[3Dプリント] xTool F1/F2用アイテム配置治具の製作

レーザー加工機xTool F2にはカメラが搭載されて、適当に並べた複数アイテムに同じレイアウトでAIが位置決めをしてくれる「バッチフィル」機能があり、量産に便利です。

ただ、やはり最初の1つは毎回手動で位置決めをしないとならないし、その1つ目はしっかり水平垂直を出して配置しないとだし、それをしても厳密な位置決めは難しい。1回学習させておけば、次のセッションでは見本無しでレイアウトしてくれればいいんですが、どうも現状ではそれはできないっぽい。

そうなると結局それなりの数量産するなら配置用の専用治具を作った方がよくね?という話になります。そうすれば物理制約通りにアイテムをはめ込んでいくだけで毎回固定位置に配置できるので、あとはxTool Studio上でも同じプロジェクトファイルで一発加工できます。

ということで早速作りました。xTool F1/F2のベースプレート部分を差し替える形にしたので、ネジ止めなども不要です。

実際にアイテムを並べてみた様子がこちら。

ちなみに今まではこんな感じで、付属のL字固定後をベースプレートにネジ止めしてそこにピタっと寄せるように1つ1つ位置あわせをしていました。

関係ないけどF1付属のL字治具はプレート同色だったのにF2は黒になってちょっと残念…

このアイテムは正方形なので割とあわせやすいですが、それでもコツンと当てたつもりでも反動で離れてしまったり、アクリルシールドを降ろしたショックでズレてしまったりと、慎重な作業を求められていました。3Dプリント品は軽いのでわずかな振動でもブレてしまいます。さらにこれがもっと複雑な形状のアイテムだと単純に沿わせるだけ傾きなども気にしなければならなくなります。そしてなによる一度に1アイテムしか加工できない。

これを配置プレートにすることで、

  • 雑に配置してもズレない
  • 一度に多数のアイテムを加工できる

ということで大幅に作業効率をアップできます。

ベースプレートのCADスケッチはできたので、後は3Dプリントアイテム毎にカスタマイズはすぐに作れます。F1/F2ユーザーさんからカスタムオーダーも受け付けようかな?

ただベースプレートの脱着って本体を浮かせて下から押す必要があり地味に面倒。近いうちに本体を少し浮かせて指をやRA2が通せるようにするリフターを作ってかませようと思います。

箸からヘラへ。ホットクック用拡張オプション「もっとクック」

SHARPのヘルシオ・ホットクックのまぜ技ユニットは2本の棒を使って具材をかき混ぜます。このかき混ぜ機能こそ他の電気調理器にはない大きな特長といえます。

そのまぜ技ユニットにシリコンのヘラタイプの「もっとクック」という別売りオプションが登場しました。標準のまぜ技ユニットが「箸によるかき混ぜ」だとすると、もっとクックは「ヘラによるかき混ぜ」と言えます。内鍋の底からこそげるようなかき混ぜが可能で、もちろん専用レシピもカレーを中心に様々用意されています。

2.4Lモデル用は以前からあったのですが最近ようやく1.6Lモデル用が発売されたので買ってみました。

SHARP ヘルシオ ホットクック KN-HW16H-W(プレミアムホワイト)

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つくってみた

ふわふわ卵かけごはん(もっとクック専用)

卵白をメレンゲに泡立てるTKGレシピです。めっちゃふわふわの食感で衝撃でした。

たぶん頑張ればボールと泡立て機でもできるのかも知れませんが、もっとクックを使えば、卵白を内鍋にいれてセットするだけです。所用時間は4分ほど。

毎朝1人前のTKGを作るのに、内鍋ともっとクックを洗うのもちとどうかと思いますが、たまにとか家族で食べるならアリじゃないでしょうか。またメレンゲ自体は他にも使い道がありそう。

TKG好きなら是非試してほしいメニューです。

クラシック欧風ビーフカレー(もっとクック専用)

もっとクック専用レシピにはカレーがやたらたくさんあります。ヘラで焦げないようかき混ぜながら煮込むという調理にフィットするのでしょう。こちらは比較的オーソドックスな欧風カレーのレシピ。プロの調理人のコラボメニューのようです。ただそのせいかリンク先に詳細のレシピが記載されておらず、「もっとクック(別売まぜ技ユニット)付属のメニュー集をご確認ください。」となっています(記事執筆時点)。これはキレそう(笑)。せっかくCOCORO KITCHENという素晴らしいサービスがあり、料理設定を本体に送信できたり、必要な具材を買い物メモに書き出すといったユーザ体験を提供しているのに、なぜに今更紙の冊子を参照しなければならないのか。ペラペラの小さな冊子なのでなくしたり濡らしてダメにする未来しか見えません。字も小さく写真も少なく見づらいです。取説ダウンロードページからPDFが取得できたりもせず。権利関係であえて載せてないのかも知れませんが、たぶんそこまでして(紙の冊子を見てまで)継続的に作ることはないでしょう。

確かに味としてはちょっと家庭の味を超越したなにかを感じはしました。パックのトマトジュースを使っていて、酸味強め。カレールーを使わないのでお腹を壊さなかった。ただ途中の具材の追加投入が2回もあるので、「ホットクック=放っとクック」のコンセプト的にはちょっと微妙かな。その意味でも1回作れば充分という印象。紙の冊子をなくすま他のカレーを1回ずつ試すかなという感じ。

総評

試したレシピはまだまだ少ないですが、製品としての使用感について所感をまとめます。

シリコンパーツの匂いが残りやすい

カレーを作った後の匂いがとれずに大変でした。食洗機必須かも知れません。

COCORO KITCHENの連携が未成熟

もっとクックのレシピをCOCORO KITCHENで探す際、わざわざ検索欄に「もっとクック」と入力して検索しなければならないというのはどうかなと思います。また逆にもっとクックを所持していない人にも「カレー」などで検索すると普通に表示されてしまいます。もっていない人にもアピールしたいという事情もあるんでしょうけど、普通に設定で所持のチェックをした人にだけ出てくるとか、もっとクックを試したいという人に1ボタンで検索できる導線を提供するなど、もう少し最適化ができるんじゃないかと思います。

また本体側でのメニュー呼び出しもかなり深いところにあって面倒くさいです。全般的にもう少しユーザビリティが改善されてほしいなと思います。

置き場所に困る→3Dプリンターでスタンド作成

もっとクックを購入すると、まぜ技ユニットが2つになります。常に1つは使わないし、なんなら両方使わないレシピも少なくありません。使ってない時のユニットの置き場所どうしよう?となりました。

ということで、3Dプリンターデ専用スタンドを製作してみました。

手前に標準のまぜ技ユニット、奥にもっとクック(TJ-U1A)を差し込んで立てておけます。

転倒しないよう底に金属の重りも埋め込んでみました。なんとなくシンクトップなどに直置きするのも気になっていたので一気に解決です。販売ページにも登録しておくので使ってみたいという方は是非ご利用ください。

こちらで注文できます

ホットクック&もっとクック1.6Lユニットスタンド

ホットクック&もっとクック1.6Lユニットスタンド

参考価格: ¥2,800(別途消費税、送料がかかります)

在庫: あり

BambuLab AMT HTを導入

フィラメント乾燥機能付きシングルAMSのAMS HTがBambuLab公式のブラックフライデーセールで25,800円→19,800円だったので導入してみました。

フィラメントの乾燥はより良い品質の造形には欠かせません。特にウチでよく使うASA、ASA-CF、PETG-HFなどは事前乾燥が必須とされています。TPUなども糸引きがかなり軽減することが検証済みです。

PLAやPETG-HF、TPUなどは乾燥時指定温度が65℃なので、Sanlu S2や先日導入したSanluのAMSヒーターでもカバー可能です。

しかし、ASAや、現時点では使用してないものの関心があるPC(ポリカーボネート)などは80℃/8時間指定なので、カバー不可です。そういう場合、保証外ですが、調理用コンベクションオーブンのTSF61Aを使っています。これはこれで温度も時間も充分なスペックを備えています。

■AMS HTを使うメリット

Sanlu AMS HeaterやTSF61Aと比較して、AMS HTを使うメリットにはどんなものがあるでしょう?

1つはAMSと同じRFIDタグ読み取りができるので、Bambu純正フィラメントだと材料に最適な乾燥パラメーターを自動でセットしてくれる点。同様に造形時のフィラメント種類設定も不要になります。

もうひとつは電磁ベント(弁)の自動制御です。AMS Heaterは乾燥中は自分で弁を開けて湿気を放出し、保管時は閉じる必要がありますが、これは案の定忘れまくります。AMS HTは電気的に開閉できる弁を搭載しているので気にする必要がありません。さすがに1つのフィラメントを365日乾燥したままにすることはないですが、短期的に集中して使うフィラメントを数日スタンバイしておくといった時に重宝しそうです。

そして単純にAMSを1スロット拡張できるという点。後述のAMS Hubが別途必要になりますが、標準のAMSの4スロットにプラス1して5スロット機として使うことができるようになります。正直マルチフィラメントとしてはそこまで使う機会はないですが、単純によく使うフィラメントをセットしっぱなしにして、物理操作なしで造形がスタートできるのはちょっと便利。残念ながら-CFなどの素材が非推奨なのはかわりませんが、通常のAMSよりも経路がシンプルなので無理矢理使っても途中でフィラメントが折れたりなどは起きにくそう、なのかな?そもそもブロックされるかどうかも不明なので追々試してみようと思います。

その他、効果が実感できるかはわかりませんが、乾燥時にスプールを回転させてくれて万遍なく乾燥できるというのも売りです。これはS2、AMS Heater、TSF61Aのどれもできていなかった部分です。

■AMS HTのここが気になる

まず誰もが落胆するのが「乾燥しながら造形できない」点。乾燥を止めても一定温度まで下がってからでないと造形に進めないようです。ただAMS Heaterを使ってて、加温で柔らかくなったフィラメントで造形するとトラブル率高まる気がしていて、Bambuも技術的な制約というよりもトラブル防止のためにあえて制約をつけてるっぽい気がしています。ただいちいちインレットから抜かないと乾燥できないとか、冷めるまで使えないといったあたりは普通に使いづらいですね。

あと、X1-CarbonでAMS1/2と併用するにはAMS Hubが必要です。発売当初には認識してたんですが、注文時点ですっかり忘れていて後から慌てて追加購入しました。X1-Carbon Comboの背面についているフィラメントバッファーを取り外して、その4股版であるAMS Hubを取り付ける必要があります。19,800円でも割と思い切って買ったのに、追加で¥7,740 円(通常は9,680円)必要となってギャフンとなりました。お気を付けください。他にAMSがないなら、あるいは同時に使わないなら不要です。都度使い分けるなら、外部スプールを使うのと同じでY字アダプタを使えば大丈夫だと思います。自分としてはせっかくなので4+1スロットで使ってみたかったのでやはり必要かなと判断しました。

気になるというか注意が必要そうなのは、フタにロック機構がある点。S2の感覚でパタンと閉じるだけだと密閉されておらず、ハンドルを引いてパチンとロックするよう注意が必要です。たぶんですがシステム的に検知はしてないのでアラートが出たりはしなさそう。自分で気をつけないといけません。

-CF/-GFフィラメントの対応可否?

上でも触れましたが、仕様表の記載がいまいちわかりづらく、うちでよく使うASA-CFはどうなの?というのがまだよくわかっていません。「対応」の意味として、

  • 造形できる(自動送り/戻し対応)
  • 造形できる(引き戻しできないバイパスポートのみ)
  • 乾燥できる

があります。執筆時点の表記では、

造形可PLA、PETG、ABS、ASA、PET、PA、PC、PVA(乾燥状態)、BVOH(乾燥状態)、PP、POM、HIPS、

Bambu PLA-CF/PAHT-CF/PETG-CF/Support for PLA/PETG、AMS用TPU
造形可(バイパスポート)TPE、汎用TPU、Bambu PET-CF/TPU 95A、および炭素繊維・ガラス繊維を含むフィラメント
乾燥PLA, PETG, Support for PLA/PETG, ABS, ASA, PET, PA, PC, PVA, BVOH, PP, POM, HIPS, Bambu PLA-CF/ PAHT-CF/ PETG-CF, and TPU for AMS

となっています。-CF系では「Bambu PLA-CF/PAHT-CF/PETG-CF」は明示的にOKで、それ以外はバイパスポートを使わないとダメぽい。バイパスポートはいわば「ただの穴」で、Sanlu S2と同じ外部スプール扱いで、使い終わったら自分で巻き取る必要があったり、他のAMS側のフィラメントとマルチで使えなかったりという制約があります。ASA-CFはみるからにポキポキ折れそうな固さなのでやはり厳しいんですかね。今後はAMS HTで使えるかどうかも-CFフィラメントを使う時の選択基準になりそうです。

あとBambuと書いてあるので、社外フィラメントはすべてバイパスポートということになりそうですね。この辺り、自己責任で使えるのか、そもそもフィラメントタイプをセットしたらロックされるのかは要検証です。

あと乾燥対応にASA-CF載ってないのはなんでなんだぜ?

2025.11.23追記: ASA-CFはやっぱダメっぽい。

ASA-CFですが、まず乾燥設定にプロファイル自体ありません。まぁ80℃x8時間というのはASAと同じなので、手動でASAを選択してやれば乾燥自体は可能。

次に造形してみようとインレットにフィラメントの先端を挿入してみたんですが秒で折れました。経路内に破片が残って背面のPTFEチューブを抜いて除去してやる必要がありました。やはり非推奨どころか実質使えません。乾燥プロファイルが用意されていないのも、そもそもRFID認識のためにインレットに挿してローディングしようとした瞬間に折れるので、乾燥(のためのフィラメント識別)自体も無理、ということであえて乾燥プロファイルも用意されていないということでしょうか。うーむ、残念。やはりPCに移行してみようかなぁ。

■操作画面例

AMS HTを追加するとフィラメントタブの表示はこんな感じになります(乾燥中)。

「ガイド」ボタンの左にあるツールアイコン的なボタンを押した状態がこちら。乾燥設定と実行ができ、本体前面パネルと同じ情報がここでも確認できます。

X1で良かったと思う瞬間ですね。P1系だと不便そう。

ちなみにBambu Studioでの表示はこう。赤矢印のところがタブになってて切り替えて表示します。

どうも乾燥操作はできないっぽい?同様にスマホアプリのBambu Handyも同様です。うーん、外出先から帰宅したら造形したいから乾燥はじめたろ」とかできないのは残念。単に実装が追いついていないというより、加熱機構なので万一を考えて遠隔操作はさせないということなんでしょうか?

まとめ

乾燥の質という意味では、TSF61Aでも一応できていた温度なので、自動回転機構の有無で差が出るかどうかなので体感は難しそうです。

ただ指定通りきっちり乾燥させて運用していこうと考えた時の利便性向上アイテムなのかなと思います。TSF61Aはアニール処理やシリカゲル乾燥にも使えるかと思って購入しましたが、アニールは寸法変化が大きく部品中心のウチではあまり機会がないので、今だったらTSF61A買うよりAMS HTにしたかもなという気はします。でも8時間とかかかる処理だし、AMS HTは冷めないと造形に使えないということもあるので、せっかく両方あるなら今後も併用かなという気がしています(ただX1本体も含め1500Wコンセントx1からのタコ足では同時使用は厳しいかも)。

TSF61Aを所持している身として即効性のあるアップグレードではないですが、追々使ってまた気付きがあれば追記していこうと思います。

HT PLAの耐熱テストを実施

コンシューマー向け3Dプリンターでもっとも使われる素材はPLAでしょう。安価で難しい調整なしに綺麗に造形でき、カラバリも豊富で使いやすい材料ですが、比較的低温でも造形できるということは溶ける温度が低いということで、造形後も高温になると変形してしまうということになります。形状や荷重状況にもよりますが多くのPLAでは概ね50~60°くらいで変形してしまいます。

今回はそんなPLAなのに150℃まで耐熱性があるとされるPolimaker HT-PLA(耐熱PLA)を入手したので、オーブンで実際に熱を加えて変形しないのかテストしました。

検証に使ったモデルは当ブログ/ショップの人気アイテムのこちら。

こちらで注文できます

TOYOTA新型クラウン/80ハリアー向けスペアホール→タイプDスイッチアダプター

TOYOTA新型クラウン/80ハリアー向けスペアホール→タイプDスイッチアダプター

参考価格: ¥1,800(別途消費税、送料がかかります)

在庫: あり

自動車内で使うパーツなので、炎天下の車内でも変形しないよう配慮して割高なBambuLab純正のASA-CFという材料を使用して販売しています。炭素繊維が混ぜ込んであり軽量で精度の高い造形が可能で、耐熱性能は110℃までとされています。難点として、

  • 単価が高い
  • 造形に必要な温度が高めなので加熱時間や電気代も嵩む
  • 使用前に8時間の乾燥が推奨されている
  • 表面がややカサカサした質感(実際には付かないが指に粉がつきそうな手触り)

という感じで色々とコストがかかります。反りや外観の綺麗さを求めて試行錯誤も大変でした。一応セッテイングを詰めたので今は機械的に追加生産できますが、今後またASA-CFでなにかを作る時はまた試行錯誤することを思うと少し大変。またなにより問題なのは、Bambu純正ストアで品切れが続いているという点。今ある分を使い切ったら一時的に製造ができなくなる可能性があります。BambuストアはPETG-HFも売り切れがちだし、もう少し在庫を潤沢にもつようにしてほしいものです。

■主要材料を加熱テストしてみた

現在同アイテムで使っているASA-CF(110℃)、その代替材料となるかも知れないHT-PLA(150℃)、PLAよりも少しだけ耐熱性がある(69℃)PETG-HF、そして一般的なPLA代表のPLA PROの(57℃)の4つのフィラメントで同じアイテムを作り、コンベクションオーブンで耐熱検証をしてみました。

最初に造形の出来映えを見比べる

それぞれ右下にレーザーマーキングもしていますが、左からHT PLA、PETG-HF、ASA-CF、PLA PROとなります。表面の滑らかさではASA-CFは劣りまる。結果表面の凹凸ができるのでレーザーマーキングも若干見づらくなります。他の3つはさすがの綺麗さです。HT-PLAは耐熱性が高いせいか他と同じレーザー出力設定だとやや発色が薄く、通常2パスのところ5パスに増やしてやる必要がありますが、結果としては充分綺麗なマーキングが可能です。

トータルでいうと見た目の綺麗さはPETG-HFかなと思います。まぁ見えないところに組み付けるパーツなのでそこはさして重要ではないのですが。

コンベクションオーブンで加熱試験

加熱は3Dプリンターユーザーはみんな大好き、テスコムのTSF61Aを使います。

万一ドロドロに溶けてもいいようにアルミフォイルを敷いて4つに並べます。

設定温度は80℃。このアイテムは車内といってもパネルの裏側に取り付けるので直射日光が当たるような場所で使われることはないのですが、一応マージンをとって高めにしています。風もあたるような場所ではないので送風はオフで7時間加熱しました。炎天下の真夏日に丸一日放置というイメージです。実際には内部のスイッチ部品をぴっちりはめ込むので、収縮に抵抗するかも知れませんが、今回はあくまでも単体で置いての検証です。

結果としてはスペック通りの順当な形になったかと思います。

左から2番目のPETG-HFと右端のPLA PROは明らかに背が低くなっています。ちなみに造形時は「▲DRIVER」と書いてある方を上にしていますので、X-Y方向に大きく縮んだ形です。

サイズ変化を定量的にまとめてみます。幅、奥行き、高さは写真の向き基準、()のXYZは3D造形時の基準です。1mm以上変化が出たところを赤字にしています。(加熱前のASA-CF基準なので造形時点で多少誤差はある可能性はあります)。

フィラメント名耐熱スペック幅(Z方向)奥行き(Y方向)高さ(X方向)
加熱前(ASA-CF)29.8mm25.2mm29.9mm
HT-PLA150℃30.5mm25.2mm29.0mm
PETG-HF69℃34.3mm24.8mm24.9mm
ASA-CF110℃29.9mm25.6mm29.2mm
PLA PRO57℃32.5mm24.8mm27.0mm

PETG-HFとPLA PROは論外ですね。実際にスイッチ部品2点が挿入できたのはASA-CFとHT-PLA。ただHT-PLAはわずかにスイッチの動きが渋くなりました。数字でもASA-CFの方が変化が少ないですが、これは基準も同じASA-CFだということを差し引いて考えもいいのかも知れません。

このアイテムでいえば、おそらく設置箇所が80℃になることはないので、ギリギリHT-PLAでもいけるのかも知れませんが、やはり入手困難になるまでは引き続きASA-CFが最適かなと思いました。スイッチ穴のサイズをコンマ何ミリ単位で微調整を繰り返してきたモデルなので、ほんのわずかな歪みでもスイッチが戻らなくなってり抜けなくなったりする可能性がありますし。

■まとめ

PLA系なのに150℃まで耐えるというHT-PLAの実力が検証できました。サイズ変化という意味ではわずかにASA-CF(耐熱110℃)に劣る結果でしたが、

  • ASA-CFに比べて安価で現時点では入手性も良い
  • カラバリがある(ASA-CFは黒のみ)
  • 造形面が滑らかで綺麗
  • 造形温度が低めで短時間でプリントできる

という点で価値の高いフィラメントだと思いました。

高い寸法精度を維持することが要求される今回のアダプタでは引き続きASA-CFを使おうと思いましたが、このまま入手難が続くようだとHT-PLAに移行するか、他社ブランドのASA-CFも購入して検証かなというところです。

[3Dプリント] トヨタスマートキー小型化ケース刷新、IGLA2キーフォブ一体型もあるよ!

車のスマートキーってなんであんなにデカいんですかね?あらゆるものが技術進歩で小型化する中、自動車のスマートキーはちっとも進化しないというかなんなら大型化しています。イモビライザーに要求されるセキュリティ機能が高度化する中で仕方ないことなのかも知れませんが。また昨今はスマホを使ったデジタルキーなども搭載が進んでいますが、特にバックグラウンド動作に厳しいiOS(iPhone)では実用上まだまだ難アリだと思います。せめてBluetooth機器のように複数の車両とペアリングできれば良いのですがそれすら実現する気配もなく、複数台の車を所有している場合はこのデカいのをいくつもぶら下げるはめになります。

■スマートキーの構造について

ところで、皆さんはスマートキーの電池交換などでケースを開けたことはありますでしょうか?ディーラーやカー用品店でやってもらうという人もいるでしょうし、意外と中を見たことがないという方もいると思うので、写真を貼ってみます。

スマートキーの中身

写真の赤枠部分がメインの基板(電池含む)です。そして青枠は非常用のメカニカルキー(物理鍵)です。電池切れの時などに引き抜いてドアの鍵穴に刺して昔ながらの開け方をするものです。このようにメカニカルキーが外周に格納されているため一回り大きくなっています。その他、衝撃吸収とか浸水のマージンとか色々設計上の都合はあると思いますが、実際の動作に必要な基板は思いの外小さいということです。

以前このブログでは、30プリウス(ZVW30)のスマートキーを小型化する試みをしました。

メカキーを廃して基板ギリギリサイズのケースを3Dプリンターで自作したのです。今回はメイン車両である新型クラウン用のものについても改めてチャレンジしてみた、という記事になります。先の写真のスマートキーはトヨタの現行車種の多くでも使われているタイプです(ハリアー、カローラシリーズ、ヤリスシリーズなど、電動ハッチバック非搭載車は2ボタン)。

■新たにクラウンなど現行車種用も製作

今回の進化ポイントは、

  • 従来格納できなくなっていたメカキーに鞘状のカバーを製作し、一緒に鍵束にぶら下げられるようにした
  • レーザー刻印機を導入したので、ボタンのアイコンなどをフィラメント交換式に比べより精緻に入れられるようになった
  • カーボン模様転写ビルドプレートを使い、表面と背面にカーボン柄(微細な凹凸)を入れてみた
  • 動作LED部分は薄く造形して透かしていたのから、透明レジンによるクリアパーツ化で視認性アップ

という辺り。現状の仕上がりはこんな感じ。

現行スマートキーの基板は長方形ではないので、それに沿わせて凹凸のある外形になっています。メカキーのカバーを作るというのはある方にいただいたアイデアなんですが、やはりメカキーも携帯しないと不安だという方や、鍵束にぶら下げないまでも周りに傷をつけない形でバッグの底などに入れておきたいという方にも刺さるんじゃないかなと思います。ついでに同じ製法でプリウス用もリニューアルしてみました(レジンパーツと鞘ケースは除く)。

IGLA2のキーフォブも一体化

我が家のクラウンクロスオーバーにはAUTHOR ALARM社のカーセキュリティIGLA2+を搭載しています。乗車時の自動セキュリティ解除のために、小さなタグ(キーフォブ)を携帯しておく必要があるのですが、これも樹脂カバーを外すと電池と小さな基板で構成されていますので、ついでとばかりに本ケースの底に搭載できるようなバージョンも作成しました。

基板が二階建て構造になり電波干渉が起きないか不安で、アルミ板をシールドとして挟むことも検討しましたが、現時点では特になにもせずとも動作は良好な気がしています。

二階建てになった分、厚みは少し増していますが、それでもポケットの中での収まりは良いんじゃないかなと思います。

こちらがメカキーを収める鞘ケースです。とりあえず凝ったロック機構などは設けず、穴のキツさだけで固定しています。滅多に使用するものではないので、結構固めで不意に外れないことを優先。

■現状の課題

夜間の視認性がイマイチ

レーザー刻印によるマーキングは明るいところでみるとかなりクッキリしていて綺麗なのですが、真っ暗に近いところだと反射面積が少なくてやや見づらいかなと感じています。カーボン柄の反射に埋もれがちなのもあるかも知れません。基本的にここのボタンを操作するのはたまにバックドアを手動で開けたい時くらいなので致命的とまでは行かないですが、素材カラーや刻印のデザイン、サイズ、太さなどで改善できるならしたいなというところです。

白字に黒は見やすいが、レーザー刻印では難しく研究が必要

形状での判別しづらさ

似たような話ですが、ポケットに手を入れて操作しようとした時に、向きや裏表の判別を手触りだけでするのがやや難しいなと思います。向きは鍵束のリングの付き方などでまだなんとかわかりますが、裏表に関してはどちらも全くのフラットなのでちょっと困ります。これまた使用頻度が低いのでどこまで突き詰めるかは思案中。

3Dプリントなので自由に凹凸をつければいいんですが、3Dプリンターの構造上、やはり一番綺麗に面が作れるのはビルドプレートに押しつける底面なんですよね。ここの凹凸をつけるということは、その面を上にして造形するとか、下にサポート材という捨て部分を作ることになり、結果的に表面の滑らかさが犠牲になります。そうするとレーザー刻印も綺麗に出なくなったりとデメリットも多いのです。表面のフラットさをキープしつつ、上手く裏表が判別できる形状を考えたいと思います。

  • 裏面だけにモールドをつける
  • 側面の形状を工夫する
  • 後から凸部品を貼り付ける
  • 初期プリウス用みたいにボタンパーツを別体化する
オリジナルのボタンパーツを流用した例

スナップフィット(パチ組み)の強度

プリウス版では外側に爪を4箇所生やしてパチっとロックする機構でしたが、今回はそれを内側に隠蔽する構造を採っています。当初6箇所にしていましたが、小さい突起なので何度か開け閉めしていると折れてしまうことがありました。3Dプリンターの積層方向の関係でどうしても剥がれやすい向きでもあります。

スナップフィット部分の拡大図(初期版)。3Dプリンターが造形する層毎の筋で割れやすい

現在は爪から全周囲む形にして強化を図っていますが、いずれにせよ

  • 意図せずパカっと開かないこと
  • 電池交換時には労せず開くこと(純正スマートキー同様、メカキーでこじって開くスリットを設置)
  • 繰り返し開け閉めしても破損しないこと
  • 落下などの衝撃でも破損しないこと

などが要件となり、まだまだ検証が必要そうです。

防水性

純正スマートキーではボタン部分をカバーするシリコンシートが挟まっていますが、本品ではボタン部品がなく、表面のたわみだけで内部スイッチを押す構造なのでシリコンシートは流用していません。ただキャスト(金型に溶けた樹脂を流し込んで作る方法)と違って、3Dプリント品な層と層の間に微細な隙間が空きがちなので、どうしても完全に水分を遮断するのは難しいです。層の厚さや温度(溶かし具合)で改善はできるのですが、他の造形上の都合との両立も難しかったりします。

トヨタのスマートキーは「飛沫は平気だけど洗濯したらアウト」というスタンスのようで完全防水とはなっていません。現状はそれに準じるくらいの防滴性能くらいが目標かなと思います。

3Dプリントで造形する以外の方法での防水も考えています。

  • 防水スプレーなどでコーティングする(表面は摩耗するので内側?)
  • 内部基板をリモコンなどを水滴から保護する熱収縮フィルムで保護?
    • ドライヤーやヒートガンで基板を炙ることにリスクもあり

技適問題

前記事でも触れましたが、電波を出す製品は検査を受けて技適(技術基準適合証明マーク)を取得して販売されます。これを改造することは基本的にできません。ただ調べた限りスマートキーの技適番号は内部の基板に刻印されています。つまり基板単位で認証をとっており、外装ケースは認定に含まれていないのでは?という指摘があります。事実トヨタの異なる形状のスマートキーで内部基板と技適番号は共通だった、というパターンが存在するようです。ただまぁこれについてはなにもみても誰に聞いても「大丈夫です!」というお墨付きは得られにくく、どこまでもグレーだと思います。あくまで樹脂ケースだけ頒布して組み付ける(改造する)のは自己責任でヨロ、という逃げも可能かもは知れませんが、まぁあまり大っぴらにはできず、個人で使うだけに留めるのが無難かなぁと。なのでショップには陳列しないかもです。

■まとめ

メカニカルキーを一体化して携行できないという点を犠牲にすることで、よりコンパクトなキーカバー(シェル)を自作してみました。常時2つ持ち歩く私としてはポケットの中が劇的に”スマート”になった気がします。また今回は外したメカニカルキーにも鞘をつけることで一緒に鍵束にぶら下げたり、バッグの中などに入れておくことができるようにもなりました。

大手を振って販売できると喜ぶ人も少なくないとは思いますが、法律的なところ誰か詳しい方教えてください。

2025.11.08追記: メカニカルキー収納Ver試作

とはいえメカニカルキーも一緒に格納しつつ最小サイズを目指してみるということで、写真のように差し込めるものを試作。

メカニカルキー格納版の内部レイアウト

トヨタのメカニカルキーは樹脂のヘッドパーツが割と大きいんですよね。そこを持って捻るのでそれなりに大きさがないと力が入らない。普通の鍵みたいに平たいプレートすると収まりが悪いということでこういうL字的な形状ではあるんでしょう。これを削ったりして除去して独自ヘッドをつけるというのは、頒布を考えると現実的ではないので一旦断念。元のヘッドのまま格納できるレイアウトを考えるとこんな感じになりました。

まだレーザーマーキングもしていない試作レベルですがサイズ感はこんな感じ。

キーの厚みの分、横幅が増し、ヘッドの分全長が伸びた形です。結果として純正スマートキーとそれほど変わらないフットプリントになってしまいました。厚みは抑えられているので、ポケットの収まりは多少マシではあるんですが、インパクトは弱まっちゃいますね。