先日からちらほら名前を出しているNDIというネットワーク経由の映像配信プロトコルがあります。
先日こちらのメジャーバージョンアップとなるNDI5がリリースされました。従来の(私の理解では)NDIは同一LAN内での配信がメインだったのに対し、NDI5ではインターネット越しのリモート配信をセキュアにかつ簡便に行えることを主眼としているようです。
NDIはいくつかのユーティリティ群の集合体ですが、NDI5に含まれるNDI Remoteというツールを使うと、ZoomやTeamsのミーティング招待を送るように、URL(とそれを示すQRコード)を発行し、招待された側は特別なアプリ不要でブラウザから開くだけで映像と音声を招待者に送ることができます(ブラウザのカメラ及びマイクアクセスを許可する必要あり)。招待した側がどのように映像を受け取るかというと、(他にもあると思いますが)NDI Webcam Inputというツールを起動しておき、そこから仮想ウェブカメラにリダイレクトする形になります。NDI Webcam Inputが起動していると、ZoomやTeams、OBS Studioといったツールのカメラ選択メニューに「NewTek NDI Video」という仮想カメラが出現し、それを選ぶと、遠方から送られてくる映像が受け取れ、Zoomなどに流せる、というわけです。ZoomやTeamsに流すだけなら最初から被招待者をZoomやTeamsのミーティングに参加してもらえばいいんじゃ?という気もしますが、メリットとしては、
- スマホの場合でもアプリをインストールしてもらう必要がない
- ユーザ登録も必要ない
- より高い画質、解像度の映像を受け取れる(Zoomは標準で720p、Teamsは通信速度に応じてかなりコロコロ変化するで使いにくい)
などがありそう。遅延が少ないというのもNDIの特長と言われていますが、実際のところ様々な条件で比べたわけではないので確証はありません(むしろZoomやTeamsといった会議プラットフォームの方が画質を犠牲にして遅延を最低限に抑える方向に機能するイメージ)。
またWebcam Inputの映像をZoomやTeamsではなくOBS Studioのような録画/配信ツールに入れるなら更にメリットも増えます。
- 表示(録画)レイアウトを自由にできる
- 無料プランでも時間制限を気にせず長時間使える(録画もできる)
ただし双方向サービスではないので、インタビューやユーザテストにZoomやTeamsの代わりに単体で導入できるものではないでしょう。今のところ私が使ってみたいなと思うシーンは、ZoomなどでリモートUTをする時、相手の(Zoomでつながった)スマホで画面共有をしてもらうと、インカメラが無効化され相手の表情が見えなくなります。あるいは画面共有だと操作する指が映らないのが難点となります。こういう時に相手方にもう一台スマホなりがあれば、ZoomでNDI RemoteのQRコードやURLを送って、サクっと映像ストリームを増やせるかなと。そちらのスマホで顔なり手元なりを映せるポジションに固定してもらえばいいんじゃないかと。1つのミーティングに同じ場所から複数端末で参加するとハウリングが起きて慌てたりしがちですが、NDI映像を主宰者側で独立ストリームで受け取れるならミュートなどもそちらで制御できます。さらにTeamsならばミーティング側の個別ストリームもNDIで取り出せるので、OBSで自由にレイアウトしたUT動画を組めそうな気がします。
以前にも書いた通り、ケーブルの引き回しに関するメリットもあります。
「またHDMIやUSBの問題としてケーブル長の限界があります。USBは3.0だと数メートルが限界(規格上の上限)ですし、HDMIも10mものばすとケーブルや機器の相性が出やすくなるようです。より長い距離を伝送するにはリピーターのような増幅機器が必要だったり、HDMIだと内部が光ファイバーになっている光学なケーブルなどもあるようですが、NDIだとイーサネットケーブル、場合によってはWi-Fiでもとばせるので低コストで距離が出しやすいのも特長だと言えそうです。」
NDIはこれから注目していきたい伝送方法だと思います。