ASSA ABLOY製シリンダのドアにSesame 5を取り付けるキット製作

我が家の玄関ドアはASSA ABLOYという海外製メーカーのシリンダー/ロックケース/サムターンがついている木製ドアです。ここ製の全てのものがそうかは不明ですが、ウチについているのはサムターンが360度以上クルクル空転するタイプで、Sesameをはじめとするスマートロックと相性が悪いです。たぶんこれ。いままで3Dプリンターを使ったDIYでどうにか使ってきましたが、今回コメントで同じ系統のドアをお使いの方から頒布してほしいと要望をいただいたので、改めて微調整をし、新たにサムターンホルダーも設計してみました。

過去記事はこちら。

■ドアの仕様

まずサムターン部分はこんな感じの菱形をしています。

ASSA製のサムターン

しかもこのまま奥まで寸胴ではなく、すぼまったような形をしています。正面写真だけ送ってメーカーのサムターンアダプタ設計サービスを受けるといまいち掴みが弱い(一番太い頂点部分でのみ保持)ものになってしまう可能性があります(メーカー公式サービスを受けたことがないので、上下左右の写真も送ってしっかりしたものを作ってくれるかもは知れませんが)。

また国産のサムターンではあまり見ない、ロックトゥロックが360度を超えて回転するタイプで、「施錠位置から解錠位置まで何度どちらに回転」という制御をするスマートロックがそのままでは使用できないことがあります。例えば「右に90度で施錠」、「左に90度で解錠」という設定があったとしても、このサムターンは手で操作するとさらに左右に回ってしまうので、そこから90度回しても施錠/解錠ができない、という事態になります。

更にこの会社の製品は北欧の木製ドアに使われることも多いらしく、できればSesame本体を両面テープを使って貼り付けたくない問題があります。

まとめると、ASSA ABLOYの一部ドア製品は、スマートロックを取り付けるにあたって、

  • サムターン形状が特殊
  • サムターンが360度以上回転するので人力が介在すると正常にロック/アンロックできない
  • (ドアが木製だと)Sesame本体を両面テープで貼り付けたくない

という三重苦を抱えていることになります。

今回のキットは3Dプリンターでそれらを解決するためのキットになります。

■サムターンアダプター

今回新たにモデリングしたのがこのサムターンアダプターです。手前から差し込む形状だと奥のすぼまりに対応できないので、左右からサンドイッチする2パーツ構成にしました。

サンドイッチした後でセロハンテープで巻いて固定しています。一見手抜きのようですが、色々実験した結果、Sesame本体のアームとあまりガッチリにせずある程度上下に滑って動いた方が動作がスムーズっぽい、ということがわかり、摩擦が低くなるセロテープ式を採用しました。あんまり目に入らないしいいかなと。もし真っ黒なのが売ってればマスキングテープとかでも良いかも知れません。なにかしら表面がツルツルしたものが良いと思います。

ちなみにSesame側のアーム幅よりも少しだけ細くなっているのも仕様です。これは純正アダプタの説明でも、

サムターンアダプターは回転効率を上げるため隙間を持たせて設計しております。

お取り付け後も固定はされない状態で問題はございませんので、テープや詰め物などで固定されませんようお願いいたします。

と記載されており、アームがゆるゆると動くマージンを残しておくのが重要のようです。

■回転ストッパー

そしてサムターンが360度以上無駄に回転しないようにするのがこちらの回転ストッパーです。

(頒布版からはDo-guganロゴは抜いています)

Sesame3用に開発しましたが、今回、全体に薄型化されたSesame5用に微調整を加えました。また家庭用プリンターでは文字刻印が綺麗に出ないかもと思いロゴは削除しています。

こんな感じでSesame5下部に取り付けます。

取り付け位置の調整ポイントは2点。

  • 前後位置:手前面を揃える(突起の背面に少し隙間ができ、サムターンの回転を邪魔しない)
  • 左右位置:突起の左面(垂直になっている)がサムターンの円の中心線くらいを目安

という位置に貼り付けます。

2024.7.23追記:サイド取り付けタイプ

同じサムターン形状でも実際にロックボルトが動く開錠~施錠の動作位置が異なるパターンのご報告をいただき、ストッパーの突起を下からではなく横から生やすタイプも開発しました。レンダリングCGですがこんな形状で、Sesameの電池ボックス側のフラットな表面に貼り付ける想定です。

下部貼り付け型もついちゃってますが、試作品を貼り付けた様子がこんな感じ(試作用高速フィラメントなので色も違うし粗も目立っています。あくまで貼り付け方法のイメージ用として)。

最終版はもう少し突起の形状を短く太く変更して、サムターンができるだけ360度に近いギリギリまでまわるようにしています。また左側の電池ブタも干渉せず手前に引き抜くことができます。

今回は単純に9時の方向から真横に生やすようにしていますが、設置状況によってはもっと半端な角度に調整する必要があるかも知れません。お使いのドアの動作範囲を確認していただき個別対応を前提にしあ方が良いのかも。

プレート自体を全面カバーにせずもっと小さくすれば、貼り付け位置を自分で調整できていいのかもとは思ったんですが、サムターンが当たっても負けずに受け止めてくれないとなので、接着面を最大にしたかったのと、見栄えの問題で現状はこうしている感じです。

■固定用バックプレート

両面テープを使わず、ドアにダメージを残さない形でSesame5を取り付けるのがバックプレートです。ただしサムターン両脇の2つのネジを一旦取り外し、サムターンのベースの下に挟み込む形で共締めします。この際、ドア外側のキーシリンダー部分が外れ落ちるので、マステなどで仮止めしておくか誰かに手で押さえておいてもらうことをお勧めします。

ちなみに熱で反りにくいよう、PLA素材よりも耐熱性が高いPETGで造形しています。おそらく一般的な家庭の環境であれば問題ないかなと思っています。

ドア内側から見て左にドアノブがついているパターンの方から要望をいただき、左右反転したバージョンも用意しました。

まずドアのサムターンをクルクル回転して、カシャっとロックボルトが動く位置を見定めます。おそらく解錠に動く位置と施錠に動く位置が全く同角度ではないと思います。それでも「ここからここまでの回転に絞れば、解錠も施錠もできる」という角度範囲を探ってください。その範囲と、Sesame+回転ストッパーの動作範囲が重なるように気をつけて位置を仮決めし、Sesame側のサムターンを回して解錠/施錠ができることを確かめます。ドア側のサムターンとSesameのサムターンの中心が揃うのが理想ですが、Sesameのサムターン裏のアームはスライドする仕組みになっているので、多少はズレても対応できると思います。それでもできるだけ少ない力で回せた方が電池の減りも少ないと思うので、音などを聴きながらスムーズに回転できる位置を探ってみてください。

位置決めができたらSesame付属の両面テープなどでこのプレートに本体を貼り付けます。個人的には付属のテープより、この手↓の剥がす時に破れにくく、耐熱性能も高い両面テープがお勧めです。かなり強いので、Sesame側の接着面の全面に貼らずに一部だけ充分保持できると思います。逆に全面で接着してしまうと後日剥がしたくなった時に大変になると思うので、面積少なめからお試しいただくと良いと思います。

充分に固定ができたら、Sesameアプリの「角度の設定」画面で施錠位置と解錠位置を設定してやれば良いはずです。

■オマケ:Sesameリモート用バックプレート

先日発売された室内用リモコンのSesameリモートを、壁(石膏ボード)に大きな穴を開けずにとりつけるプレートも作りました。

こんな感じの小さな穴が四隅に開いた板です。ピンだけだと1000本入りとかになるので、こういう製品からピンだけ抜いて使うのが良いと思います。

こうしたピンだけなら抜いた後の穴も最小限なので賃貸などで退去時の補修も最低限で済むと思います。

(紹介の製品で現物確認をしていないのでもしかしたら穴の径が合わないかも知れません。場合によってはキリなどで穴を広げる必要があるのでご了承ください。また壁紙の裏が石膏ボードではなく柱材などだった場合はより太い釘などが必要になる可能性もあります。)

■動作確認は念入りに、物理鍵の所持も推奨

モノが家の鍵だけに、動作や固定の確認は慎重に行ってください。外出中に外れてしまって解錠できなくなったりする恐れもあるのでバックアップ手段として物理鍵を携行したりどこか宅外の安全な場所に保管しておくことを強く推奨します。

あくまで個人の趣味レベルの制作物なのでご利用は自己責任でお願いいたします

■頒布情報

ASSA ABLOY製シリンダのドアにSesame 5を取り付けたい、という方がどのくらいいらっしゃるかわかりませんが、もし本キットがお役に立ちそうであれば材料費1,000円+送料程度でお裾分けしますのでコメントにてお知らせください。

例のブロワーをプチ改造。起動ドングルをぶら下げるリングを増設

こちらの洗車用ブロワーですが、やはり起動用の安全キーというかドングル的なものを挿しっぱなしだと少なくともLEDが点灯してるだけの電力消費はあるらしく、別の洗車機会に使おうと思ったら完全に空になっていました。

この写真でUSB-Cポートの近くに差し込んであるのがそれです。正式名称不明。単に後ろにリング状になってる配線で2つの電極をショートさせるだけのものですが、これを差し込まないと通電しないようになっています。

お子さんやペットがいる家庭などで不意にトリガーを押し込んでしまいブレードが回転して事故につながるリスクを抑止しているんだと思いますが、外した状態で本体に格納したりぶら下げたりするところは皆無なので保管に困ります。

ということで3Dプリンターワーク。

ファンの下の顎の部分にストラップリングを取り付けました。ちょうどその部分がフラットになっていて両面テープを取り付け易かったので。ストラップは百均で買ってきたもの。

ちょっとわかりにくいかもですが、3Dモデルでみせるとこんな部品です。(ドラッグでグリグリ動かせます)。

ブラブラして邪魔な感じもしますがまぁ仕方ない。当初、カチっとはめこむようなホルダーも考えたんですが、外れて紛失するのは一番ダメだなということで、より確実に紐で結ぶ形にしました。まぁこれもリングが破損して外れるかもですが、そう重いものでも引っ張るものでもないので大丈夫かなと。

フィラメントには層間密着性(レイヤーの剥がれにくさ)がPLAより高いPETGを使い、リングの引っ張り方向に層ができないよう、造形の向きにも配慮しました。

とりあえずこれで「使いたい時にはぶら下がっているドングルを差し込む」という運用ができるようになりました。

BambuLab X1-Carbonで使ったフィラメントの使用感メモ(随時追記)

X1-Carbon Combo(以下X1c)で使ったフィラメントも多岐に渡ってきたので、簡単な評価を記録しておき、今後の再購入是非の目安にしようと思います。一部は前機種のMagician X時代に買ったもので少し劣化が始まっていた可能性のあるものもあります。

にわかの肌感になりますが、2024年春時点で、1.75mmのPLAフィラメント1kgスプールが、

  1. Bambu純正が頂点で4.5千円
  2. OVERTUREやPolymaker、eSUNなどそこそこブランド感のある中級ランクが2,3千円台。他メーカーの純正品という位置づけなのも多く、総じて悪くはないはず。
  3. いかにも中華製激安といったその他のブランドが2千円未満

くらいのランク感があるように思います。綺麗、精度高く出したい本番用と、ざっとサイズの検証をするプロトタイプや見えないところで治具として使うもの用など使い分けをしていきたいなと思っています。

あとBambu Studioにプロファイルがない社外フィラメントを買った時、製品に記載されているエクストルーダー温度やベッド温度を元にカスタムプロファイルを作ったりしてましたが、どうもBambuプロファイルの中から近いのを選んで使う方がトラブルが少ない気がしてきてます。そもそも設定できるパラメーターの全てが記載されているわけではないので、それくらいなら入念に設定された純正プロファイルの方がX1cにマッチしてるのかも知れません。

■Bambu Lab純正

付属も含め、PLAベーシック、PLAマット、PLAメタル、PETGベーシック、PLA用サポートなど使いましたが、基本的に品質も良くトラブルも少ないです。高いだけある。カラバリも多いしできれば純正だけ使っていきたいですが、やはり価格差がバカにならないのと、公式ストアでかかる送料や納期の長さ(品切れも多い)も無視できないデメリットです。PLAメタルが切れかけてすぐに補充したかったのに何週間も品切れのままだった、なんてこともあり、コスパも含めて大量に使うものはすぐにAmazonで買えるブランドの方がいいなぁと思います。逆にメタルなどオリジナリティの高いカラーは純正かな。スプール無しの選択肢をもっと増やしてほしいものです。

■OVERTURE

前機種も含めかなり初期から使っているブランドです。一部のフィラメントはBambu Studioにプロファイルも用意されているので安心材料です。全体的にいい感じの色味が多く、激安品ではないがそこそこのネームバリューがある買いやすいブランド。特に最初に買ったマットのダークオレンジがとても気に入っていたのに今は廃盤になってしまったのが残念。

段ボールスプールなので最初はAMSで上手く巻き取りができなくてトラブルもありましたが、PLAリングを経てビニールテープでいいやとなってだいぶ改善。それでもまだ若干AMSとの相性が悪い印象。絡んで造形が停止していることもしばしば。良い代替ブランドがあれば変えたいけど、結局色や価格で選ぶとなぜか選んでしまいがち。

■Kexelled

MagicianX時代にシルクPLAを買いました(廃盤)。1,500円くらいとお買い得で、スプールも樹脂でそんなに苦労した覚えはありません。良い色、タイプがあればまた買ってもいいかな。

■TIMMORY

最初にPETG-CFを購入。スプールは樹脂。おおむね悪くないし、カケルの動画だったかのPLA比較でもバランスの良い評価だったのでその後PETG(未使用)PLA(未使用)、PLA-CFと買いました。きちんと集計してないですが肌感覚としては造形も綺麗でコスパは高いイメージ。

このカーボンブルーのPLA-CFはつや消しでシブい青で良き。ただ何度かAMSで絡んで、諦めて外部ホルダーから使ったことがあります。何が違うんでしょうね?「CFは経路内で折れやすいから注意な」って毎回警告メッセージでるのも似た理由ですかね(実際に折れてたことはないけど)。注意しろって警告でても具体的にどうしろとは書いてないという…TIMMORYの問題というよりPLA-CFの危うさなのかも知れません。

透明PETG-Ecoもカラバリが多くてコスパもヨサゲ。透明買ってみたんですがこちらもまだ開封待ち。

名前なんて読むんだろう。ティンモリー?

■GratKit

サイズ確認用のプロトとかをガシガシ造形するのにとにかく安いPLAフィラメントを見つけておこうと思い購入。なんと1kgで1,329円(当時)。

しかしさすがに激安すぎた。AMSで使うとめちゃめちゃ絡んで停止します。現在は諦めて外部配給のみに。なんか造型物のサイズ精度も微妙に悪いようなイメージ。

最近サポートフィラメントを多用するようになってきてるので、AMSで使えないもは厳しい。次はないかな?って思ってます。

あと細かいですが、スプールにフィラメント先端を留めておく穴が少ない。多くのメーカーは上下左右の4組ですが、これは上下2組のみでした。

■ELEGOO(未使用)

GratKitが使えなそうとなって次に買ったのがこちらのPLAプラス。千円台に比べると価格インパクトはまりますが、印刷速度600mm/sまで対応ということで設計段階の試行錯誤にピッタリかなと。GratKitを使い終わったら以降する予定。これに限らず全体にX1cのような高速機の場合、フィラメントも高速対応を謳うものを買ったり、温度を高めにして造形した方が良いのかもと思い始めています。

そしてまだ使ってない状態ながら、2スプールセットがセールで更に安かったので同じPLAプラスで、よく使うホワイトも買ってしまいました。白は純正のマットホワイトがとても好みなのでスプール無しのリフィルを買ってこうとも思ってたんですが半額近かったのでつい…見た目ニュートラルな悪くない色味ですが造形したらどうだったかは追々。

■PolyMaker

これも一部、というか割と多くのプロファイルがBambu Studioに入っているブランド。一説ではBambuフィラメントのOEM供給元という話も。

同居人にサクラ(薄ピンク)色が欲しいと言われ、純正が高いのでこれを買いました。

段ボールスプールですがビニールテープで順調に使えてます。結構使いましたが、たぶん絡んで止まったこともないんじゃないかな?ただGratKit同様、スプールにフィラメント先端を挿して止めておく穴が少ない(上下2組のみ)のが難点かなと。

また未使用ですがPLA用サポートフィラメントもここのを買いました。純正が500gに対しこちらは750gとちょい多めなので、少しだけコスパ良さそう。レビューに「純正プロファイルで問題なく造形できた」というのがあったので買ってみました。

それはそうとサポートフィラメントが白いと白い造形フィラメントに使った時に剥がすべきところが見極めにくいので、もっと使わなそうな色で出してくれないですかね。水色とか。

■eSUN(未使用)

工業用など特殊な性質のフィラメントのラインナップが豊富な印象。自分もPVA(水溶性フィラメント)を1スプール買ってあります。キートップを作る時に、MXステムの十字穴にサポートが詰まって除去に苦労したので、こういう時に使うといいのかなと。

■uxcell

とりあえず少量のTPUがあったのでお試しによいかと購入。はじめてなので良し悪しはなんともですが、一応使えてます。もともとTPUはAMS未対応なので焦点は仕上がり品質になるのかな。一晩感想したらちょっと綺麗になりましたが、やはり白くなったり糸引いたりはある程度します。

フィラメント専業メーカーではない(ネジとかマグネットとかよく売ってる印象)ので、積極的に選ぶ理由はあんまりなさそうだけど、こうして0.25kgとか少量スプールを出してくれてるのは有り難いかも。

■少量多カラー欲しい時の250g巻き

SIMAX3Dというブランドで250g巻のをいくつか買いました。レアな色がちょっとだけほしいという時に重宝してましたが、スプール径が小さくそのままではAMSと相性が悪かったので、拡張スプールのモデルを拾ってきて造形し、とりつけてやったりして使いました。元のスプールのまま上からとりつけるものですが、確かどこかの250gスプールは小さすぎてこれでは使えなかったのもあった気が。フィラメント自体の品質は普通かな。表記をみると3Dプリンターというより3Dペンで使う用の製品だったっぽいです。

今ざっとみると単品の250gはあまり売ってなさそう。4色セットで3,080円なんてのはありました。マルチカラー造形でちょっとだけこの色が欲しい!なんて時にはよさそう。未購入品ですがメモとして。

サポート用フィラメントを使ってみたら良かった話

3Dプリンターは3Dモデルデータに応じた形状をプリントしてくれるものですが、実はこれがそう簡単な話でもありません。FDM方式の場合は下から縄文土器のように積み上げていくので、「T」字の横棒のように下に支えがない形状(オーバーハング)は物理的に造形できません。それを回避するように後で取り外す仮の構造物(サポート)を作る必要があります。デザイン自体はスライサーというソフトが自動的にやってくれますが、造形後にこれを除去するのが大変だったり、除去しやすいよう密着度を下げて点接触のようにするので、天井面が汚くなったり。

それを解決するのがBambu Lab機のAMSのような複数フィラメントを使い分けできる機種と、サポート専用のフィラメント(サポート用フィラメント)というわけです。あえてメインの素材とは密着しづらい素材で造形するため、後で剥がすのが比較的楽です。中には水溶性フィラメントといって水に溶けるものもあります。これだと造形後水を張った中に沈めておくだけだそう。

非常に便利そうですが難点もあります。普通のPLAやPETGなどのフィラメントより単価が高いのです。後で捨てるだけの部分が本体より高いって、、と使うのを躊躇っていました。X1-Carbonには500gのPLA用サポートフィラメントがオマケでついているんですが、それすら勿体ないなと感じてしまい開封していませんでした。

しかしある時海外動画をみていて衝撃の事実というかテクニックを知ったのです。

元々自分が思い描いていたサポート用フィラメントの使い方はこうです。白い部分がサポート用フィラメントを使って造形する部分。

スライサーの予測では40gのサポートフィラメントを消費し、6時間40分かかります。1つのエクストルーダーで複数フィラメントを使い分けるBambu方式だとフィラメントを交換する毎に時間とフィラメントをロスするので、こういう形状はめちゃめちゃ無駄が多いのです。

しかし動画をみていて発見した方法だとこう。

サポートを剥がしやすくするためだと考えるなら、接触面だけ使えばいいジャナイ!というわけです。これだとフィラメント交換が176回→2回と激減し、造形時間は6時間から1時間8分に短縮。そして単価の高いサポート用フィラメントの使用量も40gから1g未満になります。

Bambu Studioにはちゃんとそのための設定がありました。サポートとラフトの「ベース」と「インターフェイス(接触面)」でそれぞれに使うフィラメントを変えられるのです。

まぁこのT字はもっとも極端な例ですが、いずれにせよ想像していたよりほんのちょっぴりしか消費しないで済む方法がある、ということがわかり、いっきに使用に傾きました。

■実際の使用感

実際に使ってみると「魔法のように簡単に剥がれる!」とは残念ながらいきません。接触面のみフィラメント替えをした場合、接触面は2面になるので、不要部分をもってメリメリっと剥がした時に、逆に中間のサポートフィラメント層がメイン造型物側に残ってしまい、改めて薄い1,2層を剥がす手間が発生することが多いです。細いラジオペンチやニッパーなどでメイン部分を傷つけないよう剥がしていくのはそれなりに時間もあっかります。サポート部分をまるごとサポート用フィラメントで造形していれば一発除去もできるので、サポートの高さなどによって使い分けるのが理想でしょう。

除去の容易さだけでなく、接触面(天井側)の綺麗さも重要です。接触面にサポートフィラメントを指定すると、自動的に点接触ではなく距離0の面接触に切り替えるか聞いてくれます。その通りにすれば天井面は見違えるほど綺麗になります。時間よりもこちらのメリットの方が大きいです。

最近ではもう当たり前にサポート用フィラメントを(接触面のみに)使うようになりました。

■社外製品を追加購入

オマケの500gがもうすぐ使い終わりそうなので追加購入しようとしたら、Bambuストアで品切れorz。1,2週間ウォッチしてようやく再入荷したようですが、高い上にこうも入手性が悪いとちょっと常用するのには抵抗あります。そこでAmazonでPolymakerのこちらを購入。レビューでBambu純正フィラメント設定で問題なく使える、と書かれてたので信じてみました。

Bambu公式より少し高いように見えますが、あちらは500g、こちらは750gなのでグラム単価でいえばちょいお得なはず。

品質についてはこれから検証していきたいと思います。

■PLAとPETGは互いに貼り付かないからサポート材に使えるという情報

Facebookの海外グループで書き込まれていました。PLAで造形したい時にPETG、PETGで造形したい時にPLAをサポート材として指定すると良いと。どちらもサポート用フィラメントよりは安いので本当に使えるならアリかもです。あまりに剥離しやすいとそれはそれで問題な気もしますが。そのうち試してみたいところです。

■水溶性フィラメントはどうだろう?

こちらも気にはなっていますが、単価が更に高いのと、水を溜めて長時間浸しておく必要があるので使い勝手としても微妙かなと。毎日ゴミプラスチックを量産している上に、さらに排水を汚すのも躊躇われるしw。ので、ものすごく出来を気にすべき造形をする必要が生じるまで保留かなと。

■まとめ

高単価なサポート用フィラメントですが、接触面にのみ使用するという設定があるおかげで、思ったほど量を消費せずに活用できそうで、急にアリな気がしてきました。同じ理由でエリクサーのように温存している人がいたら是非トライしてみてはいかがでしょう?

更にサポート部分を別の劇安フィラメントにすることも設定上は可能ですが、フィラメント交換回数が増えると時間と廃棄量が跳ね上がるのでペイできるかは微妙です。

ちなみに色分けよりサポート用フィラメントを使い分けることを重視するならBambuのAMS方式より最初からエクストルーダーがマルチな他社製品も存在します。実はそれも悩んだんだんですが、トータルな品質、定評でBambuにしました。同社も次世代機ではマルチエクストルーダー+AMSとか実現してこないですかねー。

またまた別の車イスを3Dプリンターでカスタマイズ 〜ふわりすKF22-40SB

先日足を骨折した同居人が車イスを調達した際、いくつか3Dプリンターで改善をした記事を書きました。

しかし結局全体的なサイズが小さすぎて不便が大きいということで返品。標準サイズのモデルを改めてゲットしました。それがこちら。

【車椅子】・自走用車いす ふわりす KF22-40SB

【車椅子】・自走用車いす ふわりす KF22-40SB

60,450円(07/27 17:21時点)
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タイヤサイズが22インチと大型化したにも関わらずフレームがアルムで重量が9.8kgと軽量です。おおぶりにはなりましたが畳んでクラウンのトランクに載せるのもさほど苦労はないです。介助用のハンドルはスワニーミニ同様折りたためるにも関わらず、高さがかなり上がっているので、後ろから押す自分も腰を屈めなくてよくなりかなり楽になりました。

■ドリンクホルダーと落下防止サイドガード

今回リクエストのあったモディファイは2つ。

  • スワニーミニに続きドリンクホルダー
  • 膝の上においたスマホや小物が横から滑り落ちるのを防ぐガード

です。スワニーミニは両サイドに小物ポケットがありいい感じでガードも兼ねていたんですが、ふわりすではやや低い位置にまでしかサイドボードがなく、腿の高さだとそれを乗り越えて落ちてしまうようでした。

早速カスタムしたのがこちら。

ドリンクホルダー

今回は前から差し込める形状ではなかったので、ネジ2本で固定されている樹脂の肘置きパーツを丸っと置き換える形で実装しました。ボードと同じ色で見分けがつきにくいですが、右手側にだけある部分が肘置き一体型のドリンクホルダーです。カップ部分はスワニーミニ用に作ったものをそのまま流用してくっつけました。元の肘置きが滑り止めなのかシボ加工(ザラザラ)してあったので、はじめて3Dプリンターのfuzzy skin機能を使ってみました。性質上、側面にしかつけられず上面(造形時底面)はツルツルです(^^;)。個人的には持ち上げる時に掴むので滑りにくくていいなと思いましたが使用者本人はツルツルの方が気持ち良いとのこと。また後述のボードをつけたことで持ち上げる時に掴めなくなってしまったので、今となってはいらなかったかもなと。まぁfuzzy skinの様子がわかったのでヨシ!

サイドガード

標準のサイドボードを上のフレームパイプまで延長するような形状です。うちのプリンターでは一度に出せないサイズなので前後2分割で真ん中に切れ目があります。下は標準ボードを挟むような形になっているので左右へのブレはほぼないです。標準のサイドボードがネジ4本でフレームに固定されているのを一旦外す必要があります(3本外せばOK)。上のパイプに両面テープ止めしていますが、ちょっとまだ外れやすいのでテープの種類を変更予定。

両方とも喜んでもらえて自分的にも大物だったので達成感高いです。引き合いがあれば頒布も検討したいレベル。ただ今回はPLAで出力したので、真夏の車内に放置したら変形する可能性はあり。本当はPETGなり耐熱温度の高い素材を使うべきなんですが、本人が在庫の中からピンクが良いといったので(^^;)。

その他、本人がネットで買ったカスタムとして、

  • 介助ハンドル部分にフック
  • 左側ボード外側に小物用ポケット

を追加しています。フックは真下に買い物袋などをぶら下げるとタイヤに当たってしまうので微妙。買い物カゴを左右フックにひっかけることはでき、スーパー店内で介助しつつ買うものを放り込んでいくのは便利です。ただ自走が重くなるので嫌がられますw

これだけつけても折りたたみは支障ないので、ドリンクホルダー側を上にすればクルマのトランクに寝かして収納するのは無問題。唯一肘掛け部分をがちっと掴むことができなくなって、少し持ち上げに難が生じています。左右でフィラメントを500gくらい使うのでわざわざ作り直すほどではないですが、もし再造形する機会があったらボードの中心上部あたりに穴をあけて指が通るようにしたいなと思います。

■希望者がいればご相談ください

せっかくモデリングしたので、同じようなことでお困りの方がいたら実費くらいで追加生産もしようかと思います。適当なプラスドライバーがあれば交換可能で、現状復帰も可能です。サイドボードにお好きな文字やロゴを入れることも(笑)。