今年UT/インタビューに導入して良かった機材紹介 2021

今年は後半にちょいちょい会場実査を実施できるようになってきたものの、やはりトータルとしてはリモートが多かったです。基本、会場だとハード、リモートだとソフト面での機材やノウハウが中心になりますが、それぞれについて「今年これが役に立った!」というのを紹介してみたいと思います。

■ハードウェア編

OBSBot Tiny(パンチルト制御できるWebカメラ)

まだ2実査ほどしか使ってないですが、個別記事をまだ書いてなかったのでここでトップに挙げておきます。

Webカメラです。普通のWebカメラとの違いはパンチルト(上下左右に向く)機構がついている点と、それを使ってAI画像処理で人物を自動で追いかけてくれる点。アギレルゴの川口氏が使ってみたけどイマイチだったということで譲り受けました。

通常UTやインタビューでビデオカメラ撮影する時、三脚雲台でアングルを調整したりすると思います。しかし参加者が姿勢やデバイスの持ち方を変えるとちょいちょい画角から外れてしまい再調整を余儀なくされがち。そういう時に、電動でリモート制御できるPTZ(パンチルトズーム)カメラだと便利です。UTラボなんかだと天井についていたりしますね。あぁいう製品は監視用カメラの流用だったりして大変お高いですし、一般会議室にポっとつけられるものでもありません。映像信号やコントロール信号も特殊でPCに直接つなげられないことも多いです。

ところがこのOBSBot TinyはUSBケーブル1本で映像音声は普通のUVC/UAC接続のWebカメラである上、専用ユーティリティをPC/Macにインストールすれば簡単に操作ができます。ありそうでなかった大変レアな製品です。映像音声とパンチルト制御は独立しているので、映像音声をOBS StudioやTeams/Zoomなどに入力しているのと全く独立に制御可能です。OSB Studiの場合、映像ソースのプロパティ画面からもPTZ操作可能です。さらに専用ユーティリティで各操作にキーボードショートカットがついていますので、Bluetoohtキーボードや後述のマクロキーパッドを使って離れたところから操作もできます。例えば、OBSBot Tinyと録画配信用PCはインタビュールームに置きつつ、Bluetoothが届く隣の部屋から見学者がカメラ操作する、なんてユーザビリティラボみたいなことが実現できるのです。少なくともPCがモデレーターの手の届くところにあれば、カメラ+三脚のところまで歩いていって調整する必要はなくなります。

実のところAI自動追尾機能はまだ実務では使用していません。誤動作したらイヤだなと。ざっと試した限り、追跡自体はそこそこ正確だと感じますが、顔を画面のどのいちに持ってくるのかが制御できません。通常UTやインタビューでは身体全体ではなく顔だけを抜いて画面の片隅に入れたりすることが多いですが、こいつのAIが顔を画面の中心にもってくるのか、身体全体でセンタリングするのか、みたいなところがコントローラブルではない上に、仕様でもあまり触れられていません。川口氏曰く身体を基準にしてるっぽいとのこと。なんで、画面の一部を切り抜いて使用するには厳しいかなと。顔の位置を決まったサイズ、決まった位置にして追ってくれるなら有り難いんですけど。

なおユーティリティで自動追尾は無効にできるので、完全にPTZ Webカメラとして使うことができます。この状態で使ってみましたが、途中で不具合を起こすこともなく快適に使用できました。デジカメ+HDMIキャプチャなんかよりよっぽど安定感あります。これで光学ズームがあれば最高ですが、最近海外で販売開始された4Kモデルならば電子ズームでも充分な解像度が出ると思うので、国内販売が始まったら買ってみようかと思っています。

ちなみに海外ではパンチルトズームに使えるリモコンも売られてるようですが、Bluetoothで技適をとってないのか国内の代理店からは販売されていないようです。またOBSとついてますばOBS Studioとはなんの関係もありません。

USBの規格上の制限としてケーブル長を4mくらいまでしか延ばせないという問題がありますが、それ以外ではもうビデオカメラいらなくね?と思える優秀な製品です。

RODE Wireless GO2(ワイヤレスマイク)

今年一番活躍しました。詳細は個別記事にて。簡単にいうと、1つの受信機で2台の小型ワイヤレスマイクを受けられるインタビュー向けのマイクシステムです。進行役と参加者それぞれが胸元に装着しておけば、バウンダリーマイクよりも明瞭に音声を拾えます。またマイク内にメモリが内蔵されて録音もできるので別途バックアップ用ICレコーダーを用意しなくて済みます。

AZ Macro (マクロキーパッド)

テンキーより更に少ないボタン数に絞った特定用途向けの小型キーボードのことをマクロキーパッドと呼びます。PhotoshopやPremereのようなやたらツールがたくさんあるソフトやゲームなどの操作を支援するものです。多くの製品はUSBキーボードとして固定のキーコードを発するもので、ソフト側でショートカットアサインをあわせたり、AutoHotKeyのようなユーティリティを使って変換したりします。一部の製品はファームウェアをいじって設定を書き込める場合もあります。

しかしこのAZ Macroは手軽なWebベースの設定システムを持っていてブラウザから簡単に各キーがどんなキーコードを送出するかをカスタムできます。

これを使って、

  • OBS Studioのシーンを切り替えたり録画開始
  • 上記OBSBotのパンチルト操作
  • Zoom、資料パワポ、進行シート、記録エディタなど狭い画面に様々なウインドウがひしめくオンラインインタビューで、「(例えパワポがバックグラウンドにいても)1キーでスライドを1ページめくる」みたいなマクロを実行

などの操作を1ボタンで実行できるようになり、よりスムーズなセッション進行を手助けしてくれました。さらにこの製品はBluetoothキーボードとして動作するので、少し離れた場所から進行役以外の人がさりげなく操作をすることができたりもします。同人ハードなどで入手性にやや難ありですが利用シーンがピンとくる方は是非チャレンジしてみてください。自分でハンダ付けするDIYキットと完成品が選べます。

■ソフトウェア編

XSplit VCam、Audio Hijack + Loopback

今年は久ぶりにメインPCをMacにしたので、いままでWindowsで愛用していたNVIDIA Broadcastが使えなくなりました。そこで、単体のバーチャル背景ツールとしてXSplit VCam、マイクノイズ除去ツールとしてAudio HijackとLoopbackの組み合わせを導入。これでリモート案件もMacでつつんがなくこなせるようになりました。(バーチャル背景なんて今時ZoomにもTeamsにもビルトインで実装されてるじゃないか、とお思いかも知れませんが、業務用のインタビューシステムではついていないことも多いのです…)

AutoHotKey

Windows専用になりますが、あるキー入力に対し、別のキーイベントや特定の操作をプログラムできるフリーソフトです。カメラや配信ツールの制御をしたり、オンライン会議のミュート操作、インタビューに相手に提示する写真や動画、スライドの切り替えなど、色々な制御を自動化、ショートカット化できます。きちんと体制の整ったチームで仕事をするなら作業分担もできますが、私はワンオペなことも多く、事前にこういうツールを駆使して仕込みをしておくと本番中に楽ができます。AutoHotKeyはプログラミング的な素養が必要かも知れませんが、とても多くのことができる良ツールです。

動画眼Lite

手前味噌で恐縮ですが、動画ファイルに頭出し用のインデックスをつける拙作「動画眼」シリーズに、専用アプリのインストールを必要とせずブラウザ上で簡単に閲覧(のみ)できる「動画眼Lite」をリリースしました。

動画眼でデータを作る必要がありますが、Lite形式出力したhtmlファイルを動画といっしょに渡すだけで、相手方は動画眼をインストールせずとも、またMacであってもチャプター付き再生をすることができます。ソフトウェアのインストール制限がある企業さんで重宝するかなと思って作成し、実際にいくつかの案件で納品ビデオデータにこれでチャプターを入れてお渡ししたところ便利だとご評価いただきました。

現在、このデータを作成するための動画眼もWin/Mac両対応となるVer3を準備中です。年内に出したかったけどちょっと厳しい雲行きになってきたかな…もう少々お待ち下さいませ。

■まとめ

コロナ禍で急遽リモートでユーザーテストをしなくちゃとなった昨年からだいぶ経って、自分達も、リクルーティング会社もそして参加してくださる方達やリモート見学するクライアント側も色々と知見が貯まって色々とスムーズに回るようになってきた感があります。それでも、より会場実査に近い形で例えばハードウェア製品を使って評価してもらうことはできるか?などと意欲的な要望もいただいたりとチャレンジは続きます。

会場実査は会場実査で、感染対策をしつつ見やすい/聞きやすい配信を見学者にお届けする工夫や新しい技術は毎回頭をひねりながら試行錯誤しています。

上に紹介したような製品は良さげだけど使いこなせる自身がないという方は是非ご相談いただければと思います。リサーチ案件としてだけでなく機材支援のみでもお受けしておりますので、「タスク設計や進行役は自前でやれるので、配信だけ手伝って」みたいな案件も歓迎です。

来年もどうぞよろしくお願いいたします。