3画面以上合成できるATEM MINI Extreme ISOを導入しました

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最近のUT録画/配信案件ではゲーミングノートPCやM1Max MacBook Proなど高性能ノートPCとOBS Studioを使って実施することが多かったです。特にHDMI-UVC変換がいらないWebカメラのOBSBot TinyシリーズがUTにかなり便利だとわかってからは4Kモデルも追加購入し、かなりシンプルに構成が組めるようになっていました。

ただ今回100セッション超の大規模調査をお手伝いすることになり、さすがに1人で回せないので進行役と機材操作をワンオペでシフト制で回すことなったので、「なるべく決まったスイッチON/OFF」だけで録画管理を済ませられる環境を構築することを目指し久しぶりにATEM MINIシリーズを活用することにしました。ちなみに配信は無し。結果的にOBSもバックアップ系として構築することになりました。

■3カメ合成にはEXTREME/ISOが必要

今回収録する映像は、PC画面(参加者に見せているプロダクト)+2カメラ(表情+α)でした。ATEM MINI/Pro/ISOはHDMI入力が4系統ですが、実のところ一度に画面に配置して合成できるのは2画面までです。1つがベースとして全画面表示、もうひとつはPinPで合成となります。位置やサイズは自由に変えられるものの、ベース画面のどこかに重ねる感じ。これでは今回の要求を満たせません。

これができるのは8入力の上位機種ATEM MINI ExtremeまたはATEM MINI Extreme ISO(以下まとめてExtreme/ISO)が必要です。

発売から2月でちょうど1年。そろそろ新型出るんじゃないかとドキドキでしたが、まぁ同等の機能を4Kでやろうとしたら同じ価格、サイズでは1年では無理だろうと信じて、新型出るとしてもマイナーチェンジ程度じゃないかと思いイヤな時期だけど購入することに。まぁ最悪そこまで値落ちもしないんじゃないかなとか。

Extreme 無印とISOの違いは個別系統の同時録画ができるかどうかです。Extreme無印ではスイッチング操作やテロップを入れた最終結果(PGM出力)のみが録画されますが、ISOだと8入力が独立のMP4ファイルとして残り、後の編集素材、バックアップとして使えます。録画/ストップは完全に連動で、例えば一部を常時録画して取り忘れを防ぐ、みたいな使い方はできないので使う機会はあまりないかなと思ったんですが、各チャンネルの音声も独立でWAVで保存されることがわかったので、そっちは割とあとで「別のマイクの方が音声が聞きやすかった」「うっかり複数マイクをミキシングしたら時間差でエコーになってしまった」みたいなことで役に立つかもと思い、どうせこんだけ出すならということでISOを選びました。購入時はさほど差額がなかったのもあります。残念ながらチャンネル毎に録画するかしないかを選ぶことはできず、なにも繋がっていない系統も真っ黒映像のMP4ができちゃうみたいです。まぁ途中から信号がくるソースもあるかもなので、妥当なところかもですが、なんかストレージと帯域の無駄遣いな気がしますね。それなりに高速なUSB SSDが必要になる点も注意。最近の動作保証リストをみるとSAMSUNGではいつのまにかT7が消えてT5 1TBのみになってるようです。T7の方がスペックは上なんですが掲示板みてるとトラブルが多かったみたいですね。ウチはT5 512GBとT7 Touchしかなくて微妙ですが、ISO録画しない分には今のところどちらもきちんと使えています。

容量的に1TBはいらないですが一般にSSDは容量で書き込み速度がかわることがあるので、これから買うならメーカーが対応を謳っている1TBが無難かも知れません(まぁ以前リストにあったT7がひっそり消されてたりするようですが…)。

・スーパーソースで4画面合成

で、Extreme/ISOはただ端子数が増えただけでなく、内部的にスーパーソースという機能がついたことで4画面を好きにレイアウトすることが可能になりました。1つ1つのHDMI映像やメディアプレーヤーからの画像や動画が”ソース”という呼称なのに対し、スーパーソースはそれの1つ上というかメタな存在であり仮想的なソースでもあります。スーパーソース上に任意の4ボックスを配置し、それぞれに好きなソースを割り当てられます。その結果できた映像を1つのソースとして扱うことができます(スイッチャーの並びの中に「S/SRC」ボタンがあり出力としては同格)。試してないですが、スーパーソースで4画面合成したのをソースとしてPinPなどすれば理論上5画面以上もできるぽいです。

スーパーソース(S/SRC)はソースの1つとして再入力できる

ともあれ、8入力ってなかなかUTでは使い道ないからイラネって思いがちですが、合成が3画面以上というのは割と普通になるので、筐体がデカいのとお値段が張るのが難ですが、やはりExtreme/ISOは汎用性が大きいなと。

・設定の保持により専門外のスタッフで運用しやすくなった

初期のATEM MINIシリーズは本体に設定を保存することができず、毎回ATEM Software Controlから流し込んでやる想定でした。つまり機材に弱いスタッフにいきなり使わせるのはやや壁が高い感じでしたが、今は本体にきちんと設定を保存でき、電源を入れ直しても同じ状態(最後に保存した状態)で立ち上がるので、事前にセッテイングするスタッフがいれば、実査当日は電源オン、RECボタンポチ、で運用しやすくなりました。初代無印だけ保存ができないのか、今はアップデートで対応したのかわかりません。ExtremeでないProでも今は保存ができています。

また少し凝ったことをしようとするとATEM Software Control(PCソフト)から操作する必要があることが多いATEM MINIシリーズですが、Extreme/ISOではマクロボタンが6つ装備されました。マクロ機能は元々ATEM Software Controlからならたくさん作って呼び出すことができましたが、本体からダイレクトボタンで呼び出すことができるようになったのがポイントです。これで大抵のことは操作スタッフがPCソフトを使わずにできるようになります。欲を言えばもう少し複雑なスクリプトが組めるとなおよいのですが。例えばテロップでセッション番号を入れたい、なんて時に「P01」から「P10」というテロップをあらかじめ画像で作ったとして、それを「次へ」「前へ」的に切り替えるマクロは書けません。あくまで「指定した画像を表示する」マクロしか作れないので10個個別につくりボタンも10個必要になります。今回は100セッション超なのでセッション番号を入れるのは諦めましたw。

・ヘッドフォン(モニタ)端子がついた

これがめちゃめちゃ重宝します。マイクの音がどのように拾えて収録でできているか、いままでは

  • 録画してみて、SSDをPCに刺し替えて再生してみる
  • HDMIに外付けモニタ(イヤホン端子付き)をつける
  • USBでPCに入れてOBSなどで聞く(基本PC入力音声をリアルタイムでスピーカーに出すのに向いてない

などが必要でした。Extreme/ISOでは本体背面に直接ヘッドフォンを挿すことができます。

・USBとHDMI出力も2つずつに増えた!

これも地味に制限を取り払ってくれます。USBが1つだと、SSD録画とPCへの映像(UVC出力)のどちらか片方しか使えませんでした。Zoomで中継しながら録画したい、とかは普通にあるので、いままではUSBで録画して、HDMI出力からのPGM出力をHDMIキャプチャアダプタ経由でPCへ、とかやっていましたが、USBケーブルだけで済むようになりました。

しかもHDMIが2系統になったことで、M/Vによる全ソースモニターと、最終出力であるPGMを別々のモニターに映し出せるようになりました。ATEM自体には映像をモニタできるところはないのでM/Vで全体をウォッチするのは重要です(ストレージ残量、録画時間、配信ステータス、レベルメーターなどもM/Vをみておく必要があります)。M/Vのレイアウトも8入力になったことで細分化、カスタマイズ対応していますが、残念ながらレベルメーターなどのステータス画像は大きく表示することができなさそう。

■使ってみて。熱暴走はあるのか?

Extreme/ISOでもっともアイコニックな特徴はHDMI入力が8系統に増えたことですが、実はそこはあまり重要ではなく、上記のスーパーソース、ヘッドフォン端子、USBとHDMI出力が2系統ずつに増えた、といったところが実用性向上に寄与していると思います。正直、入力4のままでいいから中間サイズ/価格みたいなモデルが理想な気もします。Extreme/ISOは多機能なのは良いですが、フットプリントはボタン数がハンパないことになってて、機材弱い人に使ってもらうにはちょっとビビらせてしまうレベルです。カメラコントロール系のボタンもBlackmagic Designのカメラを使ってない環境では無駄でしかありません。でもまぁとにかく入手して設置してみると、あれもこれもできるぜ!な万能感はあります。

もうひとつ懸念だった熱暴走ですが、確かに背面からの排熱はかなりあります。3入力をスーパーソースで合成し、非ISOで録画している状態ですが、背面の排熱はかなりムラがあります。全然熱くないこともあれば温風が出ていることも。室温との相関もあまりないように思います。映像機器なのでファンノイズを嫌って静音ファンにしてあるのでしょうがいささか不安。購入していきなり実戦投入なので安全第一で先人の例に倣ってこちらのファンを同時購入してみました。

これをサイドの吸気口(排気口?)に密着させパーマセルテープで固定して使っています。このファン、吸い出し専用なので、ATEMのエアフローに逆らってる気がしなくもないですが、冷えてる実感はあります。電源を入れるとデフォルトで風量が7になり少し音が聞こえます。たいていはそこまで必要無くて2とか3くらいに落としてほぼ無音にしてても平気。

そもそも一度も熱暴走、熱停止を経験していないので本当に必要かもわかりませんが、処理内容、季節(室温)、設置環境の風通しなどにもよるでしょう。今の現場から回収してきたら自宅であれこで検証してみたいと思います。

■リモート操作に便利なiOSアプリ「MixEffect」

ATEMにしろOBSにしろ、世界中にユーザがいて、サードパーティの支援ソリューションが充実している点も見逃せません。今回、録画機材は衝立の陰に隠して設置し、進行役が自席からREC操作をリモートでできるようにするため、iPad/iPhoneアプリのMixEffectを活用しました。ネットワーク経由での操作になるので、ATEM Miniもネットワークにつなぐ必要があります。客先のゲストWi-Fiを利用する時は有線接続がなかったりするので、自前でルーター持ち込んだり、イーサネットメディアコンバーターが必要かも知れません。

進行役席にスマホスタンドをおいてiPhoneを写真のように置くことで、席を立たずに録画操作ができるようになりました。録画ステータスも目立って確認しやすいです(まぁそれでも見落として録画漏れしちゃいましたがw)。

MixEffectの録画操作画面

ミキサー画面では録音レベルメーターがリアルタイムで確認できるので、これを持ち歩いて実際の参加者席、モデレーター席で声を発しながらレベル調整ができます。写真はiPhone13ProMaxです。iPhone7/8/SE 2世代目など4.7インチ級の画面サイズだとちょっと手狭で上のRECステータスと下のRECボタンをスクロール無しで見渡すのは無理でした。Plus系やホームボタンがない機種の方が良いかも知れません。

MixEffectのミキサー画面

またスーパーソースの画面レイアウトも純正PCソフトのATEM Software Controlよりグラフィカルで使いやすい気がしました。詳しい技術スタッフ以外が操作する時はiPad + MixEffectが良いかも知れません。

6,000円くらいしますがそれだけの価値を感じます。Androidではここまでできるものは見つけられていません(ご存じでしたら是非教えてください!)。

■まとめ

発売当初から「いやいやさすがにこのサイズと値段は…」と敬遠していたATEM MINI Extreme ISOをついに買ってしまいました。ちょうど1年で新型が出ないことを祈るばかりです。

持ち出しにはかなり厳しいサイズなのは間違いないです。非ExtremeシリーズはNintendo Switchのケースがピッタリという話が知られていますが、Extreme/ISOについてはそういう話がなく今後運搬をどうしていくかも課題です。とりあえずこのカバーは注文しましたが納期が長いようです。

ともあれ機能的には大満足。自分のPCを持ち込んで、自分が目の前にいて操作/サポートできるならOBS Studioの方が自由度は高いですが、何日も設営しっぱなしになるような現場で自分のデータを満載したPCを置いていくのは憚られます(さすがに貸し出し専用の高性能PCは常備しづらい)。その点ATEM + SSDなら録画データ以外に現場に残ることはないので安心して残して帰れます。また自分がモデレーターやっていて、録画操作やスイッチング操作を見学者などと分担したいという時や、今回の案件のようにそもそもシフト制で自分がいない日もあるなんて時、あらかじめ設定を組んで保存しておけば電源ONでスタンバイになり、RECボタンで録画開始できるのはOBSよりずっと楽です。

仮にクライアントが自社で一式揃えたいという場合、たぶんまずはOBSを進めると思います。ATEMは複雑な設定に必要なATEM Software Controlがやや専門的でリサーチが本業の人に薦めるのはやや躊躇われます。とはいってもPCもOBSの要求仕様を満足する機種選定から、常にアップデート管理をして正常稼働することを保証するのはそれなりに大変ですし、PCを買うとなると情シスが絡んできて面倒という企業さんも多いのは確か。誰か1人根性いれて操作をマスターして、事前に設定を作れる人がいるのであれば、逆に組まれた設定で起動してRECポチするまではATEMの方が断然楽。そんな事情毎の最適解があるような気がします。

道具眼ではそうした機材コンサルや設定補助、操作方法の勉強会なども随時受け付けておりますので、是非ご相談ください。

OBS StudioをUTで初めて導入したい人向けの資料も公開してますが、そのうちATEM MINI版も作れるといいなと思います。

■次期モデルに期待すること

一番欲しいのはXLR入力かなぁ。同社のカメラみたいにミニXLR端子でいいので今のマイク入力の代わりにつけるか、なにかしら外部拡張ポートみたいなので対応してくれると有り難い。なんだったらUSB端子にオーディオI/Fでつくようにしてもいいかも。

USBといえばWebカメラ入力もできたら神。絶対買い換える。HDMI x4 USB(UVC) x2くらいで。究極全部USBでWebカメラとUSBマイクつなぎまくれるようなのも面白いかも。

あとMixEffectのようなツールがより手軽に使えるようWi-Fiは載せてほしい。そしてプレビュー画面もストリーミングで流せるとなお良し。

また実務ではあまり必要ないですが、個人的には4K対応は欲しいなと思います。仮に合成や録画、配信は4K非対応だとしてもHDMI入力は4K対応でクロップして使えたりするだけでも意味はあるかなと。でもまぁ仮にExtremeの機能をすべて4K対応しようとすると値段は当たり前ですが処理プロセッサの発熱がエラいことになるので冷却系統にも余裕をもたせる必要が出てきて巨大化したり、爆音化してしまいそうな気はします。今のサイズでやろうとしたら3-5年はかかりそう。

最適化という意味ではスーパーソースついて、USBとHDMI出力が2系統、ヘッドフォンを維持しつつHDMI入力は5系統止まりくらいのちょい小型モデルがあると嬉しいですね。

YoloBoxみたいなモニタ一体型ソリューションも考えてたりするんですかね。これはこれでいいかも。

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Raspberry Pi 4でUSBカメラ映像をHDMIに変換できるか実験(ATEM Miniと使いたい)

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最近、ユーザテストの撮影用カメラとしてOBSBot Tinyが小さくて画角調整がしやすくて大変気に入っています。この製品はUSB接続のWebカメラなので、PCでOBS Studioなどで録画/配信するには適していますが、HDMI入力しかないATEM Miniシリーズには使えません。

そこで、Raspberry Pi 4(以下RP4)でUSBカメラとして認識してそのリアルタイムスルー画をHDMIというかX上でフルスクリーン表示すればATEM Miniシリーズでキャプチャできるんじゃないかという発想です。しかもRP4にはHDMI出力が2つあります。複数のUSBカメラを接続し、それぞれを個別のHDMI出力に出せれば、2カメを1台のRP4で変換できるんじゃないか、とか。

■RP4の設定

今RP4は半導体不足の煽りで品不足、価格高騰気味なようですが、幸い少し買ったものがありました。

確か1万強くらいだったと思うので、お急ぎでない方は価格が落ち着いてから買った方がよろしいかと思います。

ケースはこちら。RP4のボードより一回り大きくなりますが、内部変換ケーブルによってフルサイズのHDMIポートが2つになる点が魅力です。

+1,000円でUSB電源アダプタが付属するセットもあるようです。自分は当初適当なUSB充電器を使えばいいやと買わなかったんですが、実際にUSBにWebカメラを接続してキャプチャしたりすると電圧不足警告が表示されました。一般的な非PDの5V充電器だと2.0Aが上限なので、やはりRP4に売られている3.0Aのものを買った方が良さそうということで結局追加しました。少し割安なので最初からセットで買うのがオススメです。

また派生モデルとして下部にM2 SSD(USB接続)を追加したモデルもあるようです。録画なども考える場合はこちらも良さげです。

ウチはとりあえずこちらのSDカードでセットアップしました。

小さいmicroSDは「あれ、どこいった?」となりがちですが、そんな時この水色のカラーが目立つので扱い易いです。

■OSインストール

ちょうどRaspiOSの64bit版が正式扱いになったというニュースをみたので、これを機に新規セットアップしました。公式から2022-01-28-raspios-bullseye-arm64.zipを落としてきて解凍し、これまた公式ツールのRaspberry Pi Imagerを使ってSDカードに展開しました。

当初X-WindowのないLiteで軽量なシステムを構築できないかもトライしましたが、色々ツールを入れるのが大変で断念。キーボードやらネットワーク設定やらもひと手間です。結局あきらめてフルバージョン(X-Windowsあり)で仕切り直し。結果的に必要なツールは揃っており苦労なく表示できました。

■USBカメラの映像をウインドウに表示する

当たり前っちゃ当たり前ですが、OBSBot tinyの初代および4Kモデル双方とも差すだけで認識しました。

表示ツールはVLCなども試したんですが遅延が大きく、ffplayがマシという感じです。ただしフルHDにするとかなり遅延が出てATEM Miniへの入力ソースとしては致命的。1280×720ならほぼ気にならないですがフレームレートは10fpsに強制的に落とされてしまいました。

起動はターミナルからこんな感じ。

-iで入力デバイス。OBSBot Tiny初代と4Kを同時に挿した場合、それぞれ/dev/video0と/dev/video2にアサインされました。

-video_sizeは1280×720や1920×1080のように書いてもいいですし、hd720、hd1080のような略記も使えます。

-anは音声無効化、-fsは全画面表示です(ESCで終了)。

-framerate 30などとつけるとフレームレート指定ができますが、hd720でも強制的に10fpsに落とすよ、というウォーニングが出て上書きされてしまいます。

実験したところ、サイズをwvgaにすると950×540になり15fps、vgaなら640×360で30fpsになりました。30fpsあると明らかに残像感がなく綺麗ですが、遅延としては差は感じません。HD720/10fpsかWVGA/15fpsが実用上バランスが良いかなと思います。

正直もうちょっと行けるかと思ってたんですが微妙な結果でした。もしかするとハードウェアデコーダーを使うなど何かしら設定で改善する余地もあるかもですが、吊しの状態だとこれが限度でした。

追記:

オプションでMotionJPEGを明示したところ改善がありました。v4l2-ctlコマンドで対応コーデックを調べたところ、こんな結果が。

先に書いた上限値はYUYVモードのもののようで、MotionJPEGとH.264ならばMax 60fpsが目指せそうだったので追加検証してみた結果、

  • H.264は重く、MotionJPEGが良いカンジ
  • それでもフルHDは遅延発生

ということで、現状のベストコマンドは、

ということになりそうです。これで30fpsになりました。-framerate 60を明示的につけるとlow voltage警告が出て絵が止まったりシステムがフリーズしたので、こちらは別途3A電源が届いてから実験します。とりあえず720p/30fpsが出ればATEMなどでPinPするソースとしては充分かなと思います。

・デュアルディスプレイに同時表示は無理そう

残念ながら1台のRP4でHDMI 2系統にそれぞれWebカメラ映像を出すことは現状ダメぽいです。上記の限界があるので単純に負荷2倍だと厳しいというのもありそうですが、どもそもffplayが現状マルチストリームに対応してないようです。別々のターミナルから同時起動しても、最初のプロセスを閉じるまで2つ目が開かない感じです。

■まとめ

Raspberry Pi 4を使って、USB接続のWebカメラを簡単にHDMI出力デバイスとして扱うことができました。ただしせっかくHDMI出力が2系統あるRP4でも並行出力は無理そう。そろそろ日本でも出回るRaspberry Pi Zero 2で同等のことができるなら、Webカメラ1台ごとにこちらを装着するのも良いかも知れません。結局電源がいるという意味ではビデオカメラを使うのとかわらないですが、物理サイズが大きく違うので、運搬が楽になったり、撮影中の存在感を減らすことができる点はメリットかと思います。なにか3DプリンターでOBSBot Tinyと一緒にマウントできるケースを作ってみたいです。

今後の課題としては、

  • 電源オンでHDMIに全画面出力が出るところまで起動処理の自動化
  • SDカードを損耗を防ぐためにシステムのRead Only化
  • 長時間耐久テスト

などを行っていきたいと思います。

Wireless GOを首から下げるアダプタDIY

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前記事でWireless GOの新クリップオプションも評価しましたが、やはり次々と使用者が入れ替わるユーザーテストや商品インタビューのような用途ではネックストラップが一番手早いなということで、ワイゴーを首から吊すための方法を検討しました。

なお、UT/インタビューが捗りまくりなRODE Wireless GO2のレビューはこちらをどうぞ。

■首から下げるための様々なトライアル

Wireless GOシリーズは背面に胸ポケットなどに留めるクリップがついています。ぶっちゃけ適当な紐をここにひっかけて首に下げれば済むっちゃ済む。

ただマイクをできるだけ口元近くに持ち上げる為、こういう長さ調節機能のあるストラップを使いたかったのです。

ソニック ストラップ 多機能 丸ひも ストラップ 青 MH-223-B

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このストラップは本来社員証やカードキーを首にぶら下げるためのもので、先端の様々なパーツが選択可能になっているのですが、Wireless GOに留めるにはどれもイマイチでした。

(余談ですがこのストラップの紐は材質がPETとなっています。ポリエステル記事にアレルギーがある人にはあまり適さないかも知れません。そういう対象者が現れ、かつ襟のない服だった時のために代替手段を用意しておくと良いでしょう。自分も綿とかの素材のものを探してみようと思います。)

まず簡単なのはマグネットでつける方法。Wireless GO用のオプションでMagClip GOというのがあります(上述のFlexClip Goにも含まれます)。

これはクリップ部分にとりつける金属プレートカバーが含まれており、取り付ければ下の写真の白いRODEロゴがある部分が磁石のくっつく鉄板になります。

ホームセンターで入手できるパーツで自作したアダプタ

ということで、それを利用したものが上の試作治具です。右はただの金属プレートにリングを通したもの。これ自体に磁石がつくので、MagClip Goの磁石の両面にこれとWireless Go本体をサンドしてくっつけます。MagClip Goの磁石はかなり強力なのでバチーンと固定できます。ただ金属プレート+金属リングがカチャカチャ鳴ってマイクが拾ってしまう可能性がありそうで微妙。

次に作ったのが左のネームプレートに磁石を両面テープ止めしたもの。

ソニック 白 番号札 小 無地 10個入NF-751-W

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MagClip Goが2,300円ほどすることを別にすればかなり安上がりです。見た目はアレですがプレートを黒く塗ればマシになるでしょう。逆に初代Wireless GOのホワイトモデルの人はこれもアリ?

既にMagClip GOをもっている自分だけならここで満足するのもアリでしたが、ちょいちょいクライアントにも推奨機材として紹介するので、MagClip GO抜きで実現できるソリューションを開発したいと思いました。また強力なマグネットは時としてトラブルの元にもなるので、マグネットフリーにしたかったという理由も。

■3Dプリンターで自作!

といことでお正月休みを使って久々にCADソフトを使って設計してみました。ワンオフなのでプラ板や金属板などをカットして作ればいっか、と思っていたんですが、よくよくWireless GOを眺めると背面のクリップ付け根部分は無駄に(?)複雑な造形をしていて、綺麗に沿わせるにはCAD使った方がいいかなと。

FreeCADを使用。昔使ったFusion360よりとっつきづらかった…

3Dプリンターはないので.STLデータをDMM.makeのプリントサービスにアップロードして出力注文。毎度素材選びには悩みまくりですが、とりあえずある程度弾性があって割れにくそうなもので、短納期、低価格だったMJFという素材をチョイスしてみました。ナイロンベースの粉末素材を薬剤で固めてつくるようで、積層痕も目立ちにくいようです。研磨オプションは素材の厚み的にギリギリだったのでつけずで、表面は結構ザラザラしています。お値段は1,890円でした。量産品ではないのでまぁこんなものでしょうか。最近は機材を自前で揃えたいクライアントの相談に乗ることも多いので、その時にWireless GOリシーズを選定させていただいたお客さんには1つサービスで進呈してもいいかなくらいの価格です。

3Dプリンターで自作したアダプタ(Do-guganロゴ刻印入り)

上述のストラップと組み合わせてWireless GOに取り付けてみた感じ。横幅を本体幅にあわせたのでいい感じ。ストラップに付属しているフックやループパーツは使用せず、直接固定されているプラリングを使ってぶら下げています。

WirelessGO2に装着した状態

ロゴの部分をクリップで挟み込んでいる感じなのでガタついたりもしない感じ。ただ長時間身につけていると多少はズレて傾いたりはするかも。穴のサイズをもう少しギリギリに狭めればいいんでしょうが、手元に3Dプリンターがなく、毎回上記コストと数日の時間がかかるので一旦はこのままかな…壊れたりなくしたりして再発注する際にはもう少し調整するかも知れません。

首下げイメージ

実際に首に下げてみた感じ、しっかり上面のマイクが常に上を向く感じで良いです。

実際に実務で使ってみて、

  • すぐに壊れてしまわないか
  • マイクに擦れ音などノイズが入らないか
  • 向きがズレていったりしないか

などを評価していく予定ですが、とりあえず欲しい!という方のために、DMM.makeのクリエーターズマーケットというサービスがあり、3Dプリンターの知識がない人でも簡単に素材や色を選んで注文できるようになっていますので、そちらでの出品しておきます。

またご自身で3Dプリントできる環境がある方向けに生STLデータはGitHubに公開しておきます。充分な検証はしていませんが、as isでお使いになりた方はどうぞ。

2023.2.7追記:自宅量産可能になったので頒布受付します

自宅に3Dプリンターを導入しまして、簡単に出力できるようになりました。ご希望の方には送料程度で頒布したいと思いますので、コメントなどでご連絡いただければと思います。

材質はいまのところPETGというペットボトルなどにも使う透明樹脂で出力しています。一般的なPLA素材よりは弾力があって割れにくいんじゃないかという判断です。ので半透明というか濁った白です。使える素材、色はその時のフィラメントの在庫にもよるのでご相談となります。

Wireless GOの追加クリップ3種 FLEXCLIP GO

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昨年の実査でも大活躍だったRODEの小型ワイヤレスマイクシステムWireless GOシリーズに新しいクリップパーツが追加されました。既発売だったマグネット式おMagClip GOを含む3種類の固定具がセットになったFLEXGCLIP GOです。

MagClip GOは単品で販売されていたものとほぼ同じですが、マグネットプレート側の質感、デザインがやや変わっています。

CrossClipは前留めのシャツの合わせ目にはさんで留めるタイプのクリップで、右前でも左前でも対応できるように左右にクリップが対になってついています。

VampireClipは安全ピンが2本、牙のように生えていることに由来するネーミングなんでしょうが、ちょい微妙でした。

自分がそうでしたが写真ではどう使うかいまいちイメージがわかない方もいると思い、元旦早々動画撮ってみました。

一日に何人も参加者が入れ替わるユーザテストや製品調査系のインタビュー業務では、標準クリップも含めどれもイマイチで、結局ネックストラップで首からさげてもらうことが多いです。ただこれだとWireless GO本体がおじぎしてマイクが口を向かなくなってしまったり、ストラップを付け外しするさいにWireless GOが外れて床に落ちたりということが頻繁に起きるので、今年は自作のストラップ吊り下げ治具を作成したいと思っています。

動画眼3の公開ベータ版をリリースしました

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2022年、あけましておめでとうございます。

秋ごろから取り組んでいた動画眼の新バージョン、動画眼3の公開ベータ版をリリースしました。なんとか2021年末を目標にしていましたが、やたら仕事が立て込んできて、仕事納め後に最終調整して大晦日も作業していたんですが、結局日をまたいでしまったので元旦リリースとしました。

残念ながら正式版としての公開は間に合いいませんでしたが、機能的にはほぼ完成していて、この後は配布方法の調整(ストアで配布するかとか)になりそうなので、まずは気軽に試せるインストーラー形式でも配布しておくという意味もあって一旦ベータ版として出すことにしてみました。是非お試しいただきフィードバックいただければと思います。

2022.1.7追記:

GitHubリポジトリも公開しました。改善要望やバグレポートなどはこちらのIssuesに直接投稿していただいてもOKです。

■ついにMacに対応!

2019年にフルスクラッチで再構築した動画眼2から2年半でまたもフルスクラッチした動画眼3の最大の見どころは、ついにmacOSに対応した点です。ElectronというWeb技術をベースにしたプログラミング環境に移植することで、ほとんど追加の手間なくWindows用とMac用に両対応させることができるようになりました。自分でもMacを使うことが増えてきていて、Windowsでしか使えない動画眼2をメンテナンスするよりも、ここで頑張ってまたゼロから作り直す手間をかけてもElectronベースに移行しておこうと決心したのです。現時点ではようやく動画眼2相当の機能を盛り込んだというレベルで、2->3になって新しくできるようになったことはそれほどないんですが…

両対応するにあたって、各OS標準のキーボードショートカットとのコンフリクトを避ける意図で、従来シリーズのショートカットから一部変更になったものがあります。特に再生、一時停止のCtrl + SpaceはmacOSではIMEの切り替えなどで使われるので、今回、前後スキップのCtrl + Q/Wと並んでCtrl + Eに変更してみました。個人的には左手小指をCtrlキーにおき、薬指、中指、人差し指をQ/W/Rキーにおいておくとなかなか効率が良いかなと思います。ただし左Ctrlキーが左Shiftキーの上にないWindowsの日本語キーボードユーザも多いと思うので、今後なんらかの手当(ユーザカスタマイズなど)を検討したいと思っています。

またElectronは内部的にはブラウザのChromeを丸まる抱えているような構造で、メディア再生周りもHTML5技術ベースになります。その影響で、対応可能な動画形式がかなり限定される結果となりました。ただデファクト中のデファクトであるmp4は問題なく扱えるので現実としてそう困ることもないかなという割り切りです。またブラウザベースでインストール不要の動画眼Liteを活用するための推奨動画フォーマットはmp4となるので、ご理解いただければと思います。

正式版までの目標

今後、動作検証も兼ねて自分でも実務で使い、細かい調整やバグ修正をしていきつつ、正式版では以下の点を目指しています。

  • コードサイニング証明書によるデジタル署名
  • 自動アップデート機能の実装

1つ目は主にインストール時の警告抑止のためです。Windowsだと結局ダウンロード実績がないとSmart Screen警告が出てはしまうのですが、一応身元表示が出るだけいいかなと。また最終的にMicrosoftストアやMac AppStoreなどでの配布も視野にいれており、そのためのマイルストーンとして念願のコードサイニング証明書取得にむけて手続きを進めているところです。

2つ目は、やはり当サイトを熱心にチェックいただいてる方ばかりではないと思うので、アプリを起動するたびに自動的に新バージョンをチェックしてお知らせするようにしたいと思います。実はこのためにもコードサインが必要だったりして、1つ目とセットで今後の課題としています。

■動画眼のその次

動画眼は基本的に動画ファイルに対してメモをチャプターとして打ち込んでいくツールで、UTやインタビューの事後分析のためのツールです。セッション中にリアルタイムで入力するために動画眼Noteがありますが、今後はこれを大幅に刷新していく予定です。単にセッション中の記録だけでなく、事前のタスク設計や事後のまとめ作業などUT実務のより広いプロセスをカバーする統合ツールを構想しています。これこそWin/Mac両対応にしたいと思っての、その練習として先に動画眼3に着手したようなものです。Electronにもだいぶ慣れてきたので、今年はいよいよこちらの新ツールにも取り組んでいきたいと思います。

今年もよろしくお願いいたします。

今年UT/インタビューに導入して良かった機材紹介 2021

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今年は後半にちょいちょい会場実査を実施できるようになってきたものの、やはりトータルとしてはリモートが多かったです。基本、会場だとハード、リモートだとソフト面での機材やノウハウが中心になりますが、それぞれについて「今年これが役に立った!」というのを紹介してみたいと思います。

■ハードウェア編

OBSBot Tiny(パンチルト制御できるWebカメラ)

まだ2実査ほどしか使ってないですが、個別記事をまだ書いてなかったのでここでトップに挙げておきます。

Webカメラです。普通のWebカメラとの違いはパンチルト(上下左右に向く)機構がついている点と、それを使ってAI画像処理で人物を自動で追いかけてくれる点。アギレルゴの川口氏が使ってみたけどイマイチだったということで譲り受けました。

通常UTやインタビューでビデオカメラ撮影する時、三脚雲台でアングルを調整したりすると思います。しかし参加者が姿勢やデバイスの持ち方を変えるとちょいちょい画角から外れてしまい再調整を余儀なくされがち。そういう時に、電動でリモート制御できるPTZ(パンチルトズーム)カメラだと便利です。UTラボなんかだと天井についていたりしますね。あぁいう製品は監視用カメラの流用だったりして大変お高いですし、一般会議室にポっとつけられるものでもありません。映像信号やコントロール信号も特殊でPCに直接つなげられないことも多いです。

ところがこのOBSBot TinyはUSBケーブル1本で映像音声は普通のUVC/UAC接続のWebカメラである上、専用ユーティリティをPC/Macにインストールすれば簡単に操作ができます。ありそうでなかった大変レアな製品です。映像音声とパンチルト制御は独立しているので、映像音声をOBS StudioやTeams/Zoomなどに入力しているのと全く独立に制御可能です。OSB Studiの場合、映像ソースのプロパティ画面からもPTZ操作可能です。さらに専用ユーティリティで各操作にキーボードショートカットがついていますので、Bluetoohtキーボードや後述のマクロキーパッドを使って離れたところから操作もできます。例えば、OBSBot Tinyと録画配信用PCはインタビュールームに置きつつ、Bluetoothが届く隣の部屋から見学者がカメラ操作する、なんてユーザビリティラボみたいなことが実現できるのです。少なくともPCがモデレーターの手の届くところにあれば、カメラ+三脚のところまで歩いていって調整する必要はなくなります。

実のところAI自動追尾機能はまだ実務では使用していません。誤動作したらイヤだなと。ざっと試した限り、追跡自体はそこそこ正確だと感じますが、顔を画面のどのいちに持ってくるのかが制御できません。通常UTやインタビューでは身体全体ではなく顔だけを抜いて画面の片隅に入れたりすることが多いですが、こいつのAIが顔を画面の中心にもってくるのか、身体全体でセンタリングするのか、みたいなところがコントローラブルではない上に、仕様でもあまり触れられていません。川口氏曰く身体を基準にしてるっぽいとのこと。なんで、画面の一部を切り抜いて使用するには厳しいかなと。顔の位置を決まったサイズ、決まった位置にして追ってくれるなら有り難いんですけど。

なおユーティリティで自動追尾は無効にできるので、完全にPTZ Webカメラとして使うことができます。この状態で使ってみましたが、途中で不具合を起こすこともなく快適に使用できました。デジカメ+HDMIキャプチャなんかよりよっぽど安定感あります。これで光学ズームがあれば最高ですが、最近海外で販売開始された4Kモデルならば電子ズームでも充分な解像度が出ると思うので、国内販売が始まったら買ってみようかと思っています。

ちなみに海外ではパンチルトズームに使えるリモコンも売られてるようですが、Bluetoothで技適をとってないのか国内の代理店からは販売されていないようです。またOBSとついてますばOBS Studioとはなんの関係もありません。

USBの規格上の制限としてケーブル長を4mくらいまでしか延ばせないという問題がありますが、それ以外ではもうビデオカメラいらなくね?と思える優秀な製品です。

RODE Wireless GO2(ワイヤレスマイク)

今年一番活躍しました。詳細は個別記事にて。簡単にいうと、1つの受信機で2台の小型ワイヤレスマイクを受けられるインタビュー向けのマイクシステムです。進行役と参加者それぞれが胸元に装着しておけば、バウンダリーマイクよりも明瞭に音声を拾えます。またマイク内にメモリが内蔵されて録音もできるので別途バックアップ用ICレコーダーを用意しなくて済みます。

AZ Macro (マクロキーパッド)

テンキーより更に少ないボタン数に絞った特定用途向けの小型キーボードのことをマクロキーパッドと呼びます。PhotoshopやPremereのようなやたらツールがたくさんあるソフトやゲームなどの操作を支援するものです。多くの製品はUSBキーボードとして固定のキーコードを発するもので、ソフト側でショートカットアサインをあわせたり、AutoHotKeyのようなユーティリティを使って変換したりします。一部の製品はファームウェアをいじって設定を書き込める場合もあります。

しかしこのAZ Macroは手軽なWebベースの設定システムを持っていてブラウザから簡単に各キーがどんなキーコードを送出するかをカスタムできます。

これを使って、

  • OBS Studioのシーンを切り替えたり録画開始
  • 上記OBSBotのパンチルト操作
  • Zoom、資料パワポ、進行シート、記録エディタなど狭い画面に様々なウインドウがひしめくオンラインインタビューで、「(例えパワポがバックグラウンドにいても)1キーでスライドを1ページめくる」みたいなマクロを実行

などの操作を1ボタンで実行できるようになり、よりスムーズなセッション進行を手助けしてくれました。さらにこの製品はBluetoothキーボードとして動作するので、少し離れた場所から進行役以外の人がさりげなく操作をすることができたりもします。同人ハードなどで入手性にやや難ありですが利用シーンがピンとくる方は是非チャレンジしてみてください。自分でハンダ付けするDIYキットと完成品が選べます。

■ソフトウェア編

XSplit VCam、Audio Hijack + Loopback

今年は久ぶりにメインPCをMacにしたので、いままでWindowsで愛用していたNVIDIA Broadcastが使えなくなりました。そこで、単体のバーチャル背景ツールとしてXSplit VCam、マイクノイズ除去ツールとしてAudio HijackとLoopbackの組み合わせを導入。これでリモート案件もMacでつつんがなくこなせるようになりました。(バーチャル背景なんて今時ZoomにもTeamsにもビルトインで実装されてるじゃないか、とお思いかも知れませんが、業務用のインタビューシステムではついていないことも多いのです…)

AutoHotKey

Windows専用になりますが、あるキー入力に対し、別のキーイベントや特定の操作をプログラムできるフリーソフトです。カメラや配信ツールの制御をしたり、オンライン会議のミュート操作、インタビューに相手に提示する写真や動画、スライドの切り替えなど、色々な制御を自動化、ショートカット化できます。きちんと体制の整ったチームで仕事をするなら作業分担もできますが、私はワンオペなことも多く、事前にこういうツールを駆使して仕込みをしておくと本番中に楽ができます。AutoHotKeyはプログラミング的な素養が必要かも知れませんが、とても多くのことができる良ツールです。

動画眼Lite

手前味噌で恐縮ですが、動画ファイルに頭出し用のインデックスをつける拙作「動画眼」シリーズに、専用アプリのインストールを必要とせずブラウザ上で簡単に閲覧(のみ)できる「動画眼Lite」をリリースしました。

動画眼でデータを作る必要がありますが、Lite形式出力したhtmlファイルを動画といっしょに渡すだけで、相手方は動画眼をインストールせずとも、またMacであってもチャプター付き再生をすることができます。ソフトウェアのインストール制限がある企業さんで重宝するかなと思って作成し、実際にいくつかの案件で納品ビデオデータにこれでチャプターを入れてお渡ししたところ便利だとご評価いただきました。

現在、このデータを作成するための動画眼もWin/Mac両対応となるVer3を準備中です。年内に出したかったけどちょっと厳しい雲行きになってきたかな…もう少々お待ち下さいませ。

■まとめ

コロナ禍で急遽リモートでユーザーテストをしなくちゃとなった昨年からだいぶ経って、自分達も、リクルーティング会社もそして参加してくださる方達やリモート見学するクライアント側も色々と知見が貯まって色々とスムーズに回るようになってきた感があります。それでも、より会場実査に近い形で例えばハードウェア製品を使って評価してもらうことはできるか?などと意欲的な要望もいただいたりとチャレンジは続きます。

会場実査は会場実査で、感染対策をしつつ見やすい/聞きやすい配信を見学者にお届けする工夫や新しい技術は毎回頭をひねりながら試行錯誤しています。

上に紹介したような製品は良さげだけど使いこなせる自身がないという方は是非ご相談いただければと思います。リサーチ案件としてだけでなく機材支援のみでもお受けしておりますので、「タスク設計や進行役は自前でやれるので、配信だけ手伝って」みたいな案件も歓迎です。

来年もどうぞよろしくお願いいたします。

『ユーザーインタビューのやさしい教科書』連動動画Vol.2公開と裏話

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『ユーザーインタビューのやさしい教科書』の連動解説動画の第二弾公開しました!

今回もなかなか見る機会がないと思われる、インタビューガイドの作成(仕上げ)の模様をライブっぽく収録したものになります。著者の1人、奥泉さんが作ったドラフトを元に、他の著者陣で議論をしながらブラッシュアップしていくという内容。第一弾では割と事前に打ち合わせをして、どこをどう直すというのをシナリオで決めておいてコンパクトにまとめましたが、その過程で、「この打ち合わせ自体をコンテンツにした方が有益なんじゃね?」という気付きがあり、今回は打ち合わせなしのぶっつけ本番で撮ってみました。おかげで90分くらいのボリュームになってしまい、編集担当の私は大変でした、、それでも40分とかになってしまい恐縮ですが、一言一句漏らさず聞くというよりは、現場ってこんな風に改善してくのねという雰囲気だけでも感じでもらえればと。一応ポイント的なところも頑張ってチャプターを切りましたので、概要欄にあるリンクから見返したいところにとんでいただければと思います。

■技術的な裏話というかメモ

今回も緊急事態宣言下で完全リモート収録だったんですが、話者が2人->4人に増えたりして色々大変だったので次回のためにも記録を残しておこうと思います。内容に関係ない技術的なお話なのでご興味のある方だけどうぞ。

収録はTeamsのNDIエクスポートを使用

普段著者陣の会議はZoomですが、この時だけは慣れないTeamsを使ってもらいました。その理由はTeamsがNDIというIPベースの映像出力規格に対応しているからです。しかも参加者毎、および画面共有の個別で取り出せます。

やり方は以前の記事で紹介しています。

普通にZoomやTeamsの録画機能で撮ったり、会議画面をスクリーンキャプチャで撮ると、レイアウトの自由度が制限されてしまいます。そこでNDI経由で個別のストリームをOBS Studioに入れ、今回のようなレイアウトを組んだ状態で(OBSで)録画しました。通信量や処理的には結構重たそうですが、光回線 + Ryzen 3900 + RTX3070機で割と普通にいけました。

回線状況で受信解像度が変化しても表示サイズを一定に保つ

Teamsの仕様上、通信速度が遅いと解像度が動的に変化してしまい、OBSに入力されるストリームの解像度も大きくなったり小さくなったりするので、OBS上で常に固定サイズ、固定位置で表示されるように設定に苦慮しました。

各参加者のNDIソースを右クリックして「変換の編集」ダイアログを出し、位置揃え、バウンディングボックスの種類/配置をそれぞれ「左上」「境界の幅に合わせる」「中央」にしました。

OBSの「変換の編集」内容

あくまで個別ストリームなのはTeams->OBS間の話で、それぞれを個別に録画をしたわけではないので、後の編集耐性のため、OBSのキャンバスは4Kにして、極力高解像度のまま録画するようにしました。

音声周り

最近のOBS StudioはRTX Broadcastの強力はノイズキャンセルをフィルターとして活用できるようになっています。なので、周辺雑音がひどい参加者がいる場合、個別にフィルターをかけることができます(同時処理ストリーム数が不明で、何人まで個別にかけられるかは不明)。ただTeamsのNDI出力の場合、音声は各ストリームに録画者以外の声が全員分載ってきてしまうようです。なので、後から「この人の声だけ大きく」ということは基本できません。ナノで音量バランスは事前に確認をして各自の送信音量を調整してもらう必要がありました。

また「録画者以外」と書きましたが、当然ながらローカルでしゃべってる自分の声は送信されることはあれど受信で返ってはきません。なので自分の声だけは別途OBSにも取り込んでミックスする必要がありました。自分の声だけはネットワーク経由しないのでもしかすると若干音質が良かったりするかも知れません。ちなみに画面共有も録画者のPCからはできない制約があります。完璧を期すのであれば、参加者と録画者のPC/Teamsアカウントは独立にした方がいいかもです。

結局、OBS上では、

  • 話者1のNDIストリーム音声
  • 話者2のNDIストリーム音声
  • 画面共有NDIストリーム音声
  • ローカルのマイク音声(自分の声)

くらいをマルチトラックで録った気がします。NDIストリームの音声は基本どれも同じ(自分以外の全員の声)なんですが、フィルターの掛け方を変えたり、音ズレがあったりで保険として機能した感じです。別トラックに録ったので、後で個別に取捨調整ができます。間違えてもこれらをミックスで録らないのが重要。

例えばノイズキャンセルですがRTX Broadcastは強力すぎてキー打鍵音はマウスクリック音も完璧に消し去ります。今回は画面共有したWordファイルを編集しながらという映像なので、逆に打鍵音やクリック音はあった方が自然だなと思い、結局NCかけなかったトラックを採用し、後処理で可能な範囲でノイズを低減しました。

画面共有ストリームのズレ

どのストリームがどれだけズレてたのか正確に記憶してませんでしたが、OBS Studioに集約して録画したデータをみると、画面共有ストリームだけズレがあることがわかりました。顔同士はピッタリ、音同士もズレはなく、画面共有か顔映像のどちらかが音声にあってるような状態でした。音は独立でズラせるのでどっち基準でもいいんですが、リップシンクをとると、同じ音声トラックに入っている打鍵音はクリック音がどうしても画面共有とズレてしまい違和感が出ます。

これはPremiere Pro側で映像を2レイヤーに複製し、画面共有部分だけをくり抜いたものを時間的にズラして重ねる、という技で凌ぎました。つまり4K映像x2枚(実質1.6枚くらい?)くらいの処理が必要になり、先述のスペックのPCでもかなりしんどかったです。編集時のタイムライン移動時にもデコードが追いつかずカクカクしたし、最終の4Kエンコードも40分ソースが10時間くらいかかりました…(なぜかGPUが使われずほぼCPUエンコードされてたっぽい)。普段の編集時は画面のズレには目をつぶって補正したレイヤーを非表示にして作業し、最後のエンコード段階でのみ表示に戻すという感じで凌ぎましたが、次はプロキシを作ってしまった方がいいかも。

Adobe StockでBGMを購入

いつもなら無料BGM素材を「甘茶の音楽工房」さんなどでいただいてくるところですが、今回は少しこだわろうと思ったのと、先日受講したPremiere ProのセミナーでAdobe Stockからの直接インポートを学んだのを使ってみたくてAdobe Stockを使ってみました。Premiere Proの画面上で直接映像とあわせて色々なBGMを試聴できるので強力です。楽曲自体のバラエティや品質もやはり有料なだけあるという実感。キーワードも日本語で売ってもきちんと英訳された候補が挙がってくるので、かなりの選択肢があります。

とはいえ1曲実質1,200円ほどするのは個人の趣味範囲で利用頻度も一定しない身からするとちょい高いですね。クレジットパックも6ヶ月の利用期限があるので、あまりお得だからと大きなものを買っても使い切れるかというところです。CCのサブスクリプションに月1本分でいいからライセンス付与してくれないですかねー…

あと面倒なのはAdobe上はきちんと料金を支払ってあっても、Youtubeでは一旦不正使用の疑いがかかり、Adobe側で取得できる認証キーをコピペして権利を証明しないとフラグが消えない点です。公開が差し止められたりまではしないですが、管理画面上に出続けるのでなんとなく気分を悪いです。

でもこの便利さ、ラインナップはクセになります。通常業務ではBGMをつけることはないですが、他の映像素材も買えるのでなんか活用方法を考えたいなと思いました。

■まとめ

などとまぁ趣味で培った技術の機材を投入して頑張って編集しました。4Kでアップしてあるので高解像度環境で見ていただければWordの文字などもクッキリ鮮明かと思います。是非ご覧いただければと思います。

Vol.3はまたかなり濃縮されたコンパクトなコンテンツになる予定です。

『ユーザーインタビューのやさしい教科書』発売と連動動画公開のお知らせ

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『ユーザーインタビューのやさしい教科書』本日発売です。朝からiPhone13ProMaxが届いてデータ変更作業中なので、まだ書店に記念写真撮りにいけてないですが、たぶん店頭には並んでいるはず…(あとで行ってきます)。

また発売を記念したコラボ動画作りました。文章で読んでも実際にやるイメージわかないなーという方のために、筆者陣が各章の実務作業をしている様子を撮ったものです。何本か作って行く予定ですが、第一弾として、伊藤さん、奥泉さんによる「参加者募集アンケートをつくる」編(二章前半部分に対応)が公開済みです。今のところFacebookページからご覧いただけますYoutubeチャンネルで公開しました!)。Googleフォームを使って作ったスクリーニングアンケートのドラフトを2人が精査して議論しながら仕上げていく様子を撮っています。

コロナ禍なので完全リモートワークで製作しました。一部映像が乱れる部分がありますがご了承ください。第二弾は同様にインタビューガイドの作成(仕上げ)部分をお送りする予定です。全体にまずは遠隔コラボレーション作業で作れるものから作っていき、後々状況が落ち着いてきたら二章後半の会場設営なども撮っていきたいと思っています。実査や分析のところはどちらでやるか思案中です。

我々も手探りで作っていますが、こんな映像が見られたら参考になりそう、自分達でもやってみられそう、といったリクエストなどありましたらFacebookページなどにお寄せ下さい。

とりあえず、すぐに1時間超えてしまうノーカット版を出すべきか、イイハナシしてるとこだけ切り抜いてまとめた方がいいのかってところから悩んでいます。とりあえず第一弾はダイジェストにしてみましたが、こちらもご意見いただければと思います。

HDMI出力にも対応したIPEVO書画カメラの上位モデルVZ-Rを導入しました

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スマホ向けサイトやアプリ、モバイルデバイスのユーザテスト(UT)に欠かせない書画カメラ。台湾メーカーIPEVO社の製品をご利用の方も多いかと思います。私も2015年からから愛用しています。2019年にV4Kを購入し活用してきました。

IPEVO V4K 超高解像度 USB 書画カメラ

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が、先日の実務で事前設営をしようとしたところなぜか映らず。USBポートを挿すと他のカメラも一斉に停止。ひどいとノートPCの内蔵キーボードまで効かなくなるという状態。そしてカメラ部分がかなり発熱していることに気付きました。これはショートなど物理的な故障の可能性が高いぞと。書画カメラはミッションクリティカルな装備なので、予備として念のため持参していた旧モデルiZiggiに交換してその場は乗り切りましたが、こちらのモデルはカメラ性能が弱く1028×768程度の解像度で15fps(コマ/秒)しか出ません。手などを素早く動かすと動画ブレが起き見辛い映像になります。非常用ならまだしもこれをメイン機とする気にはなれなかったので、大急ぎで代替機を手配することに。

ちなみにIPEVO社のサポート規定によると

  • 購入1年以内の不具合は交換対応
  • 修理はしていない

という割り切り仕様。つまり1年過ぎて壊れたら捨てるしかないということです。この辺りはELMOやEPSONといった国産メーカーと考え方が違うところでしょうか(この2社の体制は調べていませんし、価格差もあるので一概に非難をする気はありません)。

■修理できないので買い換える。どれにしよう?

選択肢として、

  1. もう一度、V4Kを買う(1.5万円)
  2. 最近出た上位モデルのV4K Proを買う(2万円)
  3. HDMI出力もついたVZ-Rを買う(3.3万円)

という感じでした。

V4K Proは先月か先々月くらいに発売されたばかりのUSBモデルでは最上位機種。V4Kとの大きな違いは、ライトがついたことと、マイクにAIノイズキャンセルがついた点。スマホ画面を撮る場合、ライトはむしろ反射して見辛くなるので不要です。IPEVO歴代モデルのマイクはク〇みたいな音質で、個人的には最初からないものとして見ていましたが、ようやくそこにテコ入れをしてきたなという感じです。マイクも個人的にはより品質の高い外付けマイクを使うのでさほど魅力を感じませんでした。よりシンプルなセッティングで済ませたい人にはいいかもですが、私の使い方だと+5,000円の価値はないなということで選外。

奮発してVZ-RにすればHDMI出力がつきます。つまりATEM MINIシリーズと組み合わせてPCレスで収録ができます。実はATEM MINIを手にした当初から書画カメラもHDMI付きがほしいなぁと思っていましたので、これはチャンスといえばチャンスです。臨時出費としては痛かったですが、これを気にVZ-Rにしてみました。

ちなみに他のラインアップとしては、USBモデルに小型軽量なDO-CAMと、HDMI & USBに加えiZiggiのようにワイヤレスにも対応した最上位機種のVZ-Xもあります。DO-CAMはマイクがないかわりに畳んだ時のサイズがかなりコンパクトそうです。出張UTには良いかも知れません(余裕ができたら予備に欲しい)。ワイヤレス機能もiZiggi以降使って折らず、やはり通信トラブルなどのリスクを考えると、UTのような固定位置での使用でわざわざ無線化するメリットはなく選外でした。

ちなみにカメラ性能は4Kモデルも含め30fps出るのはフルHDまでとなるので、実質同等と考えていいかなと思います。

IPEVO製品は国内では基本的にAmazonの公式ストアでの購入となります。プライム配送だったので本番の前日に入手することができました。

■VZ-Rレビュー

(照明の関係で明るい色味に見えますが、実際はもう少し濃い落ち着いたグリーンです)

アームを畳んだ状態

今回は既にセッテイングが固まっていたこと、同時にZoom配信をする必要があったことなどがあり、せっかくHDMI対応モデルを買ったものの引き続きUSBでの使用となりました。

USBモデルとの違いは関節数です。USBモデルは3箇所が可動するのに対し、HDMI系(VZ-R、VZ-X)は2箇所です。おそらくHDMIやワイヤレス機能を担うメイン基板が支柱部分に入っているのでしょう。そこが垂直に立ち上がり、その上端からアームが生える形です。この自由度の低さが設置性に影響しないかは懸念でしたが。実際被験者がスマホを構えた位置からの距離がとりづらく、アクリルパーティションと干渉してしまいましたが、斜めに配置してカメラ向きの回転で調整できたので実用上は問題とはなりませんでした。強いて言えば、アクリルパーティションの隙間から手を差し込んで角度を微調整するのが少しやりづらかったなという位。

アームが斜めになるように設置し、カメラだけ回転して調節すれば、奥行きが狭い場所でも使用可能

また関節部分にネジを増し締めできる機構がなさげ。今のところまったく問題ないですが、将来的に緩んできたらどうなんだろう?

操作ボタンは支柱部分のフロント側に並んでいます。USB接続の場合は専用ユーティリティやドライバ画面(OBSの場合、プロパティ画面から呼びだせます)でも操作可能。HDMIの場合はそれができないのでオートフォーカスとかでうまく録れない時なんかは少し困るかも知れません。

操作ボタン。側面にラベルが入っているので、最悪この面が見えるとブラインド操作も可能?

背面には50/60Hz切り替えスイッチがありました。これは富士川をまたいで移動しない限り触らないので、むしろソフトの設定漏れで不適切な設定になってしまうことがなくて安心かも知れません(Logicoolのカメラが少し前までOSを再起動すると60Hzに戻ってしまうバグがあって大変悩まされた経験)。

充電ポートがUSB type-Cなのも今時で歓迎。HDMI出力時はこちらから別途電源供給する必要があります。

2022.1.14追記:この機種のUSB電源ポートはちょっとクセが強いみたいです。USBケーブルをメチャメチャ選びます。特にType-C to CでMacBook Proなどに直結しようとすると通電すらしないことが多いです。USB 3.2やPDに対応したケーブルを使ってみたり、逆にUSB2.0結線のみのC-Cケーブルにしたりするも電源が入りません。より確実なのはPC/充電器側がType-AになっているA-Cなケーブルを使うことです。MacBookのようにType-CしかないPCだとわざわざUSBハブを使う必要があり、なんだかなーという感じです。付属ケーブルが一番いいんでしょうが、長さの都合などで汎用品を使いたい場合などは、必ず本番環境で通電/認識することを確認できたケーブルを用意しましょう

足の円盤部分は2本のネジで固定してあり、持ち運ぶ時にさっと外して、というわけにはいきません。箱には簡易ドライバーが付属してはいました。基本的に裸で運搬することは想定していないんでしょう。キャリングポーチ的なものも付属しませんし。ちょっと機材バッグに入れて行くには嵩張るかなという感じ。円盤自体は金属製で重みがあるので、USB系より重心は高いものの、使用時の安定感は充分です。ちょっと手が当たったくらいで倒れることはないでしょう。

底面プレートはネジ止めで頻繁に付け外しする想定ではない

とりあえず今回の2時間 x 7セッションの間、一度も不具合なく安定して使用できました。

■V4KはDYI修理も失敗…

実査出張が終わって帰宅した後、なんとかDIY修理ができないか挑戦してみました。とりあえずUSBコネクタ側の接点不良などを疑い、コネクタをちょん切って新しいコネクタをつけてみましたが、やはりUSB 4ピンのうちの両端(電源の+と-)がショートしていました。ケーブルの途中でのショートを疑い、今度はカメラに近い側で切断してみましたがケーブルは問題なし。つまりカメラ基盤内でのショートかなと。さすがにこれ以上は私の技術ではどうしようもなく断念。廃棄としました。2年、数回の使用でした…

翌日セルフパワーのUSBハブも故障して電源アダプタをつないでおくだけで異常発熱していることが発覚。まだ一ヶ月くらいしか使っていない新品に近い状態でした。ショートしたカメラのせいでハブが壊れたのか、ハブのせいでカメラが壊れたのか知る術はありません。

■これからIPEVOカメラを買う人へのオススメ

今回の故障は外部要因かV4K自体の問題かわかりません。またIPEVOのサポート体制は先に書いた通りです。そこはまぁとりあえずそういうものだと思える人向けですが、これからIPEVO書画カメラを買おうと思う人へのアドバイスというか考え方を書いてみます。

・USBかHDMIか

HDMIがあるとプロジェクターに直結して投影することができます。ただUTではさほどニーズはないのかなと思います。どちらかといえばPCについないでOBSなどのツールで録画したり、ZoomやTeamsの入力カメラとして中継したりという使い方が中心になるのではないでしょうか。USBモデルの方が安いし、基本はそちらでいいんじゃないかなと思います。

USB系では先に書いたように、ノイズキャンセル(以下NC)マイクがついたV4K Proが最上位モデルとなります。このNC性能は自分で確かめたわけではないので定かではないですが、推奨距離は30-70cmとのことで、無指向性だとしても、書画カメラの真ん前に陣取った人(被験者)の声がよいでしょうが、モデレーターの声はどうかなという気がします。だったらV4KかDO-CAMにして差額でWireless GO2のような良いマイクに投資した方が良いかなと思います(差額で買える値段じゃないですけどw)。V4KかDO-CAMでいえば差額を考えるとDO-CAMにあまりメリットはない気がします。ただ違いを考えるとV4Kはもしかすると終息していきDO-CAMとV4K Proに集約されそうな気もします。見張っていればV4Kがなくなる瞬間にバーゲンプライスになるかも?

もしくはV4K Proのマイクは被験者用と割りきって、モデレーター用に別のマイクを用意するとかはアリですね。

UTユースでHDMIが欲しくなるのは、私のようにATME MINIなどHDMI入力の録画機器、スイッチャーを組み合わせたいケースになるかと思います。専用テストラボで録画機器が別室の観察ブースにあって、そこまでケーブルを長く引き回さなければならない時もUSBでは限界があるのでHDMIを使う必要があるでしょう。ワイヤレスのVZ-Xは一見手軽なように見えて、つながらない時のトラブルシュートはむしろ知識が必要になるので、玄人向けだと思います。画質、安定性の面では有線をオススメしたいです。

使い方次第なので、「これ一択!」というのはありませんが、参考になれば幸いです。

「ユーザーインタビューのやさしい教科書」が発売されます!

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2015年に共著で出した「マーケティング/商品企画のための ユーザーインタビューの教科書」が増補改訂され、「ユーザーインタビューのやさしい教科書」として発売されます!

ユーザーインタビューのやさしい教科書

ユーザーインタビューのやさしい教科書

奥泉 直子, 山崎 真湖人, 三澤 直加, 古田 一義, 伊藤 英明
2,739円(04/26 00:03時点)
Amazonの情報を掲載しています

オリジナル版はマイナビさんのオンデマンド出版的な枠で、ごく一部の店舗を除き、基本Amazon専売でした(電子版は複数のサイトで買えた)が、今回は一般流通ルートでの販売なので、お近くの書店でもお買い求めいただけます。もちろんKindleなどの電子版もあります。これもオリジナル版をお読み下さった反響のお陰です。ありがとうございます。

改訂内容としては、出版から年月が経ち読者の方からお寄せいただいたご意見などを元にした修正や補足と、コロナ禍で対面インタビューが難しくなったことを受けて増えたオンラインインタビューに関するノウハウの追加が主になります。私も二章後半の準備や機材部分のところで

  • 対面インタビューを実施する際の会場の感染対策について
  • 感染対策(マスク、パーティション、ディスタンス、換気)などによる音声収録面の課題を解決する為のセッテイング

などについて書かせていただいています。2015年当時にはなかった推奨機材の、Rode Wireless GO2ATEM MINIシリーズについても簡単ながら紹介させてもらっています。

コロナ禍になり、これは今までと全く違うやり方をしなければインタビュー自体できなくなるぞ!という危機を感じ、本書でもノウハウを共有したいと思って執筆に着手。できるだけスピーディにリリースしたいという思いからオリジナル版を改訂するアプローチを選択。それでも思いのほか時間がかかってしまい、そういうしている間にワクチンが承認されて「あれ、これ出版される頃にはコロナ禍とか過去のものになってんじゃね?」みたいな軽口も著者陣で交わされていました。しかし現実はなかなかワクチン接種も進んでなかったり、変異株が登場してブレークスルー感染も起きるなど、まだまだ混迷の出口は見えてきません。その状況においてもユーザーリサーチを止めずに開発を進めて行くために、本書の情報が役に立てば嬉しく思います。是非お手にとっていただき、さらなるブラッシュアップの為に、ご意見などお聞かせいただければと思います。

(コメントは本記事でも良いのですが、他の著書陣にも直接伝わるFacebookページがオススメです。)