はんだごてを買い換え。goot PX-280はインサートナットにも最適解!

4年ほど前に購入したこちらの半田ごてが壊れました(以下Manelord)。

電源ランプは点くものの、全く温まりません。というか温まったり温まらなかったり。分解してみるとヒーターにつながるコードのハンダが剥がれてました。ヒーターに通電しないんだからそりゃ温まるわけがない。というか普通に危ない。最近、インサートナット用のこて先が固着してペンチでグリグリしたのも良くなかったかも。

(インサートナットとは3Dプリント造形品に専用ナットを熱で埋め込んで、頑丈な金属ナット受けを作る技法です。)

ハンダ付けし直せば治りそうですが、それには半田ごてが必要ですw。自動車のインロックみたいな状況。

仕方ないので追加で1本買って、古いのはもし直せたらインサートナット専用にしようかなと。ちなみに使っているのはこれ(以下ShineNow)。先端のチップがネジで脱着式になっていて1つで様々なサイズに適用できてコスパが高いです。

■どうせ買い直すなら良いのにしよう!

なんだかんだでちょいちょい使うので、どうせなら性能や使い勝手の良いものに投資しましょうということで検討開始。

まず思ったのは温度がデジタル表示付きで確認&設定できるものがいいなと。海外の劇安品でもあるにはありますが、やはり信頼性で国産のHAKKOかgoot(太陽電機産業)くらいを狙いたい。有名なHAKKOは7千円くらい、gootで5千円、海外製だと2千円台といった相場感。

値段もさることながら、いくつかの理由でPX280に決定しました。メーカー公式ページはこちら

・goot PX-280の魅力

インサートナット用こて先ラインアップが豊富

古いのを直してインサートナット用にするつもりではありますが、万一きちんと治らなかった時の選択肢として重視。アリエクで売っているようなインサートナット用こて先は古めのデ・ファクトスタンダードの規格で作られていて、現行の国産半田ごてには使えないものがほとんど。色々なサイズがセットになっててお手頃なのはいいんですが、逆にまたそれにあわせて古い規格の半田ごてを買い直すのもなんだなと。

その点、PX-280は純正でインサートナット用のこて先が何種類も出ているのが良き。ただアリエク品のように先端だけねじで交換できる方式ではなく、サイズ別のこて先まるごと交換なので、M3,4,5…と買い揃えると地味に値段がはります。それでもまぁあるのは有り難いなということでPX-280選択の理由のひとつになりました。

耐熱保護キャップがある

太洋電機産業(goot) PX-280専用 耐熱保護キャップ PX-28CAP

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別売りになりますが、シリコン製のキャップが用意されており、熱いままの半田ごてをすぐに収納できます。気持ち的に収納までするのはやや不安ですが、少なくともそこらに転がして冷ましておくことができます。もちろんManelordに付属していたこてスタンドもあるので、それに挿して冷ませばいいんですが、猫とかもいるしキャップしておけるのは安心感あります。

PX-280側がネジのように見えますが、実際には押し込むだけでピチっとはまり、瞬時に脱着できます。PX-280を買うなら是非セットで買うことをオススメします。

その他の機能として、

  • Manelordの60Wに対し80Wなので加熱が早く、すぐ使える
  • 振動センサーで使っていない時は200℃(設定で変更可能)まで温度を落として待機、手に持つと自動で設定温度に向けて復帰開始
  • 更に長時間放置(初期値60分で0〜999分で設定可能)すると、自動で電源OFF
  • 断線、異常などのエラー表示

といった感じ。省電力、安全面でも配慮がされているなという感じ。80W、操作UIがある分、今までのManeloadに比べて一回り太くて重いので取り回しが悪くなりますが、立ち上げの速さは感動ものです。

なんということでしょう!

嬉しい誤算なのですが、前述のShineNowのインサートナット用のこて先がPX-280にもピッタリ装着できました!これはManelordの半田ごてはいらないんじゃ?実はManeloadにShineNowのこて先つけると微妙に長さが合わなくてしっかり固定できなかったり、装着したまま冷ますと固着して外せなくなったりと微妙に合わなかったんですよね、、それを考えると、無理にハンダ作業用とインサートナット用で使い分けなくても、どちらもPX-280で使っておけばいいのかも。まぁManeloadをインサートナット専用にするなら別に脱着できなくてもいいし、温度調整もそれほどシビアに感がなくていいので、付け替えの手間を思えば使い分けもメリットあるんですが。ちょっとその辺りは実際に運用しながら検討してみます。MakerWorkdなどにモデルがたくさんある、インサートナット専用スタンド(垂直にまっすぐナットを入れる工具)を作ってみるのもいいですが、置き場所がなぁ…

■Bento3Dで専用ボックスを作る

Maneloadのセットに付属のプラケースでは入らないし、ツメが折れたりもしてきてるので、ハンダ用品一式を入れる収納ボックスを用意しようと思い足しました。百均で物色してきても良かったんですが、せっかくなので前々から気になっていたBento3Dでジャストフィットなボックスを作ってみることに。Bento3Dはブラウザ上で簡単に仕切り付き、フタ付きの収納ボックスを設計してSTLファイルをダウンロードできるWebサービスで、3Dプリンターがあれば簡単に思い描いたボックスを出力することができます。

まず外形サイズはこんな感じ。本当は250mm取りたかったんですが、X1-cのビルドプレートに収まらなかったので縮小。PX-280はナナメにすれば入るという感じ。

せっかくなのでパーティションもつけてみました。

この設計を元に自動的に

  • 外箱
  • フタ
  • リッド(留め具)
  • 内部仕切りボックス

の4パーツのSTLファイルがダウンロードできるのでスライサーに読み込んで造形します。

内部仕切りボックス以外の3点はレイヤー高さ0.1mmが推奨設定でしたが、めちゃくちゃ時間がかかってしまうので、0.4mmノズル・0.12mm高で妥協。「お好きに」と書いてある内部仕切りボックスは久々に0.6mmノズルを使ってさらに大雑把に造形しています。所要時間とフィラメント量はこんな感じ。フタは文字を入れたのでその分増加しています。

フィラメント使用量所要時間
外箱172g5時間46分
フタ104g2時間38分
リッド(留め具)1.8g31分
内部仕切りボックス193g5時間21分
合計約470g約14時間

まぁまぁの大物プリントです。フィラメント使用量は約0.5kg=半スプールと考えると、原材料は1,000円弱というところでしょうか(主にELEGOO RAPID PLA+を使用)。

プリントパーツ以外のネジ類が必要です。

Amazonではねじは30本入り1,419円しかなく、平行ピンは売ってすらいません…

すでに大半の造形を終えていたので焦りましたが、どうにかモノタロウで発見。それぞれリンクしておきます。小計799円+送料500円でしたが、初回登録500円クーポンが適用できたので、税込み879円で購入できました。少し高いですが4,5回分はあるのでまぁヨシ。ネジはコーナンとかでもありそうだけど、平行ピンはどうかなぁ。今度行ったら探してみます。

実質の原価合計でいうと1,100円というところかな。百均で買うことを思えばかなり割高ですが、一度Bento3D使ってみたかったのでヨシ!

代行出力のご相談もお受けしています(とはいえ上記の値段にはなりませんが)。

仕上がり

(写真掲載予定地)

■まとめ

安物の半田ごてManeloadが壊れたので、これを気に少し良いgoot PX-280を購入しました。デジタル温度表示で通電後みるみる温度が上がっていくのは非常にストレスなく使い始められます。耐熱キャップの存在や、電源切り忘れても自動でOFFになるなどの安全面でも安心感あります。それでいてHAKKOよりはお手頃だし、結果的にShineNowのインサートナット用こて先も流用できたので、非常に満足度の高い買い物になりました。

数年使ったManeloadより一回り大型化してしまった点だけが気になっていますが、総合点では明らかにメリットの方が大きいのでしっかり慣れていきたいと思います。

男の子の好きなヤツ!インサートナットの熱圧入をやってみた

3Dプリンターで樹脂部品を作って、なにかにネジ止めする際、樹脂素材に直接ネジ穴を切ってもちょっと強度に不安があります。ちょっとネジを締めすぎるだけで壊れてしまうんじゃないかと。またネジ山の精度も本当に工業製品の雄ネジとがっちり噛み合う精度で造形できるの?と。

そんな時に活躍するのがインサートナットという部品です。つまり金属できっちり作られたネジ穴(雌ネジ)部分を後から埋め込むという手法です。実際の部品はこんなものです。

M5 8mmのインサートナット

外側がギザギザしていて素材にガッチリ食い込むようになっています。

これの挿入方法はいくつかあるようですが、3Dプリンター素材の場合、熱圧入というのが一般的なようです。文字通り熱で炙ってグイっと押し込む!という方法。そうすると樹脂素材がじわっと溶けていい感じに固定されると。

具体的にはライターで炙って押し込むとか、ハンダごてのコテ先につけて、とかあるらしいですが、例によって道具から揃えるのが好きなので、専用のコテ先セットを買ってみました。

先端がMサイズの太さをした円柱形状で通常の尖ったコテ先よりもしっかりはまり、真っ直ぐに押し込みやすいです。今回使ったM5ナット用の先端を装着したのがこちら。

PLA素材が200℃前後で造形する素材ですがもうちょい高めの300℃くらいのハンダごて設定でやりました。数秒でじわっと溶けて沈み込んでいくので、深く入れすぎないよう注意します。やはりツライチになってると綺麗。

使用したナットの仕様がM5x8x7となっていて、おそらくネジ穴径がM5、全長が8mm、外径が7mmという意味なので、3Dプリント部品側には外径と同じ7mmの穴をあけておきました。冷えた状態だとまったくはまらない直径ですが、そこを熱でズブズブと入れるので結果としては余計な隙間もできずいいのかなと。

実際に使ってみたのがこちら。

これがなんの治具かは別記事にて

謎の満足感があります。単なるDIY部品が急に工業製品になったかのような。

更に念のためにネジの緩み止めを買って塗っておきました。

こうしてしっかりしたネジ穴が付けられるなら、単体部品ではなく色々なものに固定して使うようなものや、微妙な調整幅をもたせたいもの、力のかかる箇所は金属部品で作りたいもの、など応用の幅がめちゃくちゃ広がりそうです。

そしてネジといえば撮影、録音機材で一般的な三脚穴サイズ(1/4-20UNC)!これが使えるならカメラマウントとかリグになにかを取り付ける系の治具を作れます。こちらは日本のAmazonでは手頃なものが見付からず、AliExpressで購入しました(アリエクはたまにリンク先の商品が差し替わっているので、サイズは確認した上でご購入ください)。60個も使い切れないけど、ともあれなにかそっち系のアイデアができたら活用しようかと。

2024.03.23追記

上記部品のサイズが微妙にあわなくて作り直すことにしました。その際、このインサートナットは再利用できるのかという疑問が頭をかすめます。今回は専用半田ごてヘッドの取り付けねじがM5サイズだたので、ヘッドを外した状態でそのままナットに取り付けることができました。その形で300℃に熱して引き抜けばぬちょーっと引き抜けました。ただ多少フィラメントの溶けカスが残るので、同じ色のフィラメント部品に再挿入するならいいですが、違う色となると場合によっては綺麗には再使用できにくいかも知れません。丁寧にこそぎ落とせばいいんですが。そしてM5以外のナットの場合は、別の方法、例えば適当な雄ネジをつないでそれを熱してペンチで引き抜く、などの方法が考えられます。

計算上の単価はさほど高くないですが、例えば今回買った330個入りセットに同サイズは10個しか含まれてないので、ちょっと使い捨てるには惜しいですね。

2024.03.27追記

ネジをきつく締めすぎたか、少しナットが浮いてくるというか抜けてくることがありました。なるべく強度を上げるためにはウォールを厚くしたりした方がようさそう。あとはフランジのついたネジで圧入した面に密着するような形で締め付けるのも重要かなと思いました。

2024.04.07追記

部品を交換する機会があったので上記の状態を写真で撮ってみました。

手で抜けるところまではいってなかったですが半分ほど抜けてしまっていました。ナット自体の再利用がよくなかったのか、PLAという素材がダメか、はたまた自分の腕が悪いのか。ピタっとツライチになったらすぐに小手を抜いてますが、もう少し長く保持して熱でPLAがしっかり溶けて馴染むのを待った方がいいとかあるのかも?

交換後のパーツは外壁を6層で再施工(上記写真のは設定覚えてない)。またしばらく様子をみようと思います。いずれにせよ屋外で使うものなので次の機会にはPLAではなくASAとかPC(ポリカーボネート)フィラメントを使ってみたいところです。

2024.5.2追記

2つ目もやっぱりナットが抜けてきてしまいました。PETGのいい色のフィラメントが在庫になかったので、とりあえずPLA-CF(カーボンファイバーを練り込んだPLA)で3つ目を作成。今度は熱圧入後にしばらく半田ごてを保持し、じっくり熱を伝えるようにしてみました。それで樹脂がしっかり溶けて馴染んで(掴んで)くれないかなと。

違いはPLA→PETG-CFに素材を変更したことと、しっかり熱を馴染ませた点。あと形状のアップデートとして全体の傾斜を微妙に調整。

これでだめならインサートナットは諦めて、通常の6角ナットを内部に埋め込む(穴ができたところで造形を一時停止し、ナットをはめてからフタをするように続きを造形する)方法を試してみようかなと思います。耐候性、耐紫外線などでASAがよさそうかなと思ってますが、ちょっと使い切れずもったいないことになりそうなので悩ましい。

2024.5.4追記

上記のPETG版、使用開始初日でロック中にタイヤが回ってスポークがガチンと当たっただけでインサート部分が根本からモゲましたorz。層はがれです。ということで造形の向きを90度変えてみたらやはりオーバーハングがきれいにでず。しかたないのでサイクル2を保持するブロックを別部品化してはめこむ形にアップデート。ベースをちょうど届いたPLA-CFで、受けブロックをPETG-CFで90度回転していいとこどりをする形に。さてこれでうまくいくか、、

だめなら

  • 六角ナットを埋め込む
  • ASAフィラメントを買って使う
  • 水溶性サポートを買って90度回転してもきれいに造形できるようにする

のどれかかなぁ。

■まとめ

3Dプリント造形物にガッチリしたネジ穴を設置するインサートナットと埋め込み用のコテ先を試しました。簡単でなおかつ埋め込み作業が気持ち良いw。3Dプリント造形物の活用の幅が広がるので活用していきたいです。