3Dスキャナを買い換え、Revopoint POP3 Plus→INSPIRE2

今年3月に購入した3Dスキャナですが、1年を待たずに買い換えました。

買い換え先は同じRevoPointのINSPIRE2です。

■POP3 Plusの弱点

POP3 Plus(以下POP3+)は「デュアルカメラ赤外線構造化光」方式です。ようするにステレオカメラで2枚の画像間の視差を使った計測をするんだと理解しています。自分の場合3Dプリントで既製ガジェットや車内向けのフィットするアクセサリを設計するため、形状をキャプチャする目的で、そこまで細かい表面テクスチャのレベルまで精密にスキャンできる必要はなく、カーブ形状などがとれればいいという感じでした。POP3+は10万前後で購入でき、またスマホと組み合わせてもスキャンできる点が良いかと思って購入しました。

しかし使ってみるとなかなか思ったようなスキャンができません。弱点として、

  • トラッキングをロストしやすい
  • 黒色の物体がスキャンできない

といった点が挙げられます。黒い物体に弱いのは最初からわかっており、3Dスキャンスプレー(洗ったり時間経過で消える白色スプレー)を使えばどうにかなると思っていましたが、やはり対象がガジェットや車のインテリアだと、消えるとわかっていてもスプレーを吹くのは抵抗がありました。また使ってもイマイチでした。マーカーやターンテーブルを使っても、結局スキャン途中でトラッキングロスト(追跡不能)になり正常に完了できない始末。

やっぱり本格的に使うならマルチレーザー(並行または格子状のラインレーザーを使った方式)機にアップグレードするしかないのかなぁと思い、10万台後半〜20万くらいする産業グレードのRevoPoint MetroYか近日発売でクラファン中のEinster2かというところで悩んでいました。

安価な赤外線レーザーながら平行ライン式のINSPIRE2登場

Einster2のクラファンやAmazonのブラックフライデーセールがある11月に悩みつつ、同月にレーザー加工機xTool F2を買ったこともあり、予算的に厳しいし、そこまでの精度はいらないからコスパ的に微妙なんだよなぁ、と思っていたところ、INSPIRE2の存在を知りました。METRO Yと同時に今年8月に発表されたモデルのようです。なぜかまったく存在に気付いていませんでした。INPIRE2の方式は「デュアルカメラ式 赤外構造光&赤外マルチライン レーザー」つまり、POP3や初代INSPIREの赤外構造光に加え、同じIRのマルチラインレーザーが追加されたモデルということになります。私の理解では赤外構造光は赤外線領域をとるカメラで二次元の面として取得した画像を視差処理して形状を読み取ります。同じ赤外線でも複数のレーザーを線状に放って形状を構成します。iPhoneのFaceIDなどで使うLiDAR計測のようですが、距離の算出方法は異なるようです。ともあれ同じ赤外光を使いつつ、構造光とレーザーは全く別ものです。さらにマルチラインレーザー方式でもパラレル(並行)とクロス(交差)があり、クロスの方がより広い範囲を高速にスキャンできるので、自動車のボディなどをスキャンするにはクロスが良い。一方で狭い範囲であればパラレルの方が精度が出やすいようです。Metro Yはパラレルとクラス両方、Einster2はパラレルのみ。さらに上位のEinster Rockitだとパラレル/クロスです。車の外装パーツとか作るならクロスも有効そうですが、個人的にはパラレルがあればいいのかなと考えていました。

で、INSPIRE2もパラレルのみですがマルチラインもあるということでトラッキングロストを起こしにくく高速でスキャンできる可能性があります。また産業ラインのブルーレーザーと違い赤外線レーザーにはなりますが「暗所・光沢面もスキャンスプレー不要」と謳われています。しかもPOP3+よりも安くスタンダードセットで6万円台!これだっと思いました。

なぜPOP3 Plusより安い?

マルチラインレーザーを搭載しながらなぜかPOP3+よりも安い。POP3+も併売されており終売になる気配もない。なにか罠があるのでは?と思い念入りに調べました。ポイントはPOP3+には「CPU 2コア、1.6 GHz」と仕様欄にあるのに対し、INSPIRE2にはありません。INSPIRE2は単独動作せずあくまで周辺機器としての計測デバイスということなんだと理解しました。POP3+もスタンドアローンではないですがスマホをつないで計測することは可能。INSPIRE2は構造光モードでのスキャンはスマホからもできますが、マルチラインレーザーはPC必須です。しかもそれなりにGPUパワーも要求されます。我が家はM1 MaxのMacBook ProとRTX4090のデスクトップWindows機があるので使用は可能ですが、屋外や自動車内などPCルーム外での利用に制限がつくのが難点といえそうです。ただリモートデスクトップ的に画面を転送してスマホで疑似的にスキャン作業ができるRevo MirrorというPC&スマホアプリがあるということで、Wi-Fi圏内であればデスクトップPCから離れた場所でもスキャンはできそう。ということで、飲み込めるデメリットかなと判断しました。

RevoPoint公式のトレードインを利用

RevoPoint公式ストアでは比較的最近のモデルを下取りしてくれます。今回はそれを利用しました。INSPIRE2が68,600円、POP3Plusの下取りが39,560円で差し引き29,040円。国際配送料が3,500円と高めですが支払い総額32,540円でアップグレードできました。

しかも、返品は「スキャナーのみを返送してください。スキャナーに付属していたアクセサリーは返送しないでください。」とあり、POP3 Plusを買った時に二軸ターンテーブルとモバイルキット(グリップ型のモバイルバッテリーとスマホホルダー)を含んだアドバンスセットにしたんですが、それらは返さなくて良いので、INSPIRE2はモバイルキットを含まないスタンダードで済みました。ケーブルやマーカーシールなどの消耗品もダブつきます。後から「アクセサリーというのはセットのモバイルキットやターンテーブルのことで、ケーブルやキャリングケースは返せよ!」って言われないかドキドキでしたが、本当にスキャナー本体だけプチプチに来るんで宅急便コンパクトに入れて送っただけで特になにも言われずでした。

返品物が倉庫に届いて検品されたら新しいのを発送します、となってましたが、ブラックフライデー中だったからか、普通に注文した翌日くらい、返品物の発送すらしてない時点で発送連絡が来ました。UPSで中国から送られてきました。

使用感

とりあえず新たに使えるようになった平行レーザーモードをテスト。以前敗北したブラックのSesame5をスキャンしてみました。PCとの接続はUSBまたはWi-Fi。Wi-Fiはインフラストラクチャモード、つまり自宅のSSIDに接続することはできず、INSAPIRE2が飛ばすSSIDに接続する形。つまりPCがWi-Fiオンリーだとスキャン中はネットに接続できなくなります。ウチでは基本PCは有線でネットにつながっているので、Wi-FiはINSPIRE2専用にできる。試した限りWi-Fiの方が微妙にガタ付くけど実用上は問題なさそうなので、Wi-Fiで使おうかな。そうなると給電を小さなモバイルバッテリーで賄えるとヨサゲ。モバイルキットのグリップ型バッテリーでもいいんだけど、せっかくコンパクトなので、スティック型か薄型のバッテリーを本体に貼り合わせて一体感もたせた方が細かい角度調整とかできそう。

ソフトはPOP3+で使うRevoScanではなくMetro Yと共通のRevo Metroに変更になりました。まぁ基本操作は同じ、できることも多分同じっぽい。

実際のスキャンの様子を動画にしてみました。

目視ではレーザーは見えないですが、画面上では並行レーザーが表示されます。これが当たったところから形状がスキャンできていく感じ。ジャイロの追従性は上々でこの線で対象物を撫でるようにスキャンしていく感じです。構造光式のPOP3+とは効率もトラッキングエラーの少なさも雲泥の差です。これだけで買い換えた価値があった。

スキャンにはPOP3+とセットで買った二軸ターンテーブルを使用。標準のターンテーブルより少し広くて、天面に敷くマーカー入りのシートが付属。これだけでもなんとかスキャン可能ですが、周りにマーカーブロックを置いてやるとよりトラッキングエラーが減った気がします。平面だけでなく立体としてマーカーが増えるのが良いのかも。あとRevo Metro上でマーカーサイズが3mm、6mm、9mmをそれぞれON/OFFできますが、使っているのは全て6mmなので、誤認識しないよう3mmと9mmはあらかじめOFFにしています。Sesame5自体には消耗品であるマーカーシールを貼らなくてもこれだけスキャンできるのは感動。

裏表をとって合成すれば完全体モデルとして一応形にはなります。ただスキャンしたものの精密度という意味ではやや物足りない。小さなLEDやリセットホール、サムターン回転部分の溝なんかはつぶれてしまっていますし、平面が平面になっていなくてポリゴンがもこもこ凹凸になってます。仕様ではもっと精密に取れるはずなので、やはり黒物体というところで精度が落ちてるのかも。あと今回は三脚に固定せず手持ちでスキャンしたのも影響してる?リバースエンジニアリング用に基本形状が取れればいいっちゃいいんですが、ガジェットがメインだけに平面はもう少し綺麗になってほしいなと。

次は三脚にスキャナーを固定してやってみます。それでもダメならやっぱりスプレーかけるしかないのかな。マーカー貼ってもそこは改善しなさそう。

黒い物体もスキャンできるというのも買い換えの動機ではあったけど、仮にそこまででなくても並行レーザーのスキャンの早さと失敗の少なさだけでも充分買い換えた価値はあったと思うので、スプレー必須となってもまぁ泣きはしないかな。

まとめ

買い換えでようやく3Dスキャナーを実用的に活用できそうな気がしてきました。PC(GPU)パワーは必要ですが、それを満たせるならこちらをお勧めしたいです。

これでぼちぼち出るであろうSesame6シリーズが出てもリバースエンジニアリングが捗りそうです。スキャンのためにホワイトモデルを選ばなくてもよくなるかな?他にも市販ガジェットの3Dプリントアクセサリを作るのに活用していきたいと思います。

[3Dプリント] xTool F1/F2用アイテム配置治具の製作

レーザー加工機xTool F2にはカメラが搭載されて、適当に並べた複数アイテムに同じレイアウトでAIが位置決めをしてくれる「バッチフィル」機能があり、量産に便利です。

ただ、やはり最初の1つは毎回手動で位置決めをしないとならないし、その1つ目はしっかり水平垂直を出して配置しないとだし、それをしても厳密な位置決めは難しい。1回学習させておけば、次のセッションでは見本無しでレイアウトしてくれればいいんですが、どうも現状ではそれはできないっぽい。

そうなると結局それなりの数量産するなら配置用の専用治具を作った方がよくね?という話になります。そうすれば物理制約通りにアイテムをはめ込んでいくだけで毎回固定位置に配置できるので、あとはxTool Studio上でも同じプロジェクトファイルで一発加工できます。

ということで早速作りました。xTool F1/F2のベースプレート部分を差し替える形にしたので、ネジ止めなども不要です。

実際にアイテムを並べてみた様子がこちら。

ちなみに今まではこんな感じで、付属のL字固定後をベースプレートにネジ止めしてそこにピタっと寄せるように1つ1つ位置あわせをしていました。

関係ないけどF1付属のL字治具はプレート同色だったのにF2は黒になってちょっと残念…

このアイテムは正方形なので割とあわせやすいですが、それでもコツンと当てたつもりでも反動で離れてしまったり、アクリルシールドを降ろしたショックでズレてしまったりと、慎重な作業を求められていました。3Dプリント品は軽いのでわずかな振動でもブレてしまいます。さらにこれがもっと複雑な形状のアイテムだと単純に沿わせるだけ傾きなども気にしなければならなくなります。そしてなによる一度に1アイテムしか加工できない。

これを配置プレートにすることで、

  • 雑に配置してもズレない
  • 一度に多数のアイテムを加工できる

ということで大幅に作業効率をアップできます。

ベースプレートのCADスケッチはできたので、後は3Dプリントアイテム毎にカスタマイズはすぐに作れます。F1/F2ユーザーさんからカスタムオーダーも受け付けようかな?

ただベースプレートの脱着って本体を浮かせて下から押す必要があり地味に面倒。近いうちに本体を少し浮かせて指をやRA2が通せるようにするリフターを作ってかませようと思います。

箸からヘラへ。ホットクック用拡張オプション「もっとクック」

SHARPのヘルシオ・ホットクックのまぜ技ユニットは2本の棒を使って具材をかき混ぜます。このかき混ぜ機能こそ他の電気調理器にはない大きな特長といえます。

そのまぜ技ユニットにシリコンのヘラタイプの「もっとクック」という別売りオプションが登場しました。標準のまぜ技ユニットが「箸によるかき混ぜ」だとすると、もっとクックは「ヘラによるかき混ぜ」と言えます。内鍋の底からこそげるようなかき混ぜが可能で、もちろん専用レシピもカレーを中心に様々用意されています。

2.4Lモデル用は以前からあったのですが最近ようやく1.6Lモデル用が発売されたので買ってみました。

SHARP ヘルシオ ホットクック KN-HW16H-W(プレミアムホワイト)

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48,899円(12/06 23:34時点)
Amazonの情報を掲載しています

つくってみた

ふわふわ卵かけごはん(もっとクック専用)

卵白をメレンゲに泡立てるTKGレシピです。めっちゃふわふわの食感で衝撃でした。

たぶん頑張ればボールと泡立て機でもできるのかも知れませんが、もっとクックを使えば、卵白を内鍋にいれてセットするだけです。所用時間は4分ほど。

毎朝1人前のTKGを作るのに、内鍋ともっとクックを洗うのもちとどうかと思いますが、たまにとか家族で食べるならアリじゃないでしょうか。またメレンゲ自体は他にも使い道がありそう。

TKG好きなら是非試してほしいメニューです。

クラシック欧風ビーフカレー(もっとクック専用)

もっとクック専用レシピにはカレーがやたらたくさんあります。ヘラで焦げないようかき混ぜながら煮込むという調理にフィットするのでしょう。こちらは比較的オーソドックスな欧風カレーのレシピ。プロの調理人のコラボメニューのようです。ただそのせいかリンク先に詳細のレシピが記載されておらず、「もっとクック(別売まぜ技ユニット)付属のメニュー集をご確認ください。」となっています(記事執筆時点)。これはキレそう(笑)。せっかくCOCORO KITCHENという素晴らしいサービスがあり、料理設定を本体に送信できたり、必要な具材を買い物メモに書き出すといったユーザ体験を提供しているのに、なぜに今更紙の冊子を参照しなければならないのか。ペラペラの小さな冊子なのでなくしたり濡らしてダメにする未来しか見えません。字も小さく写真も少なく見づらいです。取説ダウンロードページからPDFが取得できたりもせず。権利関係であえて載せてないのかも知れませんが、たぶんそこまでして(紙の冊子を見てまで)継続的に作ることはないでしょう。

確かに味としてはちょっと家庭の味を超越したなにかを感じはしました。パックのトマトジュースを使っていて、酸味強め。カレールーを使わないのでお腹を壊さなかった。ただ途中の具材の追加投入が2回もあるので、「ホットクック=放っとクック」のコンセプト的にはちょっと微妙かな。その意味でも1回作れば充分という印象。紙の冊子をなくすま他のカレーを1回ずつ試すかなという感じ。

総評

試したレシピはまだまだ少ないですが、製品としての使用感について所感をまとめます。

シリコンパーツの匂いが残りやすい

カレーを作った後の匂いがとれずに大変でした。食洗機必須かも知れません。

COCORO KITCHENの連携が未成熟

もっとクックのレシピをCOCORO KITCHENで探す際、わざわざ検索欄に「もっとクック」と入力して検索しなければならないというのはどうかなと思います。また逆にもっとクックを所持していない人にも「カレー」などで検索すると普通に表示されてしまいます。もっていない人にもアピールしたいという事情もあるんでしょうけど、普通に設定で所持のチェックをした人にだけ出てくるとか、もっとクックを試したいという人に1ボタンで検索できる導線を提供するなど、もう少し最適化ができるんじゃないかと思います。

また本体側でのメニュー呼び出しもかなり深いところにあって面倒くさいです。全般的にもう少しユーザビリティが改善されてほしいなと思います。

置き場所に困る→3Dプリンターでスタンド作成

もっとクックを購入すると、まぜ技ユニットが2つになります。常に1つは使わないし、なんなら両方使わないレシピも少なくありません。使ってない時のユニットの置き場所どうしよう?となりました。

ということで、3Dプリンターデ専用スタンドを製作してみました。

手前に標準のまぜ技ユニット、奥にもっとクック(TJ-U1A)を差し込んで立てておけます。

転倒しないよう底に金属の重りも埋め込んでみました。なんとなくシンクトップなどに直置きするのも気になっていたので一気に解決です。販売ページにも登録しておくので使ってみたいという方は是非ご利用ください。

こちらで注文できます

ホットクック&もっとクック1.6Lユニットスタンド

ホットクック&もっとクック1.6Lユニットスタンド

参考価格: ¥2,800(別途消費税、送料がかかります)

在庫: あり

BambuLab AMT HTを導入

フィラメント乾燥機能付きシングルAMSのAMS HTがBambuLab公式のブラックフライデーセールで25,800円→19,800円だったので導入してみました。

フィラメントの乾燥はより良い品質の造形には欠かせません。特にウチでよく使うASA、ASA-CF、PETG-HFなどは事前乾燥が必須とされています。TPUなども糸引きがかなり軽減することが検証済みです。

PLAやPETG-HF、TPUなどは乾燥時指定温度が65℃なので、Sanlu S2や先日導入したSanluのAMSヒーターでもカバー可能です。

しかし、ASAや、現時点では使用してないものの関心があるPC(ポリカーボネート)などは80℃/8時間指定なので、カバー不可です。そういう場合、保証外ですが、調理用コンベクションオーブンのTSF61Aを使っています。これはこれで温度も時間も充分なスペックを備えています。

■AMS HTを使うメリット

Sanlu AMS HeaterやTSF61Aと比較して、AMS HTを使うメリットにはどんなものがあるでしょう?

1つはAMSと同じRFIDタグ読み取りができるので、Bambu純正フィラメントだと材料に最適な乾燥パラメーターを自動でセットしてくれる点。同様に造形時のフィラメント種類設定も不要になります。

もうひとつは電磁ベント(弁)の自動制御です。AMS Heaterは乾燥中は自分で弁を開けて湿気を放出し、保管時は閉じる必要がありますが、これは案の定忘れまくります。AMS HTは電気的に開閉できる弁を搭載しているので気にする必要がありません。さすがに1つのフィラメントを365日乾燥したままにすることはないですが、短期的に集中して使うフィラメントを数日スタンバイしておくといった時に重宝しそうです。

そして単純にAMSを1スロット拡張できるという点。後述のAMS Hubが別途必要になりますが、標準のAMSの4スロットにプラス1して5スロット機として使うことができるようになります。正直マルチフィラメントとしてはそこまで使う機会はないですが、単純によく使うフィラメントをセットしっぱなしにして、物理操作なしで造形がスタートできるのはちょっと便利。残念ながら-CFなどの素材が非推奨なのはかわりませんが、通常のAMSよりも経路がシンプルなので無理矢理使っても途中でフィラメントが折れたりなどは起きにくそう、なのかな?そもそもブロックされるかどうかも不明なので追々試してみようと思います。

その他、効果が実感できるかはわかりませんが、乾燥時にスプールを回転させてくれて万遍なく乾燥できるというのも売りです。これはS2、AMS Heater、TSF61Aのどれもできていなかった部分です。

■AMS HTのここが気になる

まず誰もが落胆するのが「乾燥しながら造形できない」点。乾燥を止めても一定温度まで下がってからでないと造形に進めないようです。ただAMS Heaterを使ってて、加温で柔らかくなったフィラメントで造形するとトラブル率高まる気がしていて、Bambuも技術的な制約というよりもトラブル防止のためにあえて制約をつけてるっぽい気がしています。ただいちいちインレットから抜かないと乾燥できないとか、冷めるまで使えないといったあたりは普通に使いづらいですね。

あと、X1-CarbonでAMS1/2と併用するにはAMS Hubが必要です。発売当初には認識してたんですが、注文時点ですっかり忘れていて後から慌てて追加購入しました。X1-Carbon Comboの背面についているフィラメントバッファーを取り外して、その4股版であるAMS Hubを取り付ける必要があります。19,800円でも割と思い切って買ったのに、追加で¥7,740 円(通常は9,680円)必要となってギャフンとなりました。お気を付けください。他にAMSがないなら、あるいは同時に使わないなら不要です。都度使い分けるなら、外部スプールを使うのと同じでY字アダプタを使えば大丈夫だと思います。自分としてはせっかくなので4+1スロットで使ってみたかったのでやはり必要かなと判断しました。

気になるというか注意が必要そうなのは、フタにロック機構がある点。S2の感覚でパタンと閉じるだけだと密閉されておらず、ハンドルを引いてパチンとロックするよう注意が必要です。たぶんですがシステム的に検知はしてないのでアラートが出たりはしなさそう。自分で気をつけないといけません。

-CF/-GFフィラメントの対応可否?

上でも触れましたが、仕様表の記載がいまいちわかりづらく、うちでよく使うASA-CFはどうなの?というのがまだよくわかっていません。「対応」の意味として、

  • 造形できる(自動送り/戻し対応)
  • 造形できる(引き戻しできないバイパスポートのみ)
  • 乾燥できる

があります。執筆時点の表記では、

造形可PLA、PETG、ABS、ASA、PET、PA、PC、PVA(乾燥状態)、BVOH(乾燥状態)、PP、POM、HIPS、

Bambu PLA-CF/PAHT-CF/PETG-CF/Support for PLA/PETG、AMS用TPU
造形可(バイパスポート)TPE、汎用TPU、Bambu PET-CF/TPU 95A、および炭素繊維・ガラス繊維を含むフィラメント
乾燥PLA, PETG, Support for PLA/PETG, ABS, ASA, PET, PA, PC, PVA, BVOH, PP, POM, HIPS, Bambu PLA-CF/ PAHT-CF/ PETG-CF, and TPU for AMS

となっています。-CF系では「Bambu PLA-CF/PAHT-CF/PETG-CF」は明示的にOKで、それ以外はバイパスポートを使わないとダメぽい。バイパスポートはいわば「ただの穴」で、Sanlu S2と同じ外部スプール扱いで、使い終わったら自分で巻き取る必要があったり、他のAMS側のフィラメントとマルチで使えなかったりという制約があります。ASA-CFはみるからにポキポキ折れそうな固さなのでやはり厳しいんですかね。今後はAMS HTで使えるかどうかも-CFフィラメントを使う時の選択基準になりそうです。

あとBambuと書いてあるので、社外フィラメントはすべてバイパスポートということになりそうですね。この辺り、自己責任で使えるのか、そもそもフィラメントタイプをセットしたらロックされるのかは要検証です。

あと乾燥対応にASA-CF載ってないのはなんでなんだぜ?

2025.11.23追記: ASA-CFはやっぱダメっぽい。

ASA-CFですが、まず乾燥設定にプロファイル自体ありません。まぁ80℃x8時間というのはASAと同じなので、手動でASAを選択してやれば乾燥自体は可能。

次に造形してみようとインレットにフィラメントの先端を挿入してみたんですが秒で折れました。経路内に破片が残って背面のPTFEチューブを抜いて除去してやる必要がありました。やはり非推奨どころか実質使えません。乾燥プロファイルが用意されていないのも、そもそもRFID認識のためにインレットに挿してローディングしようとした瞬間に折れるので、乾燥(のためのフィラメント識別)自体も無理、ということであえて乾燥プロファイルも用意されていないということでしょうか。うーむ、残念。やはりPCに移行してみようかなぁ。

■操作画面例

AMS HTを追加するとフィラメントタブの表示はこんな感じになります(乾燥中)。

「ガイド」ボタンの左にあるツールアイコン的なボタンを押した状態がこちら。乾燥設定と実行ができ、本体前面パネルと同じ情報がここでも確認できます。

X1で良かったと思う瞬間ですね。P1系だと不便そう。

ちなみにBambu Studioでの表示はこう。赤矢印のところがタブになってて切り替えて表示します。

どうも乾燥操作はできないっぽい?同様にスマホアプリのBambu Handyも同様です。うーん、外出先から帰宅したら造形したいから乾燥はじめたろ」とかできないのは残念。単に実装が追いついていないというより、加熱機構なので万一を考えて遠隔操作はさせないということなんでしょうか?

まとめ

乾燥の質という意味では、TSF61Aでも一応できていた温度なので、自動回転機構の有無で差が出るかどうかなので体感は難しそうです。

ただ指定通りきっちり乾燥させて運用していこうと考えた時の利便性向上アイテムなのかなと思います。TSF61Aはアニール処理やシリカゲル乾燥にも使えるかと思って購入しましたが、アニールは寸法変化が大きく部品中心のウチではあまり機会がないので、今だったらTSF61A買うよりAMS HTにしたかもなという気はします。でも8時間とかかかる処理だし、AMS HTは冷めないと造形に使えないということもあるので、せっかく両方あるなら今後も併用かなという気がしています(ただX1本体も含め1500Wコンセントx1からのタコ足では同時使用は厳しいかも)。

TSF61Aを所持している身として即効性のあるアップグレードではないですが、追々使ってまた気付きがあれば追記していこうと思います。

PCの電源ユニットを交換 CORSAIR HX1200i

メインの仕事PCの調子がどうにも悪く、電源を交換しました。症状としては、

  • デバイスの接続/切断音が交互に鳴り続ける(X570でよくある?)
  • オーディオI/F(SoundBlaster X5)も頻繁に切れる
  • フリーズする(ロック画面)

など。もとThermaltake TOUGHPOWER DIGITAL iRGB PLUS の1050Wモデル。80PLUSはPLATINUMです。この記事によると2020年に購入しています。

発売はもう少し古く、RTX4090の12VHPWRコネクタもなく、変換アダプタで使っている状態でした。特に燃えもせず使えていましたが、こういうなんとなく調子が悪いのは、

  • 冷却不足
  • メモリ不良
  • 電圧不足/電源トラブル

なことが多いので、今回思い切って交換に踏み切りました。ちなみにThermaltakeのDIGITALシリーズはUSBでマザーボードと接続して、専用ユーティリティから消費電力などをリアルタイムにすることができます。またクラウドを経由してスマホで見たり再起動をかけたりもできるというもので、これを目当てに当時選択しました。しかしいつからかクラウドにデータがまったく同期されなくなり放置していました。なので、現在の電力消費状態を確認しようとしてもできず終い。調べてみると同社の後継モデルでは搭載されておらず、鳴かず飛ばずで早々にうち捨てられたようです。

それでも消費電力モニターができるのは安心感あるなと思い、同種の機能をもったPSUを物色したところ、CORSAIRが見付かりました。CORSAIRはiCUEというファンをディジーチェーンにしてRGB LEDを統括制御システムが有名ですが、そのユーティリティを使って電源の状態もモニタリングできるっぽいです。

将来を見据えた電源規格

リプレイスの要件としてRTX4090のような高スペックGPUにしっかり給電できる12VHPWRコネクターにネイティブ対応してることを必須と考えたのですが、これは一時期差し込み不足による焼損などで話題になっており、すでに後継規格が登場していました。GPU側のコネクタ自体は共通なのですが、電源側は2つの6pinコネクタから合流して12VHPWRに変換する12V-2×6という規格になりました。ATX3.1規格に内包されているようです。なんだか複数電源ポートからケーブルを束ねて12VHPWRにするというと逆戻りした規格のようですが、きちんと反省を踏まえて策定されたっぽいので大丈夫なんでしょう。

またATX3.xでは瞬間的なピーク電流変化への対応も盛り込まれており、システムの安定動作に貢献しそう。いずれCPU/GPU/マザーボードを新世代のものに更新することも見据えて、最新のATX3.1、PEIE 5.1世代の製品を選ぶことにしました。上記HX1200iはもちろん対応しています。

交換作業

特に難しいことはなかったですが、電源ユニット自体の全長がかなり伸びていて、ケースから2.5 HDDマウンターを取り外す必要がありました。

モニタリング機能のためのUSBケーブルはマザーボードのピンヘッダー端子に接続する点もTOUGHPOWER DIGITALと同じ。ただし電源側のUSBコネクターはminiBからType-Cになっていました。まぁ普段触ることないのでどうでもいいですが。

交換後に症状は改善したか?

正直SoundBlaster X5の不安定さはすぐに再発しまいたorz。悔しいのでついでにUSB切換器やハブの経路を変更することで収まっています(面倒くさがらずに先にやればよかった…)。これまでセルフパワーのハブを経由させても改善しなかったんですが、LGのディスプレイ内蔵ハブにつないでみたところ切れなくなった気がします。同じく電力消費が高そうなOBSBot Tiny2も同じディスプレイ内蔵ハブにつないでみてもいまのところ大丈夫そう。さすがに下手な切換器よりも電源に余裕がある?

リアルタイムの消費電力値によるとGPUに不可をかけないような普通の状態で250W程度。1,050Wでも全然足りていた気がします。

まとめ

正直気休め程度の交換だった気がします。ちょっとコスパ的には微妙ですが、ピーク電流への耐性があがり、将来的な余裕を手に入れ、モニタリング機能が復活したというところで納得させているところです。

これでしばらく様子みてフリーズが解消されれば御の字かなぁというところですが、はてさて、、

TOUGHPOWER 1050Wはどうしてくれよう。10年保証付きではありますが、明確な故障と断定できる症状でもないので対象になるかどうか。そのうちまた姪PCとかにお下がりで組み込んでやる機会があるかなぁ、あるいはとっとと売るかなぁ、というところで揺れています。