3Dプリンターの素材であるフィラメントは様々ですが、ものによっては吸湿性が高く、開封後しばらく放置すると湿気を吸って造形品質が悪くなる場合があります。もっともメジャーなPLAはそこまででもないですが、PETGやABS、TPUといったものは気を使います。
通常真空密閉されて送られてくる新品を開封した後は、乾燥剤を入れた密閉容器に保管するなどする必要があり、ものによっては改めて使用直前に加熱乾燥することが推奨されているものも。
とはいえ自分は売り物を作ってるわけでもないので、「使えればいいや」くらいで最低限の除湿剤保管くらいしかしてきませんでした。先ごろ購入したX1-Carbonはヒートベッドの加熱機構を流用して乾漆乾燥するモードが備わってますが、実際やるとなると8時間とか12時間とか占有されてしまいプリントができなくなるので躊躇していいました。
そんな折、久しぶりにTPUフィラメントを使う機会があったので、実際どれくらい違いがあるもんかと試しに加熱乾燥をして比較してみました。
1月(4か月前)に購入して除湿剤(シリカゲル)を入れて密閉バッグに入れていたフィラメントです。X1cのプリセットでは12時間となっていましたが、途中で切り上げたので10時間くらいだったと思いいます。X1cの加熱チャンバー容積はフィラメントスプールに対してかなり大きいので、フィラメント購入時に入ってる段ボール箱をかぶせるか、配布されているカバーのモデルを自分でプリントして使うことが推奨されています。ただ後者は加熱に耐えるPCなどの素材が指定されており今回は段ボール箱で実施。
なにもしないで造形したのが写真右、乾燥後に再度造形したのが左です。
結構違いが出ましたね。ブルーの半透明フィラメントですが、未乾燥の方はところどころ白くなっている上、糸引きがちぎれたようなプツプツが無数にできて全体にザラザラしていますが、乾燥してからやった方はそれが完璧とはいわないまでもかなり改善されています。
やっぱり効果あるんだなぁと実感。
TPUの使用頻度はそこまで高くないですが、柔らかいものを作りたい時などは第一選択しになる素材です。PLAの次に使うPETGなどでもそこそこ効果があるみたいなので、やはり面倒でも仕上げにこだわるときは乾燥した方がよさそうですね。
ということで専用ドライヤーを購入
ということで、長時間X1cで乾燥させるのは不便だし、熱量的にも効率が悪いと思うので、専用のフィラメントドライヤーを購入することに。ものによっては一度に複数のフィラメントを乾燥できるものもありますが、設置場所の問題もあるのでとりあえず1スプール用から。
要件として考えたのは、
- 静音性が高いこと
- 温度x時間指定しなくてもフィラメント種別指定で済むタイプ
あたり。
候補として挙がったのがSANLUとCREALITY。
価格差は誤差程度。ちなみにアリエクでもそんなに値段がかわりませんでした。
操作系もほぼ同じ、というか同一パネル?
大きく違うのが設置方向。SANKUは横向きにスプールが入って、フタも横に開くので左右方向にスペースが必要。逆にCrealityは前後方向にスペースを食う感じ。想定した設置場所の都合でSANLUにしてみました。デザイン的にはCREALITYの方がかっこいいんですけどね。
しばらく使用しての所感
動作音はほぼ無音で気になりません。最大消費電力も48Wなので電球くらいでしょうか。設置位置の都合上、X1cと同じコンセントから電源をとっていますがタコ足で心配する必要はたぶんなさそう。そうした基本的な使い勝手は概ね満足しています。いくつか不満点としては、
電源アダプタのコネクタ形状がイマイチ
本製品は付属のAC-DCアダプタで電源供給をするわけですが、プラグは一般的な丸型コネクタで、背面側から垂直に突き出る格好になります。なので本体を壁ピタで設定できなかったり向きをかえる時に引っかかったりしがち。どうせ足で浮いてるんだから底面とかからもう少し上手く生やしてほしかったなと思います。
フタ形状がイマイチ
スプールの出し入れにフタをほぼ180度バカっと開く必要があるので、実質のフットプリントはやや大きめ。出し入れのたびに本体の位置や向きをかえています。
またフタをロックする機構がなく、フタの穴にフィラメントを通して造形を行うと、たまに穴をスムーズにフィラメントが通過できなくてフタがパカっと開いてしまったり、スプール毎持ち上がったりしてフィラメント供給が止まってプリンター側でエラーになったりします。
70℃までしか設定できない
最近ASAを使ってみてるんですが、Bambu Lab製の公式の推奨乾燥要件は80℃で8時間です。しかしSanlu S2は70℃までしか対応していません。実際フィラメントプリセットにASAがありません。PLAやPETG系なら55℃とか60℃なので問題ありませんが、ABS/ASA/PCなどを利用する場合はちょっとスペックが足りないので要注意です。
自分はアニール処理やシリカゲル乾燥用途も兼ねてこちらの低温コンベクションオーブンを購入しました。
これはこれで専用機ではないので温度によってはスプールが溶けてしまうなどのリスクがあるし、そもそもフィラメント乾燥を目的として開発されている商品ではないのでご参考まで(ご利用は自己責任で)。
まとめ
多湿な日本の夏において、やはりフィラメントの乾燥は気を配った方がいいんだなということが実感され、ドライヤーを購入しました。一回に数時間とか半日かかるので、さほどきっちり毎回やるのは難しいですが、誰かに納品するような品質重視の時にはしっかり活用していきたいと思います。
またABS/ASA/PCのような造形温度が高いフィラメントは乾燥に必要な温度も高く、この機種では不足も感じます。それらを多用する場合は他の機種を検討した方がいいかも知れません。