[3Dプリント] Sesame Face用クイックハック2点

Sesameフェイス(以下Sesame Face)は概ね順調に使えていますが、ちょっとだけ不便なところがあったので3Dプリンターでサポートツールを2点ほど製作しました。

■施錠ボタンを押しやすくする拡大カバー

Sesame Faceはサイドに施錠ボタンが装備されました。Sesame Touchでは「登録されていない指で指紋センサーにタッチする」必要があり、認証失敗を踏む必要があるので若干タイムラグがありました。

Sesame Faceは物理ボタンになってノータイムでロックができスムーズに外出ができるようになっています。ただ、このボタンがいささか小さく狙って押すのがややストレス。特に夜間の薄暗い玄関だと手探りが必要になります。

そこでボタンサイズをちょっとだけ拡大するカバーを作ってみました。

色もあえて派手めのフィラメントを使って目立つようにしています。

■NO.00(PH00)ドライバーL字アダプタ

Sesame Faceのスライドバックプレートには小さな固定ネジがついており、両面テープでドアに貼り付けたベースプレートとがっちり固定することでスライドできなくし盗難しづらくすることができます。

ただプレートの厚さ内に抑えるため、

  • ネジがとても小さい(No.0/PH0相当)
  • ドアにビタ付け

となりとても回しづらいのです。

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それでも通常はこのような細身のドライバーを使えば問題ないのですが、我が家では更に困ったことに2つ上の写真のように凹んだガラス面に取り付けていて、右方向にクリアランスがなく、長いドライバーだと入りません

DAISOのメガネ用ドライバー(PH00)でどうにか締められたのですが、外すのが大変でした。細くて力が入りづらい上に、このドライバーは反対側がマイナスになっていてネジでフタになってるのですが、緩める時はこのフタ側も回ってしまうのです。あらかじめ外しておけばいいんですが、そうすると掴める箇所がかなり短くなります。入手性が良いので緊急用としてはいいのですが、何度も使ってるとネジをナメそう…

六角レンチのようなL字になったドライバーを探してみたのですが00サイズのものは見当たらず、仕方ないので自作しました。

・Ver.1 ビット使用タイプ

まず以前購入したこちらの精密電動ドライバーセットに含まれるPH00サイズのビットを流用するタイプ。

このビットは細身の六角タイプです。一般的な6.35mm(しぶいち)の六角ビットよりも細い太さ4mmのものです。単品で購入するとしたらコレでしょうか。

これを利用する形て作ったのがこちら。

リアにマグネットを仕込んで、ビットがピタっと吸い付くようにしました。

これでも若干軸が太くて手前に傾いてしまいますが、丁寧にやれば回すこと自体は可能です。

厚みが8mmあり、ドライバーの選択がΦ2mmなので、3mmほど奥にでっぱる形になります。3Dプリントなのであまり外周を薄くすると強度的にも不安なのでこれくらいが妥協点かなと思います。奥側に出っ張らないよう、オープンエンド(C型)レンチみたいな形状も考えましたが、やはり回す度に付け外しするのもそれはそれでビットを落としたりして不便そう。

あとストラップホールくらいつければ良かったなとも。

・Ver.2 ANEX 特小ドライバー流用タイプ

4mm六角の単体ビットも売っている様子がなかったので、もし今度同じお悩みの方に相談を受けた時に調達しやすい形にするため、こちらのドライバーをベースにしたバージョンも作成しました。

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写真ではわかりにくいですが、柄の太いところが六角、お尻側が円柱状になっています。この六角部分にトルクをかけて回す作りになっています。ドライバーの価格も安いので、接着してSesame Face専用にしてしまっても惜しくないです。

ただ残念ながらこちらはメガネ用ドライバーと同じNo.00/PH00サイズの製品しかなく、回せなくはないけど、ちょっと気を遣う感じ(しっかり差し込まないとネジを舐めそう)。

・Ver.3 ビット使用タイプ改良版

ということでVer.1のビット使用タイプに回帰。できるだけギリギリまでドライバー先端を真っ直ぐにネジに当てられるように、フロントを後方にオフセットし、傾斜もつけてみました。

またできるだけ回転角をかせげるように、ベタ付け状態でも指を入れて持ち上げやすいよう、持ち手の部分を長方形から六角形に変更(3Dプリンターの特性として円柱よりは六角形の方が綺麗に出せるという事情がありあえての六角形です)。

ネジ自体が小さいので楽々とはいきませんが、丁寧にやればしっかりナメずに締めたり緩めたりできるようになりました。

BOOTHに出品しておきます。BOOTHアカウントがなく直接取引をご希望の方はコメントにて。

顔&静脈認証で鍵が開けられる!Sesameフェイス設置

2025年5月に発表されたCANDY HOUSEの新型スマートロックアクセサリ、Sesameフェイス(以下Sesame Face)が届きました。Youtubeのプレミア動画で公開した直後20:30から予約受付のところ、注文完了メールのタイムスタンプが20:30分なのでかなり早い予約だったと思います。発売日の朝イチで配送されました。

■Sesame Faceとは?

従来のSesame Touchが指紋とNFCタグ(Suicaなど含む)、Proだと更に暗証番号で認証してSesameを解錠できたのに対し、今回のSesame Faceは更に顔認証と静脈認証に対応しています。ほぼ時期を同じくしてSwitchBotも顔&静脈認証モデルを投入してきたし、ロジテックも法人向けで同機能のスマートロックを発表したので、良いモジュールがパーツメーカーからリリースされたのかも知れませんね。

iPhoneのFaceIDと同じくアクティブIRステレオによる三次元形状解析による顔認証なので、Androidスマホの顔認証に多い静止画像の解析に比べ精度が高いのが売り(写真などでごまかせない)。というかスマートロックとしてはそれくらいでないと恐いですしね。静脈読み取りも赤外線だと思うんでセンサーが共有化できるのかも知れません。マスクとかで顔認証が難しい時の代替非接触認証手段として対応したようです。

今回も無印とPro(テンキー付き)があり、しかも差額が500円しかないので若干迷いましたが、顔+静脈+指紋+NFCがあればテンキーまではいらんだろということで見た目のスッキリさで無印にしました。

■早速取り付けてみた

Sesame Touchは初期ロットでは背面を3Mの両面テープでガッチリ固定する方式で、電池交換する時は必死こいてはがす必要がありました。それが途中からスライドハメ込みの固定プレートがついたり、マグネットが別売されたりした経緯がありますが、さすがに今回は最初からスライドプレート式です。本体はSesame Touch ProとSesame Face無印は同サイズらしく、もしかするとプレートも互換性があるかもですが、我が家はTouch無印→Face無印の乗り換えなのでプレートも貼り替え。結構ガッチリついていて大変でした。ヒートガンなどで温めればいいんですが玄関にコンセントもなく。今回Face無印になって更にプレート/両面テープの面積も大きくなったので、次またなにかに乗り換える時は更に苦戦しそう…

少しフットプリントも厚みも増えたのでやや異物感も増しましたが、ProやSwitchBot ドアロック Ultraよりはマシかなと。

今回CEOは発表動画の中でSesame Touchが盗まれたことはないと断言していましたが、FaceBookの公式コミュニティにも盗難報告挙がっていたので、スライドプレートは便利な分そういうリスクも気にはなります。

そんなことも思いながらFaceのプレートをみてみると、サイドから小さなネジでスライドできなくする仕掛けになっていました。改めて公式製品写真をよくみると従来からSesame Touch Proにはついていたっぽい。Touch無印にはサイズ的に難しかったのかな?

ともあれこれをしっかり締めておけば素手で取り外すのはそれなりに難しくなるので、思いつきのイタズラで外されることはなさそうです。

ただ仕方ないとは思いますが、位置的に真横からまっすぐアプローチしないとならない上、ネジサイズは電池交換時の背面プレートのネジと異なっており、ドライバーも付属していないので一苦労でした。ネジサイズはNo.00(PH00)くらいなので精密ドライバーセットやメガネ用プラスドライバーなら大丈夫ですが、我が家は1枚目の写真のように右方向に段差があり長いドライバーは入りません。家中の00番ドライバーやビットを試したのですがやはり真っ直ぐ挿さないと充分なトルクが出ず(ネジも結構固い)。結局、ダイソーで短いメガネ用ドライバーを買ってくるまで締め付けできずでした。

安心感は増しましたが電池交換は面倒になったので、これからやる人は電池をフルロードにしておいた方が良いかも知れません(本品は電池スロットが4本分で、出荷状態では2本セットされています。2本でも動きますが4本入れておくとより長持ちします)。

アプリからのデバイス追加と認証設定はこれまでのTouchシリーズと一貫していて、指紋やNFCタグの登録手順がわかっていれば全く同じ容量で登録できます。

■ファーストインプレッション

まず感激なのが施錠ボタンとしてハードウェアスイッチがついたこと。従来のTouchでは未登録の指先や手のひらを当てて認証エラーを出すことでロック操作を行っていました。これがボタンひと押しで済むようになって外出時に素早く確実にロックできるようになりました。サイドで小さいので若干押しづらいですが、それでも全然速いです。

肝心の顔と静脈の認識精度&速度ですが、今のところ上々かなと思います。顔や手をかざすと青色LEDが高速点滅を始めるので、認証処理中だなというのがわかります(手をかざすと隠れがちですが)。その位置で静止して待てば条件が良ければ1秒もせず認証されます。ただ手かざしについては割とドンピシャの距離と高さを意識する必要はある印象。直近というよりは10cmくらいは離し、手のひらのど真ん中をレンズに向けるくらいの感覚でしょうか。点滅始まってもなかなか認証しない時には1cmくらい高さをかえてやると認証する、といった感じ。

自分は外出時通年でマスクをしてることが多いですが、車で帰宅する時は車内で外すことが多いので、自宅ドアの前に立った時点ではマスクをしてないことの方が多く、今のところ顔認証がメインになりそう。それでも立ち止まって一呼吸みたいな待ちは生じるので、なんかもっと手前の通路のところに設置して歩いて通過するだけで認証できればいいなとも思いましたが、やはり今のレスポンスだとどこかで立ち止まる必要はありそう。

いつも指紋がだんだん認証されなくて定期的に再登録をしていた同居人については、やはり顔も静脈もいまいち認識されず「コイツもやっぱダメか…」となりかけたんですが、私がガイドしながらきっちり登録した後、今日の帰宅時は一発で解錠できたようで喜んでいました。もう少し継続観察はしてみます。

■まとめ

Sesame Touchの指紋は自分ではそこそこの認識率だと満足していましたが、唯一雨の日は(直接センサーや指に水滴などついていなくても)認識率ガタ落ちでした。今回は非接触なので(レンズさえ汚れていなければ)そういうブレもないのかなと期待しています。

サイドの施錠ボタンだけちょっと小さいので3Dプリンターで大型化にチャレンジしてみようかな?とは思ったり。

改めて考えるASSA ABLOY製ドアでSesameスマートロックを使う難しさと回転リミッターについて

スマートロックはモーターでサムターンを回転させ、施錠位置と解錠位置を行き来させる仕組みですが、我が家のASSA ABLOY(アッサアブロイ)という北欧ブランドのドア(サムターン)はクセがあり一筋縄ではいきません。サムターンと物理鍵を挿したシリンダーの回転と、デッドボルト(ドアの側面から出てくる金属の閂)の動きが直接リンクしておらず、サムターンと物理鍵シリンダーはクルクルと何週も回転します。何周かするうちのスイートスポットでのみデッドボルトが引っかかってカシャっと出たり入ったりする、といった独特の動作です。なので、一般的なスマートロック製品のように360°中「a°で解錠」「b°で施錠」という2つの角度を登録してその間を行き来させるだけでは意図通りにデッドボルトが出たり引っ込んだりしてくれないのです。手動でサムターンや物理鍵を使うと内部の回転角度が変化してしまい、Sesameが認識している現在角度とズレが生じ、結果としてSesameが設定されている角度までサムターンを回しても施錠・解錠できなくなります。

例えば我が家でSesameシリーズの前に使用していたSONYのQrio2では「45度以上110度未満」が動作推奨範囲となっています。論外です。

Sesameの旧モデルがこれが「360°まで」となっていました。Qrioよりかなり広くなっていますが惜しい。だったら物理的にストッパーをつけて360°以上回せなくしてやれ!という発想で生まれたのが回転ストッパーです(現回転リミッター)。

当時は3Dプリンターを所持しておらず、設計データをDMM.makeに送って造形してもらっていました。

時は流れSesame5では「360°以上の数回転も対応可能」が謳われるようになりました。あんなに安いのにこんなニッチなドア仕様も対応してくれて有り難い限りです。

(ちなみにSmartBotのスマートロックは使用したことがないのでどうなっているかわかりません)

しかし実際に使ってみると、UI的には施錠・解錠位置を記憶させる仕組みにかわりなく、使用感としては変化がなく、結局回転リミッターを継続使用する必要がありました。その後、この回転リミッターは徐々に知られ、月イチくらいで譲ってほしいというお問い合わせをいただくまでになりました。

現在、Sesame5と5Pro用に様々な取り付け位置、サムターン形状に対応させたパーツを製作しています。詳細は下記の記事をご覧ください。

180°以上の回転が必要なフック型デッドボルトとdタイプリミッターでの不具合

多くの方からご相談をいただく中で、同じASSA ABLOY製といっても色々なバリエーションがあることがわかってきました。その中で、デッドボルトが真横に出入りするのではなく、下から引っ掛けるフックのような形のものがあり、こちらは180°を僅かに超える範囲でサムターンを回さないとカシャリと言うまで動作しないそうで、従来の途中に針を割り込ませるa~cタイプのリミッターでは対応できませんでした。針はツマミの両端に当たって回転を止めるので180°(マイナス針の太さ)分しかサムターンが回せなくなります。ご相談いただいた方のお宅ではこの角度範囲ではこのフックが完全に出入りしませんでした。

そこで考案したのが以下のdタイプリミッターです。

回転円盤内に針を差し込むのではなく、外周上にピンを生やし、ツマミの片側だけを外周まで延長することで、延長していない側はピンの内側を素通りすることができ、ピン1本なら360°(マイナスピンの幅)回転させることができるようになりました。実用上は更に回転範囲を狭めた方が便利なので施錠位置と解錠位置の外側にそれぞれピンを配置する想定です。

フック型ボルトのドアをお使いの方、お一人目はこれで解決したとご連絡いただきました。しかしお二人目の方からSesameが誤動作することがあると連絡をいただいたのです。

手動操作した後に、Sesameが反対に回そうとする!?

Sesame操作で動かしている分には問題ないものの、手動でツマミを回して施錠・解錠した後、更にアプリで操作すると、モーターがピンの方向に動こうとしてしまうということです。更に何度もやりとりしてい判明したのは、アプリ上の「角度の設定」画面で見えるリアルタイムの角度表示がリミッターで制限している範囲を超えて増えていってしまう(プラス方向もマイナス方向も)というのです。

例えば施錠・解錠位置をリミッターのピンに当たる位置でそれぞれ0°と180°にしたとします。物理的にそれ以上回転しないようにしているので、-1°以下や181°以上にはならないはずなのに、実際に手で回しているといきなり数字が飛んで写真のように範囲を超えた数値になります。

赤丸の位置の数値が物理的にあり得ない値になる

なるほど、Sesame5が360°を超えた角度に対応したという触れ込みの通り、大きな回転角度を検知はしてるっぽい。これによって「1周半回して施錠」みたいなことも可能なのかも知れません。しかし実際に回してないのに数値ばかり大きくなるのは問題です。当初はハード的な不良かも知れずメーカーサポートに連絡してみるようお願いしていたのですが、その方から「ゆっくりとサムターンを回せば大丈夫そうだ」ということも聞き、なるほどということで、我が家のSesame5でも同じ素早くカチャカチャ回転させてみたら再現しました!どうも固体不良ではなさそうだぞということで検索し、こちらの記事で重要な情報を得ることができました。その方がサポートから聞いた情報によると、

「速い速度で手動でサムターンを回すと、回転方向を誤認してしまうのは仕様。」

「センサーの動作頻度を上げると電池がもたないので、仕様」(意訳)

「北米版を含むセサミ製品は1秒以内に180度以上回すと回転方向を誤認識する」

とのこと。

なるほど。省電力のために角度検出のGMR(磁気)センサーの動作クロックを1Hz(1秒に1回)とかにしてるとかですかね?だからその間にグルリと大きく回転させてしまうと、Sesameはどっち周りでその角度に到達したかを区別できなくなるということかも知れません。結果として当てずっぽうで1秒前の角度と今の角度を足し算すべきか引き算すべきかが賭けになってしまい、外れると360°(180°?)が無駄に加算された角度になる、的な?なぜ360°ではなく180°でもう判別できなくなってしまうのかはよくわかってないですが、磁気を使ったGMRセンサーの仕組み的な都合ですかね?

おそらく世の中のほとんどのサムターンでは180°も回転することはないので、省電力優先のクロックにしたのは妥当だったのかも知れませんが、ASSA ABLOYのような何回転もするサムターンとは相性が悪かったということでしょうか。しかもこのサムターン、ほぼ空転してるかのように軽い回り方をするので、その気になれば本当に素早く回せてしまうことも要因のひとつな気がします。可能ならバッテリーライフを犠牲にしてでも角度検出クロックを上げる「高精度検出モード」みたいなのを実装してくれると世のASSA ABOLYドアユーザは救われるかも知れません。

dタイプリミッターを使う場合のワークアラウンド(対症療法)

「1秒以内に180度以上回すと回転方向を誤認識する」のが仕様だとするSesameで180°近くを回す必要があるフックタイプのASSA ABLOYサムターンをdタイプリミッターで使う場合の誤認識回避策としては、

  1. 意識して1秒以上かけてゆっくり回す
  2. アプリやSesameリモートを使うなどして、手回しを徹底的に避ける
  3. ロックボルトが動作するギリギリを見極め180°未満に範囲を絞り込む
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といったことになるかと思います。実際、この誤認識を教えてくださった方にこのアドバイスをしたところ、120°くらいでセッティングができ、今のところ誤認識を抑えられているとのことです。

そもそも120°で済むならいずれかの位置にa~cタイプのリミッターでも済んだ可能性すらありますね。やはり現地で実物を目にしてるわけではないので、写真や動画を拝見し、お話伺ったりして最善策を練るのもなかなかもどかしいところがあります。同じフック型のデッドボルトのドアでも、180°以上回さないと施錠解錠できないという方もいれば、詰めたら120°でOKでしたという方もいるので、実際にはモデルが違う可能性もあります。当分個別対応は不可避といえそうです。

Vブレーキ車用Sesameサイクル2アダプタ Ver.5

拙作のSesameサイクル2を取り付けるアダプタをPanasonicハリヤ以外のVブレーキ搭載自転車に使いたいというお声をいただきまして、またまた調整してみました。

前回までのあらすじ

今回Ver.4を機に、あらためてVブレーキ汎用モデルとして準備していきたいと思います。

2025.5.11追記:

以下の改良を加えてVer.5になりました。

  • U字のフレーム内部にリブ構造(支柱と空洞)をつけて構造的に強化を図った
  • 6角ナットの穴サイズを最適化
  • 底面の僅かな傾斜を削除

■あらためて仕組みを解説

過去記事であんまり設計意図を解説してなかったと思うので改めて。

まず外観はこんな形をしています。

下側が車体にVブレーキと一緒に共締め固定するための穴です。多少の幅の違いは調整ができるよう横長になっています。

中段の出っ張ったブロックがSesameサイクル2が載っかるところで、Sesameサイクル2と共締めするためにボルト穴があります。

裏返すと、こんな感じで六角ナットを挿入できるようになっています。

下側のVブレーキとともに固定するところは裏側にほんの僅かに傾斜がついています。ほとんど意味がなさそうで、造形面が荒れるだけなのでVer.5からこの傾斜は無くしました。

これによってVブレーキと完全に並行ではなく少し上側が浮いた感じでつく形になります。

イラストで説明するとこんな感じ。

なんとなくSesameサイクル2も車軸に向かって真っ直ぐにしたいなと思ってアダプタで角度をつけるようにしています(タイヤに干渉さえしなければ必須ではないと思いますが、見た目的なこだわりで)。

■汎用化に向けての課題

正直世の中のVブレーキ取付位置がどういう基準で設計されていて、車種によってどういうバラ付きがあるのかは把握できていません。ただ様々な車種に対応させるにあたって大きく2つの調整要素があるかなと思っています。

1. Sesameサイクル2受けブロックの位置、角度

まずはSesameサイクル2がつく高さです。いままで自分のPanasonicハリヤ2016年モデルにあわせて作った位置を基準に、ハリヤ2017年モデルの方は2cm、GIANT ESCAPE MINIの方は1cm下げてほしいという要望がありました。GIANT ESCAPE MINIでは結局オリジナル位置で良かったそうです。

どうも車種によってここの位置はまちまちになりそうです。こちらの記事によると、Vブレーキのアームは107mm前後のものと90mm程度のコンパクトVブレーキというのがあるそうで、2cm弱の差があるのも納得という感じです(もう少しデータが集まればこの2パターンに集約できる?)。

そのため現状では一旦写真のような目盛り付きバラモデルをお送りして、マッチングをとってもらうというステップを基本にしています。

(CGなので見づらいです。プリントした目盛りはもう少し荒い…)

これまでのところこの位置調整で無事取り付けできているようですが、もしかすると今後、背面やブロック上面の角度を更に調整する必要が出てくる可能性はあるかもと思っています。

2.造形素材

屋外で使うものなので、夏の日差しで劣化したり変形したりといったリスクが高いです。3Dプリントで最も一般的でコストも安いPLAという材料は60℃くらいで反ったりする可能性があります(特に板状のもの、荷重がかかっている状態)。本モデルは割と当てはまると思います。また色が黒だと太陽熱を吸収しやすいので更に温度が上がりやすいです。

次にメジャーなのがPETGです。PLAよりは衝撃に強いです(単純に固いのはPLAですが、PETGの方が衝撃を吸収できる靱性が高い)。こちらは70℃くらいまで大丈夫な可能性があります。白系の色ならもしかすると耐えられるかも知れません(未検証)。社外品で色々安いのもありますが、ウチでは今のところ有償頒布するものにはBambuのPETG-HFを使うことにしていて、だいたい白黒グレー他大抵は在庫があります。

それより耐熱性が高い素材だとABSやASAというのがあります。ABSは有名で材料単価も割と安いんですが、造形に刺激臭が出るので、当方では今のところ避けています。ASAはちょっとお高いですが100℃くらいまで平気だと言われています。ウチに現時点では黒のみ在庫がありますが、今後継続的に確保するかは微妙です。ウチでは造形面が荒れやすく、見た目としてはPETGの方が綺麗に出来るので使いどころが悩ましいんですよね…

さらに少し前に炭素繊維を練り込んで強化したASA-CFというのも登場していて、こちらの方が造形面が綺麗になるということもあり、次に買うならこれかなぁとも思っています。→買いました

コスト比較でいうと、Bambu Storeで1kgスプールが

  • PETG-HF: ¥3,400(補充なら¥2,800)
  • ASA: ¥5,080
  • ASA-CF: ¥7,180

といった感じ。PLAやPETG-HFだとスプール(巻き芯)が含まれない補充用パッケージもあって安いんですが、ASA系はそれもないので実質倍くらいのコストになります。1つのアダプタを作るのに1kgもいらないんですが、フィラメントは湿気を吸って劣化が進むので、あまり使わない材料やカラーを在庫するのはリスクだったりもします。あとASA系はあまりセール対象になってるのを見ない…

ASA-CFで納品した先で破損があったので、内部に支柱(リブ)を入れて構造的な強化を図ってみました。3Dプリントは通常内部は材料と時間の節約のために完全なベタ埋めではなくインフィルという編み目状の充填物で埋めることが多いです。設定で100%にすることもできるのですが、構造的には空洞の方が強い(円柱より丸パイプが強いのと同じ)ので、支柱と空洞の組み合わせにしてみた次第です。黒い部分も完全な空洞ではなくインフィルが20%くらいの密度で入ってはいますが。また応力が集中しづらいようにフィレット(角丸)を極力追加しています。

結果としてちょっと本気で折ろうとしても折れないくらいにはなったと思います。特にSesameサイクルを取り付けるブロックの近辺は素手では無理な気がしています(両端をもってヒネるようにすればU字の真ん中は折れるかも知れません)。

そんなこんなで、こちらのSesameサイクル2アダプタについては他の頒布品より少しお高い価格を設定させていただいています。白系でよければPETG-HFで製作して3,500円+送料+消費税。黒をご希望ならその時の在庫も加味してPETG/ASA系かでご相談とさせてください。ボルト、ナットなどの付属品も含んだ価格です。また紫外線ダメージを避けるためにUVカットスプレーを吹きかけたり、必要に応じてサンドペーパーで磨いたりもするので、フィラメント原価だけで済んではいないことをご承知おきいただければと思います。

こちらでも何パターンか造形して夏を超えられるか検証してみようと思っていますが、全てを実際に自転車に取り付けてSesameサイクル2の重さをかけた状態で横並び検証はできないので、やはり実際のところは保証が難しいです。実地データも欲しいので、「1年以外に変形や破損があったら無償でもう1点、または差額で材料アップグレード」みたいな形でどうかなとも思ったり。

3.Touchホルダーの後付け化

従来、指紋センサーのSesameタッチをとりつけるホルダー部分は造型時に有無を選択いただいていました。今回それを別パーツにして後付けできるようにしてみました。

これは、後日Sesameタッチをつけたい!と思った場合にまるごと作り直さなくても、後からホルダー部分だけ追加できるという点以外にもメリットがあります。

3Dプリンターはご存じの通り、樹脂の層を重ねて縄文式土器のように作ります。この層の境目のところが剥がれやすく、本アダプタを水平に寝かせて造形した場合、Sesameタッチを上に引っ張る方向の力に対してとても弱くなってしまう課題がありました。別パーツにすることでホルダー部分だけ垂直に立てて造型し強度を増すことができるようになります。またSesameタッチのサイクルホルダーをスライド挿入した時にロックする爪についても別体で作る必要なくしっかりとした強度を出せるようになります。

アダプター本体とタッチホルダーは強力な両面テープや瞬間接着剤で充分付くかなと思っていますが、タッチが落ちて紛失ということになるとマズいのでもしかすると将来的にボルト締めなど別の方法も採り入れるかも知れません。

ちなみに、通常はSesameタッチはハンドルバーにつけることが多かろうと思います。公式にも自転車用タッチホルダーなるものがあります。ただ私が乗っているハリヤ2016年モデルはハンドルバーにテーパー(傾斜角度)がついて円錐状になっていて、このホルダーのベルトで固定できなかったという経緯があって、このアダプタ上にSesameタッチもつけちゃえ、となっています。ケガの功名、これはこれで解錠と施錠が同じ後輪ブレーキ周辺でできるので、直観的ではあるかなと自負しています。「たしかにこっちにある方が使いやすそう!」と共感いただける方、そもそもハンドルバーに取り付けできなかった方はご相談いただければと思います。なおアダプター上にとりつける場合でも純正の自転車用タッチホルダーは必要になりますのでご了承ください。

4. ボルト&ナットについて

基本的に最適なものを添付していますが、以下個人的メモです。

M5のボルトで長さは3.5mmのこちらを使用。本体を黒で造形することが多いので黒のものを使用。サビに強いと書かれていますが、割とすぐ茶色くなる印象。可能なら施工後にさび止めスプレーをしておくと良いかも。

次にナットですが、自転車なので振動が加わって締め付けが緩まないかという懸念があります。当初、こちらのナイロン部品による緩み止めのついたナットを購入してみたのですが、あまりにキツくて手締めでは最後まで締められませんでした。仮に工具でガチガチに締められたとしても、メンテなどで取り外すことができなくなるのはやはり問題です。

ということで通常の金属オンリーのM5ナットに緩み止め剤を塗布することを検討しました。こちらのロックタイトの低強度タイプが

  • M6以下の太さのネジ用
  • 工具を使えば外せる程度の固着度合い

で条件に合うと思って購入。

ただし説明書だと塗ってすぐ締めるような書き方がされており、よく塗布済みの青いアレみたいな使い方(塗って送る)で大丈夫なのか確証がもてず使用は保留しています。購入者の方にご自身で手配いただいて塗るのは推奨しています。

実際に緩んで滑落したという経験はないですが、ウチはあまり自転車に乗る頻度が高くないので、毎日のように乗られる方には気にしていただいた方がいいかなと思っています。

■まとめ

まだまだ発注をいただくたびに色々調整、改良を加えている本品ですが、なんとかVブレーキ車にもSesameサイクル2をつけたい!という方、多少の試行錯誤につきあっても良いという方はご相談いただければと思います。

Sesame 5 Proをつけてみて5無印との比較など

木製ドアにとりつけるためのプレートなどを開発する関係で、採寸用に購入したSesame 5 Pro。せっかくなのでしばらく自宅玄関ドアにつけて使っています。

(Sesame製品はAmazonより公式サイト直販の方が安いことが多いのでご注意ください)

横向き設置
縦向き設置

こちらのマグネット対応プレートもPro対応版ができました。

本記事では5と5 Proを両方使っての比較レビューなど。

といってもそんなに書くことはないかな…

そもそも2機種の違いというか、Proの特徴は、

  • ブラシレスモーターで耐久性、静音性アップ(100万回耐久。無印は5万回)
  • 形状が細く長く成り設置性がアップ
  • カラーは白黒2色のみ(5無印はシルバーもある)

といったくらい。一般家庭では5万回でも10年くらいは保つ計算になるんじゃないでしょうか。Proはオフィスなど毎日何十回と人が出入りするような場所向けという感じですね。5無印では形状的に無理、というご家庭でない限りProに+3,000円払う価値がるかは微妙です。

その他、ソフト(OS)も共通だし、アプリからの使い勝手も同じ。反応速度も顕著な違いはない気がします。

■静音性

これははっきりと違いがわかるくらい動作音量に差があります。ただ5無印が耳障りなくらいうるさいというわけでもなく、むしろリビングから遠隔操作した時に音が聞こえて確実にロックできたとわかって安心まであります。Proは耳を澄まさないと聞こえないという感じ。さりとて無音というほど静かでもない。音質的には多少高級感があるかなという感じ。

■サイズ差による使い勝手

Proはサムターンのツマミも小さいです。普通に手でもって回すのにはむしろ5無印の方が大きくて回りやすいとも思います。ただ、SesameタッチやSesameリモートからの操作がほとんどでツマミを直接回ることはほぼない、という環境であれば、小さいことはメリットだと思います。

自分は手が荷物で埋まっている時など、脚や背中でドアを押して開いておき、閉まる前に身体を滑り込ませる、みたいな出入りをしますが、その際にSesameの出っぱりが背中を直撃して悶絶したり最悪Sesameが外れて落下したりということが意外と頻繁にあります(笑)。そんな横着をする人には出っぱりが小さくなることはリスク回避にもなるでしょう。個人的にProに感じるもっとも大きなメリットはそこかなと。

■まとめ

すみません、記事にするほど違いもなかったかも。商品コンセプト通り、ビジネスユースなら5 Proが耐久性の面で有利。

個人宅で使うメリットは、

  • 動作音(モーター音)がやや小さい
  • フットプリントが小さくぶつかりづらい

くらい。

逆にツマミを手で回す人は5無印の方が大きくて回しやすいですが、個人的には帰宅時はSesameタッチ、出かける時はSesameリモートを使うのが快適でオススメです。

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■宣伝

ASSAアブロイという海外メーカーの、サムターンが360°以上クルクル回ってしまいSesameと相性が悪いドアをお使いの方向けに、回転範囲を制限するアダプタを製作しています。また同社ドアは木製が多いと思いますが、両面粘着テープで貼り付けたくない、という方向けのサムターン共締め式のバックプレートもあります。最近5Pro対応版も開発していますので、ご興味おありでしたら下記の記事をご覧ください。

5無印用

Proの方も先にこちらをご覧になることをオススメします。

5Pro用

Pro用の差分情報はこちら。

ちなみにASSAのクルクルスカスカ回るサムターンは以前使っていたQrio2だと360°ですら非対応で上手く開閉できませんでした。Sesameシリーズだと開閉自体は可能だが、手や鍵で360°以上回してしまうと認識ズレが起きて誤動作するという感じなので、そこに物理的に一回転以上しなくするストッパーをつけることで不具合を防止しています。SwitchBotなどは試してないのでわかりません。