Darwin Streaming Serverを試す

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先日の「Macで手持ち動画ファイルをソーシャルビューイングする」というエントリで書いたHangoutを使う方法は、やはりフレームレートの低さに我慢がならず他の方法を模索しました。そういえば、OSX ServerもSnow LeopardまではQuicktime Streaming Serverを搭載してたのにLionでなくなったんだよなぁ、と思って代替ソリューションをググったところ、元々オープンソースで公開されていたので、野良ビルドというかポートされたものがあるのを発見。Darwin Streaming Serverという名前で、OSX以外にもLinuxやWindowsでも動かせるみたい。OSX用のパッケージはここで拾えます。いくつかつまづいたので導入メモなど。執筆時点のバージョンは6.0.3。もうApple的にはメンテが終息してるっぽいのであまり進化はしないかも知れないですね。

■導入メモ

・OSX Serverにインストールできるようにする

なぜかインストーラー.pkgがServer OSを弾く設定になっています。もともとServer OSには入ってたものなのでその名残?こちらに回避策がありました。まず.dmgファイルを開いて仮想ドライブとしてマウントし、中の.pkgファイルをローカルドライブにコピーします(そうしないと編集できないから)。.pkgファイルは実はフォルダなので、ターミナルでcdしていけば中に入れるんですが、DarwinStreamingServer.pkg/Contents/Resources/VolumeCheck というファイルをエディタで開いて、サーバーOSかどうか調べて弾く部分を丸々コメントアウトします。具体的には29行目以降に赤字の#を挿入します。

#  don’t install on OS X Server                                                                   
#if ( -e $INSTALLED_SERVER_OS_VERS )                                                              
#{                                                                                                
#    if ( -e $ERROR_STRINGS )                                                                     
#    {   #there are localized error strings so use them                                           
#        $RESULT = 114;                                                                           
#    }                  

これでインストーラーを起動すれば普通にインストールできます。管理者パスワードや動画の保存場所などを指定すると、インストーラーが最後にブラウザで設定ページを開いてくれるので、そこをブックマークするなりしておけば、以後全ての設定はそちらで行えるようになります。

 

・動画ファイルにヒントトラックを付加する

H.264+AACなMP4ファイルが利用できるはずですが、そのまま登録しても非対応と言われてしまいます。動画にヒントトラックというインデックス情報のようなものが含まれている必要があるみたいです。QuickTime Proやmp4boxというフリーのコマンドラインツールで付加できるようです。mp4boxはエンコ作業で普段から使ってるので、以下はWindows機で作業。

mp4box.exe –hint (元ファイル名).mp4 –out (新ファイル名).mp4

などとすればヒントトラック入りの別ファイルが作成されます。再エンコードするワケではないのでファイルコピー程度の時間で終わります。

ただ手持ちのmp4box 0.4.6-DEV (internal rev. 5)では「Invalid IsoMedia File」というエラーが出てハマりました。最新版とされている0.4.6-rev2735をゲットしてみたらOKでした。バージョンは、

mp4box.exe –version

で調べられます。

最近のMediaCoderならエンコード時に自動で付加することもできるっぽいですが、ファイルサイズで比べると1,2割は大きくなるようなので、全部のファイルに予め付与しておくのは無駄かなという印象。

 

・動画ファイルへのアクセス権を付与する

これはOSX Serverだけの現象かも知れませんが、プレイリストに動画を登録して再生スタートすると、

– PlaylistBroadcaster: Permission to access the SDP reference movie was denied.
   Read access required.
   (path: /Library/QuickTimeStreaming/Movies/hoge.mp4, errno: 13).

のようなエラーが出ます。他のサンプルファイルをみるとオーナーが_qtssとなっているので、それに揃えてやります。

sudo chown _qtss hoge.mp4

 

・80番ポートを使わない場合のポート番号

インストーラーまたはポート設定画面に「80番ポートを使う」という項目がありますが、通常80番はWebサーバーが使うので重複の心配があります。そこでオフにしてみたんですが、じゃぁ代わりに何番になるかというのがどこにも表示されていません。

わかった範囲では、

1022番:管理ページ

8000: http://プロトコロルによる動画配信(iOS向け?)

554番:rtsp//プロトコルによる動画配信

等。ただし8000番を使ったhttp配信はまだ成功していません。エラーメッセージ的にはつながってるっぽいってだけ。

 

・プレイリストを作って疑似ライブストリーミングをする

PC/Macでの視聴にはrtspプロトコルに対応した動画プレーヤーを使います。具体的にはQuickTime PlayerかVLC辺りがお手頃でしょう。ファイルメニューから「URLを開く」とか「場所を開く」「ネットワークを開く」といった文言の項目を選び、アドレスを入力するだけです。

サーバーの設定画面で指定したフォルダに、hoge.mp4というファイルを置いた場合、

rtsp://(IPアドレスまたはホスト名)/hoge.mp4

というアドレスを入れれば視聴できます(ルーター越えさせる場合は554ポートを開放しておく必要があります)。ただしこれだと個々にオンデマンドで再生されるので、単純にファイル共有して視聴するのとあまり代わりありません。せっかくストリーミングサーバーを介すのだから同期視聴してこそです。それにはプレイリストを作成します。管理ページ上で「Playlists」を選ぶとプレイリスト一覧画面になるので、「New Media Playlist」を選択し新規作成します。仮にNameをhoge、Mount Pointをhoge.sdpなどとしておきます。そしてファイル一覧に動画フォルダのファイル一覧が見えてるのでドラッグして右側のリストに追加し、「Save Changes」で保存して一覧画面に戻ります。一覧画面のプレイリストに再生ボタンがついているのでクリック。Statusが「Playing」になれば成功です。エラーが出た場合はアイコンをクリックすると詳細が確認できます。またServer自体が起動しているか左上の表示で確認しましょう。

「Playing」になっていると、誰かが見て様が見てまいがサーバー上では再生が進んでいる状態です。そこで、クライアントのプレーヤーソフトから、

rtsp://(IPアドレスまたはホスト名)/hoge.sdp

のようにMount Pointを指定してやると、視聴できると思います。

■使用感

・画質

画質に関してはHangoutやSkype、iChatの画面共有に比べてはっきりと優位を感じます。というか回線速度が追いついている限り、ローカルで再生しているのと同等だと思います。

 

・使い勝手

ここはやはりHangout等に比べると若干落ちます。まずホスト側ですらあまり自由に再生を制御できません。プレイリストの再生と停止しかできないので、ちょっと面子がトイレいくから一時停止ね、とかもできない。止めたらまたプレイリストの最初からになります。クライアント側でポーズはできますが、それは当人のところで止まるだけ。Hangout等であれば画面共有しているホスト役の人が一時亭ししたりオープニングをスキップしたりも自在なので、ここは惜しいところです。

また、サーバー側でプレイリストをPlayingにしてないとクライアントからつなぐこともできないので、全員接続してから再生スタート、ということもできず、サーバーでスタートさせてからチャットなどで「よしお前らつなげ!」などと号令をかけるしかない。それでも頭の数秒は見損ねてしまうでしょう。プレイリストの先頭にダミーの動画を10秒程度入れておくと良いかも知れません。

そしてもちろんチャット周りについては何も機能がないので、SkypeなりLive Messengerなりを別途使うしかありません。まぁここはお互いがIDをもってて使いやすいものを選べるというメリットでもありますが。

クライアント側に再生ソフトをインストールしなければならない点も負担な人には負担ですが、まぁ今時QuickTime PlayerはiTunes入れてればほぼ強制的に入るし、VLCもフリーだし許容範囲ですかね。今回ネットカフェから参加した人もいましたが、VLCは再起動しなくて使えるので好都合でした(ネットカフェのPCはセキュリティの為、再起動すると全ての変更が巻戻る)。

惜しいのは動画にヒントトラックをつけないと使えない点ですね。我が家にある膨大なライブラリから「よし今日はアレ観ようぜ」とかいって即座に始められません。さりとて現状の利用頻度では全てのファイルにあらかじめヒントトラックを埋め込んで置くのはちょっと手間的にも容量的にも非効率。mp4bpxでの付加自体にはそう時間はかからないので、なにかバッチファイルなり簡単に一括付加できるフロントエンドツールなどを作っておくといいんでしょう。

 

・安定性

やはり途中何度か映像が乱れたり音声が途切れたりということがありました。もともとストリーミングを意識してエンコした動画ファイルではないので、仕方ないかも知れません。感覚的にはやはり動きが激しくビットレートが高くなるところが不安定になってた気がします。たぶん可変ではなく固定ビットレートにすると良い気がしますが、普段使いの画質を優先するかトレードオフですね。1~2Mbps程度の動画で光同士ならほぼ無問題、WiMAXでたまに不調、一番ヒドいのは某ネットカフェから参加した人、って感じでした。一度乱れだしたら、軽く(数秒?)ポーズして先読みを進めてやると良いとか、それでもダメなら再接続が確実っぽかったです。

またどうしても接続後数秒(最初のIフレームまで?)は乱れまくります。

あと、プレイリスト上の動画ファイルをまたぐ時に、次のファイルが正常に再生されないという現象が何度か出ました。出る時は全員なのでサーバー側、それも個別のファイルの問題な気がします。ちょっとまで原因がつかめてないですが、こうなったら再生を止めてプレイリストを編集して前のファイルを消し、そのファイルを先頭にして再スタートさせるしかないみたい。

サーバー自体はエンコードなど負荷の高い処理をするわけではないので、余裕っぽいです。特にファンがうなりをあげるようなことはなかったです。>Mac mini Server 2011(Core i7)

 

とまぁ、こんな状況でアポイントの数時間前から突貫で準備を始め、なんとか4人で6時間に及ぶ動画視聴マラソンを楽しく実施することができました。

「Darwin Streaming Serverを試す」への2件のフィードバック

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