ノートPCでOBS Studioの負荷テスト(3カメラ、USBマイク、Teams送信)

近く機材持ち込みUTで3カメラの映像をミックスしてTeamsに中継することになりそうなので、手持ち機材で追いつくかどうか検証してみました。

■機材説明

PC

2018年購入のDELL XPS 15 2-in-1(9575)で、第8世代のCore i7/定格3.1GHz、4コア8スレッドのCPUに、AMD Radeon Vega Mをオンチップで抱き合わせた8705Gという異色のモデル。メモリが16GB、SSDが1TBという感じ。

ゲーミングPCとまでは行かないまでも、独立GPU(dGPU)がついています。ただしOBS StudioはどちらかといえばNvidia (GeForce)贔屓で、最近ではNvidia Broadcast(音声ノイズ除去)相当のライブラリも搭載するなどして、「ノートでOBS Studio配信するならGeForce RTX搭載モデルだよね」という風潮があります。エンコード処理はCPU単体で回すかdGPUのハードウェア支援を受けられるかでかなり負荷が違うので、どうだろうなーと思っていました。

映像ソース

クライアントが所持するカメラを使用。UVC互換のフルHD Webカメラを3アングル。のでHDMIキャプチャなどは必要なし。そのままOBSの「映像キャプチャ」デバイスとして認識させられるはず。

今回のテストでは同型、同性能のWebカメラが3台手元になかったので、少し古い製品も含めての計測になりました。

  • 4K/60pのLogicool BrioをフルHD/30p設定
  • 同じくLogicoolのかなり古いWebカメラを864×480/15fps
  • XPS内蔵カメラを1280×720/30p

という設定。1920×1080/30pよりやや軽いコンディションになるので、代わりにというかタスクマネージャーのCPUグラフを「ウインドウキャプチャ」で取り込んで配置してみました。

(2021.6.15追記:フルHDx3ソースのテストも結果のところに追記しました)

BRIOはなぜかUSBハブ経由では映らず本体Type-Cポートに直結する必要がありました。ここらへん、当日のカメラでどうなるかわからないのでハブやA->C変換アダプタはいくつか予備をもっていこうと思います。

2021.6.15追記:BrioのハブはXPS9575の左側のThuderbolt3対応ポートにしたらハブ経由でも映像がとれました。

音声ソース

本番でも使う予定のRODE Wireless Go IIをUSB接続。送信機を2台起動しステレオの単一トラックとして入力。

またいつも使用しているNVidia Broadcastのノイズキャンセルが使えないので、代わりにKrispをインストールして試してみました。

設定周り

OBS Studioでのエンコード出力レートは2.5Mbps。また仮想ビデオ機能をオンにして、Teamsのカメラソースに選択し無人のオンライン会議に流した状態で計測を行いました。本番でも自分以外はすべて見学者でカメラ、マイクをオフにする想定なので、おそらくTe

■OBSでハードウェア支援は受けられる?

CPUダイにRadeon Vega Mが統合されているので、obs-media-encoderをインストールすればOBS Studioでハードウェア支援を受けられるかと思いきやメニューの現れず。

ただしIntel側の支援機能である「QuickSync H.264」が出ていたのでそれを使うことに。

■測定結果

結論からいうと「どうにかいけそう」という感じ。OBS上の読みで10%前後、タスクマネージャーによるシステム全体の負荷が50%前後で推移して30分くらいは正常に録画できました。録画したままKrispをインストールしたらOBSが落ちたのでそれはまぁそのせいだと思って一旦計測は終了。本来は90分程度のセッションになるので本番前に一度は回しておきたいところ。

そしてKrisp(CPU演算を使うノイズキャンセラー)を有効にしたところ、システム負荷が+10%といったところです。つまり60%台。一応余裕はあります。

ゲームをしながらOBSで録画/配信をするとなると厳しいですが、そういうメインタスクなしで純粋にエンコードするだけならなんとか賄えそうかなという感想です。各ソースが1080p/30pになったりするとどう変わってくるかですが、一応次のテストではこの構成でいってみようと思います。

あるいはそれまでにAMDのハードウェア支援も試してみたいところ。

追記:結局OBSでAMDのハードウェア支援(VCE)を有効にできてはいませんが、代わりにXSplit Broadcasterを使って同じフルHDx3ストリームで録画しながら仮想カメラ機能でTeams配信を行ってみたところ、システム全体のCPU使用率は50~60%の微増。かつ同時にブラウザを起動すると100%になりがちとなりました。警告ダイアログも出ました。OBS使用中でも同じ様に跳ね上がるものの80~90%台に収まる感じ。XSplitでは明示的にCPU/Intel QuickSyncVideo/AMD VCEの使い分けを指定できるので、QSVに固定してみても傾向はかわらず。XSplit自体の重さなんでしょうか。エフェクトなどは充実していてちょっと使ってみたいとも思ったんですが、今回の案件ではちょっと厳しいかな。余裕のあるリモート調査(デスクトップPCが使える時)などに試してみようと思います。

フルHD x3入力で追試

Brio、ATEM Mini Pro、AverMedia BU110を組み合わせて本番に近いフルHDの3入力体勢を組んで追試しました。結果は大差なし。むしろ下がったくらいで40%前後(タスクマネージャー読み)で録画&Teams配信できました。またソースをON/OFFしたり、入力解像度をフルHDと720pで切り替えたりしてもさほど変わらなかったことから、「入力ソース解像度に寄らず、レンダリング後の出力映像のエンコード負荷が大半を占める」ということが言えそうです。もちろんソースをOFFにする毎に僅かずつCPU負荷は下がっていくんですが、全部OFFにしてタスクマネージャーの画面キャプチャのみにしても30%台のままで、1ソース辺りの負荷は2,3%の誤差という感触でした。

OBS Studioでの録画(H.264変換)と、仮想カメラ機能を経由してTeamsがエンコードしてるのと同じ映像を2ストリームで変換してる気がしますが、どちらもハードウェアエンコードが効いているんでしょうかね。

■もしダメだったら…

近日中に予定されている接続テストで本番通りのセットアップをして検証する予定ですが、もし負荷が厳しそうとなったら、この辺りのeGPU箱を買って、自宅メイン機のRTX3070を一時的に付け替えてみようかと思っています。幸いXPS 9575はThunderbolt3に対応しています。これならばRTX Broadcastも使えた上でかなり余裕ができるんじゃないかと。

内蔵Radeonがある状態できちんと動いてくれればいいんですが、、、

もう少し安い3万円台のものもあるし、Chromaの光る要素とかは別にいらないですがw、USB3.1のAポートが4つと、Ethernetポートがついているので、ごちゃつきがちな出張荷物、配線を多少でもスッキリさせられるならこれでいっかなと思っています。

あるいはDSP内蔵オーディオインターフェイスのUA AppoloシリーズにC Suice C-Vox Noise & Ambience Reductionというノイキャンプラグインが出ていて気になっています。

これはプラグインソフトウェアをDSPで動かしPC側に負荷をかけないで音声フィルターをかけられる製品らしいのです。ただプラグインだけでも$300以上するし、ハードもDSPコア数が1つのもっとも安いものでも数万円。あわせると結構なお値段だし、そもそもこのプラグインが1DSPモデルでちゃんと動くかどうかもよくわからず手を出しあぐねています。自宅で使う分にはRTX3070 + NVidia Broadcastで特に不満がないので悩ましいです。

むしろ今後少しずつ会場実査が戻ってくるならばノート向けRTXグラフィックが載ったPCに買い換えるのが一番いいかなと思いいます。ちょうどRazerのBlade 14の新モデルが海外で発表され、中モデルが$2,200なら日本はいくらよ、、とドキドキしています。

■画面共有かカメラ映像か?

OBS Studioに「仮想カメラ」機能があるため、ついTeamsやZoomでは参加者カメラの映像として送信しがちですが、本当にそれがベストかはケースバイケースだと思います。まずZoomは基本的にカメラ映像が720pになる模様。法人ライセンスの場合は申請すれば1080p封印が解かれるらしいですが、それが難し場合は画面共有を使ってOBS Studioの画面なしろキャプチャした方が綺麗な可能性もあります。

Teamsの場合はネットワーク速度に応じて自動調整されてしまいますが、一応1080pが最初から使えるようです。

■Krisp所感

ついでにはじめて使ってみたKrispの感想をNvidia Broadcast(以下NB)と比べて。ぶっちゃけNBの方が品質は高いです。ノイズキャンセル力は甲乙つけがたいですが、フィルターをすり抜けた人の声がNBの方が自然で違和感がない。Krispのはよく聞くと人の声の中にノイズのようなクリップのようなザリザリ感があります。会場でどうにも外来ノイズが酷いようなら検討しますが、いまのところお金を払ってまで使いたいクオリティじゃないなというのが正直な感想です。

■まとめ

eGPUボックス買ったり、自宅デスクトップからRTX3070を付け外ししたりはしんどいなと思ってましたが、今回はCPUが100%に貼り付くみたいなギリギリ感はなくなんとか乗り切れそうな気がして一安心です。でもまぁファンはずっとシューシュー言い続ける状態だし、より静かに安定して実査録画ができるならeGPUボックス導入してしまうのもアリかなぁと思わなくもないです。ただIntel、AMD、NVidiaのグラボが混在してしまう状態になって、まともにOBS Studioが動いてくれるかって面も不安でいまいち思い切れないというところ。

オンラインインタビュー/プレゼン中のスライド操作を簡便化する

ZoomやTeamsなどオンライン会議ツールでプレゼンテーションや資料共有しながら会議をすることが増えてきたと思います。そんな時、PowerPointでスライドを表示しつつ、Zoomでチャットコメントを読み書きしたり、さらに予定表を確認したりWeb検索したりと様々なアプリケーションを併用してデスクトップがわちゃわちゃしがちです。私もオンラインインタビュー等をする場合、資料提示用のパワポ、参加者プロフィールや予定表のExce、インタビューガイドのWord、Zoom/Teamsなどオンライン会議ツールのウインドウ、さらにはカメラ映像をOBS Studioで制御しようなどとすると大変です。

そんな時でも最優先でPowerPointのスライドを制御(ページめくり)したくて方法を模索しました。

ちなみに最新のZoomやTeamsではPowerPointファイルを直接共有ウインドウやバーチャル背景として選択できるようになっており、これを使うとZoom/Teamsのミーティングウインドウ上でスライドめくりボタンで移動することができかなり使い勝手が良いです。ただPowerPoint固有の機能(ペン記入とか)が制限されたり、そもそもPowerPoint以外のツールを使いたいこともあるので、今回はややマニアックな方法で実現することにしました。

完成イメージとしては、「そのアプリがフォアグラウンドにいても(=PowerPointがバックグラウンドにいても)、Ctrl + PageUp/Downを押すとPowerPointがフォアグラウンドに来た上でページが移動する」というスタイル。PageUp/Downはカーソルキーやスペースキー操作の陰に隠れて忘れられがちですが、こちらもPowerPointの標準のスライドめくりショートカットです。これにCtrlを追加することで、グローバルなキーボードショートカットにする、というワケです。普段からPageUp/Downなんて使わないよって人なら、Ctrlなしをトリガーにしてもいいでしょう。

実現方法としてはAutoHotKeyという多機能キーボードショートカットカスタマイズツールを使います。
AutoHotKeyの使い方をイチから説明すると大変なボリュームになるので、とりあえずコード例だけ。

2022.12.26追記: AutoHotKeyのスクリプト記法は2.0でリニューアルされました。以下のスクリプトは1.x時代のもので最新版では動かない可能性があります。

AutoHotKeyをインストール後、これをメモ帳などにコピペし、「いつでもパワポ.ahk」みたいな名前で保存(拡張子のahkはAutoHotKeyの頭文字です)し、ダブルクリックすればAutoHotKeyが起動してこの設定が読み込まれます。タスクトレイにグリーンの「H」アイコンがいれば常駐している証です。

「^PgDn::」が起動キーの定義で「^」がCtrlキーです。Altなら「!」、Shiftなら「+」に変更します。Altキーを押しながら右カーソルなら「!Right::」でいけると思います。
ミソは「if WinExist(“ahk_exe POWERPNT.EXE”)」のところで、起動中のアプリにパワポがあったらという条件設定を意味します。「WinActivate」でアクティブ化(フォアグラウンド化)し、「Send {PgUp}」で文字通りキーコードを送信しているという寸法です。

個人的にはパワポウインドウはOBSなどで見えていれば良い場合もあるので、バックグラウンドのままとか最小化したまま、仮想デスクトップの別画面に追い出した状態のまま、とかもチャレンジしたんですが上手くいきませんでした。ControlSendコマンド辺りを使ってどうにか、と思ったんですが成功しませんでした。なんか方法をご存じの方がいたら是非お知らせください。

またこの例ではあまり使っていないキーコンビネーションをトリガーに使いましたが、先日裏ブログで紹介したマクロパッドなどに割り付けて1キーで制御するのもアリかなと思います。

この手のことはElgatoのStream Deckがメジャーですが、AutoHotKeyを駆使すれば「特定のアプリに対して送信」「特定のアプリがフォアグラウンドにいる時だけ送信」などの制御も可能なため、安価に近いことが実現できると思います。

キートップが液晶で動的に変化はしませんが、既製品ではこういう小型キーボードも使えると思います。

AutoHotKeyは究めればかなり複雑な制御ができるので是非研究してみてください。

インタビュー収録に最適なRODE Wireless GOが進化してII型に

コロナ禍で感染対策を行いつつのインタビュー収録では、マイクが肝となります。繰り返し書いて来ましたが、

  • マスクをする
  • 話者同士が距離をあける
  • 間にアクリル仕切り板を立てる
  • 換気のために窓やドアを開ける
  • 換気装置、空気清浄機などを稼働させる

など、すべてが音声収録の障害となります。通常インタビュールームでは二人の間にバインダリーマイクを1機設置で足りることが多いですが、上記対策を行うとそれではかなり聞き取りづらくなります。特に今はセミリモートで遠隔の見学者に生配信をしなければならないことも多く、後編集でノイズを消したりゲインを上げたりするのでなく、リアルタイムに品質の良い収録をする必要があります。

また先日紹介したPremiere Proを使った書き起こしなども視野にいれると、話者毎の高品質な音声収録は更に重要度を増してきます。

当ブログでは小型で便利なワイヤレスマイク、RODE Wireless GO(以下GO)を以前紹介したことがあります。

私も当初1台購入し、バウンダリーマイクの補助として使用していましたが、非常に便利だったので結局2つ目も購入し、モデレーターとインフォーマントの双方がワイヤレスマイクで収録できるように強化しました。

が、発売から1年半ほど経ち、後継機となるWireless Go II(以下GO2)が発表されました。海外で先行して発売されていましたが、一ヶ月ほどしてようやく日本でも発売が開始となりました。

■進化ポイント

もっとも大きな違いは送信機が2台になった点。受信機が1つで二人(二箇所)の音声を収録できるので、インタビュー用途にはフィットします。従来は2ペアで使うには2台の受信機からのケーブルをミックスして録音機器に入れる工夫などが必要でした。その為のオプションケーブルやカメラに2台マウントするステーなども発売されていました。

GOを2セット買うと約5万円、このステーとケーブルでさらに5千円ほどかかることも考えるとGO2の実売4万円はかなりコスパが高いと言えるでしょう(本国で$299だと思うとちょいと高い気しちゃいますが…)。値段が安いだけでなく、セッテイングがシンプルになり、バッテリー管理する機器が1つ減ることもプライスレスです。

しかも進化点はこれだけではありません。

・送信機内にバックアップ録音ができる

送信機内に24時間分の録音データが残るため、万一電波状態が悪く録音機器への送信が途切れても、あとで正常な音声ファイルをサルベージできます。更にVer1.6.0から受信機とリンクしなくても送信機の電源を入れるだけで録音されるAlwaysモードも追加され、単体のICレコーダーx2台としても使えるようになりました。

・USB-CでPCやスマホにデジタル録音できる

GOはアナログ3.5mmジャック専用でしたが、最近のPCやスマホではこのマイク端子がないことも多く、実質ビデオカメラ用という感じでした。しかしGO2はUSBデバイスとして認識できるようになったことでPC/スマホに直接挿し、ZoomやTeamsへダイレクトに音声を渡せるようになりました。iPhone用のUSB-C – Lightningケーブルも発売されます。スマホ内蔵カメラで映像を撮って、音声は2台のワイヤレスマイクで高品質に収録、なんてミニマルなセッテイングも可能です。

・伝送距離が見通し70mから200mに拡大

インタビュー用途でそこまでの見通し距離は必要ないですが、到達距離スペックが向上したということは普通にノイズ耐性も上がっていることが期待されます。特に2.4GHz帯の無線はWi-Fiだけでなく古いコードレス電話や電子レンジとも干渉しやすいので、基本スペックの底上げは有り難いです。

■早速予約して購入しました

まだまだリモート調査が多くて、すぐに必要というほどでなないですが、現在増補版を執筆中の下記書籍にも載せたいと思って速攻で予約しました。

マーケティング/商品企画のための ユーザーインタビューの教科書 (プレミアムブックス版)

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奥泉 直子, 山崎 真湖人, 三澤 直加, 古田 一義, 伊藤 英明
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開封動画はこちら。

サイズ感は初代と全く同一。重さも手で持った感じは違いを感じません。液晶保護フィルムすら互換性ありそう。まだGo2用3枚セットは出てなさそうなのでこれを2セット買うか悩みます。結構お高い。

とりあえず書籍用の写真を撮ってみました。こんな感じでICレコーダー、ビデオカメラ、PC、スマホとなんにでも組み合わせられるようになったのが新型の進化ポイントでしょう。

ICレコーダーにアドオンで離れた話者2名の音声を明瞭に収録
PCにUSB接続で外部マイクとして認識。OBS、Zoom、Teamsなどの音声ソースとしても直接使用可能

付属のアナログケーブル(赤色)はカールコードからややフラットなものに変更されました。カールコードはカールコードでなにかに引っ掛けた時に千切れにくくて良かったですが、新しいケーブルの方がよりスッキリしていいかも知れません。幅は少し広めなので強度もそれなりにありそう。

付属USBケーブルはUSB A to Cが3本。これは充電にも使いやすいという配慮でしょうか。こんな感じの3ポート充電器を用意しておくと捗りそうです。

他方、USB C to CのケーブルやiPhone/iPadにつなぐUSB-C – Lightningなケーブルは別売り。RODE純正のもあるんですが30cmと長めなので、別途ショートケーブルを注文。とりあえずUSB-C to Cケーブルは自宅にあったものでも普通に使えたので、へんな制限はかかってなさそうです。

2021.4.4追記:

サードパーティ製ケーブルについて少し検証してみました。購入したのはこちらの2点。

USB-CとLightning用でそれぞれできるだけ短いのが欲しくてチョイス。USB-C用はPCでもiPad Proでも問題なく使えました。PCはArm64 WindowsのSurface Pro Xでも大丈夫。ただChromebookでは認識されているか画面で識別不能。感度で調べた限り切り替わってなさそう。これはChromebookの問題かもですね。

Lightningの方は残念ながらNGでした。公式の説明によると「Note that you must use a Lightning Accessory Cable, such as the SC15, to connect the Wireless GO II to an iOS device. This is different to the ‘charge and sync’ cable that may have been included with your device.(SC15のようなLightningアクセサリケーブルが必要で、これは端末付属の”充電と同期”用のケーブルとは別物)」とのことです。Lightningアクセサリケーブルという規格は初めて聞きました。ググってもそれと謳う製品は見つけられず。現状確実なのはRODE純正のSC15くらいでしょうか。

SC15は30cmと長いので保留。私は当面iPhoneで使う必要はないので、そのうちいいのが見つかれば買うくらいで。

2021.8.24追記:

iPhoneにデジタル接続する為のSC15がどこも品切れですが、Youtube情報でApple純正のLightning – USBカメラアダプタ(MD821AM/A)にWireless GO 2付属の充電ケーブルで代替できることがわかりました。

Apple Lightning - USBカメラアダプタ

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4,606円(12/22 05:21時点)
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iPhone – MD821AM/A(Lightning – A) – 付属ケーブル(A-C) – Wireless Go II Rx

という感じですね。実際買ってみて使えることが確認できました。画面ではなんにも変化ないですが、Zoomとかも含めて音声ソースがUSB(UAC)に自動的に切り替わるようです。Androidだとアプリが対応してないと外部マイクが使えなかったりしがちですが、こういうところはiOSは楽でいいですね。

(なおApple純正アクセサリはAmazonだと偽物が多いので例え品番で検索してもあやしいマーケットプレイス業者出品品を掴まされやすいのでお気を付けください。自信がない方はヨドバシとかの家電店で買うのが無難かも…)

(追記おわり)

送信機上のバックアップ録音はPC/Mac用設定ツールRODE Centralから有効化しておく必要がありますが、有効にしてあれば電源オンのあいだは常時録音してくれるようで、録り忘れもなく良さそう。バッテリーの減りがどれだけ変わるのかとかは記載が見当たらず。

音質や電波到達距離などはもう少し使ってみないとなんともですが、2チャンネルのワイヤレスマイクシステムとしては非常にコンパクトで多機能、ユーザビリティも高い、とコロナ下のインタビュー録りには最適な製品に進化したなと思います。

リモートUT/インタビュー時、カメラ映像に時計やメッセージを入れる

リモート(ウェブ会議)でユーザテストやインタビューをする時、こちらのカメラ映像に時計を出せないかなとふと思いました。例えばパイロットセッションをする際、どのタスクが何分くらいかかるか目安を把握するのも重要なわけですが、画面に共通の時計が出てれば記録係や見学者の人とも疎通しやすいかなと。UTの本番ではあまりタイムプレッシャーになるようなことは避けるのが王道ですが、まぁパイロットなら利便性の方が勝るかなと。

で、パッと思いついた方法は、別PCでグリーンスクリーン上に時計(ストップウォッチ)を表示した画面を作って、ATEM Miniでクロマキー合成する、というやり方でしたが、少し調べてみたらもっと簡単にソフトウェアだけで実現可能でした。

■OBS Studioの「テキスト」ソースを使う

OBS Studioは本ブログでも以前に取り上げたフリーの配信ツールです。最近のアップデートで仮想カメラ機能が搭載されました。仮想カメラというのはOBS Studio上で作った画面を、あたかもWebカメラ入力であるかのように見せかける仕組みです。これをONにすると(右下のボタンで「仮想カメラ開始」をクリックするだけ)、ZoomやTeams、Skypeといったウェブ会議ツールのカメラ選択メニューに「OBS Virtual Camera」が出現し選択できるようになります。

そしてOBS StudioにはWebカメラを初めとする様々な映像入力ソースに加え「テキスト(GDI+)」という項目があり、OBS上で指定した固定テキストもしくは特定のテキストファイルの中身を画面上に指定したフォントやサイズで合成することができるのです。テキストファイルを指定した場合、その中身はリアルタイムで反映されるので、時刻やタイマー、ストップウォッチを文字列で「00:00:00」みたいに上書き保存し続けるソフトさえあれば、、、ということで、まさにそれをしてくれるソフトがSnazです。

このOBS StudioとSnazの組み合わせはこちらの記事で知ることができました。詳しい設定方法などもこちらをご覧ください。

OBSでカウントダウンや時計が表示できるタイマー”Snaz”の使い方 | しふぁチャンネルのゲーム実況ブログ (shifa-channel.com)

で実際にウェブ会議で使う想定で作って見たレイアウトがこちら。フォントカラーの他に縁取りの色や太さも指定できるので背景映像に埋もれて醜くなるのを避けることができます。

■時計以外にもテロップを入れられることの価値は?

OBSは複数のソースを自在に重ねることができるので、ついでにインタビュー中の話題をテロップとして入れてみたらどうかな?と思って画面下部に字幕のように入れてみました。こんな感じでインタビュワーが聞きたいことや、ユーザテストでのタスク内容、ダミー個人情報のような提示情報を重ねられると便利なんじゃないでしょうか。多くのウェブ会議システムでは画面共有機能があるので、メモ帳でもWordでも使って映せばイイジャナイ?と思われるかも知れません。しかし、ユーザテストではそもそもユーザがプロダクトを操作する様子を画面共有を使って映してる場合もあり、そのチャンネルを占有しないで簡単な情報を伝えられるメリットはあるんじゃないかと。

また複数行も扱えるので、議事録テキストファイルを指定すれば、こんな感じで記録を参加者間で確認しながら会議を進めることもできるかも知れません。設定画面内の「チャットログモード」という機能を有効にすると、テキストファイル中の指定した最後の行数だけを表示してくれる(UNIXでいうtailフィルタ)ので、書き進めるにつれてスクロールしていく感じになります。

■簡単な専用ツールを作ってみようかなって

基本的な機能としてはOBS Studio単体で実現できるんですが、実査/会議中にリアルタイムでテキストを書き換えるのはちと手間です。要はテキストファイルに都度落とし込めばいいので、例えばインタビューのスクリプトに沿った話題の見出し一覧をクリックするとそれが書き出されるとかいうツールがあったらヨサゲ。実際、OBSの標準機能だとセンタリングや折り返しに制限があるので、いい感じに前後にスペースを入れてくれるような処理を入れるといいかも。

また議事録モードに関しても、任意の箇所にスクロールして戻る、みたいなことが標準ではできないので、そういう部分も考慮したテキストファイルをリアルタイム生成する、みたいな。

そんなに難しい仕組みではないので、たぶん1日仕事でしょう。.NET 5.0の練習にいいお題かも知れない。年末年始の宿題ですかね。

 

 

Zoomなどのリモート会議に電話の通話を流す概念実証

みなさん、リモートUT/インタビューしていますか?コロナ禍の下、私もぼちぼちそんな案件をやらせていただいています。Zoomなどのウェブ会議ツール上でインタビューやユーザテストをし、クライアントもそこに入って見学/傍聴をするというスタイルです。

今回もある案件の準備をしていて参加者募集のアンケートを業者さんに作ってもらっていたんですが、その中で「もしネットが不調だったら電話参加に切り替えるかもです」みたいな一文があってちょっと気になりました。

ZoomにはPC/スマホがない人向けに、電話で音声参加する手段が提供されています(有料サブスクリプションのみ)。ミーティングIDと一緒に電話番号が発行され、参加者はその番号にかけるとみんながいる会議室につながるという寸法です。しかし日本向けの番号はフリーダイヤルではなさげなので、もし参加者が今時の20円/30秒の通話プランだと一時間話したら2,400円にもなってしまいます。これはちと申し訳ない。しかもZoomでプレミアム音声オプションを契約してないとなので、クライアントのプラン次第ではそもそも使えない場合も。

ということでモデレーターであるウチの設備を使って電話の通話をZoomの通話にミックスできないかというテストをしました。

■通話し放題プランの携帯電話

私も普段はほとんど電話しないのでメインのdocomo回線のiPhoneは1回5分まで無料の通話パックをつけています。2020年12月時点で+700円/月。これをかけ放題にすると+1,700円/月なので1,000円上乗せ。まぁわかっていれば案件のある時だけ保険で変更しておいてもいいかなくらいですね。

ただ今は楽天UN-LIMIT契約のGalaxy Note 10+があるので、今回はこちらを使います。専用アプリから発信すればかけ放題です。これが3月まで無料!

■音声経路の整理

今回もモデルケースではA) モデレーター(ウチ)、B) 参加者、C) 見学者の3者がいます。

AとCは携帯電話、AとBはZOOMでつなぎます。Bの声はAを通じてCへ聞こえる必要がありますが、Cの声はBに聞こえる必要がありません。またAの声はBC両方に聞こえる必要があります。

今回はこれを先日導入したUSBオーディオI/FにもなるフィールドレコーダーのZOOM F6を使って実現します。他のUSBオーディオI/Fにもなれるミキサーでも可能なはずです。ちなみに日本のレコーダーメーカーのZOOMとウェブ会議システムプロバイダーのZoomは無関係です。どっちもロゴはzoomみたいな小文字っぽい表記でどう書き分けるのが正しいのでしょうね。とりあえずレコーダーメーカーはZOOM、ウェブ会議はZoomとしておきます。

このF6のスゴさはまた別記事にて。

■ケーブリング

F6にはXLR端子の入力が6系統あります。ここにAの声とBの声を入れる必要があるわけです。まずAの声は適当なマイクを用意します。問題はBの声です。一昔前ならスマホにイヤホンマイク端子がありましたが、今ではそうもいきません。LightningやUSB-C端子からオーディオ入出力ケーブルを使って取り出します。今回はGalaxyなのでUSB-C、またアナログ側はイヤホンとマイクがそれぞれ別口になっていた方が配線しやすいので、こちらのアダプタを購入しました。

iPhoneなどオーディオ変換アダプタはついてるけど4極の1口タイプだって場合はこういうのを買い足してわけてやります。

今回はミキサー側がXLRなので更にこういう変換アダプタも用意しました。

【国内正規品】RODE ロード VXLR TRS-XLR変換コネクタ VXLR

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逆にミキサーからAの声をスマホに戻すには、F6のヘッドフォン端子と上記アダプタのマイク端子をミニ<->ミニプラグのケーブルでつないでやります。

これでミキサーとスマートフォンで音声の入出力がともにつながりました。

■ZOOM F6設定メモ(自分用)

ダイヤルのフェーダーで臨機応変にボリュームが変えられるよう、入力設定のトリムであらかたの音量を揃える。スマホからの入力が+35db、マイク(MS2)側が+53db。マイク側はファンタム電源の設定も。

スマホからの音声がスマホへ戻らないように、出力->ヘッドフォン出力->ルーティングを開き、スマホ入力ソースがOFF(クリア)されていることを確認。

最後にシステム->USB->オーディオI/Fで「ステレオミックス(PC/Mac)」を選択。これでPC側からは「ZOOM Recording Mixer (ZOOM H and F Series Audio)」というサウンドデバイスとして認識されるので、ZoomやTeamsのマイクソースとして選択する。

残念ながらこの状態ではF6側の録音はできない模様。録音フォーマットを「AIR with Rec」モードを使ってPCに認識させればできそうだけど、WindowsではASIOデバイス扱いになるので、Zoomなどのマイクソース選択メニューに現れなかった。

またCの音声をBにも回したい場合は、ループバック機能を使えばできそう。ただUSBループバックの音声はF6上で音量調整できないぽいので、PCのヘッドフォン出力からアナログで別chに入れた方が制約がなくてやりやすそう。いずれにせよBの声をミキサーにつないでしまうとAがモニタリングする方法を別途考えなければならないかも。それをスピーカーから出すとマイクが拾ってしまうのでヘッドフォンにしないとならなかったり、とにかく指数関数的に面倒くささがますのでとりあえず本当に必要になってから考える。

 

というわけで、実際に必要な場面が来るかどうかもわからないですが、いざとなったらできそう、というメモでした。

 

ATEM Miniのお供に最適なワイヤレススクリーンレシーバーj5 ScreenCast JVAW56

ユーザテストでスマホ画面を観察室のモニタに映したり録画したい時ってどうしていますか?

例えばiOSなら

  • Lightning-HDMIアダプタで出力
  • MacにLightning-USBケーブルでつなぎ、QuickTime Playerなどで表示・録画
  • AirPlayを使ってAppleTVや互換ソフト(ReflectorやAirServerなど)へ表示

またAndroidならHDMIへ出せる機種が減ってきていて、ワイヤレスになると思いますが、

  • Miracast
  • Google cast (Google)
  • Smart View(SAMSUNG)
  • Screen Share (LG)

など規格がバラバラで客先毎の対応に困ることがあります。例えば参加者のスマホを使ってもらってう場合など、事前にテストもできなかったり。

 

よく使っているのはReflector 3というレシーバーソフトです。これ一本でAirPlayとMiracast、Google castを受け、録画することもできるMacおよびWindows用の有料ツールです。有料といってもOS毎2,000円くらいなのでリーズナブル。ただ現状で配信機能はないので、ZoomやTeamsに配信しようと思ったらそれらの画面共有機能を使って配信する形になります。スマホからのWi-Fi経由のストリームをデコードして、それを画面に表示してまたエンコードする、みたいな。また1画面のみの配信ならいいですが、実際にはカメラ映像とPinP合成したりとかもする必要があったりして、さらにOBS Studioなどのミキサー/配信ソフトも必要になります。あれやこれや全てソフトウェアで処理するとなかなかの性能のPCが必要になります。

そこでせっかくATEM Miniがあるので、HDMI出力で出せるワイヤレスレシーバーが欲しいなと。とある会社さんではFireTV Stickを利用していました。これは標準ではMiracastレシーバーを搭載しています。またAirPlayやGoogle castはアプリを入れることで利用可能になります。端末も安いしいいかも。

 

Chromecastもお手頃価格ですが、どうも全出力に著作権保護がかかるらしく、ATEM MiniのHDMI入力に入れると映像が真っ黒になって利用不可でした。

そんなこんなで、多様なスマホのスクリーンキャスト規格に対応できる体制を作るにはちょっとノウハウや複数の機材の組み合わせが必要でした。

そんな折りにふとニュースリリースを見つけたのが台湾のj5 create社が発売したScreen Cast JVAW56です。

本製品の特徴として、

  • 一台で対応するキャスト規格が多い
  • Wi-Fiが2.4GHzに加え5GHzにも対応
  • 非常にコンパクト(まるでHDMI-USBケーブルのよう)
  • 出力は最大1080/60p(高フレームレート)
  • お手頃価格(購入時10%クーポンで6,282円)

という感じ。macOSはAirPlay、WindowsはMiracastに標準で搭載しているので、iPhone/iPad/Mac/Windowsとほぼ大多数のAndroidを1台でカバーできます!

Wi-Fiは以前2.4GHzのAndroid端末で目に見えて動きがガタガタになったことがあり、5GHz対応は有用だと思いました(端末が2.4GHzオンリーだと意味ないですが。または2.4GHzオンリーなグレードの端末だったからガタガタだったという可能性も)。

「ちょっとコネクタが大きいケーブル」というサイズ感は「一応バッグにいれとこうかな?」って感じがして良いです。片側がHDMI、もう片側はUSBになっており、HDMI側をテレビやプロジェクターに挿し、USB側は電源をとる用なのでUSB充電器やモバイルバッテリーに挿します。5V/1AでOKのようなので、比較的小さい/古い充電器でも使えます(充電器は付属しません)。HDMIポートとUSBポートが物理的に離れている時のために、60cmのUSB延長ケーブルも付属します。

ちょっとコネクタの大きなケーブル?的な外観

個人的には4 HDMIスイッチャーであるATEM Mini Proにワイヤレス入力を追加するバディガジェットとして最適かなと感じています。この手の互換キャストデバイスとしてはAnyCastのようなドングル形状のものがよくありますが、ATEM Miniのように複数のコネクタが並んだ機器に挿す時に隣のポートに干渉するリスクがあります。その点、本製品なら普通のHDMIケーブルくらいのコネクタ幅なので問題なしです。

■接続テスト

HDMI映像機器とUSB充電器につないで映像機器の電源を入れるとこんな画面になります。

本製品の待機映像(Wi-Fi設定済み)

既存Wi-Fiへの接続設定がない場合は、「ScreenCast-xxxxxxx」のようなSSIDのWi-Fi電波を飛ばすので画面に出ているパスコードを使ってスマホやPCから接続し、ブラウザで192.168.203.1にアクセスすれば設定画面に行けます。そこで既存Wi-FiのSSIDとパスワードを設定してやると、LANにつながります。この状態で(各端末も既存Wi-Fiにつないだ状態で)各OS別のインストラクションに従って本機にキャストをすればネット接続を維持した状態で画面を本機に映すことができます。既存Wi-Fiを使わない状態で、端末を直接「ScreenCast-xxxxxxx」につないでキャストすることもできますが、その場合は端末がネットに出られなかったり、LTE経由での接続になったりするので注意が必要です。基本的にはまず本機を既存Wi-Fiにつなげておくのがオススメです。

一度設定したWi-Fi情報は本体に記憶されるので、次回は電源を入れるだけでOK。もし場所を移動して設定済みのWi-Fiを発見できないまま一定時間が経つと自動的に「ScreenCast-xxxxxxx」電波を飛ばしてくれるようです。

とても親切な本画面ですがややゴチャゴチャしているので、自分でカスタマイズした静止画像に差し替えられるといいなと思いました。その利用場面に最適化したインストラクションのみを表示したり、自社ロゴなどが入れられるとヨサゲ。一番上の部分はステータス表示なので消えたら困るでしょうが、星空の壁紙のエリアだけ刺し替えるとか、刺し替えた壁紙の上にステータスをかぶせるとかでいけると思うので、是非今後のファームウェアで実現してほしいなと思います。

テスト結果は上々。iPhone(AirPlay)はもちろん、Pixel3XL(GoogleCast)、Galaxy Note10+ (Smart View)、Surface Pro X(Miracast)からのキャストができました。ATEM Mini Pro経由でOBS Studioに収録もできました。Chromecastのように無条件に著作権保護していて真っ黒、なんてことがなく安心です(ただし説明書によるとAmazon PrimeやNetflixなど著作権保護されたコンテンツを再生すると真っ黒になる場合もあるようです。映画などを大画面に映すようにお考えの場合は個別に対応状況を御確認ください)。

少し気になったのは唯一Pixel3XLからのキャストで縦画面の時は解像度が低いかのように文字などがガタガタになりました。GoogleCastの問題かPixel3XL固有の問題か不明。横画面にすればそれなりに綺麗。たまたまピクセル数比がジャギり易い組み合わせだったとか?

設定画面にSAMSUNGのSmart ViewとLGのScreen Shareという表記がありますが、これらがGoogle Castとどの程度互換性があるのかは不明。実質はほぼ同じでマーケティング上差別化した名称を用いているだけ(DLNAを”お部屋ジャンプリンク”といってみたりするアレ)な気もします。もしくはMiracastとGoogle Castに区別なくつながりますかも。いずれにせよAndroidブランドを選ばずつながってくれるのは心強いです。

まだ実践投入はしていませんが、テスト結果は上々。ちょうどワイヤレス接続を使いそうな案件の打診が来ているので、早速活躍してくれるかも知れません。

 

 

 

 

 

ウィズコロナ・ユーザテストのセッテイングで工夫したこと

先日、6,7月はインタビューを2件ほどやりました。新コロナ感染防止のため、クライアントは見学に来られず、オンライン会議ツールに映像、音声を流す形での実施となりました。1件はモニタさんもリモート。1件はモニタさんとモデレーターは同じ会場で、クライアントのみリモート、という感じです。特に後者では会場での感染防止策としていくつかルールがあり、それに対応するセッテイングに苦心したのでメモしておきます。

ウィズコロナの会場調査で、実施会場側から指示されたのは、

  1. 双方マスクの着用
  2. 飛沫感染防止の為、モニタさんと距離をとり、間にアクリル板を設置
  3. 定期的な換気

でした。これらの全てが音声収録に悪影響を与えるので、従来のセッテイングでは声が聞き取りづらいというセッションがありました(ほぼ大丈夫だったのですが、やや話し声が小さい方のセッションで見学者から複数回「なんとかしてくれ」と要望がチャットでとんできました)。

■バウンダリーマイクでは厳しかった

私がよくやる1on1のユーザテストやインタビュー調査では通常卓上にバウンダリーマイクを設置します。こんなやつですね。

「録ってます」感が希薄なのが長所です。これらは見た目では区別つきづらいですが、指向性が360度(無指向性)のものと、前方に指向性がついたもの(厳密には後方を集音を押さえたもの)があります。単純に広い方がいいというものでもなく、1on1で二人が並んでいるようなレイアウトならそれをカバーできるギリギリの狭い指向性をもっていた方が、後ろ側にあるノイズは押さえられて聞きやすくなります。

無指向性マイクの場合

 

指向性マイクの場合

 

ところが、ウィズコロナ・レイアウトの場合、二人の距離がソーシャルディスタンスで離れるので、

ウィズコロナ・レイアウトだとカバーできない

その分、感度の高い(=距離が稼げる)マイクにするか、ノイズ覚悟で二人のど真ん中に無指向性マイクを設置するか、といった感じ。

さらにもう一つ問題がありました。定期的な換気が義務づけられていた為、窓やドアを開けたりサーキュレーターを回したりで外来ノイズが増えたのです。つまり、声が遠い上にノイズが多いという二重苦でS/N比が下がってしまい、結果として録音&中継している音声が聞き取りづらくなってしまいました。

少なくとも手持ちの3万円クラスのバウンダリーマイクではあれこれ向きや位置を工夫しても、やや声の小さなモニタさんだと厳しかったです。より性能の良いマイクなら良かったのも知れませんが、それはそれでノイズも高感度で拾ってしまうので、結果的にハイパス/ローパス・フィルターをかけたり、今ならRTX VoiceKrispといったソフトウェアのノイズキャンセルフィルタを組み合わせる必要があるかも知れません。RTX Voiceは効果は高いですがNVidia製の最近めのグラフィックボードが必要なので持ち込みノートPCでは利用できませんでした。Krispはサブスクなのでまだ試してないのです。

■結局ワイヤレスマイクを投入

で、今回の業務では以前使って評判のよかったワイヤレスマイク、RODE Wireless GOを再投入しました。

ワイヤレスマイクシステム RODE Wireless GOがとても良かった

出し惜しみしたのには理由があって、ワイヤレスマイクの弱点、注意点として、

  • その場の電波状況に左右されるリスク
  • 電池切れを起こすリスク
  • モニタさんが身につけたまま帰ってしまうリスク
  • モニタさんとの接触機会を増やす=感染リスク

があります。Wireless GOはカタログスペック上、フル充電で7時間保つことになっていますが、一日で60〜90分×数セッション行うUT調査では合間に充電しないと不安な数字です。またセッションの合間合間にそういう気を配らないとならない些事が増えるのは望ましくありません。

また最悪、モニタさんの胸元につけたマイクをうっかり取り外し忘れて帰られてしまうと悲劇です。後日回収できたとしても当日のセッションでは使えなくなってしまいます。

またせっかく距離をおいたりアクリル板をはさんでいるのに、一時的とはいえ近づいたりマイク自身を互いがベタベタ触るのはウィズコロナとしては避けたいものです。

乾電池式のものを使うとか、しっかり気をつけるとか対処はありますが、バウンダリーで済むならそれに越したことがないというのが正直なところです。

ちなみに今回は少しでもリスクを低減する工夫として、「モニタさんを送り出す時に使うカードキーホルダーにWireless Go送信機をクリップでつけ、モニタさん直近の卓上に置く」という手を取りました。

それで充分に聞こえれば接触不要で持ち帰られる心配もあります。で、もし声がどうしても小さくて聞きづらい方がいらした時だけ、それを首にかけてもらいます。女性の服だと胸ポケットなど取り付けやすい場所がないことも多いので、その対策も兼ねています。最後に出口にお送りする時に必ず使うカードキーと一体化することで、持ち帰りも防げる、というワケです。またそれを机上ノイズ(タイプ&クリック音など)除けと、マイクの向きを調整しやすくする意味で、下にタオルやハンカチを敷くのもオススメです。今回は最後の方で投入したので、結局首にかけてもらうケースまでは発生しませんでしたが、とりあえず見学者からのクレームはなくなったので良しとします。なおモデレーターの声はバウンダリーで拾ってミックスしました。

取り回しや安定性ではバウンダリーが理想だけれど、距離をとったりノイズが増えがちなウィズコロナ・レイアウトだとワイヤレスマイクを一人一台装着するのが理想かなぁというところです。見学者側も慣れないリモート視聴で聞き疲れしやすいので、少しでも聞きやすい声で配信したいものです。

Wireless GOは同じ場所で2台使っても混信とかはなさそう(公式にOKとは書いてないけど結構使ってる人いて平気みたい)なので、もう一台追加購入してモデレーターとモニタに一台ずつつけられるようにしようかしら。そういえば最近ホワイトが出てますね。白黒一台ペアだと取り違えも置きにくくていいかも。

また、とりあえずWireless GOをハンドマイク型にするスティック型オプションも買ってみました。

これは本来インタビューワーが手持ちで相手の口元にマイクを向けるためのものですが、これを介することで一般的なマイクスタンドに取り付けが可能になるので、よりモニタさんの口モノに配置ができます。Wireless GOはパッと見でマイクだとわからないデザインなので、下手な自作スタンドで高さを出すよりは、見た目「マイク!」って感じの方がわかりやすいかなとか。まぁ本来はあんまりマイクを突きつけるような形にはしたくないんですが、、

■いきなりステーキ型マスク

ついでにマスクの

  • 聞こえにくさ、
  • 蒸れやすさ
  • 表情の伝わりにくさ

を考慮して、モデレーター用に口元のみのシールドを使用してみました。一般的な呼称がわかりませんが、私は「いきなりステーキマスク」と呼んでいます。いきなりステーキの店員さんがやってるヤツです。実際それでググるとちゃんと商品が見付かります(笑)。

笑顔の見えるマスク10個入り

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ちなみにフルフェイスのシールドは手元のデバイスが反射で見辛くなることを考慮するとナシかなと思っています。会場のルールでは「マスクをせよ」ということになっているものの、マスクの定義は曖昧だったので一応現場担当者に了解をとりつけましたが、飛沫ブロック力としては通常の不織布マスクよりは劣るかも知れません。是非富岳さんにもこのタイプをシミュレーションしてほしいものです。

顎で支える仕組みで最初違和感がありましたがすぐ慣れました。それより紐が少し短くて耳の痛さが気になりました。次の実査では各種痛み軽減グッズを試してみようかと思います。

■そんなこんなで、、

ウィズコロナ対応セッティングのノウハウを少しずつ蓄積しつつ、どうにか実査を回しています。ご相談、ご提案はお気軽にお寄せ下さいませ。

簡単にマルチ映像配信ができるATEM Miniが来た、触った!

■ATEM Miniがやってきた

テレワーク、テレカンファレンスの増加のせいか世界的に品薄で某店では2ヶ月、別の店では「納期未定」と言われたATEM Miniが楽天のあるショップで奇跡的に在庫有りになっており、別の店で予約済みだったにも関わらず速攻で注文してしまいました。

ATEM Mini | Blackmagic Design

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37,480円(12/22 10:20時点)
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■どんな製品?

この機器については、以前の記事でも軽く触れましたが、

おさらいすると、

  • 複数の映像&音声ソース(HDMI入力x4)や音声ソース(アナログ3.5mmジャックx2)を自在に組み合わせた映像を作成
  • 1つのHDMI及び、USB出力に同時出力可能

な装置です。

つまり前回紹介したOBS Studioのようなことをハードで安定して簡単に行える装置ということになります。

OBS Studioでは(比較的性能が良い)ノートPCを使いますが、こちらはギリ3万円台で手に入ります。ただし録画、配信の機能はないので結局PCなり録画機器は必要になります。ただ合成処理をATEM Mini側でやることで、PC側の負荷は相当軽くなるわけです。個人的にはUSBカメラ扱いでZoom/Skype/Teams会議などに直接認識させられる点が強みだと思います。OBS Studioではそれができないので。まとめるとこんな感じでしょうか。

録画Youtube Liveなど配信サービスZoom/Skypeなどテレビ会議サービスPC負荷
OBS Studio〇(直接配信)△(画面録画か外部プラグイン使用)
ATEM mini×(HDMI録画機器、USB録画ソフトが別途必要)〇(Webカメラとして認識)〇(Webカメラとして認識)

ただやはり大きなハードボタンでソースをポンポン切り替えられる簡便さ、気持ち良さは大きいかなと思いました。特に私のようにユーザテストなどでの利用を考えていて、セッション中にモデレーターが操作することを考えるとほぼノールックでボタン1つ押せば済むというのは強みだと思います。他方OBSのアドバンテージには複数ソースを複雑に合成したレイアウトをしかも複数作って切り替えられる点かと思います。ATEM Miniは1つの映像の全画面表示が基本で、1つだけ子画面が置けるという感じです。大抵のUTではそこまで複雑なレイアウトは求められないので、安定性と切り替え操作の手軽さを重視してATEM Miniを活用していく方針でいます。

・こんな場面に

  • ユーザテストで、スマホを録る書画カメラと被験者の表情を録るカメラなど、複数の映像を合成して見せる
  • 同じくユーザテストなどで、セッション中にカメラアングルを切り替える(タスク中とインタビュー中など)
  • オンラインセミナーなどでPowerPointプレゼンテーションの上に話者映像をかぶせる

■基本操作

左下の「1」〜「4」ボタンがそのままHDMI 1番から4番に対応しているボタンです。押せば切り替わります。それぞれの上に当該ソースからの音声のON/OFFと音量上下のボタンがあります。「1」と「2」の上だけ4つずつボタンが多いですがこれはHDMI 1,2とは関係なくてアナログ音声の1と2のON/OFF、音量の操作ボタンになります。「4」の右にSTILL(あらかじめ設定した静止画を表示)とBLACK(黒画面を表示)があります。たくさんボタンがあって難しそうですが配置がわかってしまえばなんてことはないです。

右側で目立つのは「CUT」「AUTO」「FTB」です。CUTとAUTOは排他(どちらか選択)操作で、CUTは一瞬でパッと切り替わるモード。AUTOはトランジション効果(PowerPointでいうアニメーション)をつけて切り替えるモードです。「AUTO」の上の6つがトランジションのパターン、「CUT」の上がその持続時間(0.5秒、1秒、1.5秒、2秒)です。「FTB」はFade To Blackの略です。どんな映像を映していようと問答無用で徐々に映像が暗くなって消えます。いわゆるフェードアウトです。もう一度押とフェードインで復帰します。動画の最初と最後に使ったり、放送事故がおきた時に問答無用で押すボタンと憶えておきましょう(笑)。

真ん中ちょい右の6つのボタンはピクチャインピクチャ(PinP)関係です。ON/OFFとどのコーナーに映すかを選べます、原則として子画面に使う映像はHDMI 1番の映像固定です。ただし、ATEM MiniにはPC/Mac用の制御ソフト ATEM Software Controlが無料で提供されており、こちらから操作を行えばそれ以外の入力を子画面にしたり、大きさや位置なども細かく調整できます。ATEM Miniは本体のサイズやボタン数こそ絞られていますが、ソフト上の広い設定画面からなら更に多くの機能多くの機能が使える、という二段構えになっています。ボタンをあれこれ押してもできなそうでも、ソフトからならできる、ということもあるかも知れません。

最後の右上のKeyのON/OFFはそのソフトである程度の準備が必要ですが、例えばロゴなどの画像を映像に重ねたりといったことに使います。

とまぁこれで全てのボタンが一応説明できてしまいました。どうでしょう?パット見よりは「なんとか使えそう」な気がしてこないでしょうか?Blackmagic design社は放送映像業界では大手で、現場で素早くミスなく映像をコントロールするためのユーザビリティ・ノウハウが盛り込まれている感じがします。

■使ってみた

ちょうど動画を収録したい用事があって早速実践投入してみました。

アギレルゴコンサルティング株式会社の川口さんとコラボで、OBS Studio解説動画です。OBS Studioを操作する動画をATEM Miniで録りましたw。まだ設営途中の写真ですが、こんな感じでやりました。

奥のMacBook Pro 13’でOBS Studioを操作します。その画面をHDMIで出してATEM Miniへ。手前のSurface Goもパワポで目次などを出したりする用でHDMI出力をATEMへ。ATEMでスイッチ/合成した映像をUSBで左奥のDELLへ入力し、これまたOBS Studioで録画しました。

初めてでぶっつけ本番でしたがほぼ迷うことなく、また誤動作もなく機能してくれました。4つのソースボタンにはそれぞれなんの映像が来ているか横着せずに付箋などで書いて貼っておくのがミスを防ぐのに有用かなと思いました。また撮影に使った部屋は換気空調の音が非常に大きく、マイクやカメラのLC(ローカット)フィルタではほとんど消すことができず難儀しましたが、ATEM Mini側(要ATEM Software Control)で周波数別のカットを施すことでなんとか聞ける声で収録できました。単なるハイパス、ローパスで人の声より高い/低い周波数帯域をカットするだけでなく、人の声の帯域の中でもスポット的にある帯域を抑えころができ助かった感じです。ただこれらの音をイヤホンでモニタする音声モニタ出力(ヘッドフォン)端子があると良かったなとは思いました。

収録中のソース切り替えも大きなボタンでできるので、カメラ目線を外すのが一瞬で済みます。これがマウスやトラックパッドでOBS Studioのシーン一覧から選んでクリック、とかだとこうは行きません(ただOBSもシーン毎にキーボードショートカットをアサインできるので工夫次第なところはあります)。

■応用的な機能

他にも機能的にはこんなこともできます。

  • クロマキー合成でPinP時の話者の背景をくり抜く(ただしZoomなどにある画像高度な画像認識によるものではなく、グリーンバックなどを使う)
  • ロゴや透かし、画像などを重ねる
  • 音声の各トラックに各種イコライザーやフィルタをかけて聞きやすくする

など。これらは写真にあるハードパネルからではできず、別途専用ソフトを使って、USBまたはネットワー経由で制御する必要があります。ボタンとして見えてること以外にもできることが山盛りです。

クロマキー合成もちょっと試してみました。

Zoomなどは画像認識による背景マスク/合成ができますが、やはりたまに誤爆したり、境界が綺麗に抜けなかったりします。それに対し、こちらはグリーンバックを用意する必要があるものの、さすがに綺麗に抜け追従性も高いです(Zoomでもグリーンバック使用モードにするとさらに良いカンジにはなります)。壁一面のグリーンバックを用意するのは大変なので、私はハイバックチェアの背もたれのところにホームセンターで買ってきた緑色のボードをセットして顔の周りだけを緑背景になるようにしました(動画冒頭参照)。それ以外の部分は本機のマスク機能にて塗りつぶしてやればキー画面としては同じことです。カメラ映像をHDMIで入れてやるのがちと大変ですが(ウェブカメラとかではなくビデオカメラやデジカメが必要)、クオリティはアップすると思いますし、Zoom以外のテレカンツールでも使えます。

■新型ATEM Mini Pro発表

この記事を書いている間に、ATEM Mini に上位モデルのProが発表になってしまいました。価格が倍近くになるので単純に新型が良いというよりは選択肢が増えた感じですね。以下のような追加機能に魅力を感じる人はProを狙ってみてもいいんじゃないでしょうか。大きな違いは、

  1. 単体でYoutube Liveなどの配信サービスに映像送信ができるようになった
  2. USBストレージにH.264形式のMP4動画を録画できるようになった
  3. 6画面(4入力+最終出力画面+プレビュー)とレベルメーターを含むマルチビューが出力可能になった

といった辺り。4K非対応だったり映像スペックは同じ。

1.はYoutuberやゲーム配信する人にはよさげ。ユーザテストやテレカンに使う分にはあんまりという感じですね。同じようにHDMI入力信号をPCレスでYoutube Liveなどに配信するデバイスとしてはCerevoのLiveShellシリーズやLiveWedgeが有名です。機能的にはLiveWedgeが近いかもですね。価格帯も近いですが、USB出力も使えると思えばATEM Miniかなぁという気がします。

しかし2.の録画はかなり魅力的です。先の動画では結局さらにPCをつなげてOBS Studioで録画しています。だったらスイッチングもOBSでいいやんという話になりかねません。私もユーザーテスト記録用に当初、HDMIレコーダーを買う予定でしたが慌ててキャンセルしてProにするか思案中です。ただこれUSBを使うということはWebカメラ出力と同時に使えるのかどうかという懸念があります。単純にUSBハブをかませばいいという問題ではない気がしています。情報待ち。

3.については便利は便利ですが個人的には4画面(2×2)とかレイアウトにもう少し選択肢があったら嬉しかったなと思います。レベルメーターが視認できるのはいいですね。

ともあれProにしても無印にしてもATEM Miniはテストラボに設置していたような高価なスイッチャーの簡易版として非常にコンパクト、高コスパな良製品だと思います。新コロナ対策でユーザリサーチやインタビュー調査を遠隔中継しなければならないという方、是非ご相談くださいませ。

ユーザテスト中継でOBS Studioを活用する~ステップバイステップ解説

前記事で新コロナリスクで出社できない場合などにユーザテスト(UT)の遠隔視聴環境を構築する機材についてまとめました。

その中で紹介したビデオミキサーツールOBS Studioについて具体的な画面例を交えて基本操作を解説します。

■OBS Studioとは

複数の映像ソースや音声ソースを簡単にミキシングして1つの映像として録画したり配信したりできるフリーソフトです。MacでもPCでもLinuxでさえも同じ操作で利用できるので非常に汎用性が高いです。

公式サイト写真

例えばUTだと、PC画面、顔表情カメラ、背面ビデオカメラなどをバックアップも含めて複数の機器で録画したりしますが、あるシーンを見返すのにファイルやメディアがバラけていると大変な手間になります。そこでテストラボにあるような専用機材でピクチャインピクチャ合成をしたものを録画したりしているんじゃないかと思います。あぁいう映像をPCソフトで簡単に作れるわけです。またPC上で評価対象であるソフトやサイトが出す音と、モニタやモデレーターの声とをミックスして記録に含めることもできます。

たいへん専門的なソフトのように聞こえますが、ゲーム配信などでも広く使われていて、基本がわかってしまえばまるでPowerPointで画像を並べるかのように自由に映像レイアウトを作ることができます。複数のレイアウト(シーン)を瞬時に切り替えることもできるので、例えばインタビューセクションとタスクセクションで異なるカメラからの映像を使う、みたいなことも楽勝です。是非活用してみてください。

■ダウンロードとインストール

先日Windows版のリリースが始まったVer 25系はグラフィカルなアイコンがついていっきにフレンドリーな雰囲気になった気がします。利用するなら最新版でいいと思います。以下、Windows版の25.0.1を使って解説します。

なお、複数の映像、音声ストリームを扱うので利用するPC/Macはそれなりの性能があった方が安定して稼働させられると思います。特にユーザテストの対象プロダクト自体も同じPC上で使ってもらいバックグラウンドでOBSを動作させる時は。できればGeForceなどの外部GPUがついた機種ですと、エンコードにハードウェア支援が使えるので軽い負荷で動作するはずです。

インストール自体は特に難しいことはないと思うので端折ります(笑)。

■基本画面と用語

起動するとこんな画面になると思います。

起動直後

まずポイントは左下の「シーン」と「ソース」です。耳慣れない言葉ではありませんがこの文脈ではなんのこっちゃです。とりあえず「シーン」は応用編なので後の節まで放置しておきます。

「ソース」は“入力”のことです。本ソフトは複数の映像や音声を合成できるわけですが、そのひとつひとつをソースと呼びます。例えば映像ソースとしては

  • PC自身の画面全体や特定のウインドウ
  • PCに内蔵のウェブカメラ
  • USBでつないだ外部カメラ

などがあり、音声ソースとしては、

  • PC自体が鳴らす音(効果音や音楽など)
  • マイク入力やライン入力から来る音

などがあるわけです。ここで使いたいソースを接続し、好きに並べたりしていくわけです。映像ソースを追加すると上のプレビューの中に表示されます。音声ソースは「音声ミキサー」枠にリストされます。

■映像ソースの追加

まず映像ソースを追加、配置してみましょう。典型的なUT場面を想定し、ブラウザのウインドウにウェブカメラの顔映像をピクチャインピクチャ(以下PinP)で並べてみます。

まず操作対象となるブラウザを起動しておきます。

次に「ソース」枠の下にある「+」アイコンをクリックします。ここにOBSが扱えるソース一覧が並んでいます。ここでは「ウインドウキャプチャ」を選びます。

ソース一覧

こんなダイアログが出るので「新規作成」ラジオボタンを選択し、自分でわかりやすい名前(ここでは「ブラウザ」とします)をつけ「OK」で保存します。

ソース作成

次のこの画面で、「ウインドウ」プルダウンメニューから目的のウインドウを指定します。今回はEdgeなのでmsedge.exeを選びました。現在開いているURLのタイトル属性も見えているのですぐ見付かるでしょう。他はとりあえずデフォルトのままで良いでしょう。

対象ウインドウ選択

ブーン!(Jobs風に)、これでプレビュー上にブラウザウインドウが配置されました。実際にブラウザを操作すると、このプレビューにも同じものがリアルタイムに映っているはずです。まさにパワポのようにこのプレビューをドラッグ移動したり、赤い枠を操作してサイズを変えたりできます。

ちなみに録画/配信されるプレビューのキャンバスサイズを確認/変更するには、右下にある「設定」ボタンを開き、「映像」タブを開きます。そこで「基本(キャンバス)解像度」と「出力(スケーリング)解像度」を変更します。前者は入力ソースに応じたサイズを確保します。基本的に両者は同じの方が録画/配信される映像は綺麗ですが、負荷が高い場合や録画を小さくしたい場合は出力解像度を落としてみても良いでしょう。

もうひとつ、最初空だった「ソース」枠に「ブラウザ」が追加されているのもチェックしてください。追加したソースはここにリストされていきます。選択して「ー」アイコンで削除したり、上下矢印で重なり順を変更したり、歯車アイコンで設定画面を開いたりと操作できます。

ウインドウキャプチャソース追加後続いてウェブカメラの映像を追加してみましょう。また「ソース」枠の「+」からでもいいですし、プレビューの黒い余白部分を右クリックし「追加」を選んでも同じメニューが開きます。カメラ映像を取り込む場合は「映像キャプチャデバイス」を選びます。また「新規作成」のまま「ウェブカメラ」などと名前を付けてOKでソースを作成します。

さきほどと同様に「デバイス」欄でソースに使いたいカメラを選択します。普通は1つかも知れませんし、前回紹介したような書画カメラやHDMIキャプチャーデバイスを接続してあればリストに出てくるはずです。

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とりあえずウェブカメラを選びました(部屋が散らかっているので背景マスクソフトを経由しています。リアルでこのサイズの猫がいるわけではありません)。その他のパラメーターは今回もデフォルトで大丈夫でしょう。もしカメラが4Kとか無駄に高画質な場合は「解像度/FPSタイプ」を「カスタム」にしてその下で低めの解像度に固定してもいいかも知れません。

映像キャプチャデバイス選択/設定

はいドン!。わかりにくいですが、先ほどのブラウザに重なるようにカメラ映像が出ました。いい感じに配置をレイアウトしましょう。ちなみに普通に赤い枠をドラッグしただけでは縦横比が固定されたズームしかできません。このカメラ映像のように左右に無駄な余白がある場合は、Altキー(MacだとOptionキーかな?)を押しながらドラッグすれば変形が可能です。これやや裏技チックなので憶えておきましょう。

カメラ映像追加直後

ということで顔映像の余計な部分を削ってブラウザに重ならないように並べてみた感じがこちらです。映像は一旦これでよしとしましょう。

レイアウト後

■音声ソースの追加

続いて音声ソースの設定です。最初から「デスクトップ音声」と「マイク」があったところに(さっき映像キャプチャーデバイスを足した時に)「ウェブカメラ」が追加されています。

とりあえず声を出してみてレベルメーター(赤黄緑のゲージ)が動くか見てみましょう。通常、OS側でもいずれかの入力ソースが選ばれているので、場合によっては「ウェブカメラ」と「マイク」が一緒に動くかも知れません。OSが標準入力としているソースが「マイク」に入っています。それ以外の音声ソースを改めて取り込みたい場合は、やはりソース枠の「+」などから「音声入力キャプチャ」ソースを追加します。また名前をつけ、次の画面で当該マイクデバイスを選択します。

音声キャプチャデバイス追加

「USBマイク」という名前で追加してみました。するとそのマイクが拾っている音に応じてレベルメーターがピコピコ動き出します。

音声ミキサー部分

ここで各ソース毎にできることが2つあります。

 

  • 不要なソースのスピーカーアイコンをクリックしてミュート(赤に×印)
  • レベルスライダーを動かして音量を適正化

複数のマイクから音が重なって入るとエコーのようになって聞きづらいのでもっとも聞こえの良いマイク以外はミュートするかソースから削除しておきます。

また適正音量の考え方ですが、まずなにもしゃべってない状態で写真のように黄色や赤に届くようだと大きくノイズが入っているということなのでレベルを下げます(スライダーを左に)。また声を出した時に赤ゾーンに行ってしまうようだと音割れのリスクが高いのでこれも下げます。そうならない範囲でなるべく大きくしておくのが良いでしょう。普通の声で緑の右寄り、やや大きい声で黄色に入っちゃうかな、くらい。ドっとウケたり咳をしたりといった音は別に割れても困らないのでそこだけ赤に入るくらいなら大丈夫です。

またしゃべっててもしゃべってなくても緑が結構大きく動いていてあまり差が出ないような場合はそもそもマイクの集音状態がよろしくありません。

  • エアコンなど外部ノイズを遮断したりマイクから離す
  • 指向性のあるマイクを使う
  • ローカットフィルタやノイズキャンセル機能がある場合はオンにしてみる

などしてみましょう。またキーボードの打鍵音など卓上のノイズが大きく入ってしまう場合は、マイクの下にハンカチなどを敷いてみると改善することがあります。

ともあれ理想として、しゃべってない時は緑がほぼ動かず、しゃべると大きく動くが、それでも赤は超えない、状態を目指してみると良いでしょう。

効果音やBGMがなる製品のUTの時など、PC自体から出る音もあわせて録りたい場合は「デスクトップ音声」の方も同様に音量調整をします。

■録画と配信

さてこれで2つの映像ソースと2つの音声ソースをいい感じにミックスできました。これを録画または配信したいわけです。

・録画

「設定」から「出力」タブを開きます。

録画設定画面

下側の「録画」ゾーンから、

  • 録画ファイルのパス(=保存先フォルダ)
  • 録画品質
  • 録画フォーマット(mp4が良いでしょう)
  • エンコーダ

などを設定します。「エンコーダ」はそのPCが対応していれば「ハードウェア」が選べるので積極的に選びましょう。その方がCPU負荷が下がります。

設定が終了したら元の画面から「録画開始」をクリックすれば録画が始まります。ウインドウを最小化しても大丈夫です。ツールバーのアイコンにも赤丸が点灯します。ここを右クリックして録画停止することもできます。

ツールバーアイコン

・配信

配信設定は上記画面の上側で画質設定を行い、また「配信」タブで配信先の設定を行うのですが、そもそもここでいう配信はYoutube LiveやFacebook Liveといった不特定多数向け配信サービスへの送信を意味します。たぶんですがあまりUT文脈で使うことはないんじゃないかと思います(一応Youtube Liveとかではプライベートな配信も可能ではあります)。

どちらかというと前の記事にも書いた通り、ZoomとかTeamsのようなビデオ会議ソフトを使うんじゃないでしょうか。残念ながらこれらに対してOBSから直接送信する機能はありません。やるとしたらこのOBS Studio自体のウインドウをビデオ会議ソフトの画面共有機能を使って共有する形になると思います。この場合、難点としては、

  • デスクトップを二重にキャプチャすると負荷も多重にかかる
  • モニタさんにOBSのウインドウが見えないように最小化した場合、ビデオ会議ソフトによってはキャプチャできない可能性もある

などがあるでしょう。この場合はOBS Studioを動かすPCとタスクに使うPCは別に用意する方が賢明かも知れません。

あるいはこのOBS Studioに近いことを専用ハードで行うATEM Miniのような機材を使うのが良いでしょう。こちらはまた別途紹介記事を書きたいと思います。

ATEM Mini | Blackmagic Design

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■[応用編] シーンの活用

応用操作として「シーン」について触れておきます。

さきほどソースを組み合わせてレイアウトや音声ミキシング設定を作りましたが、「シーン」はその上位の括りになります。シーンの下に各種ソース、レイアウト、ミキシング設定が含まれますので、シーンを複数セット作って置けば、それを選ぶだけで瞬時に設定を切り替えられるワケです。

具体的には現在画面左下の「シーン」枠に「シーン」という項目が1つあると思います。ここでソース同様「+」をクリックして適当な名前をつけて保存します。

シーン追加ダイアログ

これでリストに「シーン」と「シーン2」が並んだと思います。そして「シーン2」を選ぶと、ソース枠は空のはずです。ここにまた最初からソースを追加していき全く別個のシーンを作成します。もしくは既存のシーンを右クリックして「複製」しカスタマイズしていくこともできます。

こうして複数のシーンができたらリストからクリックするだけで切り替えることができます。右側の「シーントランジション」を選ぶとオシャレ切り替えができます。

■こんな時は?

・PCの負荷を把握したい

「表示」メニューから「統計」を選ぶと各種数値が見られるウインドウが開きます。CPU使用率が大きかったりFPS(コマ数)が低すぎたりしそうなら解像度を落としたりソースを減らすなどの配慮が必要かも知れません。

・映像を180°回転したい

映像を右クリックして「変換」からできます。USBカメラを卓上三脚で逆さまに取り付けた時などに使えそうです。

・スマートフォンの画面を映したい

上に上げたようなUSBタイプの書画カメラを使うのがオススメです。iOSやAndroidの画面共有映像をPCで受けるソフトを使い、それをウインドウキャプチャする手もありますが、UTでは使用者の指の動きも見えた方が往々にして有益です。

設備投資を抑えたい場合は、USBカメラを三脚などに取り付けてスマホの真上に固定する手もあります。その場合、上記の180°回転が役に立つでしょう。

・静止画やテキストを入れたい

ソースに「画像」や「テキスト(GDI+)」があります。

・「ブラウザ」ソースって何?WebのUTではこっちを使うの?

割と最近追加された機能で、特定のURLを表示するソースみたいです。ユーザが操作するブラウザウインドウというより、配信者がコメントウインドウとか自動で更新されるようなURLを常時表示するようなもののようです。ユーザテストでブラウザを使う場合は「ブラウザ」ではなく「ウインドウキャプチャ」ソースを使っておけば良さそうです。

・「スタジオモード」って?

本番中継でうっかりミスしないように、シーン切り替えのプレビューが見られるモードです。切り替えると左右にプレビューが出ます。右が実際に配信中の映像、左がプレビューです。真ん中の「トランジション」をクリックすると配信映像に反映されます。まぁUTでは使わなくて大丈夫でしょう。

・音が小さいです…

まずはマイクを話者に近づけるのが第一です。

それが難しい場合、音量を上げますが、ノイズも一緒に大きくなってしまいます。音量を一杯に上げても小さい場合は、音声ソースの歯車アイコンから「フィルタ」を選び、「ゲイン」というフィルターを追加します。これで音量スライダー全開よりもさらに音を大きくできます。ただし音質の劣化もあるので使わないに越したことはないでしょう。

・声が聞きづらいです…

物理的に良いマイクを買うのが早道です。PCに内蔵されてるマイクはだいたい役立たずです。MacBookは比較的マトモなマイクが載っていますが、それとても基本的には真正面に一人が座って話す声に最適化されています。PC向けWebサイトのテストなどで、そのPC自身を使う人の声ならまだいいですが、モデレーターの声は遠くなるかも知れません。スマホなどPC外のものを使用している時の声は外部マイク必須です。

前項で触れたフィルターの中に「ノイズ抑制」などもあるので試してみる価値はあるかも知れません。こちらのリンクも参考になるかもです。

・OBS Studio向けにどんなPCを買えば良いですか?

まずハードウェアエンコードができる独立GPU(GeForceとかRadeonとか)がついているものが良いでしょう。一般にはゲーミングPCなどが強力なGPUを搭載していることが多いです。MacBookでいうとAirや13インチProよりも15/16インチ。これがあるとCPU負荷を大幅に下げて録画/配信できます。

独立GPUが使えない場合、並行処理が得意=コア数が多いCore i7などのCPUを搭載しているものが良いです。同じCore iシリーズでも最近のものほど内蔵GPUもそれなりに強化されてきています。

また薄いPCなどは冷却機能が弱く、負荷が高まるとファンがブォォォっと唸りをあげがちです。ノートPCでもあまりモバイル性重視のものは向かないかも知れません。

・Windows10のゲーム録画機能とオフにする

公式サイトによるとWindows10 1809以降に搭載されたゲーム録画機能がOBS Studioとコンフリクトして問題を起こす場合があるようです。その場合はこちらの説明(英語)を参考に機能を無効化してみると改善するかも知れません。

無観客ユーザテスト(リモート観察)の実施方法を検討してみる

■要約

  • YouTubeなど不特定多数向け配信サービスよりZoomやSkypeなどビデオ会議サービスが無難安心安全
  • ビデオ会議サービスに内蔵Webカメラ以外の映像(ビデオカメラなど)を流すには、UVC(USV Video Class)という規格に変換するのが鍵
  • 忘れがち、軽視しがちなマイクもちゃんとしないと聞き取りにくいUTはサイアク

■無観客ユーザテストの必要性

2020年3月現在、新コロナウィルスの流行でリモートワークを推奨または強制している企業が増えており、ユーザテストも実施しづらくなっているのを感じます。ユーザテストは同時に大人数が集まるイベントではありませんが、同じ部屋に入れ替わり立ち替わり出入りして狭い部屋に一定時間過ごすのも確かなのでモデレーターがスプレッダーにならないよう気にしなければならないですし、見学者が集まる(大抵狭くて密閉されて換気が十分ではない)観察ルームも安全とは言い切れないかも知れません。

前記事ではテストルームでできる対策をまとめてみました。

今回は観察側でできる工夫、というか観察ルームに集まらないでUTを見学するための道具立てについて考察してみます。通常「リモートUT」というとUIScopeさんなんかが実施する「モニタが自宅で製品を触ってる様子を録画して提出する」スタイルをイメージしますが、今回扱うのは「モデレーター付きの会場調査で、見学者がリモートにいる」という形式を想定していますのでご留意くださいませ。流行の言い方をすれば「無観客UT」ですかね。新コロナが終息した後でも、これを機にリモートワークが推進されたり、グローバルな調査では海外など遠隔にいるスタッフが見学したりということもあり、今だけ必要とされるノウハウではないと思います。

■ネット中継に使用するサービス

動画をネット配信するというとYoutube LiveやTwich、ニコニコ動画のような配信サービスが思い浮かびます。実際利用可能ですし、PCレスで映像をそれらのサービスに送出できるLiveShellのような単体ハードウェアも数多くあります。サービス側で録画までしてくれたりして便利でしかも無料です。しかしこれらは本来不特定多数にブロードキャストするためのサービスで、関係スタッフだけに中継するのには馴染みにくいと思います。サービスによっては配信にパスワードなどの認証をかけられるものもありますが、やはり開発中製品のユーザテストの様子を「Youtubeで流します!」とかいったら色々と不安がられることでしょう。サービス提供側としても意図した利用方法ではなくもしかすると利用規約的にも微妙なところかも知れません。

また自前でRTMPサーバーを準備して、というのもオンプレミス、クラウド共にハードルが高いのでここでは触れません。

そこで登場するのがZoom、Skype、Skype for Business、Teams、Chatworkといったビデオ会議サービスです。これらはカメラ映像、音声、そして画面共有などができるので機能要件を満たします(基本的に双方向会話のためのものなので、観察サイト側のマイクやカメラをミュートしておくなどの配慮は必要ですが)。テキストチャット機能も並行して利用できるので、見学者間で意見交換したりモデレーターに追加質問を依頼したりといったことにも使えます。またZoomなど録画機能が使えるものもあります。そして何より大事なのは多くの企業が既にこれらのサービスを利用しているということです。設定も済んでおり操作に慣れていてすぐに使えるというのもありますし、ルール的にも新たに別のサービスを業務で利用したいと申請するよりは許可が下りやすいのではないでしょうか。

逆にいずれも使っていない組織の場合、新コロナでテレワーク支援のため各社とも期間限定で無料ライセンスを発行している今こそお試しのチャンスだと思います(通常時から無料のものもありますが同時接続数や時間に制限がついたりします)。

■ビデオ会議に外部映像を流す方法

ここでノウハウと機材が必要になるのが、そこにどんな映像を流すかです。PC用のビデオ会議クライアントソフトではPCが認識している映像&音声デバイスがソースとして選択できます。通常のビデオ会議では内蔵またはUSB接続のWebカメラやマイクを使い話者の顔を映しますが、UTにおいてはそれでは足りないこともあります。スマホを操作する手元を映したいということもあるでしょうし、さらに手元と表情と両方流して欲しいと言われるかも知れません。ここら辺の要求に応えるにはやや特殊な機材が必要になってきます。以降なるべく安価で入手性のよい機材を使って実現する方法を紹介したいと思います。

・PCの操作画面を流す

これは割と簡単です。ビデオ会議クライアントにはたいてい画面共有機能が搭載されているからです。モニタさんが操作するPCそのものでビデオ会議に接続し、全画面または対象ソフト(ブラウザ)ウインドウを共有するだけです。中には「画面共有中」みたいな小さな表示が出てちょっとだけ気になる場合もあるかも知れません。その場合はモニタさんにひと言「遠隔から見学する人のために共有しています」とか伝えておくといいかも知れません。

・表情を流す(PinP)

これもビデオ会議ツール自体の標準機能で対応可能でしょう。これも画面共有以上にモニタさんに同意をとりつけておくことが大事だと思います。

・スマホの操作画面を流す

これにはいくつか方法がありますが、最近のスマホにはAirPlay(iOS)はGoogle Cast(Android)といった画面共有機能があります。これをPCで受けるReflectorのようなソフトを使い、PC画面上に映し出し、それを上記の画面共有機能で送信します。スマホ->PC、PC->テレビ会議サービスと2段階の共有になりスマートではありませんが、特別な装置が不要で実現できます。またiOS -> Macなら有線になってしまいますがLightning->USBケーブルで追加ソフトなしに画面共有できます。

難点は操作する指が見えないことです。PCならマウスカーソルが見えればそこそこユーザの意図や迷いが把握できますが、スマホだとホバー状態もわからずいきなり画面遷移が起きたりして一瞬なにが起きたかわからなくなります。ボタンにactiveトランジションがあればまだ良いですが、そうだとしても「そもそもボタンですらないところを間違えてタップした」といった現象は画面共有では観察することができません

その意味で機材事情が許すのであれば以下のカメラを用いる方法をオススメします。

・外部カメラを使う(手元編)

問題はここからです。スマホを操作している様子を映すなど。ノートPCの内蔵カメラは向き、画角ともどうしようもないのでUSB接続の(三脚穴のある)ウェブカメラを使って、三脚などに固定するのがお手軽でしょう。ただし三脚穴は大抵底面にあるので普通にとりつけると逆さまになってしまうので注意が必要です。ドライバーや社外ユーティリティで180°回転機能するか、物理的な取り付け方法を思案する必要があります。

2020.03.30追記:Webカメラの焦点距離について

カメラ(レンズ)には最短撮影距離というものがあります。それ以上近寄るとピントが合わないという限界距離です。ウェブカメラを書画カメラ的に使う場合、想定用途よりも近距離で映すことになるので、場合によってはこれが問題になる場合があります。ただウェブカメラの仕様表にはあまりこのスペックが明記されていないので試してみないとなんともなところです。一般にオートフォーカスがついている位の製品なら大丈夫なイメージですが、パンフォーカスの安い製品だとその限りではないかも知れません。まずはお手持ちのウェブカメラがある場合は10-15cm位の距離にスマホをかざしてみてピントがあるかどうか試してみると良いと思います。

大丈夫そうなカメラが見付かれば、例えばこういうスマホ用ホルダーで挟み込むとか、

このアダプターを三脚側のネジにつけ、反対側の平面を両面テープかなにかでウェブカメラに貼り付けるとかですかね。

ETSUMI 止めネジ メスメス E-6602

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またはウェブカメラではなくスマホにテレビ会議クライアントを入れて固定するのも良いでしょう。ちょうどマイクがモニタさんの方を向いていいかも知れません。ただし充電切れには注意です。

ちなみに私はこれを購入してみました。メインシャフトが2段になっていて角度調整の自由度が高い分、他の商品よりよさそうなのですが、執筆時点でAmazonでは入手不可になっています。後々在庫が復活した時のためにリンクを置いておきます。よしみカメラさん、是非再生産を!こちらは別記事にて詳細レビューをする予定です。

もうちょっと予算がかけられる場合は、こちらのUSB書画カメラもオススメです。PCからはウェブカメラとして認識されるので各種ビデオ会議ツールでも問題なく顔映像のかわりに映像ソースとして使うことができます。数多くの実査で利用していますが専用ソフトの出来もよくとても重宝しています。モバイル系プロダクトやデジカメなど小型ハード製品のUTをするならマストバイです。ただし内蔵マイクはあまりイケてないので後述のような外部マイクを用意することを強くオススメします。

IPEVO V4K 超高解像度USB書画カメラ〔台湾製〕

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・外部カメラを使う(”引き映像”編)

例えばモニタさんとモデレーターの対話の様子を映したり、より大きなデバイス(プリンターとか)のUTやOOBE(Out of Box Experience)のテストでテーブル全体を映したいといった場合にはより広角の映像が必要になります。最近では会議室で複数の参加者を映すために広角寄りのウェブカメラもありますがせいぜい画角90°というところです。またUTだと随時ズームで手元に寄ったりと光学ズーム性能も要求されるので、ここはやはりビデオカメラが使いやすいでしょう。問題は多くのビデオカメラはHDMI出力しかないことです。例えPCにHDMI端子があってもこれも出力専用。つないでもカメラの映像を取り込むことはできません。

そこで必要になるのがこうしたHDMI->USBキャプチャーデバイスです。

AVerMedia UVCキャプチャーデバイス BU110 DV456

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HDMI信号(映像&音声)をUSBウェブカメラ互換(USB Video Class)でPCに認識させる変換してくれます。これ自身の電源はUSBからとるので、PCのUSBポートとビデオカメラのHDMIポートそれぞれに1本ずつケーブルをつなぐだけのシンプル構成。PC側のケーブルは付属しているのであとは必要に応じた長さのHDMIケーブルを用意すればすぐ使えます。USB Video Class規格なのでドライバーソフト等のインストール不要でWIndowsでもMacでも使えるので、勝手にソフトを入れられない会社PCにもフレンドリーです。

PCから映像デバイスとして認識されてしまえば、ZoomでもSkypeでもTeamsでも使い放題というワケです。

・映像を合成する(ハードウェア編)

似たようなHDMI -> USBカメラ変換機能を持ち、もうちょっとだけ凝ったことができる機器も紹介しておきます。私も最近知ったばかりで、しかも品薄でまだ入手できてないのですがBlackmagic Designという海外で実績のある映像機器メーカーのATEM Miniという製品です。HDMI入力が4系統とマイク入力が2系統あり、これをスイッチ操作で瞬時に切り替えたり、ピクチャインピクチャで合成したりできます。なので複数のカメラ映像や(HDMIで入力した)PCの画面を切り替えながら送信したり、操作画面の片隅に表情カメラの映像を重ねたりといったことが簡単にできます。それが3万円代とBU110にプラスαのお値段で買えるというのはかなりコスパ高いと思います。既に注文済みなので手に入り次第改めてレビューをしたいと思います。

ATEM Mini | Blackmagic Design

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・映像を合成する(ソフトウェア編)

上記ATEM Miniのような映像合成や音声ミキシングを行うソフトウェアも存在します。しかもフリーソフトです!多少の設定手順とPCの処理能力が試されますが、試す価値はありだと思います。

OBS Studio

MacでもWindowsでもLinuxでも使えます。録画機能や配信機能もついており、ゲーム実況などでよく利用されているのでググれば解説ブログや動画もたくさん見付かります。当ブログでも近日中にUT向けセッテイングを解説しようと思っています。

■良いマイクを使おう!

ここまで映像の処理について解説してきましたが、見過ごしがちなのが音声です。このブログでも著書でも繰り返し啓蒙していますが、音声が聞き取りやすく収録できてないと観察する人、記録する人、「もっと大きな声でしゃべらせろ」と言わされるモデレーター、言われるモニタさん、全ての人に無駄なストレスがかかります。「アー、アー、テストテスト!」なんて試した限りでは一応聞こえてるなという気がしても、長時間だと聞き疲れしてしまったり、ちょっと声の小さな人やマスクをした人が来たらアウトかも知れません。マイクはケチったら絶対ダメ。内蔵マイクは真正面に一人の人が座ってしゃべることを想定したものなのでUTという利用場面には馴染みませんし、そもそも品質がショボいことが多いです。

ビデオ会議クライアントでは映像ソースと同様、音声ソースもOSが認識している入力デバイスから自由に選ぶことができます。必ずしも映像ソースと同じデバイスから取る必要もありません。なのでUSBタイプの外付けマイクをつなぐのがお手軽でオススメです。

例えばUTラボによくあるバウンダリーマイクのUSB版としてはコレとかいいと思います。

MXL USBバウンダリマイクロフォン AC-404

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12,993円(12/22 14:25時点)
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とまぁ渾身の機材漫談を書き殴ってみたらアフェリエイトリンクだらけになってしまいましたが、具体的な製品例もあった方がよかろうと。ご参考になったら是非こちらのリンクからお買い求めください(笑)。また、これらの機材とノウハウ込みでユーザーテスト実施をお手伝いいたしますので、この困難な事態にメゲずに評価をまわしていきましょう。機材選定、セッテイングのお手伝いのみのご相談もお気軽に。