当ショップでも売れ筋の「TOYOTA車手動光軸調整ダイヤル用空きスロット→タイプDスイッチアダプター」ですが、耐熱性を重視しています。直射日光は当たらないとはいえ真夏の車内で変形してスイッチの動きが悪くなったりしたら目も当てられません。自分はDIYで脱着できますが、業者に依頼して取り付けてる方などが再施工になったら大ごとです。3Dプリントでもっともよく使われるPLAは60℃程度でふにゃってしまうので論外。その次にメジャーなPETGでも不安が残ります。本品は外壁が薄くてマージンがない中、コンマ何mmという精度で調整して数多くのスイッチ製品にユニバーサルにフィットするように調整していますので。
こちらで注文できます
TOYOTA車手動光軸調整ダイヤル用空きスロット→タイプDスイッチアダプター
参考価格: ¥1,800(別途消費税、送料がかかります)
在庫: あり
これまではプリンター純正のBambuLabのASA-CFという材料を使っていました。ASAは工業製品によく使われるABSよりも反りにくく紫外線にも強いので屋外使用に向いている材料です。これに-CF、カーボンファイバー=炭素繊維を混ぜ込んだのがASA-CFです。一般に-CF付きの材料は寸法精度がピタっと精密に造形し歪みにくいと言われます。PLAやPETGに比べるとお高いのですが、販売アイテムとして後のトラブル防止には必要だなと思ってコストをかけています。
しかし、このASA-CFがBambuLab公式ストアで何ヶ月も欠品しており再入荷の気配が全くありません。いよいと手持ちが底を突いたので代替材料を検討することにしました。サードパーティ製ならASA-CFも買えるのですが、この用途専用で考えると耐紫外線性能は重要ではないので耐熱性と寸法精度に振って検討することにしました。いわゆるエンプラ(エンジニアリング・プラスチック)と呼ばれる高級材料で、造形時に高熱が必要で材料費だけでなく電気代、造形時間などもコスト高なんですがチャレンジ。
今回の検討候補は追加で3点。PC、PA6-CF、PAHA-CFです。
PC(ポリカーボネート)

これも工業製品によく使われる材料ですが、3Dプリンターではマイナーかなと思います。ASA-CFと同じくらいでPLAやPETGの3倍くらいのお値段がします。
本来は透明で耐衝撃性が高くカーポートの屋根とかバイクのウインドシールド、警察がもつ盾などで使われる材料です。レーザーマーキングも考えてブラックを使用していますが、全体にテカテカした仕上がりです。レーザーの入り方もやや薄め。
耐熱スペックは119℃とされています。
PA6-CF(炭素繊維強化ナイロン)

次はナイロンとも呼ばれるPA(ポリアミド)系のカーボン入りPA6-CFです。ナイロンも耐熱性が非常に高く耐衝撃製が強い素材です。どちらかといえばバッグやベルトなど防刃製の高い布製品というイメージです。
PA6はPAの中でもかなり古くからある組成です。吸水性が高く、めちゃくちゃ反りやすいです。スマートキー小型化ケースでも使用していますが非常に苦戦しています。湿度と温度管理が非常に難しい。Bambu純正はお高くて手が出ないのでサードパーティ製で妥協しているせいもあるかもですが。純正はマジで高い…(PLAが1kg巻き2,000円、PCが8,000円とするとこれは22,000円!とても今の価格で売れない。社外品ならなんとか…)
しかし上手く造形できた時の仕上がりは惚れ惚れします。カーボン入り材料特有の表面のテクスチャ、レーザーの乗りももASA-CF以上です。
PAHT-CF(炭素繊維強化ナイロン)

PAHTはPA系でも新しい目の改良材料です。少しややこしくて私も混乱するのですが、PA6の分子構造を倍にしたPA12という吸水性を抑えた材料があります。かなり理想的なのですがお値段が更にPA6より高い。PAHTはどうもPA6ベースのものとPA12ベースのものが存在するらしく、どちらか書いて無いことも多いですが、安いものはPA6ベースが多いらしい。今回買ったのはELEGOO製のPAHT-CFですがこれも明記がない。それでも「反りなし」と謳ってるので、PA6-CFよりも歩留まりが高い(失敗率が低い)といなと期待して購入。一応現時点で本命です。
仕上がりはCFならではの質感はあり。レーザーマーキングの発色はPA6-CFよりは劣るものの視認性は充分です。
どれもイマイチだったら他社製ASA-CFか、少しお高いですが社外製PA12-CFも候補にいれようと思っています。
検証方法
こちらの記事と同じくオーブンで80℃ x 7時間の連続加熱をしています。直射日光は当たらないダッシュボード裏に使うものなので、実際には80℃に達することはまずないと思いますが、JAFの調査によると気温35℃で黒いボディの車のダッシュボード上が79℃に達したということなので、(最近は気温は余裕でそれを超えますし)、80℃をマックス過酷環境と設定しました。また放置状態では荷重はほぼかかってないので軟化が始まってもそれほど大きく形状が崩れることはないかなと思っています。スイッチを押し込む時は冷房も入ってることが多そうですし、その方向に強度が出るよう造形向きも気を遣っているので大丈夫かなとも。
風をおこせるコンベクションオーブンですが車内環境に近いかなと思って風はオフです(内部温度を均一にする意味ではオンでも良かったかも知れませんが)。
現行商品のASA-CFと比べて加熱後の誤差がどうかなというところです。もちろん手持ちのタイプDスイッチ3製品がきちんとはまりスイッチの動きに支障がないかはチェックしています。
結果
さすが(準)エンプラ三人衆だけあって、加熱後に目に見える変形はありません。これは期待。

外形の寸法誤差を前回記事のデータの下段に追記します。
| フィラメント名 | 参考耐熱スペック | 幅(Z方向) | 奥行き(Y方向) | 高さ(X方向) | 合否判定 |
|---|---|---|---|---|---|
| 基準サイズ(Bambu ASA-CF) | – | 29.8mm | 25.2mm | 29.9mm | (加熱前) |
| Polymaker HT PLA | 150℃ | 30.5mm | 25.2mm | 29.0mm | 〇 |
| Bambu PETG-HF | 69℃ | 34.3mm | 24.8mm | 24.9mm | × |
| Bambu ASA-CF | 110℃ | 29.9mm | 25.6mm | 29.2mm | ◎(今まではこれ) |
| ELEGOO PLA PRO | 57℃ | 32.5mm | 24.8mm | 27.0mm | × |
| Bambu PC (ポリカーボネート) | 119℃ | 29.9mm | 25.0mm | 29.0mm | × |
| iSANGHU PA6-CF (炭素繊維入りナイロン) | 180℃ | 29.7mm | 25.1mm | 29.1mm | ◎ |
| ELEGOO PAHT-CF (炭素繊維入りナイロン) | 194℃ | 29.6mm | 25.1mm | 29.1mm | ◎ |
そして肝心のスイッチ適合ですが、
- PCは1つだけスイッチが動かなくなるものが発生
- PA6-CFとPAHT-CFは3種類ともOK
という結果になりました。PAHT-CFは1つだけ若干渋いかもという位ですが実用には全く問題ない程度。
この結果でいくとPA6-CFがベスト。レーザーもクッキリマーキングできますし。ただこの記事執筆時点で当該フィラメントがAmazonで品切れになっていて、あと1スプールは買い置きがあるので何ヶ月かは大丈夫ですが、また次に再検討になったらいやだなぁと。ただPAHT-CFも現時点で買えるものの入荷かで結構待ったので結局先のことはわからないですね。戦争の影響で石油製品の供給は不安定になる気配ですし。
もう少し総合的に検討して決めようと思いますが、いずれにせよこうした検証を経て出荷しておりますのでご安心いただければと思います。
























