルでの操作がかなり難解でした。一方F3は32bit floatで録ることを前提としており、「何も考えずに録音ボタンを押せば音割れしないで録れる」というユーザ体験ありきで設計されている印象(F2もそうでしょうけど)。実はF6はマニアックすぎて、あえてこちらのブログではなく個人の趣味ブログの方でのレビューとしていましたが、F3はガジェットマニアではないUT/インタビュー実務家の人にも選択肢に入りうる製品だと思いこちらで紹介させていただくことにしました。

音声波形表示もありそうでなかった機能。世の中のICレコーダーは通常(なにもないか)いわゆるレベルメーターというL/R 2本のバーグラフで入力レベルを視認します。これだと瞬間瞬間の音量チェックしかできません(最大ピークが一定時間残ったりはしますが)。これに対してF3は音声編集ソフトのように横軸に時間をとった棒グラフで数秒分の履歴を見られますので、平均的な音量をチェックできます。「音割れしないんだからチェックもいらないんじゃ?」という考え方もできますが、やはり安心感が違います。またこの画面上でちょうどいい感じにズーム倍率を設定しておくと、書き出される音量のデフォルト倍率に反映されるので、編集ソフトにいれてすぐに適当なゲイン設定がなされた状態になります(もちろん32bit floatの解像度は維持されてるので後で無劣化で再変更もできます)。何本も録る時は一応のズーム倍率を現場であわせておくと、後でちょびっと楽できるというわけです。よく考えられていますね。

サウンドマーカー機能とは録音開始時に「ピー」という音を0.5秒間入れる機能です。これは録音ファイルにも出力にも入るので、例えば本機からビデオカメラやPCなどに音を引き回しておけば、後で音声だけ本機で録った32bit floatの音声に刺し替えたいという場合の位置あわせが劇的に楽になります。これまたシンプルでアナログな工夫ですが強力です。

32bit floatのオーディオI/F機能は文字通りPCなどから32bit float対応のUSBデバイスとして認識させられるということです。PremiereやAuditionなどの32bit float対応ソフトに直接録音ができるというわけです。こちらは上位モデルのF6でも対応していない機能でファームウェアVer2.0から追加されました。F6でもアップデート来るかな?と期待してましたが、やはり32bit float x 6chとなると帯域の問題もあるのか今のところ気配はないみたいです。ので、現状PCに32bit floatをダイレクトに入れられるのは本機だけなんじゃないかと思います。

・インタビュー中にインデックスが打てるマーカー機能

やはり個人的に気になるのはマーカー機能です。録音中に「ここ!」ってタイミングでボタンを押すとWAVファイルにチャプターを打てます。残念ながら本体ボタンでは実行できず、別売りのBluetoothアダプタBTA-1を本機に挿し、スマホアプリZoom F3 Controlから操作する形になります(iOS/iPadOS/Android)。

録音中に「MARK」ボタンを押すと、01、02と連番付きでWAVファイル内にチャプターが埋め込まれます。Adobe Auditionで開くとこんな感じ(赤丸部分)。

Adobe Audition 2022で開いた様子

残念ながらPremiere Proでは認識されませんでした。Audacityもダメ。

ただ個人的にはAuditionからCSVでタイムコード一覧を書き出せたので動画眼に読み込ませることはできそうなので重畳。左の「マーカー」パネルで全マーカーを選択し、「ファイル」->「書き出し」->「選択したマーカーをCSVに変換…」でこんな感じのCSVにエクスポートできました。

Name Start Duration Time Format Type Description
01 0:07.991 0:00.000 decimal Cue
02 0:30.940 0:00.000 decimal Cue
03 1:12.283 0:00.000 decimal Cue
04 1:36.552 0:00.000 decimal Cue

F3で録り、ビデオカメラやOBS Studioで録った映像と合成、書き出したCSVを動画眼に食わせれば、UT/インタビュー動画の頭出しインデックスとして簡単に利用できそう。動画眼のインポート形式にこのCSVファイルも加えたいと思います。

ちょっと気になるのは、アプリ上の「MARK」ボタン(右下)が小さい点、そして録画(停止)ボタンと近い点。MARKするつもりでうっかり録音止めてしまったら大変です。残念ながらHOLD状態にするとMARKも打てない模様。ひたすらMARKだけ打てるようボタンを大きくしたレイアウトが選べたらなーと思います。

スマホアプリZOOM F3 Controller

・電池の話

本機は単三電池x2本、またはUSB給電(5V/1A)で駆動します。F6のようにSONYのビデオカメラ用バッテリーはつきません。

電池駆動時間は外部マイクにファンタム給電するかどうかで大きくかわるようです。48KHz/32bit float録音で、

ヘッドフォン無し
ファンタム給電OFF
ヘッドフォン有り
ファンタム給電ON
アルカリ乾電池8時間2時間
ニッケル水素蓄電池8.5時間3時間
リチウム乾電池18時間7.5時間
公式仕様より

となっています。2段目のがいわゆるeneloop的な充電池です。3段目のリチウム乾電池は見た目は同じですが内部の原理が別もので軽くて長時間保ち、ちょっとお高い乾電池になります。

ヘッドフォンもファンタム(マイク)給電もなければアルカリ電池で余裕ですが、それらを使用した場合で2〜3時間となるとちょっとしたイベントでは微妙。終日電池のことを忘れたい、と思うと、単三型のリチウム乾電池を使っておくのが無難そうですね。軽いし、最近ではそこまで高くもないので。ちなみにZOOMのレコーダーは電池種別毎に細かな制御をしているのか、単に残量表示を正確に出すためかわかりませんが、設定でどの種別の乾電池を使うか選ぶようになっています。違う種類の電池に替えた場合は忘れずに設定もあわせましょう。

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もしくは室内使用ならUSB給電が無難でしょう。5V/1Aなのでかなり初期のスマホ充電器やモバイルバッテリーでも足りる計算です。端子はUSB-Cです。

■まとめ

一般的なICレコーダー並の簡単操作で、現場で細かいレベル調整をせずとも音割れ、小さすぎ問題が起きず、マーカーで後から聞き直しを効率化できるという、UT/インタビュー現場でも活躍しそうなZOOM F3を入手しました(ちなみにオンライン会議のZoomとは縁もゆかりもない音響メーカーで、何ならこちらの方が老舗です。混同する人がいて困り果てているようなのでしっかり識別してあげてください)。

強いて言えば、元々普通のICレコーダーで済ましているような現場ではXLR接続の外部マイクを運用するのはやや壁が高いかも知れません。でもまぁ感染症対策もまだまだ続く現場ではマスク、アクリルパーティション、空調、窓開けなど音声収録の阻害要因が山盛りです。録画録音品質をランクアップしたいという方はそこも含めて検討の価値はあるんじゃないでしょうか。

大阪で著書イベント「ユーザーインタビュー」のもやもやなんでも相談会を開催します!

ユーザーインタビューのやさしい教科書

ユーザーインタビューのやさしい教科書

奥泉 直子, 山崎 真湖人, 三澤 直加, 古田 一義, 伊藤 英明
2,465円(11/20 14:19時点)
発売日: 2021/09/24
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昨年出させていただいた「ユーザーインタビューのやさしい教科書」の連動解説動画のYoutubeチャンネルを開設し、ユーザーインタビューの実際の様子をガイド設計から実査、分析まで月イチで公開して、ちょうど1年、Vol.13をもって一旦の完結を迎えました。それを記念し、また書籍や動画へのフィードバックをもらい、今後のコンテンツ作りの参考にさせていただくべく、ハイブリッドイベントを大阪にて開催させていただく運びとなりました!

人間中心設計推進機構(HCD-Net)の大阪支部主催の有料イベントとなります。詳細はこちらのリンクをご覧ください。

https://peatix.com/event/3351751/

かっちりしたセミナーというよりはユーザーインタビューに関心がある、日々実践しているが課題を抱えているという方達との交流会のような要素が濃いですが、せっかくなので各著者もLT(小話)は準備していって話題提供できればと思っています。

大阪会場、オンラインともにまだ残席ありますので、著者に直接質問をぶつけてみたい!という方は是非御検討くださいませ。

DJI Action 2で綺麗な車載動画を撮る設定(随時更新)

カーナビなど車載機器のユーザテストで、前方に走行動画を流すことがあります。Youtubeの動画を勝手に使うのもグレーだし、走行シチュエーションなどもニーズにあってないことがあるので、できるだけ自前で撮影するようにしています。

本記事ではアクションカメラのDJI Action 2を使って綺麗で臨場感のある走行動画を撮るための設定を煮詰めていきたいと思います。他にもGo Pro HERO9やiPhone 13 Pro Maxなどがありますが、追々比較もやっていければと。というか普通にiPhone 13 Pro MaxでHDRで撮ったものはメチャ綺麗で滑らかになりますけどね。

これがiPhone 13 Pro Maxでの撮影例。

まぁ普通に充分綺麗。HDRだと白トビ、黒ツブレ耐性もあるので、トンネルや高架下など明るさがダイナミックに変化する車載動画にも良いです。トンネルはもうちょい綺麗になるといいかとは思いますが。たぶん標準カメラアプリを使わずにマニュアルでISO上限を決めてやるといいんじゃないかと思います。

とまぁ、HDRで録れるこのサイズのカメラってないですし、iPhoneでいいじゃんってところですが、ストレージ的にも長時間回すのは厳しいので、できれば手軽にアクションカメラつけっぱなしで録れないかなというところなのです。

で録ってみたのがこちら。

動画中のテロップにも書きましたが、

  • LED信号がチカチカする
  • トンネル内の画質が悪い
  • 高速入り口の傾いた道路で映像が傾いてしまった
  • 白トビが酷い

といった辺りが課題かなと感じました。これらを改善する為の仮説はあるので、追々試しながら最適設定を煮詰めていきたいと思います。

■LED信号のチカチカ問題

これはLEDが肉眼では見えない速度で点滅していることに起因します。シャッター速度やフレームレートがそれと同期してしまうと信号がどれも光ってないような見た目になります。通常は東日本と西日本のAC電源の周波数に応じてるはずなので、(50Hzの)横浜では60pとかで撮ればいいかと思ったんですが、上記のありさまでした。ちなみにDJI Action 2は4K/120pでも撮れるのですが数分で熱暴走してしまうので実用性はないので除外。60pでも2〜30分で止まりますが、まぁできれば4Kで撮りたいので外部冷却とかもやっていきたいなと。

これについては4K/50pで撮ってみたところ改善しました。60pでもフリッカー低減をオンにすれば矢印信号は多少チカチカしたものの赤青黄の方は平気だったりしましたが、見比べると50p(フリッカー低減オン)が一番自然かなと感じてます。

この辺りはシャッタースピードも関わってきますがDJI Action 2はマニュアルではいじれないので、Go ProやiPhone(のマニュアル撮影アプリ)の方が対策しやすいかもです。

■横に傾いた道路の対策

これはDJI Actionの水平保持機能をオンにしていたため発生。オフにして通常の手ぶれ補正のみ(Steady)で充分そうです。

■快晴時の白トビ問題と暗所で画質が悪い問題

お日様サンサンな日に明るすぎて白い建物や車の階調がつぶれてしまう問題。Action 2 はISOの下限は100固定っぽいので、露出補正でEV -0.3など現場合わせで調整するしかなさそう。もしくはNDフィルターを取り付けるか。

ただこれらの対策で全体の明るさを落としてしまうと、暗所(トンネルなど)で画質が劣化する問題が悪化することになりかねません。昼間トンネルを通過するルートではバランスが重要。暗所ノイズはISO感度を上げすぎないのがポイントかなと。自動だと結構体感より明るく感じるくらいまで持ち上げてくれて結果として細かいノイズが乗りまくる感じ。だったら雰囲気暗くてもいいので(最悪あとで編集で持ち上げるので)、ISOの上限を制限してやるのがいいかなと。Action 2では露出オートのまま下限は100固定、上限を選択することができます。この辺りの勘所がまだつかめていません。800だと結構暗いなって感じ。3200はもうかなりノイズ出るので、1600か800かで撮り比べてみようと思っています。上記動画の首都高速7号線を通る度にサンプル撮って煮詰めます。

■DJI Action 2での車載動画設定(暫定)

  • 東日本なら4K/50p(画質を求めない場合は1080/50pの方が長時間撮れる。西日本なら60p?)
  • 手ぶれ補正はHorizonal Steadyを使わない。SteadyかRock Steady(やや画角が狭まる)。なんならOFFでもいいかも。
  • 露出オートでISO感度の上限を800〜1300にしてみる(検証中)
  • 快晴時は露出オートでEV -0.3(場合によっては-0.7)、もしくはNDフィルター?

[参考]SDカードの相性問題?

ウチで最初使っていたSAMSUNGのEVO Plus U3 128GB(赤白のヤツ) はちょっと不安定でした。何度か録画していると急に録画できなくなります(録画開始5秒位で強制停止)。またフォーマットも完了しなくなったり。最初熱停止後に起きるような気がしてたんですが、そうでない時にも発生。録画フォーマットを変えた時にも起きやすい気がしますが、ともあれ一度起きるとその後なにも録れなくなってダメージが大きいので使用を中止しました。個体不良なのかこのモデルとの相性なのかは不明です。

ともあれ結局公式推奨リストにあるSandiskのこれに買い換えてからは再現していません。大きくストレスが減りました。

本当は512GBにしたかったんですが、Action 2の仕様では256GBまでとなっているので、今回は安定性改善を重視して推奨製品にしました。

BMD Video Assist 7″ 12G HDRを実査で使ってみて

前記事で紹介したBMD Video Assist 7″ 12G HDR(以下VA7)を本番実査で使う機会があったので感想をまとめてみようと思います。

■実施概要

まずVA7をMacBook Pro(以下MBP)のHDMI出力から接続しサブモニタとして認識させます。3つのカメラ映像をMacBook Proに入れてOBSで合成、録画し、「全画面プロジェクター」でVA側に表示。VA側でもバックアップ録画しました。またMeetでの中継も行いました。

90分のユーザテストを12セッション実施しました。

■録画

まずVA7の主な役割としてバックアップ録画ですが、非常に安定して稼働してくれました。冷却ファンの音も全く気にならず。

ポイントはOBSの音声モニターをON(=OBSの録画中音声がスピーカーから鳴る状態)にし、Macの音声出力先をHDMI先のVA7にすること。そうしないとVA7側に音が来ません。VA7は画面上に常時レベルメーターが出るので音が入っているか一目でわかるし、適正音量かどうかもチェックできて便利でした。

Apple ProRESは高画質な反面、非常にファイルサイズが大きくなるコーデックなのでMacBookが対応しているからと迂闊に4K60pとかにしておくとエラいことになります。VA7の録画解像度やフレームレートはHDMI入力に応じてしまうぽいので、Mac側で1080/30pにしておくことばポイントです。VA7の上部ステータス欄に表示されるので確認できます。

VA7側での録画コーデック設定は最も低いビットレートのApple ProRES Proxyを選択。それでも90分の録画で30-40GBほどになります。全セッション合計で400GBほどでした。奮発して2TのSSD買っておいて良かった….

ストレージ残量も常にグラフで見えているので安心です。

せっかく高画質に録れてるんだからこちらをソースにして納品用動画を作ればいいかなと思いましたが、MacBook Proにコピーしておけるサイズじゃないし、毎回SSDをマウントするの面倒だし、保管にも向かないので、やはりバックアップ録画として割りきるのが良さそう。

今回、別の観察スタッフに動画眼マーカーでチャプター打ちをしてもらったんですが、そのために録画スタートタイミングを中継越しに「せぇの」で同期する必要があり、OBSは中継がつながった後で録画を開始。それだと開始直前でバタバタしてて録画始めるのを忘れるリスクがあったので、完全独立なVA7をもっと前から録画しっぱなしにしておく、という運用もしました。幸いにもOBSのスタートし忘れはなかったですが、安心感はあったし、別件で実際に忘れたこともあるので良いかなと思いました。

■モニタリング

迷ったBlackmagic Design HyperDeck Shuttle HDと違い、本機はモニター一体型なので録画映像のモニタができます。きちんと各カメラ映像が来ているか、参加者が姿勢をかえてカメラから外れてないか、などが常時確認できて重宝しました。先に書いた通り、音声もレベルメーターで確認できるので安心です。これらはOBSウインドウでも出来ますが、MacBookのメインスクリーンはたいてい進行シートやチャットウインドウなどが前面に来ていて、OBSは録画開始押したらバックグラウンドに隠れちゃうことが多いんですよね。

そして単なるサブモニタよりもいいなと思ったのはタッチ操作による拡大機能です。ダブルタップで拡大モードに入り、ピンチで好きな箇所をズームアップできます。今回3カメラの合成映像を録画していますが、これを7インチしかない本機に映すと個別の画面はかなり小さいです。実査中に見たかったのは参加者の操作の手元だけだったので、録画映像に影響せずにリアルタイムのモニタとしてだけ拡大できるのはとても助かりました。

まぁ13インチとか15インチのモバイルモニターなら拡大の必要もなかったかもですが、コンパクトに単体でまとまることとのトレードオフですね。

■中継

VA7と直接関係ないですが、今回もMeetでの中継をしました。Meetは専用アプリがなくブラウザで参加しますが、Mac版のEdge/Chromeはなぜか一部のウインドウを画面共有対象として認識してくれないことが多く、OBSから全画面プロジェクタで映しているVA7をモニタ単位で選択することで凌ぎました。

ただ一般に画面共有は解像度が高い代わりにフレームレートが低いので動きがカクカクします。動きを重視する場合はOBSの仮想カメラ機能をONにして参加者カメラ映像として送ったりもしました。Zoomだとカメラ画像の解像度が低いこともあったりで、画面共有で送るかカメラに映すかはケースバイケースで選択という感じです。今回はカクカクが気になると言われてカメラ映像を使っていたんですが、途中でその映像が急に画質悪くなったというチャットがとんできて急遽画面共有も開始することになったりしました。VA7がサブモニタになっていることで素早くスイッチできて良かったなと思います。(帯域的には両方送ったらかえって共倒れにならないかなと思ったんですが、見学者から「綺麗になった!」と返信が来たので良しとしました)

2023.4.7追記:影響範囲は調べ切れていませんが、ブラウザから使用する一部のオンライン会議サービスで、画面全体を画面共有すると遅延がひどくなる現象がありました。OBSで全画面プロジェクターのかわりにウインドウプロジェクターを開いてサブモニタに配置し、それをブラウザから画面共有する形にしたらだいぶほぼ違和感なくなりました。M1MaxのMacで執筆時点の最新版OBSです。Video Assist 7″の問題ではないでしょうが、この記事のセッティングで配信をする人の参考に書いておきます。

ちなみにウインドウプロジェクターをブラウザの共有画面対象ウインドウ選択UIで選べない場合の対処方法はこちらの記事へ。

■まとめ

やはり画質、ビットレート的にはオーバースペックすぎますが大きなストレージをつけてそれだけ飲み込んでしまえば、トータルの利便性、安心感は満足の行くものでした。ストレージも90分12本で500GB行かないことがわかったので、SSDではなく安価で本体内に収まる512GBのSDカード運用でもいいかもと思いました。

完全オーバースペック!! 録画対応小型モニター、BMD Video Assist 7″ 12G HDRを導入

現状の課題

普段UTやインタビューの実査業務で録画/中継をする際、ミスや破損に備えて二重で録画するよう心がけています。ちなみにZoomやTeams、Meetなどで中継することが多いですがクライアント(発注元)のライセンスで使うことが多く、クラウド録画機能は容量や個人情報管理の観点で使えないことが多いです。後者は例えば参加者の顔が映った映像をクライアントが保持するのがNGで、後日ボカシをかけて納品するような場合、一時的にもクライアントがアクセスできるストレージにデータを保存できない、みたいな事情です。そんなこんなで手元での録画を多重化することが多いです。具体的には、ATEM MINI Extreme ISOでマルチカメラの映像を合成したPGMを作り、ATEM自身で作りつつ、中継用PCに入れてOBSで録画&Web会議サービスに中継、という感じです。

で、OBSのPGM映像(合成後の出力)を配信に載せる場合、映像だけが出ているウインドウが欲しくなるのですが、なぜかMac版OBSで作ったプレビューウインドウがMeet(ブラウザ)の共有画面選択一覧に出てこない問題があったりします。そこで自分はサブモニター全体にPGBを映す「全画面プロジェクター」を使用します。

が、ここに罠があって外付けの小型モニターの電源がなんらかの理由で落ちるなどして外付けモニターをロストするとOBS自体がクラッシュしてしまうのです。そうはならんやろ、と思うかもですがUSB-C電源で動いているモバイルモニターだとわりとちょっとコネクタに力がかかったくらいで瞬断することがあったりして、コネクター周りをパーマセルテープでガチガチに固定するなどしています。

ちなみにWindows版OBSだとこの辺りどうなのか検証できてないですが、たぶん全画面プロジェクターでなくウインドウプロジェクターでもたぶんブラウザの共有画面として使えたと思います。

てことで長い前フリですが、「安定した外部モニターが欲しい」が課題の1つ目。

もうひとつは小型の録画機が欲しいというもの。3つ以上のカメラソースを合成する場合、ATEM MINI Extremeに処理を投げられるのはPCの負荷軽減もでき安心感があります。一方、そこまで複雑な合成が必要ない場合や、車で行けない現場の場合、Extremeを持っていかずにPC+OBSで済ませたいなということもあります。実際来月そういう案件があるのでこの時期に動いたというのもあります。ということで、ATEM MINI Extreme ISOをもってくほどでもない軽合成案件でも、OBSとは別に録画系統を確立したい、というのが2つ目の課題というか目標です。

ということで今回の要求使用は

  • HDMI入力された映像をSDカードやSSDなどのシリコン媒体に保存できる
  • 現場にもってく負担にならないよう、なるべく小型で配線なども簡略化できると良い
  • 業務グレードの信頼性
  • 1案件まるごと(90分x12セッションくらい)を単一のメディアに不安なく収録できるビットレート、コーデックが理想

みたいな感じで探しました。画質はFHD/30pくらいで充分ですが、4Kとかも使えるとホビーでも流用できるかもなぁ、くらいで。あくまで前線にATEMやOBSがいてのバックアップ用なのでマイクが直接つくか、などはさほど優先度は高くない感じ。

■なるべく小型で長時間録画ができ信頼できる録画機を求めて

まず1万円前後で買える安い「PC不要」を謳う録画機は端から除外です。

こういうのは2GBとかでファイルが分割されるものばかりで、ファイルの扱いがめんどくさくなるからです。小さいのでバックアップ録画用としては悪くないのですが、このクラスの新製品をみつけてはメーカーサイトにいって説明書をチェックすると、たいていどこかにちっちゃく「2GB毎に分割されます」って書いてあります。大抵はH.264でビットレートもそれほど高くないので、割と長く録っても2GBにいかないとかはあるかもですが、、

そして挙がったメンバーがここら辺。業務製品なのでややお高いですが信頼性も担保されるだろうと。

・HyperDeck Shuttle HD

Blackmagic Design HyperDeck Shuttle HD (HYPERD/PTSHD)

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フルHDの再生と録画ができ、シャトルで頭出しがしやすい点が特徴。駆使するとUTの回顧法とかでも使えて面白いかなーと思ってかなり悩みました。小型でATEM MINIシリーズと並べて置きやすい形状もGood。お値段も手頃です。保存はSDカードかUSB SSD。

一度ほぼ決めかけたんですが、「どうせならモニターと一体化してれば10インチモバイルモニターもってかなくて良くなるんじゃね?」と閃いてからモニター搭載機にぐぐっと傾いて、今回は見送りました。でもいずれ欲しいかも知れない。

・HyperDeck Studio HD Plus

同じくHyperDeckシリーズの録画HD、再生4K機。この下のminiだとHDMI入力がないので自動除外。4K再生もできるので提示刺激映像(クルマ案件で走行映像とか)を高画質で映せるのが魅力だなと思ったんですが、ちょっと持ち出すにはサイズが大きいなということで断念。一応ちっさいながら液晶モニターとスピーカーもあるので画角などは確認はできるんですが、ピントがあってるかとかまでは厳しい。

ちなみにちょっとした動画を見せるだけならPCでもできるんですが、こういう機器だと再生制御UIとかを一切画面に映さずに済むので運転シミュレーターなどで使うには没入感を出しやすいというメリットがあります。ATEM MINIと組み合わせてソースにするとATEMのスイッチャーで選択したら再生が始まる、みたいな連動ができるのもHyperDeckシリーズの良いところです。ATEM以外からもネットワーク経由で再生制御ができるので、アプリでリモート制御したり、スクリプト書いて自動化したりもしやすい。

・Video Assistシリーズ

Video AssistとNINJA Vは録画もできるモニターとして双璧というか、他に選択肢がないくらいメジャーです。ただしガチプロすぎてコーデックもプロくてビットレートが高いProResとかBlackmagic RAWとかになってしまうのが難点。SDやSSDのコストが高くついてしまいます。

Video Assistは5インチと7インチ、FHDと4Kで4製品あります。今が10インチでモニタリングしてるので、5インチはさすがに厳しいかなと思います。合焦箇所を色付けして可視化する機能(ピーキング)などはあるとはいえ。あと7インチだとSDスロットがデュアルになり(溢れたらもう片方で録る)、ミニXDRで高音質マイクを直結できるといった違いも。

H.264/265といった圧縮率の高いコーデックが使えないので、先に書いた十数時間分の映像をメディア交換なしで録るのが難しい(大きくて高いSDやSSDが必要)のが最大の難点。

・NINJA Vシリーズ

ATOMOS(アトモス) NINJA V ATOMNJAV01 ATOMNJAV01 ブラック

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こちらは5.2インチ。19インチとか大きいモデルもありますが2,30万するのでさすがに除外。4Kモデルと8Kモデル(V+)があり、拡張モジュールで機能を足せるのもガジェット好きとしてはたまらない。ちょうど悩んでた時にネットワーク経由でプロキシ映像(編集作業用の低画質映像)をframe.io(クラウド編集サービス)にリアルタイム送信するモジュールが発表され、その記念としてアメリカで$399になったのでかなり悩みました。日本で18万くらいするV+でも$599です。無印VはH.265ライセンスを$99で買う必要があるので、V+との差が$100。日本代理店で同じセールが来るかもわからず、米Amazonでカートにいれるところまでいきました。

こちらのメリットは背面にSATA SSDが装着できる点。Video AssistはUSB-Cで外付けなのでケーブルがややゴチャつきます。そのかわりあちらにはSDカードがあるので大容量SDが買えるなら補えます(NINJAはSDスロットなし)。

ただいまいち踏み切れなかったのはH.265収録がイマイチ不安定という指摘と、ファン音がVideo Assistよりも大きいというレビュー。UTで無言で操作してもらってる時のファン音は意外と気になります(マイクが拾うと後処理もしたくなる)。ATEMを冷やす外付けファンとかも使用を躊躇うことがあるので、やはり音は静かなのにこしたことはない。H.265収録は後付けの機能でもあり、低画質ファイルを編集ソフト上でランダムシークすると真っ黒になることがある、と公式でもアナウンスしてたりして、せっかく容量小さくでも扱いにリスクやフラストレーションが伴うのはイヤだな、という印象。

■Blackmagic design Video Assist 7 12Gに決めた!

ということを延々と悩み抜いて、

  • 老眼来てる目は大きな画面が良い、ピント来てるかチェックしたり、クライアントにちょい見せするにも大きいは正義!
  • ProResで一番画質が低い ProRes Proxyで512GBストレージならどうにか要求仕様の収録はできそう。最悪1TBのSDかSSDを買う。
  • FHDで足りるけど、いつかBlackmagic RAW出力に対応したカメラを買ったりしたら試してみたいので12G

としました。

正直FHDでのバックアップ録画には過分なスペックですが、そもそもの「画面付きレコーダー」に選択肢がほとんどないので致し方なし。けっこうずっしり重いですが、Hyperdeck Shuttle HD + 10インチモバイルモニターを持ち歩くことを思えば似たり寄ったりで配線も簡略化できるのでいいかなと。できればSDカード運用で外付け機器は最低限にしたいところ。また上下に3つずつ三脚穴があるので、ケージをつけなくてもSSDやマイクレシーバーを固定できてよさげ。卓上三脚ともどもヨサゲなのを物色していきたいと思います。

■ファーストインプレッション

・外観

実使用想定イメージ

USB-Cポートが下部にあるので、外部SSDを使う場合は三脚などで本体を浮かせる必要があります。傾斜もあった方が見やすいし、卓上で使うならミニ三脚はマストでしょう。SSDなどの付属物を入れると1kg位になるので、三脚も割としっかりしたものが安心です。手近にあったSONYのシューティンググリップをつけてみたところかなりしっくり来ました。つなぐ先がαなどSONY製対応カメラの場合、グリップのリモコンでカメラ側のズームや録画開始停止ができるのもアリかも知れません。

右側面

右サイドは電源ボタン。ヘッドフォンジャック、SDカードスロットx2、電源ポートなどが並びます。7インチモデルはSDカードスロットが2つあることで容量溢れた時に別スロットに継続録画してくれるので安心感。電源コネクタはがっちりネジ止めするタイプなので多少面倒ですが収録中にうっかり抜ける心配もなく、これぞ業務用という感じです。

左側面

逆サイドにはミニXLR、SDI入出力、HDMI入出力が並びます。SDIは当面利用する機会はなさそう。HDMIよりもケーブルが長くなっても安定するのですが出力機器(カメラ)をもっていないので、コンバーターをかましてまで使うような遠距離設営の現場機械があるかどうか。HDMIのINだけでなくOUTもあるのが地味に重宝しそう。さらに大きなモニターにつなぐとか。ミニXLRは高音質収録に良いですが、最近はDJI MicやWireless GO2といったワイヤレスマイクを使うことが多いのでこれもまだ活用の場面は訪れなそう。いつか感染対策とか不要になってバウンダリーマイクで収録できるようになったら、ですかね。

・使用感

起動が瞬時で、全体的な動作もサクサク。BlackmagicOS製品ですがメニュー構成もシンプルで見ればわかる直感的操作で良い。画面が大きいのでボタンも指で普通に押せるのがスマホやタブレット感覚で、ダイヤルやジョイスティックでちまちま操作するミラーレスカメラのUIとは違うところ。BMPCC欲しまる。頻繁に切り替えそうな項目は画面上にショートカットが設けてあり、練り込まれている感じ。自分でカスタムできるとなお良いですが、多分できなそう。

電源はネジ締めロック付きで不用意に外れたりしなそうな安心感。さりとてATEM MINIシリーズと違って電源ボタンもあるのは良い。現場は日を跨いで設営しっぱなしということも多いので、毎回ケーブルを外すのは地味に面倒なんですよね。

重量はバッテリーをつけなければそれほどズッシリ感はないです。基本屋内使用なのでとりあえずバッテリーは手配せず。SONYのビデオカメラ用バッテリーが2つセットできますが(なぜかこの界隈でSONYバッテリーがデファクトみたいな扱い)、買うとしてもさすがに純正でなくてもいいかな?あんまり怪しいのもなんですが。

5インチモデルだと三脚穴とUSB-Cポートが違すぎるとよく指摘されてますが、7インチモデルならその心配もなさそう。そもそも底面なのはどうかと思いますが。なんらか三脚やリグに組み込むの前提みたいな作りです。

録画データに影響なくタッチでズームできるのが良い。PinPの子画面でピントが合ってるか調べたい時、ソースを切り替えなくてもサクッと拡大して(録画データに影響与えず)確認できます。リアルFHD液晶なのでFHD収録ではそこまで必要ではないかもですが、4Kで撮る時なんかは重宝しそうです。

・タッチ操作によるズーム

画面の映像部分をダブルタップすると2倍のズームモードになります。そこからさらにピンチで拡大も可能。ピントがあってるか不安な時に重宝します。しかも録画に影響しないし、カメラに触れてブレが発生してしまう心配もない。これは普通の外部モニターでは適わないメリットかなと思います。

・ストレージ周り

SanDiskの256GBの入れてVideo Assist側でexFATに初期化直後で、

  • ProRes Proxyで713分
  • ProRes LTで325分
  • DNxHR LB MFXで716分
  • 同SQ MXFで210分
  • Blackmagic RAW固定品質 Q5で507分
  • 同Q0で131分
  • 同 固定ビットレートの12:1で507分
  • 同 3:1で131分

という予測収録可能時間表示に。品質固定は映像の動きや細かさで大きく違うので、参考値として固定ビットレートの12:1や3:1の場合の数値を出してるっぽいですね。まぁいずれにせよBM RAWは対応カメラがないと使えないので当分宝の持ち腐れです。DNxHRはあまり使ったことがないですがProResに比べてアドバンテージがなさそう?当面はProRes Proxyかな。実際に録ってみないとですが、713分だと90分x12セッションは録れない。512GBのSDを買えば足りそう。ProRes LTだとそれでも足りない。

512GBや1TBのSDカードはV30の並行輸入品は結構安いですが、Blackmagic design社の動作検証済みモデルリストに載ってないものは業務で使うのはちょっと不安。買うならコレかな?と。

これでも最もビットレートの高い収録は無理。そもそもUHS-IIの大容量モデルってまだ存在してないぽいですね。FHDでProResの比較的低ビットレート収録専用なら外付けデバイスなしでたっぷり録れるこれか512GBがいいかな。

でも今回はコスパとそろそろ入手困難になるかもという恐怖心で、同じ値段出すならと外付けSSDの2TBモデルを買ってしまいました。(リンク先は1TB)。AmazonではSAMSUNGの正規代理店のものは2TB在庫なし。海外配送のものは不安だったので避け、Joshinに残っていたのをゲット。3万ちょうどくらいだったので、SDカードメディア単価は半額程度です。

さすがに2TBあると、残収録時間表示が

ProRes Proxyで5576分
ProRes LTで2546分
ProRes 422で1785分
ProRes HQで1196分

となって、LTや422の使用も視野に入ってきそう(90分x12本として余裕みて1200分くらいほしい)。実際には映像の動きなどで圧縮量がかわるので実際に録ってみないとなんともですが、UTやインタビューは動きはさほど激しくないので、大幅に上回ることはないんじゃないかと。

T5は2017年発売の500MB/sモデルで、すでに1050MB/sのT7シリーズに置き換わりが進んでます。T7の方が安いことすらあります。ただATEM MiniといいVideo AssistといいなぜかT7は動作確認リストに載ってないばかりか、海外のコミュニティでも「T7はアカンかった、認識しない」みたいな書き込みが目立ちます。ウチではATEM Mini Extreme ISOで短時間のISO収録まで試して一応T7 Touchで録れてた気がして、T5とT7 Touchをローテしてますが、そういえば録画中に停止ボタンをおしてもランプが消えず、結局電源ブチ抜いて録画をロストしてことが何回あって、あれT7のことだったかなぁという感じ。

BMD社がT7についてなんらかアップデートを出してくれない限り、終息モデルのT5が争奪戦になっていきそう。

他社製品もリストにあるんですが日本であまり馴染みのないメーカーやモデルだったり。あとSAMSUNG T5/T7はSmallRigのクランプが色々あっていいんですよね。2245を使ってマウントしています。

下部の三脚穴にSmallRigのクランプでSSDを固定した例

試しにMacBook ProのHDMI出力をつなぎ、1080/30pのProRes Proxyで2時間ほど録画してみましたが、R170MB/s、W90MB/sのSanDisk Extreme Pro(256GB)でも止まること無く録画できました。ファイルサイズは50GBほど。デカいはデカいですが、どのみちこのまま納品することはほぼなく、簡単なカット編集や顔ボカシ入れ、音声ノイズ除去など加工してトランスコードしてから渡すことがほとんどなので個人的にはストレージに入りすれば良し。むしろPremiere Proに食わせた時の動作の軽さに驚きました。動画編集性能が売りのM1 Max MacBook Proを買ったものの、いまいち快適に編集できずにフラストレーションでしたが、Pro Resだとサクサクです。H.264だと1ファイルのシークくらいなら問題ないですが、複数の動画をPinP合成したり早回し効果を入れたりすると途端に重くなりがち。まだ4Kでは試してないですがFHD 2ストリームで10倍速のシークエンスを作ってみた限りではシークもサクサクでした。これはもうH.264/5ソース運用には戻れないかも…もうこっちがメイン?

ストレージで悩ましい点としては、SDカード/SSDのファイルシステムにexFATとHFS+が選べる点。当然Mac/Windows混在運用ではexFATがいいと思ってたんですが、ジャーナリングシステムのあるHFS+だと万一ディスク障害が出た時に復旧可能性が高まるっぽいんですよね。悩ましいですがやはりWindowsで扱えないのは困るのでexFATかな…

■キャリングケース探し

大きな液晶画面がついた機器なので運搬時はしっかりと保護できるものを物色しました。とはいえ、さらに大きな機材ケースに入れていくのであまり容積が増してしまうのもなんなので、ハードケースは除外。本機は19cm x 13cm 4cm程度なのでヨサゲに思って買ってみたものがこちらの2つ。

かなりいい感じにACアダプタ、SSD、HDMIケーブルまで収まったんですが、SmallRigのSSDクランプつけたままでは閉じられませんでした。SmallRigつけない人にはかなりオススメできます。下側は仕切りを好きな位置に移動できるのでピッタリの位置で固定できます。上蓋は厚みがあるのでACアダプタなどをメッシュ側に入れれば問題なく閉じられます。

通常はHDMIケーブルは色々な長さを別で用意していく感じなので、かわりに取り外したクランプと六角レンチを入れておくのもアリですね。

ちなみにSmallRig製品全般で使う太さの六角レンチを網羅したこちらが便利です。

もうひとつはこちら。

ポイントは上下二段構造になっている点。

下段に本体がギリギリ収納。またもSmallRigクランプが微妙ですが、ソフトケースなので多少変形しつつもファスナーは閉じられました。空きの部分にHDMIケーブルをいれてクッション代わりに。
上段に付属品

で、上段側にACアダプタ、SSD、USBケーブルを。これもかなり微妙ですが一応ファスナーは閉まります。上段のマチ(厚み)が思ったほどなく、ACアダプタはちょっとこんもりしちゃう感じ。

2022.7.1追記:最終的にこれに落ち着きそうです。ACアダプタやミニ三脚、ケーブル類まできっちり収まる感じ。ソフトケースなので保護力はさほどではないですが、大型ハードケースに入れるバッグインバッグとしてはピッタリなサイズ感でした。フタが半透明なのもいいかと思いましたが、取り外し式のポケット付きボードが上に収まるのでVideoAssistは見えない感じです(見えるようにVideoAssistを上にすると、さすがに保護力が不安)。

■まとめ

一般的なユーザテストやインタビューには明らかにオーバースペックでかなり趣味が入った選択をしてしまいました。しかし、

  • 出張実査に持っていける小型、高信頼性録画デバイス
  • タッチ(ピンチ、スワイプ)で任意箇所のズームできピントなどの確認が手早くできる
  • 後編集が快適なProResで録画可能
  • いざとなれば4Kで撮ったりバッテリー駆動で使えたり汎用性が高い

という観点で満足度は高いです。頑張って元取ってこうと思います。