今年UT/インタビューに導入して良かった機材紹介 2021

今年は後半にちょいちょい会場実査を実施できるようになってきたものの、やはりトータルとしてはリモートが多かったです。基本、会場だとハード、リモートだとソフト面での機材やノウハウが中心になりますが、それぞれについて「今年これが役に立った!」というのを紹介してみたいと思います。

■ハードウェア編

OBSBot Tiny(パンチルト制御できるWebカメラ)

まだ2実査ほどしか使ってないですが、個別記事をまだ書いてなかったのでここでトップに挙げておきます。

Webカメラです。普通のWebカメラとの違いはパンチルト(上下左右に向く)機構がついている点と、それを使ってAI画像処理で人物を自動で追いかけてくれる点。アギレルゴの川口氏が使ってみたけどイマイチだったということで譲り受けました。

通常UTやインタビューでビデオカメラ撮影する時、三脚雲台でアングルを調整したりすると思います。しかし参加者が姿勢やデバイスの持ち方を変えるとちょいちょい画角から外れてしまい再調整を余儀なくされがち。そういう時に、電動でリモート制御できるPTZ(パンチルトズーム)カメラだと便利です。UTラボなんかだと天井についていたりしますね。あぁいう製品は監視用カメラの流用だったりして大変お高いですし、一般会議室にポっとつけられるものでもありません。映像信号やコントロール信号も特殊でPCに直接つなげられないことも多いです。

ところがこのOBSBot TinyはUSBケーブル1本で映像音声は普通のUVC/UAC接続のWebカメラである上、専用ユーティリティをPC/Macにインストールすれば簡単に操作ができます。ありそうでなかった大変レアな製品です。映像音声とパンチルト制御は独立しているので、映像音声をOBS StudioやTeams/Zoomなどに入力しているのと全く独立に制御可能です。OSB Studiの場合、映像ソースのプロパティ画面からもPTZ操作可能です。さらに専用ユーティリティで各操作にキーボードショートカットがついていますので、Bluetoohtキーボードや後述のマクロキーパッドを使って離れたところから操作もできます。例えば、OBSBot Tinyと録画配信用PCはインタビュールームに置きつつ、Bluetoothが届く隣の部屋から見学者がカメラ操作する、なんてユーザビリティラボみたいなことが実現できるのです。少なくともPCがモデレーターの手の届くところにあれば、カメラ+三脚のところまで歩いていって調整する必要はなくなります。

実のところAI自動追尾機能はまだ実務では使用していません。誤動作したらイヤだなと。ざっと試した限り、追跡自体はそこそこ正確だと感じますが、顔を画面のどのいちに持ってくるのかが制御できません。通常UTやインタビューでは身体全体ではなく顔だけを抜いて画面の片隅に入れたりすることが多いですが、こいつのAIが顔を画面の中心にもってくるのか、身体全体でセンタリングするのか、みたいなところがコントローラブルではない上に、仕様でもあまり触れられていません。川口氏曰く身体を基準にしてるっぽいとのこと。なんで、画面の一部を切り抜いて使用するには厳しいかなと。顔の位置を決まったサイズ、決まった位置にして追ってくれるなら有り難いんですけど。

なおユーティリティで自動追尾は無効にできるので、完全にPTZ Webカメラとして使うことができます。この状態で使ってみましたが、途中で不具合を起こすこともなく快適に使用できました。デジカメ+HDMIキャプチャなんかよりよっぽど安定感あります。これで光学ズームがあれば最高ですが、最近海外で販売開始された4Kモデルならば電子ズームでも充分な解像度が出ると思うので、国内販売が始まったら買ってみようかと思っています。

ちなみに海外ではパンチルトズームに使えるリモコンも売られてるようですが、Bluetoothで技適をとってないのか国内の代理店からは販売されていないようです。またOBSとついてますばOBS Studioとはなんの関係もありません。

USBの規格上の制限としてケーブル長を4mくらいまでしか延ばせないという問題がありますが、それ以外ではもうビデオカメラいらなくね?と思える優秀な製品です。

RODE Wireless GO2(ワイヤレスマイク)

今年一番活躍しました。詳細は個別記事にて。簡単にいうと、1つの受信機で2台の小型ワイヤレスマイクを受けられるインタビュー向けのマイクシステムです。進行役と参加者それぞれが胸元に装着しておけば、バウンダリーマイクよりも明瞭に音声を拾えます。またマイク内にメモリが内蔵されて録音もできるので別途バックアップ用ICレコーダーを用意しなくて済みます。

AZ Macro (マクロキーパッド)

テンキーより更に少ないボタン数に絞った特定用途向けの小型キーボードのことをマクロキーパッドと呼びます。PhotoshopやPremereのようなやたらツールがたくさんあるソフトやゲームなどの操作を支援するものです。多くの製品はUSBキーボードとして固定のキーコードを発するもので、ソフト側でショートカットアサインをあわせたり、AutoHotKeyのようなユーティリティを使って変換したりします。一部の製品はファームウェアをいじって設定を書き込める場合もあります。

しかしこのAZ Macroは手軽なWebベースの設定システムを持っていてブラウザから簡単に各キーがどんなキーコードを送出するかをカスタムできます。

これを使って、

  • OBS Studioのシーンを切り替えたり録画開始
  • 上記OBSBotのパンチルト操作
  • Zoom、資料パワポ、進行シート、記録エディタなど狭い画面に様々なウインドウがひしめくオンラインインタビューで、「(例えパワポがバックグラウンドにいても)1キーでスライドを1ページめくる」みたいなマクロを実行

などの操作を1ボタンで実行できるようになり、よりスムーズなセッション進行を手助けしてくれました。さらにこの製品はBluetoothキーボードとして動作するので、少し離れた場所から進行役以外の人がさりげなく操作をすることができたりもします。同人ハードなどで入手性にやや難ありですが利用シーンがピンとくる方は是非チャレンジしてみてください。自分でハンダ付けするDIYキットと完成品が選べます。

■ソフトウェア編

XSplit VCam、Audio Hijack + Loopback

今年は久ぶりにメインPCをMacにしたので、いままでWindowsで愛用していたNVIDIA Broadcastが使えなくなりました。そこで、単体のバーチャル背景ツールとしてXSplit VCam、マイクノイズ除去ツールとしてAudio HijackとLoopbackの組み合わせを導入。これでリモート案件もMacでつつんがなくこなせるようになりました。(バーチャル背景なんて今時ZoomにもTeamsにもビルトインで実装されてるじゃないか、とお思いかも知れませんが、業務用のインタビューシステムではついていないことも多いのです…)

AutoHotKey

Windows専用になりますが、あるキー入力に対し、別のキーイベントや特定の操作をプログラムできるフリーソフトです。カメラや配信ツールの制御をしたり、オンライン会議のミュート操作、インタビューに相手に提示する写真や動画、スライドの切り替えなど、色々な制御を自動化、ショートカット化できます。きちんと体制の整ったチームで仕事をするなら作業分担もできますが、私はワンオペなことも多く、事前にこういうツールを駆使して仕込みをしておくと本番中に楽ができます。AutoHotKeyはプログラミング的な素養が必要かも知れませんが、とても多くのことができる良ツールです。

動画眼Lite

手前味噌で恐縮ですが、動画ファイルに頭出し用のインデックスをつける拙作「動画眼」シリーズに、専用アプリのインストールを必要とせずブラウザ上で簡単に閲覧(のみ)できる「動画眼Lite」をリリースしました。

動画眼でデータを作る必要がありますが、Lite形式出力したhtmlファイルを動画といっしょに渡すだけで、相手方は動画眼をインストールせずとも、またMacであってもチャプター付き再生をすることができます。ソフトウェアのインストール制限がある企業さんで重宝するかなと思って作成し、実際にいくつかの案件で納品ビデオデータにこれでチャプターを入れてお渡ししたところ便利だとご評価いただきました。

現在、このデータを作成するための動画眼もWin/Mac両対応となるVer3を準備中です。年内に出したかったけどちょっと厳しい雲行きになってきたかな…もう少々お待ち下さいませ。

■まとめ

コロナ禍で急遽リモートでユーザーテストをしなくちゃとなった昨年からだいぶ経って、自分達も、リクルーティング会社もそして参加してくださる方達やリモート見学するクライアント側も色々と知見が貯まって色々とスムーズに回るようになってきた感があります。それでも、より会場実査に近い形で例えばハードウェア製品を使って評価してもらうことはできるか?などと意欲的な要望もいただいたりとチャレンジは続きます。

会場実査は会場実査で、感染対策をしつつ見やすい/聞きやすい配信を見学者にお届けする工夫や新しい技術は毎回頭をひねりながら試行錯誤しています。

上に紹介したような製品は良さげだけど使いこなせる自身がないという方は是非ご相談いただければと思います。リサーチ案件としてだけでなく機材支援のみでもお受けしておりますので、「タスク設計や進行役は自前でやれるので、配信だけ手伝って」みたいな案件も歓迎です。

来年もどうぞよろしくお願いいたします。

『ユーザーインタビューのやさしい教科書』連動動画Vol.2公開と裏話

『ユーザーインタビューのやさしい教科書』の連動解説動画の第二弾公開しました!

今回もなかなか見る機会がないと思われる、インタビューガイドの作成(仕上げ)の模様をライブっぽく収録したものになります。著者の1人、奥泉さんが作ったドラフトを元に、他の著者陣で議論をしながらブラッシュアップしていくという内容。第一弾では割と事前に打ち合わせをして、どこをどう直すというのをシナリオで決めておいてコンパクトにまとめましたが、その過程で、「この打ち合わせ自体をコンテンツにした方が有益なんじゃね?」という気付きがあり、今回は打ち合わせなしのぶっつけ本番で撮ってみました。おかげで90分くらいのボリュームになってしまい、編集担当の私は大変でした、、それでも40分とかになってしまい恐縮ですが、一言一句漏らさず聞くというよりは、現場ってこんな風に改善してくのねという雰囲気だけでも感じでもらえればと。一応ポイント的なところも頑張ってチャプターを切りましたので、概要欄にあるリンクから見返したいところにとんでいただければと思います。

■技術的な裏話というかメモ

今回も緊急事態宣言下で完全リモート収録だったんですが、話者が2人->4人に増えたりして色々大変だったので次回のためにも記録を残しておこうと思います。内容に関係ない技術的なお話なのでご興味のある方だけどうぞ。

収録はTeamsのNDIエクスポートを使用

普段著者陣の会議はZoomですが、この時だけは慣れないTeamsを使ってもらいました。その理由はTeamsがNDIというIPベースの映像出力規格に対応しているからです。しかも参加者毎、および画面共有の個別で取り出せます。

やり方は以前の記事で紹介しています。

普通にZoomやTeamsの録画機能で撮ったり、会議画面をスクリーンキャプチャで撮ると、レイアウトの自由度が制限されてしまいます。そこでNDI経由で個別のストリームをOBS Studioに入れ、今回のようなレイアウトを組んだ状態で(OBSで)録画しました。通信量や処理的には結構重たそうですが、光回線 + Ryzen 3900 + RTX3070機で割と普通にいけました。

回線状況で受信解像度が変化しても表示サイズを一定に保つ

Teamsの仕様上、通信速度が遅いと解像度が動的に変化してしまい、OBSに入力されるストリームの解像度も大きくなったり小さくなったりするので、OBS上で常に固定サイズ、固定位置で表示されるように設定に苦慮しました。

各参加者のNDIソースを右クリックして「変換の編集」ダイアログを出し、位置揃え、バウンディングボックスの種類/配置をそれぞれ「左上」「境界の幅に合わせる」「中央」にしました。

OBSの「変換の編集」内容

あくまで個別ストリームなのはTeams->OBS間の話で、それぞれを個別に録画をしたわけではないので、後の編集耐性のため、OBSのキャンバスは4Kにして、極力高解像度のまま録画するようにしました。

音声周り

最近のOBS StudioはRTX Broadcastの強力はノイズキャンセルをフィルターとして活用できるようになっています。なので、周辺雑音がひどい参加者がいる場合、個別にフィルターをかけることができます(同時処理ストリーム数が不明で、何人まで個別にかけられるかは不明)。ただTeamsのNDI出力の場合、音声は各ストリームに録画者以外の声が全員分載ってきてしまうようです。なので、後から「この人の声だけ大きく」ということは基本できません。ナノで音量バランスは事前に確認をして各自の送信音量を調整してもらう必要がありました。

また「録画者以外」と書きましたが、当然ながらローカルでしゃべってる自分の声は送信されることはあれど受信で返ってはきません。なので自分の声だけは別途OBSにも取り込んでミックスする必要がありました。自分の声だけはネットワーク経由しないのでもしかすると若干音質が良かったりするかも知れません。ちなみに画面共有も録画者のPCからはできない制約があります。完璧を期すのであれば、参加者と録画者のPC/Teamsアカウントは独立にした方がいいかもです。

結局、OBS上では、

  • 話者1のNDIストリーム音声
  • 話者2のNDIストリーム音声
  • 画面共有NDIストリーム音声
  • ローカルのマイク音声(自分の声)

くらいをマルチトラックで録った気がします。NDIストリームの音声は基本どれも同じ(自分以外の全員の声)なんですが、フィルターの掛け方を変えたり、音ズレがあったりで保険として機能した感じです。別トラックに録ったので、後で個別に取捨調整ができます。間違えてもこれらをミックスで録らないのが重要。

例えばノイズキャンセルですがRTX Broadcastは強力すぎてキー打鍵音はマウスクリック音も完璧に消し去ります。今回は画面共有したWordファイルを編集しながらという映像なので、逆に打鍵音やクリック音はあった方が自然だなと思い、結局NCかけなかったトラックを採用し、後処理で可能な範囲でノイズを低減しました。

画面共有ストリームのズレ

どのストリームがどれだけズレてたのか正確に記憶してませんでしたが、OBS Studioに集約して録画したデータをみると、画面共有ストリームだけズレがあることがわかりました。顔同士はピッタリ、音同士もズレはなく、画面共有か顔映像のどちらかが音声にあってるような状態でした。音は独立でズラせるのでどっち基準でもいいんですが、リップシンクをとると、同じ音声トラックに入っている打鍵音はクリック音がどうしても画面共有とズレてしまい違和感が出ます。

これはPremiere Pro側で映像を2レイヤーに複製し、画面共有部分だけをくり抜いたものを時間的にズラして重ねる、という技で凌ぎました。つまり4K映像x2枚(実質1.6枚くらい?)くらいの処理が必要になり、先述のスペックのPCでもかなりしんどかったです。編集時のタイムライン移動時にもデコードが追いつかずカクカクしたし、最終の4Kエンコードも40分ソースが10時間くらいかかりました…(なぜかGPUが使われずほぼCPUエンコードされてたっぽい)。普段の編集時は画面のズレには目をつぶって補正したレイヤーを非表示にして作業し、最後のエンコード段階でのみ表示に戻すという感じで凌ぎましたが、次はプロキシを作ってしまった方がいいかも。

Adobe StockでBGMを購入

いつもなら無料BGM素材を「甘茶の音楽工房」さんなどでいただいてくるところですが、今回は少しこだわろうと思ったのと、先日受講したPremiere ProのセミナーでAdobe Stockからの直接インポートを学んだのを使ってみたくてAdobe Stockを使ってみました。Premiere Proの画面上で直接映像とあわせて色々なBGMを試聴できるので強力です。楽曲自体のバラエティや品質もやはり有料なだけあるという実感。キーワードも日本語で売ってもきちんと英訳された候補が挙がってくるので、かなりの選択肢があります。

とはいえ1曲実質1,200円ほどするのは個人の趣味範囲で利用頻度も一定しない身からするとちょい高いですね。クレジットパックも6ヶ月の利用期限があるので、あまりお得だからと大きなものを買っても使い切れるかというところです。CCのサブスクリプションに月1本分でいいからライセンス付与してくれないですかねー…

あと面倒なのはAdobe上はきちんと料金を支払ってあっても、Youtubeでは一旦不正使用の疑いがかかり、Adobe側で取得できる認証キーをコピペして権利を証明しないとフラグが消えない点です。公開が差し止められたりまではしないですが、管理画面上に出続けるのでなんとなく気分を悪いです。

でもこの便利さ、ラインナップはクセになります。通常業務ではBGMをつけることはないですが、他の映像素材も買えるのでなんか活用方法を考えたいなと思いました。

■まとめ

などとまぁ趣味で培った技術の機材を投入して頑張って編集しました。4Kでアップしてあるので高解像度環境で見ていただければWordの文字などもクッキリ鮮明かと思います。是非ご覧いただければと思います。

Vol.3はまたかなり濃縮されたコンパクトなコンテンツになる予定です。

HDMI出力にも対応したIPEVO書画カメラの上位モデルVZ-Rを導入しました

スマホ向けサイトやアプリ、モバイルデバイスのユーザテスト(UT)に欠かせない書画カメラ。台湾メーカーIPEVO社の製品をご利用の方も多いかと思います。私も2015年からから愛用しています。2019年にV4Kを購入し活用してきました。

IPEVO V4K 超高解像度 USB 書画カメラ

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が、先日の実務で事前設営をしようとしたところなぜか映らず。USBポートを挿すと他のカメラも一斉に停止。ひどいとノートPCの内蔵キーボードまで効かなくなるという状態。そしてカメラ部分がかなり発熱していることに気付きました。これはショートなど物理的な故障の可能性が高いぞと。書画カメラはミッションクリティカルな装備なので、予備として念のため持参していた旧モデルiZiggiに交換してその場は乗り切りましたが、こちらのモデルはカメラ性能が弱く1028×768程度の解像度で15fps(コマ/秒)しか出ません。手などを素早く動かすと動画ブレが起き見辛い映像になります。非常用ならまだしもこれをメイン機とする気にはなれなかったので、大急ぎで代替機を手配することに。

ちなみにIPEVO社のサポート規定によると

  • 購入1年以内の不具合は交換対応
  • 修理はしていない

という割り切り仕様。つまり1年過ぎて壊れたら捨てるしかないということです。この辺りはELMOやEPSONといった国産メーカーと考え方が違うところでしょうか(この2社の体制は調べていませんし、価格差もあるので一概に非難をする気はありません)。

■修理できないので買い換える。どれにしよう?

選択肢として、

  1. もう一度、V4Kを買う(1.5万円)
  2. 最近出た上位モデルのV4K Proを買う(2万円)
  3. HDMI出力もついたVZ-Rを買う(3.3万円)

という感じでした。

V4K Proは先月か先々月くらいに発売されたばかりのUSBモデルでは最上位機種。V4Kとの大きな違いは、ライトがついたことと、マイクにAIノイズキャンセルがついた点。スマホ画面を撮る場合、ライトはむしろ反射して見辛くなるので不要です。IPEVO歴代モデルのマイクはク〇みたいな音質で、個人的には最初からないものとして見ていましたが、ようやくそこにテコ入れをしてきたなという感じです。マイクも個人的にはより品質の高い外付けマイクを使うのでさほど魅力を感じませんでした。よりシンプルなセッティングで済ませたい人にはいいかもですが、私の使い方だと+5,000円の価値はないなということで選外。

奮発してVZ-RにすればHDMI出力がつきます。つまりATEM MINIシリーズと組み合わせてPCレスで収録ができます。実はATEM MINIを手にした当初から書画カメラもHDMI付きがほしいなぁと思っていましたので、これはチャンスといえばチャンスです。臨時出費としては痛かったですが、これを気にVZ-Rにしてみました。

ちなみに他のラインアップとしては、USBモデルに小型軽量なDO-CAMと、HDMI & USBに加えiZiggiのようにワイヤレスにも対応した最上位機種のVZ-Xもあります。DO-CAMはマイクがないかわりに畳んだ時のサイズがかなりコンパクトそうです。出張UTには良いかも知れません(余裕ができたら予備に欲しい)。ワイヤレス機能もiZiggi以降使って折らず、やはり通信トラブルなどのリスクを考えると、UTのような固定位置での使用でわざわざ無線化するメリットはなく選外でした。

ちなみにカメラ性能は4Kモデルも含め30fps出るのはフルHDまでとなるので、実質同等と考えていいかなと思います。

IPEVO製品は国内では基本的にAmazonの公式ストアでの購入となります。プライム配送だったので本番の前日に入手することができました。

■VZ-Rレビュー

(照明の関係で明るい色味に見えますが、実際はもう少し濃い落ち着いたグリーンです)

アームを畳んだ状態

今回は既にセッテイングが固まっていたこと、同時にZoom配信をする必要があったことなどがあり、せっかくHDMI対応モデルを買ったものの引き続きUSBでの使用となりました。

USBモデルとの違いは関節数です。USBモデルは3箇所が可動するのに対し、HDMI系(VZ-R、VZ-X)は2箇所です。おそらくHDMIやワイヤレス機能を担うメイン基板が支柱部分に入っているのでしょう。そこが垂直に立ち上がり、その上端からアームが生える形です。この自由度の低さが設置性に影響しないかは懸念でしたが。実際被験者がスマホを構えた位置からの距離がとりづらく、アクリルパーティションと干渉してしまいましたが、斜めに配置してカメラ向きの回転で調整できたので実用上は問題とはなりませんでした。強いて言えば、アクリルパーティションの隙間から手を差し込んで角度を微調整するのが少しやりづらかったなという位。

アームが斜めになるように設置し、カメラだけ回転して調節すれば、奥行きが狭い場所でも使用可能

また関節部分にネジを増し締めできる機構がなさげ。今のところまったく問題ないですが、将来的に緩んできたらどうなんだろう?

操作ボタンは支柱部分のフロント側に並んでいます。USB接続の場合は専用ユーティリティやドライバ画面(OBSの場合、プロパティ画面から呼びだせます)でも操作可能。HDMIの場合はそれができないのでオートフォーカスとかでうまく録れない時なんかは少し困るかも知れません。

操作ボタン。側面にラベルが入っているので、最悪この面が見えるとブラインド操作も可能?

背面には50/60Hz切り替えスイッチがありました。これは富士川をまたいで移動しない限り触らないので、むしろソフトの設定漏れで不適切な設定になってしまうことがなくて安心かも知れません(Logicoolのカメラが少し前までOSを再起動すると60Hzに戻ってしまうバグがあって大変悩まされた経験)。

充電ポートがUSB type-Cなのも今時で歓迎。HDMI出力時はこちらから別途電源供給する必要があります。

2022.1.14追記:この機種のUSB電源ポートはちょっとクセが強いみたいです。USBケーブルをメチャメチャ選びます。特にType-C to CでMacBook Proなどに直結しようとすると通電すらしないことが多いです。USB 3.2やPDに対応したケーブルを使ってみたり、逆にUSB2.0結線のみのC-Cケーブルにしたりするも電源が入りません。より確実なのはPC/充電器側がType-AになっているA-Cなケーブルを使うことです。MacBookのようにType-CしかないPCだとわざわざUSBハブを使う必要があり、なんだかなーという感じです。付属ケーブルが一番いいんでしょうが、長さの都合などで汎用品を使いたい場合などは、必ず本番環境で通電/認識することを確認できたケーブルを用意しましょう

足の円盤部分は2本のネジで固定してあり、持ち運ぶ時にさっと外して、というわけにはいきません。箱には簡易ドライバーが付属してはいました。基本的に裸で運搬することは想定していないんでしょう。キャリングポーチ的なものも付属しませんし。ちょっと機材バッグに入れて行くには嵩張るかなという感じ。円盤自体は金属製で重みがあるので、USB系より重心は高いものの、使用時の安定感は充分です。ちょっと手が当たったくらいで倒れることはないでしょう。

底面プレートはネジ止めで頻繁に付け外しする想定ではない

とりあえず今回の2時間 x 7セッションの間、一度も不具合なく安定して使用できました。

■V4KはDYI修理も失敗…

実査出張が終わって帰宅した後、なんとかDIY修理ができないか挑戦してみました。とりあえずUSBコネクタ側の接点不良などを疑い、コネクタをちょん切って新しいコネクタをつけてみましたが、やはりUSB 4ピンのうちの両端(電源の+と-)がショートしていました。ケーブルの途中でのショートを疑い、今度はカメラに近い側で切断してみましたがケーブルは問題なし。つまりカメラ基盤内でのショートかなと。さすがにこれ以上は私の技術ではどうしようもなく断念。廃棄としました。2年、数回の使用でした…

翌日セルフパワーのUSBハブも故障して電源アダプタをつないでおくだけで異常発熱していることが発覚。まだ一ヶ月くらいしか使っていない新品に近い状態でした。ショートしたカメラのせいでハブが壊れたのか、ハブのせいでカメラが壊れたのか知る術はありません。

■これからIPEVOカメラを買う人へのオススメ

今回の故障は外部要因かV4K自体の問題かわかりません。またIPEVOのサポート体制は先に書いた通りです。そこはまぁとりあえずそういうものだと思える人向けですが、これからIPEVO書画カメラを買おうと思う人へのアドバイスというか考え方を書いてみます。

・USBかHDMIか

HDMIがあるとプロジェクターに直結して投影することができます。ただUTではさほどニーズはないのかなと思います。どちらかといえばPCについないでOBSなどのツールで録画したり、ZoomやTeamsの入力カメラとして中継したりという使い方が中心になるのではないでしょうか。USBモデルの方が安いし、基本はそちらでいいんじゃないかなと思います。

USB系では先に書いたように、ノイズキャンセル(以下NC)マイクがついたV4K Proが最上位モデルとなります。このNC性能は自分で確かめたわけではないので定かではないですが、推奨距離は30-70cmとのことで、無指向性だとしても、書画カメラの真ん前に陣取った人(被験者)の声がよいでしょうが、モデレーターの声はどうかなという気がします。だったらV4KかDO-CAMにして差額でWireless GO2のような良いマイクに投資した方が良いかなと思います(差額で買える値段じゃないですけどw)。V4KかDO-CAMでいえば差額を考えるとDO-CAMにあまりメリットはない気がします。ただ違いを考えるとV4Kはもしかすると終息していきDO-CAMとV4K Proに集約されそうな気もします。見張っていればV4Kがなくなる瞬間にバーゲンプライスになるかも?

もしくはV4K Proのマイクは被験者用と割りきって、モデレーター用に別のマイクを用意するとかはアリですね。

UTユースでHDMIが欲しくなるのは、私のようにATME MINIなどHDMI入力の録画機器、スイッチャーを組み合わせたいケースになるかと思います。専用テストラボで録画機器が別室の観察ブースにあって、そこまでケーブルを長く引き回さなければならない時もUSBでは限界があるのでHDMIを使う必要があるでしょう。ワイヤレスのVZ-Xは一見手軽なように見えて、つながらない時のトラブルシュートはむしろ知識が必要になるので、玄人向けだと思います。画質、安定性の面では有線をオススメしたいです。

使い方次第なので、「これ一択!」というのはありませんが、参考になれば幸いです。

ブラウザ同士で簡単に映像送信ができOBSにも取りこめるVDO.Ninja

VDO.Ninjaの情報を求めて来られた方は次の見出しまでジャンプしてください!

■屋外UTの中継をするための試行錯誤

先日、複数の場所を往復しながら実施するUTがありました。インタビュー部屋とプロダクトを触る部屋が異なる、みたいな感じ。しかも後者はWi-Fiが使えない屋外。どうにかこれらの映像をシームレスに記録と見学者への配信を行いたい、というニーズ。セッション全体の1/3、30分位の時間ですが炎天下の屋外に移動する為、バッテリーが保つこと、機器やネットワークが安定した機能することも視野に入れなければなりませんでした。

250mほどの距離で当然HDMIケーブルやLANケーブルが敷ける距離でもなく、Wi-Fiも届きません。同一ネットワーク下にないので先日紹介したNDIなども使えません。別記事で紹介したRTMPも受信拠点側をポート開放する必要があったり遅延が大きめだったりで微妙に使いにくい。すぐに思い付くのはZoomやTeamsといったオンライン会議ツールでの参加ですが、スマホのカメラは光学ズームが弱いので、物理で寄らないと手元など細かい対象を撮ることができず、ソーシャルディスタンスやラポール形成的に不利。できれば光学ズームのビデオカメラ映像を使って配信したいなと思いました。(ちなみに最近では望遠レンズを備えたスマホもありますが、Zoomなどのアプリはそれらを使えません。ピンチズームしても標準カメラの像がデジタル拡大されるのみです。Android版に至ってはピンチズーム自体できませんでした(執筆時点)。屋外なので騒音対策としてきちんとワイヤレスマイク(Wireless GO 2)を使った音声収録をしたいのですが、これら外部マイクもスマホ版アプリは制限が大きかったりします(後述)。

そんなこんなでどこにも行けない御盆休みは手持ちのRTMP配信カメラ(HXR-NX80)、GoPro Hero9、スマホ版Zoomアプリ、UMPCなど持てる機材をあーでもないこーでもないと組み合わせて試行錯誤をしておりました。

本題と関係ないですが、その試行錯誤の様子を貼っておきます。

まずは手持ちスタイル案。

手持ちスタイル案

ビデオカメラのHDMI出力をAndroidでも使えるHDMIキャプチャアダプタBU110を経由してGalaxy Note 10+に入れています。ブラケットやホルダーも含めると845gにもなりました(笑)。ビデオカメラのバッテリーは小さいものだし、スマホのUSBポートもキャプチャで塞がるので外部給電もできず、スタミナにも不安。前述の通りAndroidのZoomアプリは外部カメラやマイクを認識しないので配信系のアプリでRTMP送信するしかない点もイマイチ。

そこでモビリティは落ちるものの、安定性やスタミナ重視で組んでみた装備がこちら。

三脚+UMPC案

三脚にセリアで買った木製パンチングボードをタイアップで吊り、そこに各種装備を固定しまいた。三脚の根元にぶら下げているだけなので、足をたたんで移動することも可能。PCは手持ちラインナップでCPUパワーとサイズのバランスをとってOneMix 3 Pro。Surface Go2 (CoreM3 + LTE版)だと見た目はスッキリしますがちと配信能力に不安があったので。OneMixはLTE非搭載などで別途モバイルルーターを追加。さらにはUSB PD給電のためのモバイルバッテリー、とか詰んでいったらこれまたエラい重量になってしまいました。ドリーが欲しいところです。ただWindowsなのでZoomなどのプライベート通信サービスでも外部カメラ、外部マイクは区別なく使えるので映像、音声の品質は向上させられます。

ちなみにどちらもビデオカメラ側で録画ができるので、保存用としての品質は保持できます。あと、最近の家庭用ビデオカメラによくあるスマホ用プレビューアプリを使い、スルー画をスマホに映した状態をZoom等の画面共有で流す、という方法も検討しましたが、

  • スマホプレビュー中はビデオカメラ側の液晶が真っ黒になってしまい、撮影に支障が出る(SONY、Panasonic)
  • Panasonicはアプリから音も拾えるがそれをZoomでキャプチャして流すことはできない。SONYはそもそも音は聞けない。
  • スマホに直接マイクを接続した場合も、やはりアプリが認識しなかったり、しても絵との同期に問題が出そう。

などの問題があってボツ。

で、結局のところどうなったかというと、先ほど先方から連絡があり、関係者に発熱者が出て実施が無期限延期になりましたorz。難しいですね。炎天下の屋外作業を伴うプロジェクトだったので発熱はしますわ。自分も昨年の案件で軽く熱中症と思われる発熱。PCR検査では陰性でしたが安全優先で実査を中止にさせてしまったことがあります。涼しくなった頃にまたリトライできるといいなと思います。

で、やっと本題。今回の試行錯誤の中で見つけたとある映像伝送手段が色々と応用が利きそうで、まだあまり日本語の解説ページが多くなさそうだったので、ご紹介してみようと。

■VDO.Ninjaの紹介と簡単な使い方(ここから本題)

上記の試行錯誤をしている間に、たまたまFacebookの(英語の)OBSグループで名前を見かけ、調べてみたらスゴいじゃんこれ!となりました。ちなみに少し前まではOBS.Ninjaという名前だったぽいです。実際にはOBS Studio以外でも使える汎用性の高いサービスなので改名したんでしょう。

簡単にいうと、ブラウザ同士で簡単に映像&音声伝送が低遅延で行えるサービスです。OBSには「ブラウザソース」という指定URLの内容をソースとして扱う仕組みがあるので、わざわざブラウザで当該ページを開いてそれをウインドウキャプチャする必要なく映像を受けることができます。無料です。

少し技術的な説明をした方が理解が深まりそうなので、ベースとして用いるWebRTCというプロトコルについて先に説明します。

WebRTCはモダンなブラウザが実装している映像、音声を伝送する標準規格で、暗号化もブラウザが受け持ってくれて、ZoomやTeamsがブラウザからも参加できているように、HTML5上で比較的簡単に映像、音声を伝送するサービスを構築することができる仕組みです。利用者は専用アプリをインストールしたりしなくていいし、開発者も本来高いスキルを要する映像通信技術の大半(ファイアウォール超えや暗号化、GPUのハードウェアエンコード支援の利用、etc.)をOSの区別すら必要なく実装できてしまいます。しかもRTMPのような従来のプロトコルよりも遅延が低いとか。

さてそのWebRTCですが映像伝送自体はPeer-to-Peer、つまり端末同士の直接通信で行われ、暗号化も自動で行われます。ただし最初のハンドシェイクの部分だけはインターネット上のサーバーが仲介する必要があります。VDO.Ninjaはその互いの紐付けの部分を代行してくれるWebサービスという理解でいいと思います。実際の映像通信はここのサーバーを経由しないので比較的小規模で運用できるのか、Steveさんという個人主体のプロジェクトのようです。しかもサーバー一式はGithubで公開されているので、自前サーバーや完全閉鎖LAN内で稼働させた人はそちらを利用することも可能でしょう。Steveさんはサーバー代月$1,500を支援するスポンサーを募集していますので、VDO.Ninjaが有用で長く続いて欲しいと思う方は是非寄付を検討しましょう。Github Sponsorsによる継続支援やPayPalなどによる一時寄付も選べます。

■VDO.Ninjaを使ってみる

全体的に英語UIですが、手順はクッソ簡単です。サービス名であるVDO.ninjaは実はそのままサービスのURLになっています(.ninjaなんていうgTLDがあったんだ…)。つまりブラウザのアドレス欄に「vdo.ninja」を打ってリターンをします。いくつか方法はありますが、まずは映像を送信する側の端末(スマホ等)で開きましょう。

トップページ

「Add your Camera to OBS」はカメラ映像の送信、「Remote Screenshare into OBS」は画面共有です。ただし現状スマホからは画面共有は使えずボタンも出現しません。

ここでは全者をPCから開いてみます。

準備画面(カメラ/マイク設定。実際には黒枠にカメラ映像が映ります)

「Video Source」と「Audio Souce」プルダウンメニューにOSが認識しているカメラとマイクが表示されるので選択します。その前にブラウザからカメラとマイクへのアクセス許可ダイアログが表示されるので許可します。一度拒否してしまうとこのサイトがブラックリストに入れられてダイアログも出ずに不許可になってしまう場合がありますが、その時は(操作はブラウザによりますが)プライバシー設定などから除外対象サイトから外すなどします。(ちなみにこのようにWebRTCはブラウザがカメラやマイクにアクセスする際に必ずユーザの許可を得る仕組みになっているので、URLを踏んだだけでカメラやマイクが不正アクセスされることはありません。)

実際には黒枠内に選択したカメラの映像が見え、「Audio Source」見出しの脇に音声に応じたピコピコ(レベルメーター)が表示されます。

次ページで発行されるURLの乱数部分が含まれますが偶然一致してしまう可能性もあるので、ここでパスワードを付加することもできます。

で、「START」を押すと送信が開始されます。

送信中画面(実際には黒枠内にカメラ映像)

右上にグリーンで表示されているURLが受信者用のURLになります。このURLを相手方にメールやMessengerなどで伝え、ブラウザで開いてもらえば映像と音声が流れるはずです。

ここの時のURLのフォーマットを比較してみると、

  • 送信者用: http://vdo.ninja/?push=hogehoge
  • 受信者用:https://vdo.ninha/?view=hogehoge

という感じで、pushかviewかの違いのみになります。要するに=の後のhogehgoeの部分が一致すれば映像/音声が流れます。このサイトでは乱数で決めてくれますが、自分で他の人とかぶらない文字列を指定しても大丈夫なはず。かぶりそうな時はパスワードを追加します。パスワードがついたURLは、

  • 送信者用: http://vdo.ninja/?push=hogehoge&pw=abcdef
  • 受信者用:https://vdo.ninha/?view=hogehoge&pw=abcdef

となります(abcdefがパスワード)。

OBS Studioにソースとして取り込む(1)

2つの方法があります。1つ目はもっとも簡単な方法で、OBS Studioのソースとして「ブラウザ」ソースを使います。

OBSの「ブラウザ」ソースに設定

URLに発行したID、PW入りのURLを貼り、表示したいサイズを指定、音声も取り込みたい場合は「OBSを介して音声を制御する」チェックボックスをONにします。

OBS Studioにソースとして取り込む(2)

もう一つの方法は作者のSteveさんがリリースしているElectron CaptureというビューワーでURLを入れ、表示された映像をOBS Studioのウインドウキャプチャで取り込む方法です(Windowsのみ)。一見、外部ツールを使う分効率が悪そうですが、Steveさん曰く「it may offer a more flexible and reliable method of capturing live video than the browser source plugin built into OBS.」とのことです。マウスカーソルが完全に隠せるとか、バッファー指定で音声同期が外れにくいなどあるようです。メリット一覧はこちら。パケットロス耐性が高く、システム負荷が低いということなので、面倒ですが使った方がよさそうですね。

送信側のハードウェアエンコード支援を使用する

一般にOBSを動かしたりする受信側ハードよりも、スマホ等を使う送信側の方が非力であることが多いでしょう。その時、ローエンドなCPUやモバイルSoCでも映像をリアルタイムに圧縮して送信するにはGPUのハードウェア支援を使用することが重要になってきます。WebRTCベースである利点として、ここいら辺は各OSのブラウザが(ハード的に対応していれば)活用してくれるという点。VDO.NinjaでこれをONにするには圧縮コーデックにH.264を指定するのみです。H.264はBlu-rayなどにも使われるメジャーなコーデックなので数年前のCPUやスマホでもフルHDくらいなら支援が受けられます。

送信側でハードウェア支援を有効化する為に、H.264を使うぞという宣言を受信側のURLオプションを使うのがミソです。

  • パスワード無し: http://vdo.ninja/?push=hogehoge&codec=h264
  • パスワード有り:https://vdo.ninha/?view=hogehoge&pw=abcdef&codec=h264

ブラウザにもよるかも知れませんが、標準ではVP9というYoutubeなどで使うコーデックが優先されるようです。ただ最新のハードだとVP9でもハードウェア支援が受けられたりするので、あまり違いは出ないかも知れません。スマホや非力なPCの場合に試してみて、画質やCPU付加を比べて良い方を使えば良いでしょう。

ちなみに送信側でハードウェア支援を活用できているかの確認は、映像送信中に送信側のブラウザ上でCtrlキーを押しながらプレビュー映像をクリックします。

送信側で詳細情報を確認

するとこんなリストが出てくるので「video_encoder」の欄が「ExternalEncoder」になっていればOKです。試しにURLから「&codec=h264」をなくすと「libvpx」となりVP8か9のソフトウェアエンコーダーライブラリが使われているのがわかります。

URLパラメーターにはコーデック以外にも色々指定できます。使い方はこちら。パラメーター一覧はこちらです。ビットレートを指定したり、カメラ/マイクデバイスのリストでデフォルト選択されるデバイス名を埋め込んだりできるようです。

再利用可能なリンクを作る

上記の手順でAdd your Camera to OBS」や「Remote Screenshare into OBS」から送信URLを生成すると毎度ランダムな文字列のIDが発行され、OBS Studioなど受け側で毎回URLを書き換えなければならず不便です。また上記のようなオプションパラメーターをURLに埋め込むのも骨がおれる作業です。

そういう場合はこちらのジェネレーターを使ってGUIでオプションを指定してURLを作成し、送信側、受信側に渡せば何度でも再利用することができます。

ルーム機能について(検証途中)

まだしっかり試せてないのですが、サーバー上に仮想ルームを作成し、一旦そこに複数のカメラ映像を集め、ブラウザ上でスイッチャーのように使ったり、音声のノイズ低減やテキストチャット機能が使えたりするぽいです。

■まとめ

驚くくらい簡単に遠方の端末のカメラ映像、音声、画面共有を表示したり、OBS Studioなどのソースに入力できるVDO.Ninjaを紹介しました。原理的にはNDIの遠隔版であるNDI Bridgeとほぼ同じ仕組みだと思いますが、送信側がブラウザなのは同様で、受信側があちらは専用ツールが必要、こちらは不要という点が異なります。厳密に画質や遅延、処理負荷などを比較したわけではないですが、おそらく原理上は似たり寄ったりになるんではないかと思います。だとしたら手軽さでは断然こちらに分があるのではないかなと思います。

望みはスマホからUSB(UVC規格)経由のWebカメラやHDMIキャプチャアダプタ経由のビデオカメラ映像を送信できるようになることですね。これはOS側の対応待ちというところです。ちなみにChromeOSはUSBカメラをソースとして指定できました。できるだけ軽量安価な端末というと現状ではChromeOS+Chromeが候補でしょうか。Raspberry Pi4やJetson NanoにLinuxを入れてChromeを使ってもいいようなので、いずれ自作でVDO.Ninjaエンコーダーユニットを組んでみたい気もします。

私の理解ではファイアウォールを超えられつつもきちんと暗号化でP2P通信ができるので、なんだかんだでZoomやTeamsになりがちな業務案件でも説得の余地があるかなと。最悪ソースもってきてローカルサーバーを建てたらどうなの、とか。まぁ企業さんだと現場寄りの人を説得するだけでなく、そこから伝言ゲームで情シスとか上司とかに納得してしてもらう必要があるので難しいかもですが…

ともあれ非常に汎用性が高く、手軽で、遅延が少なく、安全な映像伝送手段としてNDIと並んで注目株ではないかなと思います。どこか機会があったら活用してみようと思います。

RTMP実験続き。HDMIキャプチャ+Android経由にて。

前回の屋外UTに向けた配信環境の検討実験。

Androidでも使えるHDMI-USBキャプチャアダプタBU110で、スマホ画面にビデオカメラからの映像を映し、それをZoomやTeamsの画面共有で送ったらいいかなと思ってセットアップしてみた。

そしたら以前に購入してあったUSB Camera Proというアプリが、(USB WebカメラやHDMIキャプチャの多くが対応する)UVC入力映像を表示するだけでなくRTMP始め多くのプロトコルで配信できることを発見。前記事で構築したOBS Studio + NGINXの受信環境に対して送信テストしてみました。

USB Camera Proの特長として、

  • ハードウェアエンコーダによるH.264またはHEVC(H.265)エンコード対応
  • 自動または固定ビットレート、キーフレームの挿入秒数を指定可能
  • 解像度とそれに応じたフレームレートも指定可能。
  • 音声はステレオ48kHz固定(多分)
  • 複数のRTMPサーバー設定を記憶し、送信時にリストから選択可能
  • UVCカメラ検出時に自動起動
  • 起動時に自動RTMP送信開始
  • その他、録画や動体検知なども可能

という感じ。600円にしてはなかなか多機能です。UIは最低限でかなり使いづらいけどw。解像度とフレームレートは一定の関係があるらしく、例えば1280×720の場合、50~60fpsしか指定できず、30fpsや15fpsに落としてレートを稼ぐということはできないぽい。

WiFiで試した感じは先のビデオカメラ(NX80)内蔵のエンコーダーよりもかなりマシで1秒遅延くらい。音もきちんと届きます。

WAN経由は使ったAndroid端末のGalaxy Note 10+に入っている楽天モバイルMNOのSIMだとなぜかエラーになってつながらず。仕方ないのでまたしてもdocomo契約のiPhoneにテザリングさせたらすんなりOK。さすがにWAN経由だと遅延や画質が酷くなるかと思いきや、調子がいい時はWiFiとかわらない1秒遅延で収まることも。ただしその幅自体が不安定で、45秒くらいになったり音が途切れたり。途中で設定変えるとおかしくなりがちで、OBS再起動したり、「メディアソース」のプロパティ画面を一度開いてOKすると治ったり。ちょっと実務で使うのは不安が大きいかなー。

H.264と265ではビットレート1/2で同等の画質といわれるくらいデータ効率が良くなってるはずですが、ここもあまり差は感じず。ハードウェア支援が入ってる端末なら負荷もそんなに変わらないのかな?長時間送信し続けた時のバッテリーの減り方などまでは検証できておらず。

バッテリーの減りはやはり激しいです。問題なのは唯一のUSBポートがキャプチャアダプタで塞がるので充電しながら使えないという点。一応USB PD給電対応のハブで使えはしました。ただ充電しながらで発熱などはどうなるかは未知数。

■Teamsで画面共有してみる

とりあえずスマホ画面にカメラのスルー画を映すこと自体はできたので、今度はこれをTeamsの画面共有で送信してみました。結果としてはさすがにオンライン会議ツールだけあって遅延はかなり少なく1秒あるかないか位で安定。画質が犠牲になってそうですが、RTMPよりは安定してる印象。Teamsは解像度をかなり動的に変化させますがさほど見づらさなどな感じず。圧倒的にこちらを使った方が良いです。Teamsならば個別のストリームをNDIで取り出せるのでOBSに入れるのも楽勝。

ただPCの様に画面共有時にシステム音声を送信する機能はないので、カメラからの音声をTeamsに流すことはできなそう。スマホ本体のマイク音声になってしまうかも。Wireless Go2のようなUSB外部マイクの音を入れるにはさらにUSBポートが必要になるし、どうかなーって感じです。なおUSB Camera Pro自体は音声モニター機能がありUVCから来た音声をスピーカーで鳴らすことはできます。

■まとめ

RTMPはやはり古い規格なせいか、遅延やビットレート辺りの画質の安定性ではしんどいなーという印象。Teamsが直接UVCカメラの映像や音声を共有してくれたらなーと思えてなりません。

 

RTMP送信できるビデオカメラ(NX80)からOBS Studioに入力してみる

今度、屋外でユーザーテストをする予定があって、映像をどう撮って見学者に配信するか検討をしています。屋外である製品を試用している参加者の様子を、見学者部屋またはリモートにリアルタイム中継したいという感じ。スマホで撮ってZoomとかTeamsに流せば簡単なんですが、やはり参加者が持つスマホの手元をアップで撮りたかったり、バッテリー含め連続稼働時間の問題や通信途絶時にも映像は録画しづづけたいも。やはりビデオカメラ自体でも録画をしつつ送信をしたい。HDMI出力映像ネット送信できてバッテリーでも稼働するものといえば、パッと思いつくのはLiveShellシリーズとXperia Proでしょうか。

LiveShell ProはATEM MINIと入替で手放してしまったし、Xperia Proは高い上にHDMI入力を使えるアプリは限られていてバクチ要素も高い(例えばZoomは現状ダメっぽい?)。

もうちょっと手持ち機材でなんとかできないかなと思いついたのがHXR-NX80がもっているRTMP/RTMPSの送信機能です。以前にちょっと試して上手くいかなくて諦めたんですが、再挑戦してみることに。OBS Studioのソースの1つとして入れられれば他の映像とミックスして記録ができます。

■RTMP/RTMPSとは?

RTMPはNDIやWebRTCなどよりも昔から(FLASH時代?)からある映像伝送のプロトコルです。RTMPSはSSLで暗号化するバリエーション(以下まとめてRTMPと記述します)。今でもYoutube LiveやTwitchなどのライブストリーミングサービスへの送信に使われてたりします。USTREAM華やかなりし頃のビデオカメラは単体でWi-FiにつながりRTMP/RTMPS送信する機能がついていました。ただUSTREAMが終わってしまった現在、あくまでUSTREAMを想定した設計になっていた製品と、カスタムサーバーを手入力して使えるものとで命運が分かれ、Panasonicなどは「ライブ配信機能自体の終了」のお知らせを出してたりします。そこはちょちょっとファーム修正してカスタムサーバーに対応して欲しかったものです。

とりあえず手持ち機材ではSONYの業務用カメラであるHXR-NX80がカスタムサーバー(URLとストリームキー)指定による送信に対応しているので、まずはこれでテスト。受け側であるOBS Studioは「メディアソース」ソースで「ローカルファイル」のチェックを外すとURLが入力できるフィールドが出現し、そこから設定できる_はずでした_。

■RTMPにはpushとpullがある!

さて早速NX80からOBSに映像を流してみようとするも、ちょっと様子がおかしい。

こちらはNX80のRTMP接続先の設定画面。URL欄とストリームキー(暗号キー)欄があります。

そしてこちらはOBSの「メディアソース」ソースのプロパティ画面。

どちらにもURLを指定する欄があります。一方OBS側にストリームキーを指定する欄はありません。ストリームキーはURLの最後につければ良いみたいとわかりましたが、それぞれが相手のURLを指定するってあんまり見ない設定方法です。OBS側は受け口をパスとストリームキーをまとめてURLの形で指定するのかなと思い、自身のIPアドレスをベースに適当に作って見てもダメ。

おかしいと思ってググってみるも、OBSからRTMPサーバーに配信する時の記事ばかりでなかなかOBSでソースとしてRTMPを受けることに関する情報が見つけられません。NX80側もYoutube Live向けの簡単な例があるだけ。

それでも調べているうちにわかったこととして、RTMPにはpushとpullに2種類の指定方法があって、文字通りpushは映像出力側(エンコーダー)から受け側のURLを指定して送りつけるもの、pullは映像受信側(デコーダー)が送り側のURLを指定するものです。そしてNX80はpushのみに対応し、pullの受け役はできない。OBSはpullのみに対応し、pushの受け役にはなれない。つまりどちらもクライアントとしてサーバーに要求する側であって、サーバーとして待ち受けすることができないという訳です。NX80は送る側、OBSは受ける側でマッチしているにも関わらず、どちらも自分が言い出しっぺになれなければ気が済まず、「聞く耳」は持たない、という感じでしょうか。

■仲介者としてRTMPサーバーを用意する

ということで、聞く耳持たないクライアント両方からの声を聞き互いを仲介する者としてRTMPサーバーが別途必要だということがわかりました。これの仕事はあくまで取り持ちだけなのでそんなに処理性能は求められないらしく、Apacheのライバル的なWebサーバーソフトであるNGINX(エンジンエックスと読みます)にRTMPエクステンションを組み込めば実現でき(両方とも無料で使える)、Raspberry Piなどでも充分実用になるようです。Raspberri PiでRTMPを受けてオンボードのHDMI出力から出力するというBlackmagic designのStreaming Bridgeみたいなこともできてしまうぽい(遅延は大きそうなものの、これはいずれチャレンジしたい)。

とりあえず今回は本当につながるかテストする為、OBSを動かしているWindows PC上にDockerで仮想サーバーを建てて実験してみました。

参考にしたのは以下の動画。

ただしLinuxでコマンドラインでの説明だったのを、WindowsのDocker Desktop(GUI)向けに適宜読み替えて進めました。Docker Desktop自体、初めてでよくわからず、なんでもできそうで以外とコマンドラインに頼る感じ?少なくとも最初にDockerイメージをもってくるところはシェルからやる必要がありました。ポイントは、動画の1:15くらいにあるように

としてやることです。-p 1935:1935がポイントで、ホストPCのポート1935と仮想PCのポート1935 を紐付ける(ポートフォワード)してやるわけです。これをしないでダウンロードサイトの例文で導入してしまうと通信ができない状態になります。コレでハマりました。きっと後からでも変更できるんでしょうけど、Docker Desktopからは見つけられませんでした。GUIでやろうとする場合はお気を付けください。

設定が完了するとこんな感じになりました。右上の5つのボタンの真ん中で起動した状態です。

「Ports」欄の上段がIPv4、下段がIPv6のポートです。IPv4が「0.0.0.0:1935」となっていますが、これで「(ホストPCのIPアドレス):1935」で通信が届きます。

5つボタンの左から2番目を押すとシェル(コマンドプロンプト)が出現するので、あとはまた動画に従い、nano(テキストエディタ)をインストールし、/etc/nginx/nginx.confを書き換えます。

完成形はこんな感じ。 これで、エンコーダー(今回はNX80)からは

を指定し(ストリーム名は空欄)とし、OBS Studioの「入力」欄は

とします(Dockerを動かしているホストPCのIPアドレスが192.168.0.153と仮定)。

NX80ではRTMP設定画面で「実行」し、カメラ映像画面に戻ったあと更に「THUMBNAIL」ボタンを押さないと配信が開始されないので注意。もちろんNX80上で同時に録画もできます。

■LAN内でも遅延が2秒程度、WAN経由で45秒!

ついにこれでNX80のリアルタイム映像をOBSソースとして入れることができました。NX80の内蔵Wi-Fi(2.4GHz)経由で自宅内LANでのやりとりですが遅延が2秒くらいあります。配信解像度が「640×360」と「1280×720」から選べますが、どちらも遅延は変わらない印象。DockerとはいえホストPCの能力はそれなりにあると思うので、NX80のエンコーダーによる遅延でしょうか。あるいはRTMPというプロトコル自体がそういう傾向なのかも知れません。

他のカメラやマイクとあわせることを思うと2秒という遅延はかなり厳しいですね。これがWAN経由だとどうでしょう?iPhone 12 Pro Maxにテザリングして、docomoの4G回線でテストしてみました(自宅側はdocomo光 PPPoE)。結果は45秒程度の遅延がありました。更に厳しいですね。

ちなみにOSB側の「メディアソース」プロパティで「可能場合ハードウェアデコードを使用」オプションはONにしてしまうと絵と音がズレてダメでした。なんでもハード支援を使えばいいってもんでもないですね。絵だけGPU処理になって同期が外れてしまうんでしょうか。音ズレが発生している場合は確認してみてください。

個人的メモ:RTX1210側の設定として、NATのポート開放、フィルタリングでポート1935のTCPおよびUDP通信をホストPCに向け、フィルター型ルート設定でIP+1935を送信元と宛先それぞれのフィルターを追加してやる必要がありました。

 

現地では中継拠点(受け)とカメラ側双方がモバイルルーター+LTE回線環境になることを考えるとさらに酷いかも知れません。また受け側はグローバルIPアドレスが必要になる点も注意が必要でしょう。ゲストWi-Fiなどが提供されていたとしても使えません。

そう思うとちょっと現実的には使いづらい方法な気がしてきました。

やはりTeamsを経由して受け側でNDIで取り出してOBSに持ってく方が素直かも知れません。

■まとめ

とりあえず定期的に興味がわきつつもなかなか成功しなかったRTMPが実際に動かせてみられて有意義な実験となりました。今後他のファクターも加味して活用の場を見定めていきたいと思います。

ユーザテストで活用するOBS Studio 日本語ガイドを公開しました

とあるお客さん向けにOBS Studioのハンズオン勉強会を実施することになり、その時の資料をもったいないので公開しました。

今後もちょいちょい手入れするかもしれないのでGithubに置いておきます。ユーザーテストでOBSを使ってみたいという方の参考になれば幸いです。

2021年、配信時代のUTビデオカメラの期待の星を予約しました SONY ZV-E10

以前、「UTに向きそうなビデオカメラ2020」と題して、UT撮影用カメラの要求仕様を解説しつつ、PanasonicのVX992Mというモデルを買ったという記事を書きました。

2019年のモデルですが、いまだ現役モデルで先日もばっちり活躍してくれました。

ちなみに、その前には2015年にもUT視点の要求仕様をまとめつつ、SONYのCX670を購入した記事を出しました。

これもまだウチでは現役。6年も経ってますがあれから1世代しかモデルチェンジしてなくてCX680がフルHDランナップでは現役スタンダードモデルというからビデオカメラ業界の衰退ぶりはドン引きするレベルです。

(しかしメーカー長期欠品中でAmazonではプレ値がついてるっぽいのでご注意ください)

その他、ブログ書くのすっかり書き忘れていたようですが、SONYの業務用ビデオカメラHXR-NX80というのも導入してみました。

かなり清水ダイビングなお値段でしたが、さすが業務用だけあってきめ細かな設定ができるし安定感あります。SDカードが2スロットあって録り逃しを不正でくれるところなんかもまさに業務用という感じ。XLRマイクがつなげられたり、HDMI出力端子がミニやマイクロではないフルサイズのコネクタなところなんかも良いです。

そんなビデオカメラ事情ですが、コロナ禍におけるUTの実施スタイルも大きく変わることとなり、要求仕様も段々変化してきているように思います。前回2020年1月のまとめから1年半。改めて最新のオススメスペックをまとめつつ、個人的に新しく予約したカメラの紹介をしたいと思います。

■UT配信時代に求められるビデオカメラの仕様とは?

ウィズコロナUTの大きな違いは密室に見学者が集まることを避けリモート見学になったことと、感染防止対策(マスク、アクリルシールド、ソーシャルディスタンス、換気、etc.)による音声収録の重要性が増したことじゃないかと思います。スマホアプリ等のフルリモートでUTが実現できる案件やインタビュー調査の場合はともかく、やはりハードウェアを伴うUT案件だと会場調査が必要で、感染拡大状況と綱引きしつつどうにか実施している現場も多いのではないでしょうか。その際に少しでも人が集まる機会を避ける為、見学者はネットワーク中継された映像を見る形式が増えています。本記事ではこの形態をセミリモートUTを呼んでおくことにします。参加者とモデレーターは会場に集まるものの、その様子はリアルタイムでZoomやTeamsなどのオンラインミーティングツールを使って中継し、見学者はそれを見ながらチャットで議論したりモデレーターに追加質問を投げたりといったスタイルです。

こうした配信に適したビデオカメラのスペックという観点が2021年のカメラ選びには必要な気がしています。配信の場合、ビデオカメラ単体で本体に直接録画できる映像はあまり重要ではなくて、OBS Studioのようなツールに映像ソースの1つとして入れるキャプチャ前提の映像出力デバイスという位置づけになります。UTでは大抵複数の映像ソース(手元、表情など)を扱い、それをOBS上で合成して録画したり配信したりという形になります。極端なことを言うと録画機能を持たないWebカメラを使う手もありますが、それだと

  • 光学ズームがないので設置範囲に制限がつく(邪魔になるような近くに置くなど)
  • USBケーブルが直付けで長さが適切に調整できない(延長ケーブルは不安定化の原因になりがち)
  • 露出やホワイトバランス調整ができないと画面を映した時に白トビしたりおかしな色味になる

などの限界もあり、個人的にはやはりビデオカメラを使いたいなと思います(一部のWebカメラの中にはこれらに対応できるものもあります)。表情カメラなどあまり画質や厳密なフォーカス調整を要しない部分にWebカメラを組み合わせるのはアリでしょうし、要は適材適所だと思います。

で、配信前提のUT用ビデオカメラとして私が重視したいポイントは、

  1. HDMI出力がクリーンである
  2. 本体で録画してなくてもデモモードや省電力モードにならない
  3. 各種マニュアル調整ができる(露出、ホワイトバランス、フォーカス)
    • それを電源切っても記憶してくれるか、設定セットとして保存できる
  4. 外部給電で安定して動く
  5. HDMI端子がフルサイズだとなお良し

辺りかなと思います。

・HDMI出力がクリーンである

正式な機能名ではないのですが、HDMI出力時に、本体液晶画面に出るようなOSD(操作UI)を含まない純粋な映像を取り出せるかどうかです。当然ながらOBS側で受け取る映像に録画インジゲーターや残量表示、操作ボタンなどがあっても邪魔なだけです。しかしこれ、地味すぎてカタログページの仕様表とかみても載っていないし、共通した機能名すらないので調べたり店員さんに聞いたりしてもわからないことが多いです。一般にある程度より上のグレードや業務用はOK。また最近めの機種では大丈夫なことが多い気がしますが、断言は難しいです。ネット掲示板などで既にもってる人に聞いてみるなどするしかない気がします。新製品を予約で買う時はこれが一番不安です。

・本体で録画してなくてもデモモードや省電力モードにならない

配信形態ですと、カメラのHDMI出力を使うだけで本体に録画する必要はありません。まぁ録っておけばOBSがコケた時にバックアップになるというのもありますが、どちらかというと、録画開始するのを忘れて本番中に電源が切れたり店頭デモモードに切り替わったりする方が問題かなと思います。また基本カメラ側をあまり見ないので録画可能残量を見落としがちで、これまた本番中意図しないタイミングでトラブルになったり。

バックアップ録画してもしなくても電源が落ちない、というのが理想かなと。割と最近の機種ならHDMI出力中は落ちないものが増えた気がします。2015年に買ったSONYのCX670は落ちたりデモモードに入ったりしがち。

・各種マニュアル調整ができる(露出、ホワイトバランス、フォーカス)

これはあまり配信かどうかと関係ないですが、UTでは自発光デバイスである液晶画面をアップにして撮ったりします。こういう時、通常のオート撮影だと問題が起きがち。部屋の明るさ基準で画面部分が白く飛んでしまったり、ホワイトバランスが極端に青白い方に寄ったり。またオートフォーカスも大抵まともに機能しないです。したとしても、参加者の手がかぶった時にいちいち手にピントが映ったりするとフラストレーションです。これらは全てマニュアルで固定しておける方が安定した映像になります。

・それを電源切っても記憶してくれるか、設定セットとして保存できる

UTは1時間セッションをして30分休憩、といったことの繰り返しです。あるいはお昼休みだったり空のセッションスロットなどもまたぐし、なんなら日を超えて連日実査ということも少なくありません。その時はさすがに一旦電源を落としたくなります。この場合に上記の設定が毎回リセットされてしまうと再調整が面倒くさいしトラブルの元になります。電源を入れ直しても設定を復帰してくれたり、いっそユーザプリセットのような機能で丸っと状態を保存し、いつでも呼びだせる機能があると重宝します。セッテイングの日にいた詳しい人が実査当日にいない、なんて場合でも、設定呼び出し手順さえわかっていれば簡単にその日の担当者が設定を復元することができます。

これはそもそもマニュアル操作があるカメラとセットなことが多いですが、やはりある程度上の機種になる気がします。デジタル一眼カメラなら割とありますが、ビデオカメラだと家庭用はそうないかも知れません。

・外部給電で安定して動く

これも配信するかどうかあまり関係ないですが、ビデオカメラならほぼ問題ないと思います。後述のデジタル一眼カメラの場合、仕様としての連続撮影時間がそう長くなかったり、本体の温度が上がりすぎると暴走を防ぐために強制的に録画を停止してしまうものもあります。

またリチウムイオンバッテリーは常時フル充電だと劣化が早く進行します。ほぼ室内、外部電源ありでしか使わないUT用カメラの場合、バッテリーは抜いてACアダプタのみで稼働できた方が、バッテリーの無駄な劣化も防げるし、本体の発熱源を減らせるメリットもあります。これまたカタログではなかなか判断できない要素です。

・HDMI端子がフルサイズだとなお良し

これは一部の業務用モデル以外は望むべくもないという感じですが、本体についているHDMI出力端子がmini HDMIやmicro HDMIといった特殊サイズでない方が、ケーブルを選ばずに使えて便利です。mini/micro HDMIケーブルだとどうしても選択肢が限られますし、変換アダプタはトラブルの元です。特にmicro HDMIのような小さな端子に変換アダプタ+HDMIケーブルのプラグという荷重が長時間かかることは破損の可能性が高まりまます。三脚のように高い位置につけたカメラだとケーブルの床面までの重さも上乗せされてしまいます。ケーブルを上手く固定してコネクタへの負担が軽減されるよう配慮しましょう。

■ミラーレス一眼カメラがいいかも?

そもそも最近ビデオカメラというカテゴリが衰退期になっており、各メーカーとも新製品をほとんど出していません。Canonに至っては家庭用ビデオカメラからは撤退しています。「スマホでいいじゃん」層と「デジタル一眼カメラで高品質な”作品”を録りたい」層の二極化のあおりでしょうか。コンデジ同様元気がないジャンルです。最新のセンサー技術や画像処理技術もスマホかデジタル一眼カメラに投入され毎年のように新型モデルが登場している一方、いわゆるビデオカメラの方は数年単位で更新が滞ってる”冬の時代”となっています。2019年のVX992M以降、これといって興味を惹かれる機種も出てないですね。この機種は上記要件、microHDMI端子であること以外はほぼ満たしているので、現状オススメしやすい機種ではあります。

そんな折、先日実務でカメラを3,4台使う必要があって、プライベートで猫撮りメインで買ったミラーレス一眼カメラのSONY α6600を投入してみたんですが、なかなか良かった。HDMIクリーンだし、マニュアル設定は微妙な色味も含めてかなり細かく調整効くし、それをユーザプリセットで保存できる。レンズを交換すれば適正な画角と明るさが得られる。ビデオカメラよりセンサーサイズが大きいので室内でもノイズを抑えた映像になるなど。ちょっと割高だけどHX80みたいなガチ業務機よりは(レンズを合わせても)安いし、別売りアクセサリでXLRマイクも付くし、もうちょいだけ安いヤツをCX670とのリプレイスでほしいなーなんて思い始めました。

■UTに最適かも知れないミラーレス機が出た!

そんあタイミングで噂だけ聞こえていた動画志向のミラーレス機が出ました!SONYのZV-E10というモデルです。

ZV-1というVlog向けのコンパクト機があったんですが、それをセンサーサイズをAPS-Cにしてレンズ交換可能にした感じの上位モデルという位置づけです。

ガチのVlogerには手振れ補正が弱いとかクロップが大きい(手振れ補正や4K/30Pにすると実効画角が狭くなり望遠寄りになってしまう)とかお値段なりの残念仕様が指摘されていますが、UTで三脚に載せて撮るにはさして弱点ともなりません。むしろメリットとして、

  • バッテリー抜いて外部電源アダプタが使える
  • Youtuberに神マイクと崇めらているデジタルガンマイクECM-B1Mや、BluetoothマイクECM-W2BTがデジタル接続で使える
  • Webカメラモードに音声が付き、専用ソフトが不要になった(UVCモード)
  • リアルタイム瞳AFや「商品レビュー用設定」など定評のあるAF性能
  • キットレンズ付きで8万とビデオカメラ+αくらいの実売価格

といった点が挙げられます。

  • バッテリー抜いて外部電源アダプタが使える

本機はSONY初(?)のUSB Type-Cポート搭載機で、Power Delivery対応かどうかは不明ですが、より安定した給電ができそうです。バッテリーを抜いてUSB給電動作できるかは不明ですが、少なくとも下記の給電アダプタが使えるようです。

ソニー ACアダプター AC-PW20

ソニー ACアダプター AC-PW20

10,190円(11/20 06:21時点)
Amazonの情報を掲載しています

ダミーバッテリー形状のコネクタをバッテリーの代わりに差し込みタイプです。以前からあるアクセサリですが、うちのα6600はバッテリー形状が異なり使えませんでした。ちょっと高いですが、これが使えるのであればバッテリー無し、常時AC駆動ができるとみて間違いありません。バッテリーも劣化しないし、充電の熱で動作が不安定になることもなく安心して長時間運用できそうです。

  • Youtuberに神マイクと崇めらているデジタルガンマイクECM-B1Mや、BluetoothマイクECM-W2BTがデジタル接続で使える

SONYカメラの大きなアドバンテージはマルチインターフェースシューだと思います。通常ストロボをつけるところですが、SONYはここに通信端子を搭載し、マイクを接続できるようにしています。少し前の高級機からデジタル通信でより高音質な収録ができるようになったんですが、私のα6600含めAPS-Cモデルは対応しておらず、いわゆる神マイクと言われるECM-B1Mもアナログモードでの使用に限定されていました。これが初めてAPS-C機でデジタル対応となりました。言っても直結ですしUTなど業務用途に影響するレベルの違いではないかもですが、個人的にはB1Mの本来の性能が引き出せる点は楽しみです、

ソニー ショットガンマイクロフォン ECM-B1M ILCE-1対応

ソニー ショットガンマイクロフォン ECM-B1M ILCE-1対応

37,973円(11/20 14:23時点)
Amazonの情報を掲載しています

またBluetoothマイクも新型ECM-W2BTが登場しています。ECM-W1Mから送信機の使用時間が3->9時間となり充電式になったのが大きな違いですが、こちらもデジタル接続できます。

  • Webカメラモードに音声が付き、専用ソフトが不要になった(UVCモード)

従来の一部機種ではテレワークブームにImaging Edge Webcamというツールを介してUSBカメラ化できるようになりました。しかし、後付けの機能なので解像度がイマイチだったり音声はとれなかったり、そもそもカメラを認識しなかったりと無理矢理感が否めない仕様でした。

本機ではソフトウェア不要でネイティブにUVC規格の外付けカメラとして振る舞うことができるようになっており、OBS StudioなどへHDMIキャプチャアダプタ無しに映像、そして音声も入力できます。解像度はカタログみてもわかりませんでしたがZV-1で1280×720に上がっていたようなので、それより下がることはないんじゃないかと思っています。できればフルHDくらいいけるといいなと。

  • リアルタイム瞳AFや「商品レビュー用設定」など定評のあるAF性能

SONYのデジカメはAF(オートフォーカス)が速度、精度ともに優秀です。人物を録る際には瞳AFで正確に人物の顔にフォーカスが合います(残念ながら動物は動画時には対応しないんですが…)。表情用カメラなどにするのに有用でしょう。

一方瞳を認識する故にその状態でなにかをかざして見せるような動作をした時にそちらにピントが合わない(顔にあわせたまま)という問題がありましたが、ZV-1およびZV-E10では「商品レビュー用設定」が追加されています。Youtuberがよくやる手のひらを後ろにかざして瞳を隠すようにする動作が不要になるわけですね。UTで使う機会があるかという微妙ですがインタビューとかに共用するならアリかも知れません。

いずれにせよそこらのビデオカメラよりはAFは優秀と考えて良いでしょう。

  • キットレンズ付きで8万とビデオカメラ+αくらいの実売価格

オススメのビデオカメラVX992Mが現在6万円台後半くらい。ZV-E10のキットレンズ付きが8万ちょうど位。キットレンズの仕様がUTに最適かどうかはなんともですが、とりあえずそんなに大きな違いでもない気がしています。OBS Studio用と考えるとビデオカメラだと別途HDMIキャプチャアダプタを買わねばなりません。千数百円の激安品は遅延など品質面で問題があるのでやはり1万円くらいの出費にはなるでしょう。そう思えば更に差は縮まります。まぁZV-E10のWebカメラモードの解像度が720pだとしてそれで足りるかってのもありますが。

私はとりあえずCX670をこれにリプレイスしていくつもりで予約してみました。発売は9月中旬なのでまだ結構先なのですが、手に入ったらまたレビューしていきたいと思います。

[オマケ] レンズ周りのスペックを比較

ビデオカメラとデジタルカメラではレンズ性能の表記が違っていて直接比較が難しいのですが、カタログでわかる範囲でキットレンズのE PZ 16-50mm F3.5-5.6 OSS(型番SELP1650)の仕様をVX992Mと比べて見ます。

SELP1650の画角(ズーム範囲)は文字通り16-50mm。APS-C基準なので、いわゆるフルサイズ(35mm換算)というのにすると24-75mmになります。VX992Mは広角端が30.8mm(4K撮影時)ということなので、24mm vs 約31mmでZV-E10+SELP1650の方がちょっぴり広角スタートになります。一方そこからの光学ズームはVX992Mが20倍なので桁違いに望遠ということになります(16-50は3倍強)。ここはやはりセンサーがマメ粒みたいに小さく、形状が前後に長いビデオカメラの方が倍率を伸ばしやすいということですね。APS-Cで20倍を目指したらメチャメチャデカいレンズになりますし、お値段も本体の何倍にもなります。5倍とか7倍でも本体くらいの価格になります。おそらくUTのような室内撮りで20倍が必要になることはまずないですが、5倍くらい、画角でいえば100mmくらいあるとカメラ設置位置に自由度が出てよいかなと思います。先日は18-105mmレンズでiPadのディスプレイの2m後方くらいから撮って、目一杯まではズームしなかった感じでした。それくらいはあるといいかもですね。

ただそれでも結構デカくなってくるので、参加者の正面から撮るにはちょっと存在感ありすぎかもです。使い分けですね。

あとは50mmでも4Kでキャプチャして必要な画角で切り出して使うのもアリかなと思います。

HDMIの伝送距離を気にして光ファイバー型ケーブルにしてみたら思わぬ効用もあった

その昔、デジタル信号をやりとりするケーブルにそう品質差はないやろと思っていました。しかし年々高度化、高速化するUSBやHDMIケーブルなどはやっぱり安物はトラブルになりがちですし、昨今は充電ケーブルとしてもスマホはおろかPCまで充電するようになってきたUSBケーブルなんかは品質気をつけないと危ないですよね。

さて今回はHDMIケーブルについてなんですが、最近こちらも5m、10mという長さになってくると低品質のケーブルでは機器を認識しないなどトラブルの元になりやすいという情報を耳にしました。例えばATEM MINI Proなどでは4つあるHDMIポートの1番と2~4番では回路がわかれていて、後者は結構動作がシビアなんだとか。ケーブル長が長くなり信号品質が落ちると、1番では認識するのに2~4番のHDMIポートでは映らない、みたいなことが起きるんだそうな(これ現場で助けになるかも知れない豆知識ですね。いざとなったら長いヤツを1番につなげ!と憶えておきましょう)。

そもそもそうならないよう、長尺のケーブルは特に品質に気を配らないといけないなと思った次第。プロの方々は5mを超えたらリピーター(信号増幅器)をかましたり、中に制御チップの入ったHDMIケーブルを使うんだとか。

リピーターはこんなヤツでしょうか。

電源不要なヤツと外部給電に対応できるヤツがあるようです。USBハブなんかと同じで給電した方がより安定するんでしょうか。そんなに高いものでもないですが、できれば余計な機器や電源は増やしたくないものです。

そこで出てくるのはチップ入りのHDMIケーブル。メタルケーブルだけどなんらかの制御チップが入っているもの。例えばAmazonブランドのコレ。

こういうのは特長として入力側と出力側が決まっているようです。こちらも10mとしては値段はそう高くはない感じ。さすがAmazonベーシック。「音声に遅延が出る」とレビューに書いてる人もいて少し不安。やはり単なる電気的な結線ではない分、制御/変換処理でレイテンシーがあるんでしょうか?

次に今回初めて知ったのが内部的に光ファイバーを用いたHDMIケーブル。両端のコネクタ部分に変換基板的なものがあって一旦光信号に変換して伝送するっぽいですね。ビックリです。特長として(最近原材料費が高騰している)金属線と比べてメートル単価は安いので、両端の変換基板の分は割高なものの、例えば10mから20mになった時の価格差は小さい、と。長くなればなるほど光ファイバータイプの価格デメリットは小さくなっていく(逆転までは行かない?)ぽい。また光ファイバーなのであまり深く折り曲げるとポキっと折れて回復不能になるという取り扱いの注意点もあります。またAV機器マニアの間では短尺のケーブルでも映像や音質が良くなるというメリットも囁かれているようです。さすがに2mとかだとかなり割高感あるので気軽には試せないですね。むしろHDMI切り替え時の信頼性やレスポンスが上がるなら買ってみたいですが、、

で、こちらも当然変換基板や光ファイバーの品質に差はあろうかと思いますが、とにかく試してみないとと思い、とりあえず手が届くものを1本買ってみました。

買ったのはこちら。

1万円近くしますが、購入時点で20%引きクーポンが出ていて割安感があったのと、別の更に安いものに比べて皮膜が編み込みタイプで頑丈そうだったのがポイント。しかも「無料で終身交換と払い戻しを保証」と書かれています。

ちなみに以前買って現場でも現役で使っている10mケーブルがこちら。

2018年に3,000円くらいで買ってますが、今は更に下がって2,000円くらい。つい先日も現場で問題なく使えてはいましたが、考えてみると以前セミナーで受講生に貸し出した時に映らなかったみたいなことを言われたような気も。

で、光ファイバーのものが届いたんですが、明けてビックリ。「細っ!ちっさ!」って感じ。比較写真をどうぞ。

左が今回購入した光ファイバータイプのケーブル。どちらも10m!

銅線は長さに比例して抵抗により信号が減衰していくので長いケーブルほど太く作らないと品質を担保できないというのはあるんでしょう。10mなんてこなもんだ、という考えがあったんですが、見事その考えを吹き飛ばされました。重さも明らかに軽いです。これがきちんと機能するんもであれば現場に持っていくのも、床に養生テープで配線したりするのも随分楽になります。

外皮をアップにするとこんな感じ。

ケーブル皮膜の質感

ナイロン的な樹脂でしっかり編まれていて摩耗にはかなり強そう。折り曲げにもある程度は抵抗してくれそうな雰囲気はあります。ちなみにAmazonの商品ページを見る限り最小折り曲げ半径などは記載されていませんでした。とりあえずこの直径に巻くのはOKと理解していいんじゃないでしょうか。

コネクタはやはり向きが決まっているようです。

コネクタに「SOURCE」「DISPLAY」の表記があり、向きが固定であるとわかる

うっかり逆向きに設営してしまうと引き直しが大変なので注意が必要ですね。

コネクターはやはり一般ケーブルよりは長いです。機器から突出が長く荷重もかかりがちなので少しドキドキです。うっかり力をかけてコネクタ破損ならまだいいですが、機器側の端子を壊してしまったらエラいことです。

軽くてコンパクトですが、設営時はコネクタ部分や折り曲げ箇所に多少気を遣う必要がありそうです。

一応、相性が出やすいというATEM MINI ProにPCをつないでみましたが、1番でも3番でも問題なく映り、目に見えて気になるような映像の遅延は感じられませんでした。

■まとめ

信号品質が向上し、機器の安定動作が見込めるならばと購入してみましたが、思わぬ副産物として「コンパクトにまとまり軽い」というメリットを発見しました。

当面はメタルのケーブルもバックアップとして用意しつつですが現場での品質評価をしていきたいと思います。問題なさそうなら長尺ケーブルは適宜置き換えていきたいし、クライアントから相談受けたりした時にも自信をもってオススメできるようになっておければと思います。

あとお手頃な短い光ファイバーケーブルがあったらリビングのAppleTV 4KやPS5なんかで映像や音質に違いが出るか検証してみたいなとも。

QRコードひとつでNATも超えて映像受信できるNDI RemoteがUT/インタビューで使えるかも?

先日からちらほら名前を出しているNDIというネットワーク経由の映像配信プロトコルがあります。

先日こちらのメジャーバージョンアップとなるNDI5がリリースされました。従来の(私の理解では)NDIは同一LAN内での配信がメインだったのに対し、NDI5ではインターネット越しのリモート配信をセキュアにかつ簡便に行えることを主眼としているようです。

NDIはいくつかのユーティリティ群の集合体ですが、NDI5に含まれるNDI Remoteというツールを使うと、ZoomやTeamsのミーティング招待を送るように、URL(とそれを示すQRコード)を発行し、招待された側は特別なアプリ不要でブラウザから開くだけで映像と音声を招待者に送ることができます(ブラウザのカメラ及びマイクアクセスを許可する必要あり)。招待した側がどのように映像を受け取るかというと、(他にもあると思いますが)NDI Webcam Inputというツールを起動しておき、そこから仮想ウェブカメラにリダイレクトする形になります。NDI Webcam Inputが起動していると、ZoomやTeams、OBS Studioといったツールのカメラ選択メニューに「NewTek NDI Video」という仮想カメラが出現し、それを選ぶと、遠方から送られてくる映像が受け取れ、Zoomなどに流せる、というわけです。ZoomやTeamsに流すだけなら最初から被招待者をZoomやTeamsのミーティングに参加してもらえばいいんじゃ?という気もしますが、メリットとしては、

  • スマホの場合でもアプリをインストールしてもらう必要がない
  • ユーザ登録も必要ない
  • より高い画質、解像度の映像を受け取れる(Zoomは標準で720p、Teamsは通信速度に応じてかなりコロコロ変化するで使いにくい)

などがありそう。遅延が少ないというのもNDIの特長と言われていますが、実際のところ様々な条件で比べたわけではないので確証はありません(むしろZoomやTeamsといった会議プラットフォームの方が画質を犠牲にして遅延を最低限に抑える方向に機能するイメージ)。

またWebcam Inputの映像をZoomやTeamsではなくOBS Studioのような録画/配信ツールに入れるなら更にメリットも増えます。

  • 表示(録画)レイアウトを自由にできる
  • 無料プランでも時間制限を気にせず長時間使える(録画もできる)

ただし双方向サービスではないので、インタビューやユーザテストにZoomやTeamsの代わりに単体で導入できるものではないでしょう。今のところ私が使ってみたいなと思うシーンは、ZoomなどでリモートUTをする時、相手の(Zoomでつながった)スマホで画面共有をしてもらうと、インカメラが無効化され相手の表情が見えなくなります。あるいは画面共有だと操作する指が映らないのが難点となります。こういう時に相手方にもう一台スマホなりがあれば、ZoomでNDI RemoteのQRコードやURLを送って、サクっと映像ストリームを増やせるかなと。そちらのスマホで顔なり手元なりを映せるポジションに固定してもらえばいいんじゃないかと。1つのミーティングに同じ場所から複数端末で参加するとハウリングが起きて慌てたりしがちですが、NDI映像を主宰者側で独立ストリームで受け取れるならミュートなどもそちらで制御できます。さらにTeamsならばミーティング側の個別ストリームもNDIで取り出せるので、OBSで自由にレイアウトしたUT動画を組めそうな気がします。

以前にも書いた通り、ケーブルの引き回しに関するメリットもあります。

「またHDMIやUSBの問題としてケーブル長の限界があります。USBは3.0だと数メートルが限界(規格上の上限)ですし、HDMIも10mものばすとケーブルや機器の相性が出やすくなるようです。より長い距離を伝送するにはリピーターのような増幅機器が必要だったり、HDMIだと内部が光ファイバーになっている光学なケーブルなどもあるようですが、NDIだとイーサネットケーブル、場合によってはWi-Fiでもとばせるので低コストで距離が出しやすいのも特長だと言えそうです。」

NDIはこれから注目していきたい伝送方法だと思います。