3Dプリント造型物に適したフォント選びと限界サイズテスト

3Dプリント品に文字を入れたいことはちょいちょいあります。凹または凸モールドで刻印したり、AMSで色をかえたり。「ON/OFF」のような操作や位置を示したり、最近だと使用したフィラメントの種類(PLA/PETG/ASA等)を入れておくと便利です。

そんな時に使うフォントを決めておきたいというお話。Fusion上で文字を入れて押しだしをする場合、結構な数のフォントはエラーになって使用できません。調べても原因はよくわかりません。.ttfや.otfといったフォーマットの違いでもなさそう。もちろんIllustratorなどでアウトライン化してsvgなどでインポートすればいいんですが、面倒くさいので除外。

第一要件はFusion上でそのまま押し出しコマンドが適用できること。

次の優先事項としては、「小さくしても線が潰れたりせず読めること」です。そのためにはゴシックというかサンセリフ系の飾りが少ないシンプルな字体が良いかと思います。かな漢字はそこまで使用頻度が高くないので、一旦英字のみで考えます。

FDM 3Dプリンターは鋭角コーナーがあるとヘッドの速度が落ちるので、丸っこい字体がいいかも知れませんが、そこはまぁおまじない程度のものかなと。

元々PCに入っていたものでいうと、BahnschriftとOCR-BがFusionでも押し出せてヨサゲ。

■Bahnschrift (Fusion OK)

Bahnschrift(発音はバーンシュクリフト?)はDIN(ドイツの工業規格。日本でいうJIS)フォントという道路標識などに使われる字体が源流でWindows標準で入っているので、なにも考えずにさっと使えるし、プロジェクトファイルを共有するにも面倒くささがなくてヨサゲ。シンプルで大文字の視認性が良いのがありがたい。

■OCR-B (Fusion OK)

OCR-Bは後から自分で入れたものだったはず。文字通りOCR(機械読み取り)用に作られたもので、結果的に人間からしても視認性は上々。Adobe FontsにあるのでCC契約してればインストール可能。EPSONも配布しているようだけど、ライセンスは不明。同社のプリンターユーザなら使用可能?

■WIP MARKS (Fusion NG)

一応探してみると、やはりといういか3Dプリンターで使うことを想定したフォントといものも既にありました。例えば、BOOTHでkj_makingさんが頒布(個人無料/商用500円)されているWIP MARKSです。WIPはWorking In Progress(開発途中)の意味のようなので、最終的にはMARKSという名前になるのかも?STLにした時のデータ量を小さくするのが目的らしく、かなり直線的な字体です。また整列などもしやすいよう文字高が揃えられているそう。かなり小さいサイズで実際に造形してテストされているのが好印象です。ただしトップ面に凹文字はあまり綺麗に出ないと作者自ら書かれてるのが気になる。トップ凸、サイドなら凹凸共に良好とのことですが。これが他のフォントと比べてどうなんだろうというところでしょうか。早速試してみましたが残念ながらFusionで押し出しはNGでした…

■Osifont (Fusion OK)

次にRedditで見つけたスレッド「Give me your favorite fonts to 3d print!(3Dプリント向けのお前らのお気に入りフォントを教えてくれ!」も色々寄せられていました。その中でPrintables.comにこれまた実際に3Dプリンターで造形したものを比較してTier付けをしてくれたポストがリンクされていました。おっとこれは有用。Tier SにランクされているのがOsifontOverpass。Overpassの方がわずかに好みでしたが、OFT形式でFusionでは押し出しNGでした。

このTier表でいうと、OCR-BはTier B、Bahnschriftの源流であるDINはなんとTier Cだそうです。

■造形してみた

実際に造形して比較してみました。

プロファイルはもっともよく使う「0.2mm Standard」。フィラメントはELEGOO PLA RAPIDの黒。

なぜかBahnschriftは不安定でした。同じスケッチ面に描画してるのに、なぜかベース面から距離があいて押し出してもベース面と結合しない。わざわざ0.01mm下げてやらないとならない、みたいな。それでもEとFはくっついてくれず諦めました。また、その問題のE,Fの他にAなども糸引きのように無数の線が発生。これがFusionで問題となる「パスが閉じていない」という状態なんでしょうか?でもAは普通に結合できるのが謎。

ともあれBahnschriftのE、Fは諦めてスライサー(Bambu Studio)へ。個人的によく使う文字高5mm、刻印の深さは0.3mmで、左が凸刻印、右が凹刻印です。トップ面のアイロンも無し。

プレビュー時点で、Bahnschriftは線や内部の〇が欠けてしまっています。「A」の横棒とか「9」の中の〇が出なさそう。osifontとOCR-Bではosifontの方が文間が狭く、より狭いスペースに配置できそう(文字高も違う?)

実際に造形したものがこちら。

凸はosifon、OCR-B共に良好。凹は欠損はないけど周囲の造形線が影響してかなり読みづらいです。パターンを変えたりアイロンをかけるとマシになるかも知れません。

次にフォントをosifontに絞って、サイズの限界値を探ってみました。上のが5mmなので、4/3/2/1.5mmで、凸と凹で。

凸の方はスライサーの時点で3mm以下は消失。Boldにしてもダメでした。凹の方は割と粘ります。

立ててみるとこんな感じ。凸は4mmでも擦れ気味。凹は3mmまでは欠損なさそう。

凹のサイド面を積層ピッチ0.12mmで造形してみました。

小文字は0.3mmが限界ですが、大文字と数字だけなら0.2mmも辛うじて、というところ。材料表示など「目をこらして読めればOK」みたいな表示であれば、0.2とか余裕もって0.25~3mmくらいはアリかな。

ノズルを0.2mmにするとかなり改善します。凸は2mm、凹は1.5mmも一応造形はできそう。

■まとめ

字形が好みなBahnschriftは残念ながらトラブルが多そうで除外。osifontが狭いスペースに書き込めるので良さそうです。スライサー上でのシミュレーションで見る限り、限界値はこんな感じになりそう。実際にはフィラメントや色、アイロン有無、積層ピッチ(レイヤー高)でも視認性が違ってくるでしょうが、とりあえずきちんと形が造形される限界値の目安として。

トップ面凸トップ面凹サイド面凸サイド面凹
0.4mmノズル5mm3mm5mm2.5mm
0.2mmノズル1.5mm1.5mm2mm1.5mm

特にサイド面は積層ピッチで縦方向の解像度は大きく変わります。スライサーのプレビューを見ながら微調整するのが良いでしょう。

また今回はFusion上で描いています。もしかするとスライサーのテキスト機能でやったら違う可能性もあります。

凹凸の選び方については、基本凸だと寸法に影響でるので凹の方が無難ですが、トップ面については造形線が縁取りのように出てしまって表面が荒れるのが悩ましいところ。可能であればサイド面の凹刻印が無難そう。凸でも0.3mmくらいならなにかをスライドして接合する面でもない限り実害はないと思いますが。

[3Dプリント] プリンターのLEDが眩しいのでカバー ~3Dスキャナで曲面形状を採取する

最近、3Dプリント販売品を発送するのにクリックポストのラベル印刷をすることが増えたので、使用頻度が低いので都度電源を落としていたレーザープリンターをスリープ待機させることにしました。プリンターはネットワーク対応のLBP6240です。

ただこのモデルはスリープ中でも高輝度の青色LEDパワーランプが煌々と光っており、寝る時にウザい。パーマセルテープとかで完全に塞いでもいいですが、一応電源が入っているか確認できた方がいいので、3Dプリンターでほどほどに減光するカバーを作ることに。

しかしこのLEDがついているパネル部位はサイドに向かって湾曲しており、単にLEDの外径を元に円柱で押し出すだけではビタ付けができない…

完成したカバーを貼り付けた状態

そこで、3月に買ったばかりの3Dスキャナ、RevoPoint POP3でフロントパネル形状を読み取り、それに沿った背面形状をモデリングする手習い。

スキャンする部位が小さいのでスキャナを動かすまでもなく一発撮りできるし、色も白なのでハードルは低め。練習にちょうどいいかなと。実際にはLED自体が消灯でも点灯でもあまり綺麗にとれなかったですが、フロントパネルの曲面はしっかりキャプチャできたのでヨシ。

RevoScanで読み取ったテクスチャ付きデータ

RevoPoint専用ツールのRevoScanから.3mf形式で書き出し、Fusionに取り込んでボタン背面を削り取ったのがこちら。なおソリッドモデルをメッシュモデルで直接削り取ることは(たぶん)できないので、メッシュモデルに沿ってスケッチで線をなぞってソリッド化しています。今回はパネルが一時曲線なのでサクっとできましたが、上下にも左右にも湾曲している形状だと更に大変。この辺りはもう少し修行したいです。

ともあれ、できあがったのがこちら。曲線のフィット感はバッチリでした。

光の透過具体(部材の厚み)を少し試行錯誤して完成。

このプリンターも2016年購入でもうすぐ10年選手(発売は2014年)。公式にはWindows8.1位でサポートが止まっていますが、普通にWindows10/11でも使えてるので、まだまだ現役で使えそうです。

仕事でA4ドキュメントを印刷することはほぼないので、A6のラベル用紙をメイントレイにセットしてクリックポスト宛名印刷専用機となっていますが、、

X1-CarbonのPTFEチューブ交換記録、Modパーツ装着

BambuLab X1-Carbon Combo(以下X1c)を導入して1年3ヶ月。消耗品であるPTFEチューブ他、消耗品を交換したのでメモ。

■PTFEチューブ交換

要所要所でフィラメントを通しているPTFEチューブですが、摩擦ですり減るので消耗品とされています。摩耗しているとスムーズにフィラメントが送れず詰まりの原因となるようです。一概にどれくらいという指示は見当たりませんが、コネクタの抜き差しをするところの変形などが気になったので交換することにしました。

情報画面によると総プリント時間は1,738時間となっています。公式情報ではないですが、ChatGPTさん曰く、

  • 一般的には 500〜1000時間 程度の印刷ごとに点検するのがおすすめ
  • 高温フィラメント(例えばABS、PC、PA、CF混合素材など)を多用する場合は、摩耗や変形が早く進むため 300〜500時間 くらいでの点検を推奨
  • 交換の判断ポイント
    以下の症状が出ていれば交換した方が安心です:
    ☑ フィラメントの抜き差しが固い・引っかかる
    ☑ チューブの内径にスレや削れが見える
    ☑ チューブの先端が焦げていたり、変形している
    ☑ ノズル詰まりが頻発する
    ☑ 弾性フィラメントの押し出しが不安定

とのこと。-CFフィラメントも時々使うことも考えると、充分な時期は来てるというかむしろ遅いレベル。またノズル詰まりも頻繁に発生しています。こういうアナログ的な消耗は明確に発生を認知しづらいので、1年とか決めて定期的に交換するのが良さそうですね。

交換用のPTFEチューブは公式ストアで販売されています。別に市販品でも内径と外径だけ揃えばいいんでしょうが、公式のは機種毎に必要な長さにカット済みだし安心感を買う意味で公式サプライを購入しました。X1c用は送料別で680円。なにかのついでに買うのが吉ですね。交換手順も公式Wikiに動画が掲載されています。バッファー部分のチューブ交換は本体背面にアクセスする必要があるのでぎりぎりスペースに設置している我が家ではちと大変でしたが、作業自体は10分ほどで終わりました。

これでフィラメント送出トラブルが減るといいな。

■スティック糊の買い換え

BambuLabプリンターには2種類の糊が付属してきます。固体のスティック糊(ビルドプレート専用スティックのり)と液体のり(ビルドプレート専用液体接着剤)です。正直使い始めた当初は2つある理由はわかっておらず、塗りやすさから液体のりを中心に使っていましたし、そもそもビルドプレートのメンテナンス(洗浄)の手間を惜しんで、どうしても定着しない時以外なるべく使わないようにしていました。特にスティック糊は粘度が高くフラットに塗り広げるのが面倒でほとんど使っていませんでした。

ただやはり2つあるのにはそれなりに理由もあるらしく、接着力の液体糊、剥がしやすさ、洗いやすさのスティック糊という感じっぽい。ABS/ASA/PCのような高温素材では液体糊の接着力がないと剥がれて反りが発生するが、剥がしが大変だったり、乾いてしまうと除去が大変。PLA/PETGくらいならスティック糊くらいの接着力が剥がしやすさとのバランスも考慮すると適当らしい。

ただスティック糊はダマになりやすく底面の荒れにもつながるのでChatCPTさんに相談したところ、「そりゃスティック糊が劣化してるわ」という回答。公式では24ヶ月となってますが、ChatGPTさんは12ヶ月で使い切るのが良い、と。まぁ保管環境によっても違ってくるんでしょうが、とりあえず1年経っているので買い換えてみることに。そもそもPLA/PETGだとそこまで反りに悩むことはないですが、今後はこういう観点で使い分けていってみようかと思います。

あと送料無料条件を満たすのに購入アイテムを詰むのに、安い糊製品は便利だったり。単価でいえばAmazonなんかで社外品を買う方が安いかもですが。

■BIQUのワイパーとプープ詰まり防止プレート

みんな大好きBIQU(Panda)のBIQU Purging Reliability Improvement Upgrades Multi Material Printing Enhancement Kit for Bambu Lab P1/X1 3D Printersという社外アクセサリ製品を導入してみました。

同じくX1cの消耗パーツとしてノズルワイパーがあります。フィラメント交換時にノズル先端を擦り付けてゴミを除去する部位で、X1cでは1cm程度の短いPTFEチューブを使ったローラーのような構造になっています。ノズル先端に前の色のフィラメントが残ってたりすると造型物に意図しない色が残ったりするので、確実に先端を綺麗にするのは重要です。これがA1やH2Dなど後発モデルではシリコンのブラシになっています。MakerWorldなどでこのA1用シリコンブラシをX1cのノズルワイパーの代わりに取り付けるモデルがたくさん公開されていて、自分も2つほど試してみたいんですがどれもイマイチでした。微妙に干渉してエクストルーダーが引っかかったり、PETG程度ではノズルの熱で溶けてフィラメントくずと溶着してしまったり。結局純正ノズルワイパーに戻してたんですが、BIQUで完成品のPanda Brush PXが販売されていたのでゲット。さすがの精度でぴっちり取り付けでき干渉もないです。またアルミ製なので熱で溶ける心配もナサゲ。予備のシリコンブラシも付属しています。MakerWorkdのモデルはもともとのノズルワイパーを固定している小さな小さなネジを外して組み付ける方式がほとんどで、ウチのように天面ガラスにAMSが載っていて全開放できない状態では作業性がとても割です。うっかりネジをパージシュートに落として、慌ててプープの山を探したり。その点、Panda Brush PXは横からスライドしてはめこむだけなのも良き。元のワイパーのネジはドライバーで外す必要ありますが、今後シリコンブラシを交換する時には工具無しでできると思います。

またセット商品で、パージシュート(プープを捨てる穴)にプープが貼り付くのを防ぎ、確実に背面から排出するための金属板Panda Purge Sheld付き。確かに、このパージシュートの手前面にちょいちょいプープが貼り付いて排出エラーが出ることあるので、良いかも!と。

MakerWorldで部品を作ってもA1用シリコンブラシを公式で買うと500円くらいするので、それも差し引くと、これらのセットが2,000円程度ならコスパも悪くないかなと。

■まとめ

1,700時間時点でメンテナンスとして消耗品パーツを交換/アップグレードしました。

世の中はH2Dが話題で、個人的にもデュアルエクストルーダーは魅力ですが、お値段的にも設置場所的にも当面は厳しいので、X1cはまだまだ活用してきたいと思います。

カッティングマシンを15年ぶり新調 Silhouette Portrait4 ~ クラフトロボからのデータ移行も

十数年前の2009年にこちらのカッティングマシン(カッティングプロッター)を購入。

その後、死蔵していたのですが同居人が業務で活用できそうということで、サポートの切れた10年後の2019年にWindows10環境でどうにか動かす方法を模索したりしました。

その後、同居人はバリバリ活用していて、生産完了した今でも予備機機や消耗品であるブレード(カッター刃)をフリマで出品される度にゲットしたりしていましたが、いつ使えなくなるかは不安に感じていました。

そんな中、自分も3Dプリンター造形品を作ったり売ったりするようになり、その貼りつけ用に両面テープを精密カットしたいニーズが出てきたので、改めて現行品の再導入を検討することに。

自分と同居人の用途、ニーズは若干違っており、

  • 両面テープがカットできる
  • トンボ印刷による位置合わせができる
  • できればPCレスで使用したい
  • サイズはA4で足りる

というのがありました。

両面テープは1mm前後のやや厚めの基材を使用したものを使いたい。よくガジェット製品についてくる3Mとかの少しクッション性のあるヤツ。あぁいうのを自分でカットしたいという感じ。ウチにある16年選手の我が家のCraftRobo C330-20では多分対応したブレードが入手困難だし、下手に今あるブレードを使ってダメにしてしまったら同居人も巻き込んで困ったことになります。

トンボ印刷とは、ステッカー印刷などでプリンターで印刷したものをカッティングマシンでカットするといった場合に、正確な位置合わせをするための手法です。印刷データの用紙外周に目印となるトンボを印刷しておき、カッティングマシンが内蔵スキャナでそれを読み取りトンボからの相対位置基準でカットを実行します。これがマスト。

また同居人が業務で作成するステッカーの形状は数パターンだけなので、CraftRoboではSDカードにテンプレートデータをコピーしておき、本体液晶画面でそれを選んでカット実行をしていました。データ作成時にはPCが必要ですが、普段の運用はスタンドアローンなわけです。このスタイルもできれば継続したい。

そんな観点で現行品を眺めてみたところ、ブラザーの製品はタッチパネル液晶でファイルを選んでカットが実行できる一方、トンボによる位置合わせ機能があることは確認できませんでした。かわりにプリントや手書きした紙をスキャンさせてその外形を認識してカットする機能を売りにしています。それでも実現できそうな気がしますが、

  • 正円は画像認識で検出した境界線より正円のベクターデータで切り抜いた方が綺麗なはず
  • 同じパターンで複数シートを連続カットする時に効率が悪そう

といった理由で、トンボ方式の代わりにはならないなということでブラザーは除外しました。商品ページに書いてないだけで、あるのかもは知れないです。

■シルエット製品からのチョイス

ということでトンボ方式が使えると明示されているシルエット製品群から選択することにしました。候補に挙がったのはこれら。

たぶん主力ラインのカメオの最新世代。3mm厚まで対応。デュアルヘッドでカッターとペンなど2本のツールを同時差しして使い分けながらカット/描画/箔押しなどが可能。本体カラーは4色。

A4サイズまでに抑えることで小型化、低価格化したポートレート4。こちらは2mm厚まで。カッター/ペンも1本のみ。カラーはホワイトのみ。CrafRobo C330-20に限りなく近いサイズ感、機能と言えます。

ローラーで用紙を動かすのでなく、ヘッドをX-Yで動かすことで、厚みのある素材に箔押しやペン書きができるモデル。デカい。薄い紙を静電気で吸着するベッドも標準で一体化。

実際に三機種とも展示があるビックカメラ有楽町店まで見に行って決めました。箔押しなどのクラフトワークもちょっと興味あったのでキュリオ2もいいなと思ってたんですが、まーデカい。使ってない時も常時このスペースをとるのはちょっと無理だね、となりました。カメオ5とポートレート4は最後まで迷いましたが、当面のやりたいことはポートレート4でできそうだし、そこまで高くもないので、使ってみてまた不満が出たらアップグレードしても良いかってことでポートレート4をお持ち帰り。

廉価モデルながらロール紙も使えるし、別売りの静電気マットユニットもあるし、ヒートペンを買い足して箔押しもできるしと、なかなか妥協のない仕様になっています。サイズがA4で足りるという人ならそうそう不満は出なさそうです。

シルエット社の製品は本体に液晶画面がなく、CraftRoboのように単体でファイルを選んでカット実行するようなことはできないですが、どうやらBluetooth経由でスマホアプリからカットができるようなので、おそらくPCで作ったカット設定もスマホにコピーしておけば呼びだせるのではないかと期待(結果は後述)。

■CraftRoboのカットデータを読み込めた!

さて導入にあたって何はなくとも今までCraftRoboでやってきたことをPortrait4でもできるようにしなければなりません。これまでIllustratorで作ってあるステッカーのデザインオブジェクト(例えばA4の紙に円形ステッカーの図柄が6つ配置されている)+CraftRobo用トンボの.aiファイルと、それを元にCraftRoboの専用ツールRoboMasterで作ったカットデータファイルがあります。RoboMasterで編集できるデータファイルの拡張子が.gpd、それをプロッターで実行可能な定義ファイルにしたのが.gspです。SDカードには.gspファイルをコピーして使いますが、元となるファイルは.gpdの方です。なんとこの.gpdファイルが、Silhouette Studioというシルエット製品用のツールでそのまま読み込めたのです!

よくよく調べると、RoboCraftを設計販売しているグラフテック社(本社:神奈川県)は、米Silhouette America Inc.の親会社でした(あー、なんか以前にもどこかで認識してたかも…)。グラフテック社はRoboCraftこそ終息させましたが、業務用の大型カッティングマシンは現役で販売しており、ホビー向けのエントリーグレードを「シルエット」ブランドに移行したという形でしょうか。Silhouette America Inc.の子会社として日本向けの販社であるシルエットジャパン株式会社があるという構図のようです。なるほどそりゃトンボ機能なども共通して搭載してるわけですね。偶然にもCraftRobo C330-20からの移行先を求めて、実質後継機Silhouette Portrait4を引き当てたと言えるかも知れません。

ちょっと悩んだのは、Silhouetteアカウントを開設するともらえる1GBのクラウドライブラリに.gpdファイルをドラッグ&ドロップして登録しても、スマホアプリSilhouette Goからは見えない点。ライブラリ上では拡張子が非表示なのでわかりにくいですが、.gpdデータのままではスマホは開けず、一度PCソフトのSilhouette Studioで開いて保存しなおすと、拡張子が.studio3になって別名保存されます。その状態であればスマホアプリからも認識でき、もちろんスマホから選んで出力できます。懸念だった同居人の通常運用(既存データのカット)はスマホは必要なものの一応PCレスで実現できる運びとなりました。

トンボデータの打ち替えが必要かどうかはまだ未検証です。

ちなみに最後に実行したカットデータは本体内に保持されており、「もう一度実行」だけなら本体単体でもできるっぽいです。

クラウド経由でファイルを共有できるので、こちらでデータを作成して同居人に納品するという受け渡し作業もNASを介さなくてもスムーズにできるようになりました。

小さいメディア(用紙)の紙送りトラブルの回避策

同居人の運用データは移行がスムーズに移行できそうなので、あとは自分の用事です。こちらはステッカー用のシール用紙ではなく、少し厚みがある両面テープです。基本的には3Dプリント造型物に貼って出荷するので、ハーフカットではなくてもいいかもと思っています。まぁ半端にシートを使うとロスが多くなるので、シールだけ多めに作って在庫しておくにはやはりハーフカット(台紙まで切り抜かず元のシートのまま)が便利かもですが。

A4にびっしり敷き詰めるような数を一度に使うことはまずないので、少し小さめのシートを物色しました。とりあえずテストで買ってみたのは以下の2点。

3Mについでよく見かける気もするNITTOブランドの両面テープ。厚みはそれほどでないく、0.16mm。ナイスタックでいえば青色の強力タイプ(0.15mm)に近い厚みで、粘着材も同じアクリル系。青色は普段ももっともよく使っており、そのままシートタイプにしたという位置づけ。サイズはほぼA6。

もうひとつはA4しかなかったんですが、もうちょい単価が安いものを物色してこちら。

0.05mm厚なので、ナイスタックの赤(一般タイプ、0.09mm)よりもさらに薄い。0.08mmとも書いてありますが、おそらく剥離紙2枚を足すと0.08mmという意味?まったく知らない、おそらく中華ブランドでしたが、レビューもそれほど悪くないのでともかくコスト重視な場合用に。

あとは車載パーツの貼り付けなどに使うエーモンのNo.3930。

厚みが1mmもあり、基剤はグニっと柔らかいアクリルフォーム。滅多なことでは千切れないので、綺麗に剥がせる点が重宝します。単価はNITTO NW-5000NSよりも更に高いですが、なんだかんだでよくカットして使うので、これも切れたら嬉しいなと。

小さい用紙はローラーが送れない!?

Portrait4には紙送りのローラーが左右両端に2つ+その間に補助のバネ抑えが2つ。モーターで駆動するのは一番左の1つだけです。なので、小さいメディアを左のローラーだけで回すと、すぐに傾いてしまいます。メディアがナナメになってしまうと正しい形状にカットできるはずがなく、最初に試したエーモンNo.3930は惨敗でした。またカット厚の調整も上手くいかず裏側の台紙までカットが貫通しない。ちょっと高くてもったいないので一旦保留。

次にNITTO NW-5000NSです。これもやっぱり真っ直ぐに紙送りができず、「やはり小さい紙は粘着台紙を使わないとダメか?」と思い始めたんですが、よくよくメカをじっくり眺めると、ローラーが当たる金属バーの一部範囲に写真のようなザラザラした加工が入っている箇所があります。すごく目の細かいおろし金みたいな。左右端と真ん中辺りの三箇所に、それぞれ幅4cmくらいんも区間がこうなっています。

もしやと思って、左端のローラーをこの区間にあわせてみるt、、

ローラーがザラザラ区間に載る位置に調整

ばっちりローラーが紙を噛んで真っ直ぐ紙送りできました!A5級のメディアを使う場合、横置きにして右端がこのザラザラ区間にかかるようにしたらよさそうです。

2026.6.15追記:

何度かやってみましたが、やはり小さめの用紙送りには難がある気がします。だんだんナナメになっていきます。A4などの用紙を使うのが無難かもしれません。

試しに小さい3Dプリントパーツを貼り付ける様のシールをカットしてみました。コの字状で1辺の太さはわずか2mmの形状です。ピンセットでないと貼れないレベル。これを人力でカッターを使って切るのもなかなか大変ですが、この通り。時間的にも10秒程度なので量産も軽々。

カット設定はプリセットの「両面粘着シート」を使用。ハーフカットではないですが、厚みがあるので意識して取り外さない限りはシートにはまったままという絶妙な切れ具合。両側に剥離紙がついた状態で切り抜けるので、貼らずにそのまま添付品として同梱することもできます(予備用とか)。

実際に貼り付けた様子がこちら。まさにこれがやりたかった!

わかりにくいですが、上の直線パーツは上辺の両角がナナメに切り落としてあるんですが、そこもきっちり再現されています。

このギザギザを意識してセットすればエーモンのNo.3930シートもいけるかも?追々試してみます。

Silhouette Studio無課金版だとSVGが読み込めない!?

Silhouette Studioはマシンを買えば無料で使用権がもらえますが、一部の機能は追加課金でアップグレードしないと使えません。その中でも割と申告なのがベクターデーター形式である.svgのインポートができない点。JPEGやPNGのビットマップを読み込んでトレースして切り取り線を決定することはできますが、Illustratorなどのベクターツールで綺麗な正円などを描画してその通りに切り抜くにはベクターデーターのままエクスポート/インポートしたい。もちろん.aiファイルも非対応な上に、ベクターデータの近年の標準である.svgを封印するとは…

別途Silhouette CONNECTというIllustratorのプラグインとして機能するツールもありはするのですがこれも5,500円の有料…

などと「グヌヌ…」となっていたのですが、私が3Dモデリングに使用しているCADツールのAutoDesk Fusionではスケッチを直接右クリックから.dxf形式(Autodesk RealDWGフォーマット)で書き出すことができ、それならばSilhouette Studioに読み込めることがわかりました。しかもIllustratorもdxf書き出しができる!

ベクターデータのやりとりには.svgにこだわらず.dxfを使っていけば問題なさそうです。上のコの字パーツのデータもFusion上で3Dモデルからおこしたスケッチを.dxfに書き出し、Shilhouette Studioにインポートしてカットしました。

2025.6.15追記:

.dxfで読み込む際の問題点として、インポート時、Studio側で用紙サイズ一杯にリスケールされてしまう、というものがありました。Illustrator側でエクスポートする時にスケール設定をしても効果なし。.dxf形式には絶対サイズ情報が含まれないのでこういう仕様のようです。幸い縦横比をロックしておいて正しい縦か横のサイズをボックスに入力してやれば補正は可能ですがひと手間ですね。複数オブジェクトの場合は先にグループ化しておけば大丈夫そうです。.svgであればこのような手間もないのかも知れません。

また、FusionではなくIllustratorで.dxf書き出しをする際、2018形式だとエラーになることがあり、2007など古いフォーマットを指定すると書き出せました。ただその後試したら2018でもエラーでなかったりとちょっと謎です。

■まとめ

3Dプリンターで造形した出力物を貼り付けるのに、貼り付け面形状にあわせたカット済み両面テープを綺麗に作成したくて久しぶりにカッティングマシンを導入しました。

  • 想定通りに綺麗にカットできた(1mm厚で柔らかいアクリルフォームのものは要追加検証)
  • RoboCraftのデータ形式とも互換性があり最低限の操作で引き継げた
  • Bleutooth接続したアプリでファイルを選んでリピートカットも簡単

と期待通りの働きをしてくれました。カッターなどの消耗パーツもしばらく入手に不安を覚えることはないし、最新のWindows11などでもサポート付きで利用できます。当時CraftRobo C330-20が2.3万円、今回のSilhouette Portralit4がポイント還元で実質2.7万なので、16年ぶりの物価高も加味すればほぼ据置きのお値段で買えて満足です。

人力では綺麗にカットできないような複雑な形状の粘着シートも作り放題なので、3Dプリント品の商品力向上に貢献してくれるでしょう。また機会があれば箔押しなどにもチャレンジしてみたいと思います。

[3Dプリント] Sesame Face用クイックハック2点

Sesameフェイス(以下Sesame Face)は概ね順調に使えていますが、ちょっとだけ不便なところがあったので3Dプリンターでサポートツールを2点ほど製作しました。

■施錠ボタンを押しやすくする拡大カバー

Sesame Faceはサイドに施錠ボタンが装備されました。Sesame Touchでは「登録されていない指で指紋センサーにタッチする」必要があり、認証失敗を踏む必要があるので若干タイムラグがありました。

Sesame Faceは物理ボタンになってノータイムでロックができスムーズに外出ができるようになっています。ただ、このボタンがいささか小さく狙って押すのがややストレス。特に夜間の薄暗い玄関だと手探りが必要になります。

そこでボタンサイズをちょっとだけ拡大するカバーを作ってみました。

色もあえて派手めのフィラメントを使って目立つようにしています。

■NO.00(PH00)ドライバーL字アダプタ

Sesame Faceのスライドバックプレートには小さな固定ネジがついており、両面テープでドアに貼り付けたベースプレートとがっちり固定することでスライドできなくし盗難しづらくすることができます。

ただプレートの厚さ内に抑えるため、

  • ネジがとても小さい(No.0/PH0相当)
  • ドアにビタ付け

となりとても回しづらいのです。

アネックス(ANEX) 精密ドライバー +0×75 No.3450

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それでも通常はこのような細身のドライバーを使えば問題ないのですが、我が家では更に困ったことに2つ上の写真のように凹んだガラス面に取り付けていて、右方向にクリアランスがなく、長いドライバーだと入りません

DAISOのメガネ用ドライバー(PH00)でどうにか締められたのですが、外すのが大変でした。細くて力が入りづらい上に、このドライバーは反対側がマイナスになっていてネジでフタになってるのですが、緩める時はこのフタ側も回ってしまうのです。あらかじめ外しておけばいいんですが、そうすると掴める箇所がかなり短くなります。入手性が良いので緊急用としてはいいのですが、何度も使ってるとネジをナメそう…

六角レンチのようなL字になったドライバーを探してみたのですが00サイズのものは見当たらず、仕方ないので自作しました。

・Ver.1 ビット使用タイプ

まず以前購入したこちらの精密電動ドライバーセットに含まれるPH00サイズのビットを流用するタイプ。

このビットは細身の六角タイプです。一般的な6.35mm(しぶいち)の六角ビットよりも細い太さ4mmのものです。単品で購入するとしたらコレでしょうか。

これを利用する形て作ったのがこちら。

リアにマグネットを仕込んで、ビットがピタっと吸い付くようにしました。

これでも若干軸が太くて手前に傾いてしまいますが、丁寧にやれば回すこと自体は可能です。

厚みが8mmあり、ドライバーの選択がΦ2mmなので、3mmほど奥にでっぱる形になります。3Dプリントなのであまり外周を薄くすると強度的にも不安なのでこれくらいが妥協点かなと思います。奥側に出っ張らないよう、オープンエンド(C型)レンチみたいな形状も考えましたが、やはり回す度に付け外しするのもそれはそれでビットを落としたりして不便そう。

あとストラップホールくらいつければ良かったなとも。

・Ver.2 ANEX 特小ドライバー流用タイプ

4mm六角の単体ビットも売っている様子がなかったので、もし今度同じお悩みの方に相談を受けた時に調達しやすい形にするため、こちらのドライバーをベースにしたバージョンも作成しました。

アネックス(ANEX) 精密ドライバー 特小タイプ +00×23 No.1030

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51円(08/24 12:11時点)
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写真ではわかりにくいですが、柄の太いところが六角、お尻側が円柱状になっています。この六角部分にトルクをかけて回す作りになっています。ドライバーの価格も安いので、接着してSesame Face専用にしてしまっても惜しくないです。

ただ残念ながらこちらはメガネ用ドライバーと同じNo.00/PH00サイズの製品しかなく、回せなくはないけど、ちょっと気を遣う感じ(しっかり差し込まないとネジを舐めそう)。

・Ver.3 ビット使用タイプ改良版

ということでVer.1のビット使用タイプに回帰。できるだけギリギリまでドライバー先端を真っ直ぐにネジに当てられるように、フロントを後方にオフセットし、傾斜もつけてみました。

またできるだけ回転角をかせげるように、ベタ付け状態でも指を入れて持ち上げやすいよう、持ち手の部分を長方形から六角形に変更(3Dプリンターの特性として円柱よりは六角形の方が綺麗に出せるという事情がありあえての六角形です)。

ネジ自体が小さいので楽々とはいきませんが、丁寧にやればしっかりナメずに締めたり緩めたりできるようになりました。

BOOTHに出品しておきます。BOOTHアカウントがなく直接取引をご希望の方はコメントにて。