BambuLab AMT HTを導入

フィラメント乾燥機能付きシングルAMSのAMS HTがBambuLab公式のブラックフライデーセールで25,800円→19,800円だったので導入してみました。

フィラメントの乾燥はより良い品質の造形には欠かせません。特にウチでよく使うASA、ASA-CF、PETG-HFなどは事前乾燥が必須とされています。TPUなども糸引きがかなり軽減することが検証済みです。

PLAやPETG-HF、TPUなどは乾燥時指定温度が65℃なので、Sanlu S2や先日導入したSanluのAMSヒーターでもカバー可能です。

しかし、ASAや、現時点では使用してないものの関心があるPC(ポリカーボネート)などは80℃/8時間指定なので、カバー不可です。そういう場合、保証外ですが、調理用コンベクションオーブンのTSF61Aを使っています。これはこれで温度も時間も充分なスペックを備えています。

■AMS HTを使うメリット

Sanlu AMS HeaterやTSF61Aと比較して、AMS HTを使うメリットにはどんなものがあるでしょう?

1つはAMSと同じRFIDタグ読み取りができるので、Bambu純正フィラメントだと材料に最適な乾燥パラメーターを自動でセットしてくれる点。同様に造形時のフィラメント種類設定も不要になります。

もうひとつは電磁ベント(弁)の自動制御です。AMS Heaterは乾燥中は自分で弁を開けて湿気を放出し、保管時は閉じる必要がありますが、これは案の定忘れまくります。AMS HTは電気的に開閉できる弁を搭載しているので気にする必要がありません。さすがに1つのフィラメントを365日乾燥したままにすることはないですが、短期的に集中して使うフィラメントを数日スタンバイしておくといった時に重宝しそうです。

そして単純にAMSを1スロット拡張できるという点。後述のAMS Hubが別途必要になりますが、標準のAMSの4スロットにプラス1して5スロット機として使うことができるようになります。正直マルチフィラメントとしてはそこまで使う機会はないですが、単純によく使うフィラメントをセットしっぱなしにして、物理操作なしで造形がスタートできるのはちょっと便利。残念ながら-CFなどの素材が非推奨なのはかわりませんが、通常のAMSよりも経路がシンプルなので無理矢理使っても途中でフィラメントが折れたりなどは起きにくそう、なのかな?そもそもブロックされるかどうかも不明なので追々試してみようと思います。

その他、効果が実感できるかはわかりませんが、乾燥時にスプールを回転させてくれて万遍なく乾燥できるというのも売りです。これはS2、AMS Heater、TSF61Aのどれもできていなかった部分です。

■AMS HTのここが気になる

まず誰もが落胆するのが「乾燥しながら造形できない」点。乾燥を止めても一定温度まで下がってからでないと造形に進めないようです。ただAMS Heaterを使ってて、加温で柔らかくなったフィラメントで造形するとトラブル率高まる気がしていて、Bambuも技術的な制約というよりもトラブル防止のためにあえて制約をつけてるっぽい気がしています。ただいちいちインレットから抜かないと乾燥できないとか、冷めるまで使えないといったあたりは普通に使いづらいですね。

あと、X1-CarbonでAMS1/2と併用するにはAMS Hubが必要です。発売当初には認識してたんですが、注文時点ですっかり忘れていて後から慌てて追加購入しました。X1-Carbon Comboの背面についているフィラメントバッファーを取り外して、その4股版であるAMS Hubを取り付ける必要があります。19,800円でも割と思い切って買ったのに、追加で¥7,740 円(通常は9,680円)必要となってギャフンとなりました。お気を付けください。他にAMSがないなら、あるいは同時に使わないなら不要です。都度使い分けるなら、外部スプールを使うのと同じでY字アダプタを使えば大丈夫だと思います。自分としてはせっかくなので4+1スロットで使ってみたかったのでやはり必要かなと判断しました。

気になるというか注意が必要そうなのは、フタにロック機構がある点。S2の感覚でパタンと閉じるだけだと密閉されておらず、ハンドルを引いてパチンとロックするよう注意が必要です。たぶんですがシステム的に検知はしてないのでアラートが出たりはしなさそう。自分で気をつけないといけません。

-CF/-GFフィラメントの対応可否?

上でも触れましたが、仕様表の記載がいまいちわかりづらく、うちでよく使うASA-CFはどうなの?というのがまだよくわかっていません。「対応」の意味として、

  • 造形できる(自動送り/戻し対応)
  • 造形できる(引き戻しできないバイパスポートのみ)
  • 乾燥できる

があります。執筆時点の表記では、

造形可PLA、PETG、ABS、ASA、PET、PA、PC、PVA(乾燥状態)、BVOH(乾燥状態)、PP、POM、HIPS、

Bambu PLA-CF/PAHT-CF/PETG-CF/Support for PLA/PETG、AMS用TPU
造形可(バイパスポート)TPE、汎用TPU、Bambu PET-CF/TPU 95A、および炭素繊維・ガラス繊維を含むフィラメント
乾燥PLA, PETG, Support for PLA/PETG, ABS, ASA, PET, PA, PC, PVA, BVOH, PP, POM, HIPS, Bambu PLA-CF/ PAHT-CF/ PETG-CF, and TPU for AMS

となっています。-CF系では「Bambu PLA-CF/PAHT-CF/PETG-CF」は明示的にOKで、それ以外はバイパスポートを使わないとダメぽい。バイパスポートはいわば「ただの穴」で、Sanlu S2と同じ外部スプール扱いで、使い終わったら自分で巻き取る必要があったり、他のAMS側のフィラメントとマルチで使えなかったりという制約があります。ASA-CFはみるからにポキポキ折れそうな固さなのでやはり厳しいんですかね。今後はAMS HTで使えるかどうかも-CFフィラメントを使う時の選択基準になりそうです。

あとBambuと書いてあるので、社外フィラメントはすべてバイパスポートということになりそうですね。この辺り、自己責任で使えるのか、そもそもフィラメントタイプをセットしたらロックされるのかは要検証です。

あと乾燥対応にASA-CF載ってないのはなんでなんだぜ?

2025.11.23追記: ASA-CFはやっぱダメっぽい。

ASA-CFですが、まず乾燥設定にプロファイル自体ありません。まぁ80℃x8時間というのはASAと同じなので、手動でASAを選択してやれば乾燥自体は可能。

次に造形してみようとインレットにフィラメントの先端を挿入してみたんですが秒で折れました。経路内に破片が残って背面のPTFEチューブを抜いて除去してやる必要がありました。やはり非推奨どころか実質使えません。乾燥プロファイルが用意されていないのも、そもそもRFID認識のためにインレットに挿してローディングしようとした瞬間に折れるので、乾燥(のためのフィラメント識別)自体も無理、ということであえて乾燥プロファイルも用意されていないということでしょうか。うーむ、残念。やはりPCに移行してみようかなぁ。

■操作画面例

AMS HTを追加するとフィラメントタブの表示はこんな感じになります(乾燥中)。

「ガイド」ボタンの左にあるツールアイコン的なボタンを押した状態がこちら。乾燥設定と実行ができ、本体前面パネルと同じ情報がここでも確認できます。

X1で良かったと思う瞬間ですね。P1系だと不便そう。

ちなみにBambu Studioでの表示はこう。赤矢印のところがタブになってて切り替えて表示します。

どうも乾燥操作はできないっぽい?同様にスマホアプリのBambu Handyも同様です。うーん、外出先から帰宅したら造形したいから乾燥はじめたろ」とかできないのは残念。単に実装が追いついていないというより、加熱機構なので万一を考えて遠隔操作はさせないということなんでしょうか?

まとめ

乾燥の質という意味では、TSF61Aでも一応できていた温度なので、自動回転機構の有無で差が出るかどうかなので体感は難しそうです。

ただ指定通りきっちり乾燥させて運用していこうと考えた時の利便性向上アイテムなのかなと思います。TSF61Aはアニール処理やシリカゲル乾燥にも使えるかと思って購入しましたが、アニールは寸法変化が大きく部品中心のウチではあまり機会がないので、今だったらTSF61A買うよりAMS HTにしたかもなという気はします。でも8時間とかかかる処理だし、AMS HTは冷めないと造形に使えないということもあるので、せっかく両方あるなら今後も併用かなという気がしています(ただX1本体も含め1500Wコンセントx1からのタコ足では同時使用は厳しいかも)。

TSF61Aを所持している身として即効性のあるアップグレードではないですが、追々使ってまた気付きがあれば追記していこうと思います。

AMS一体型フィラメントドライヤー、SANLU AMS Heater着弾

BambuLab製の初代AMSのトップカバーを交換する形でAMSをまるごとフィラメントドライヤー(乾燥機)にしてしますというSANLU AMS Heaterが届きました。CAMPFIREのクラファンで先行注文していたもの。13% OFFくらいの枠で申し込んで18,199円で購入。今Sanlu公式サイトでみると18,014円となっています。まぁまぁフザケンナって感じです。送料かかるのかもだけど…

特徴としては、AMSを4スプールのドライヤーとして使える点で、純正のAMS 2が乾燥と造形を同時にできず、乾燥を停止して充分冷めるまで造形がスタートできない弱点があるのに対し、本品は(システムと連動していないが故にお構いなしに)「乾燥しながら造形」が可能になっています。とはいえ純正ができないのもたぶん理由があってなので、そこをガン無視して乾燥しながらしていいものかどうかは悩ましいところです。フィラメントが無駄に柔らかい状態で送り込まれてトラブルになる可能性もあるでしょう(→早速ありました、後述)。

またAMS2が65℃までなのに対し、本品は70℃までいけます。ASAなどの85℃にはどのみち届きませんが、乾燥しながら造形できるのでそこまで湿気吸ってない状態ならワンチャン、とか思ったりします。庫内のシリカゲルを乾燥させることは無理かなー。シリカゲルの交換ってこぼしたり面倒くさくて放置しがちですが、これで復活したら便利だなぁ。でもコンベクションオーブンでする時は90℃とか100℃くらいでやったりするので厳しいかな?

また乾燥させたフィラメントを除湿状態でキープするモードがあります。目標の相対湿度範囲を保ってサーモスタット的にヒーターをON/OFFし続けます。ただ残念ながら湿った空気を外部に排出するエアベントは手動スライド式のフタなので、「乾燥する時は開け、除湿キープ時は締める」を自分でやる必要があります。ここは純正や他社競合品に劣るところです。絶対忘れるヤツ。

気を取り直して設置してみたのでファーストインプレなど。

■設置性

もとも円柱型のトップカバーをネジ4本で外し、同様にネジ4本で固定します。ネジとアレンキー(L字型の六角レンチ)は付属してきますが、微妙に噛み合いが悪く、ネジを舐めないかドキドキでした。たぶん元からついてたネジと長さは同じっぽいので、元のネジを使った方が無難だったかも?ヒンジもネジも2セットついてきます。最初どこに使うんだ??と思ったけどたぶん予備なんでしょう。

我が家は写真のようにすぐ上にラックの棚があってフタの開け閉めができるのかドキドキでしたが、「自重で止まるほど前回にはできないが、片手で開いておけばスプールはギリギリ抜き差しできる」というギリギリの設置でした。X1-Carbonのトップガラスを斜めにするリフターを使ってるんですが、数cm斜めに持ち上げてもかろうじて、というところです。どうしても不便を感じたら棚板の位置をいじるかもですが、とりあえずそのままで済んでほっとしています。ここ、将来的にH2DとかにしたらAMSの上積みは無理そうだなぁ。

前述の手動エアベントがトップ面の奥の方にあるので、かなり見づらい。スライドが左右どっちにあるかは見えるけど、穴が空いてるか閉じてるかは見えないので、どっちがどっちだっけ?となりがち。仕方ないのでテプラ貼りました。

デザイン的に目立たせたくなかったんでしょうけど、頻繁に開閉するものの使い勝手としてはイマイチな位置です。

■AMSとしての使い勝手

まず単純にフタが重たくなります。まぁこれは慣れそう。

それよりは「中のフィラメントが見えづらい」というのが不便に感じます。中のスプールが見えるのがこの隙間のみ。

高さでいうと3cm位。実際には反射とかもあるのでもっと狭い印象です。フィラメントの残量がパッと見で把握できなかったり、たまにスプールへの巻き取りが間に合わずAMS内でフィラメントがぐちゃぐちゃになることがありますが、そういうトラブルも察知しづらいのが難点です。

■動作の様子

懸念の動作音ですがそこまで気にならないかなと思います。トップカバーをあけるとクォーっと音が聞こえてきますが、閉じていると静かなデスクトップPCくらいでしょうか。X1-Carbonが稼働してれば気にならないレベル、稼働してなくても、我が家のサーバーやルーター、NASの音に紛れて今更ってくらいの印象です。すごく静かな寝室とかなら気になるかもですが。

ヒーターや乾燥維持の効果はもう少し使い込んでみないとなんともです。たぶん「最近造形が綺麗だなー」「なんか折れないなー」とかいう微妙な実感が出てくるかなというところです。PETG-HFとかTPU、ASAを使うのに事前乾燥は必須とされているので、それをきっちり守っていこうとした時に効率化できるかなというところですね。

造形トラブルが起きた…

偶然の可能性もありますが、本品を装着してヒーターをPLA設定で加熱しながら造形でPLAフィラメント(GENESIS PLA+)が2回連続でトラブりました。1回目はうっかりドアを開け忘れたせいかも知れないのですが、エクストルーダーの中で詰まってフル分解が必要になりました。これは以前もちょくちょく起きてたし、GENESISは普通より柔らかいのかクロッグしやすいとの噂なので、特にドアを開けるよう気をつけていたんですが、、GENESIS、ドア締め、フィラメント加熱という3つが重なり合ってしまったせいかも知れません。この辺り、AMS2が加熱しながらは造形させない理由でもあるのかも知れません。

気を取り直してエクストルーダーのつまりを直し、さらにトラブルの種と聞いたBIQUのPandaCraw(フル金属のエクストルーダーギア)も外して純正の樹脂ギアに戻しました。金属ギアは摩耗に強いとのことですが、これが熱をもってしまってよろしくないとのことです。

(リンク先は転売価格の可能性があるのでご注意ください。公式サイトの方が遥かに安いです。)

で、今度はドアもしっかり開放して再度造形したんですが、今度はフィラメント切れのエラーが何度も。1回目の時点でヒーターをオフにしたんですが、余熱もあって軟化したままなのかも。うーん、GENESIS、発売記念で1,000円だかで買ったんだけどやっぱダメかな?PETG造形のサポートインターフェイスとして使ってるので、何度もロード/アンロードを繰り返すトラブりやすい条件ではあるんだけど。ノズルやプレートもPETG基準の温度になってるでしょうし。でも同じモデルを直前に1回完走できてるので、やはりヒーターの影響はありそうです。

もうちょっと他のフィラメントでも色々テストしていってまた追記したいと思います。

GENESISはPLA単体の造形ではそれほどトラぶらないので試作用と割りきってはやく使い切りたい…そして次は買わない。

■まとめ

H2Dと一緒にAMS2やAMS HTが発表されて、ちょっと気になるなー、でも乾燥してすぐに造形できないの不便だよなーとかモヤモヤしていた中、1.8万円で手持ちのAMSをアップグレードすることができてラッキー!という感じです。以前かった同じくSanluのドライヤーも色々と不便が多く、移行できるといいなと。

ただ-CF系とかTPUみたいなAMS不可のフィラメントを乾燥させながら造形する時はやっぱり外部ドライヤーも必要なので処分もできないかなぁ。いずれはAMS HTに買い換えたいものです。