玄関ポーチライトの制御をSwitchBotからSesameボット2へ移行

玄関ドアの外側の屋根のある部分(以下ポーチ)の照明をIoT制御したいと思って、クラウドファンディングで買って余ってたSwitchBotを使っていました。壁スイッチはPanasonicのコスモワイドシリーズ21の3ボタンタイプで、そのままだとSwitchBotと相性が悪かったので、3Dプリンターで固定具を作りました。

しかしこれがどうも安定動作にもっていけず。設置時点で大丈夫そうだと持ってもしばらくするときちんとボタンを押し込めず。基本的にオートメーション機能で日没前に点灯し、日の出で消灯みたいな自動化をしてるんですが、スイッチは1つのトグルなので、きづくと点灯消灯が逆転していたり…

そこで、ついに重い腰を上げてSesameボット2に乗り換えてみました。こちらの方がアームの稼働(回転)範囲が広いし、ボディ外側に出ているアームを交換したりカバーパーツを付けたりもできるので、最悪でもまた3Dプリンターでオリジナルアームを作ってみたりできるんじゃないかと。ソフト面ではSesameアプリ単体ではオートメーション機能がなく自動化ができませんが、Matter対応なので、Google Home/Alexa/Apple Homeに登録すればそちら経由でなんとかなるだろうという目論見。

CANDY HOUSE キャンディハウス Bot 2 ホワイト

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(Sesame製品はAmazonoよりも公式ストアの方が安いことが多いのでご注意ください)

早速3Dプリンターで固定具を製作

CGの左がSwitchBot用、右がSesameボット2用です。Sesameボット2の方が若干フットプリントが小さく、さらに両面テープが貼ってある部分は小さいので、固定プレートは小さめ。アームの位置も異なるので位置もかなり下がります。これでも3連の一番上のスイッチの真ん中あたりを押す想定です。

実際に取り付けた様子がこちら。

レイアウト的に3つボタンそれぞれに3台のボット2を配置するのは難しそうですね。左側に配置して引っ張るアダプタをつけるとかですかね。

BOOTHにも出品しておきました。匿名配送でやりとりしたい方はご利用ください。

・セッテイングには少しクセがある

SwitchbotとSesameボット2に大きな違いは、前者がアームを倒して戻すという往復動作をするのに対し、後者(本品)はアームを360°回転する仕組みです。そのお陰でモデルカーの車輪を回すみたいな応用も効くのですが、ことスイッチを押すという目的だと逆に少しまどろっこしく感じることも。

具体的には「0.x秒正回転」「0.x秒逆回転」みたいな動作を時系列に組み合わせて「台本」というもの作ります。角度ではなく時間で指定します。例えば今回のセッティングでは試行錯誤の結果、

  • 0.3秒回し、
  • 0.2秒戻す

という台本になりました。「おなじだけ0.3秒戻す」んじゃないの?と思われるでしょう。これが本品の面倒くさいところです(^^;)。まず本体を基準にした絶対角度で指定できません。あくまで今のアーム位置から相対的にn秒間回すことしかできないのです。回転速度は一定時間の通電である程度一定の角度を得られそうなものなんですが、それでもなんらかの外的要因でアームの角度が変わってしまうとアームがきちんとボタンを押しきらない、ということも起こりえます。手で回しても簡単には回りはしないのですが、ボタンをグっと押し込んだ後とかにノックバック(反動)で大きめに戻ったりしがち。そんなこんなで綺麗に毎回同じ動作を繰り返すということがそもそも苦手な製品だと感じました。

そんな中でどうにかやりくりをして見出したポイントが、

  1. 長めに回して確実に押す
  2. 押す力を緩めるくらいの意味でほんの少し戻すステップを入れてやると、あとは勝手に反動で戻る
  3. 本体の固定をしっかりする

という3つ。アームがどんな角度からスタートしても確実にボタンまで到達するように長めにします。すると当然早くタッチしてしまった場合も続けてグイグイ押し続けることになります。でもそうするしかない。この時、本体が負けて滑落しないよう3.のしっかり固定しておくというのが大事になります。そして充分な時間をかけてボタンを押したあとで、同じだけ戻すとまたアーム位置が不確定になります。その代わりに0.1秒という極短時間戻す動作を入れると押す力がふっと抜けて、ボタンのバネの力でいい感じに跳ね返されて、概ね一定の位置に戻ることを発見しました。

跳ね返って戻るという不確定な動作に頼るのは甚だ気持ち悪いのですが、現状上手くいきそうなのはこのパターンのみでした。

ちなみに公式も含めてググると「回転モード」みたいなのが選べる設定画面が出てきますが、これは初代ボットにあったもので、ボット2からは削除されているぽいです。あくまで、正回転、逆回転、止めるの組み合わせに秒数を組み合わせて「台本」を組むのがボット2です。

なおこの台本は0番から9番まで10本作っておけます(0番始まりなのがエンジニア脳な人が作ってるなという感じで微笑ましい)。後述のSesameリモートをペアリングした場合、解錠ボタンを施錠ボタンが0番と1番に紐付く様です(逆かも)。コスモ21の場合、ONとOFFの動作は同じなので、台本0と台本1には同じ設定を入れました。そして微妙な位置調整が必要になった時のために、台本2は「0.1秒(最小単位)戻す」だけのセッティングをしました。どうしてもボタンを押し込んだままの位置で止まってしまった、といった時に使うようです。台本2~9はスマホアプリからのみ実行可能ということになります。あと台本に名前がつけられずにあくまで0~9のどれがなんだったかはユーザが覚えておかないとならないのが残念。

とまぁ、いままで色々使って来たSesame製品の中ではちょっと設定回りが惜しい気がしています。それでもSwitchbotよりは確実にボタンを押して照明をON/OFFできてるので、今の時点では替えて正解だったかなと思っています。操作の反応もSwitchbotよりクイックな印象。あっちは「あれ?反応しなかった?もう一回押すか?」ってなるレベルで待たされることありました。

ともあれ、これから長期的に安定して稼働するかどうかは見て行きたいと思います。

外での点灯にはSesameリモートnano

玄関ポーチの照明をスマート化する動機その1は、「ドアの外からも点けたり消したりしたい」です。

SwitchBotにはリモートボタンという別売りアクセサリがありましたが、Sesameではリモートやリモートnanoが使えます。今回は小さくて安いリモートnanoを買ってみました。nanoは標準でストラップもついており、キーホルダー的に鍵束やランドセルにぶら下げて使うモバイル用の位置づけなんですが、ストラップは取り外せるようになっています。

CANDY HOUSE キャンディハウス Remote nano ブラック

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Switchbotリモートボタンの時と同じように玄関にある置き配棚(ルミナスラック)に固定する治具をこれまた3Dプリントで作りました。nanoの背面はフラットなので両面テープで貼り付けるだけの簡単なものです。背面パネルはスライドできる電池ブタになっていますが、これを貼り付けたままでも問題なく開けられます。

取り付けた様子がこちら。

モバイル用ということでフルサイズのリモートよりバッテリーが小さいため、普段はスリープしているようで、ボタンを押してからボット2が反応するまで若干待たされる感じはあります。こういう固定の使い方ならフルサイズ版の方が良かったかなと思います。まぁ今回はまだ持っていないnanoを買って採寸して色々なアクセサリを作ってみたいなという意味合いがあったので。そのうち耐えきれなくなったらフルサイズに替えるかもですが、今のところ耐えられないほどの遅延ではない気がします。

本来的な用途で、例えばスマホをまだ持たせてない子ども用とかには良い製品かなと思います。バッテリーは3~10年保つとのこと。電池はやや馴染みの薄いCR1632というサイズ。

難点としては、初期設定時以外に設定画面に入れないということ。一度設定をして画面を抜けると、次にまた設定画面に行くには、裏面のリセットボタンを細いピンで長押しして再度アプリで新規デバイス追加フローをしなければなりません。省電力との兼ね合いなのかアプリ側から設定を呼びだせないのです。名前を付け替えることすらできません。そして、このリセットのピン穴がまた小さくて刺さるものを探すのが大変、、安定運用が始まればそうそういじることではないとはいえ、初日だけでなんやかんや3回くらいリセットしました。

オートメーション機能が標準アプリにはない

玄関ポーチの照明をスマート化する動機その1は、「朝晩に自動点灯/消灯したい」です。

しかしSesameはもともとスマートロック製品なせいか、現時点で標準アプリ単体ではオートメーション機能がありません。やろうと思ったら、

  • Sesameハブ3経由で、Appleホーム/Google Home/AlexaにMatter連携する
  • Nature Remoと連携する

といった座組が必要になります。Nature RemoはSesameスマートロックやSesameボットの共有キー(QRコード)を使って直接紐付けするので、ハブ3を設置してなくても使えます。一方でたぶんBluetoothを使って通信なので、物理的にSesameボット2とNature Remoが離れている場合不安定になる場合があります(ウチでは警告が出た)。Sesameハブ3を設置して経由する場合、ハブ3とSesameデバイスがBluetooth通信して、ハブ3と他のスマートデバイスはIP通信になるので、Wi-Fiは有線LANを介して家中で安定通信が見込める、という違いがありそう(ハブ3の位置だけは留意が必要)。

我が家では全てあるんですが、なぜかGoogle Homeだけはエラーになって連携できず。今回はAppleホーム(HomeKit)がレスポンスも良かったので「ホーム」アプリでオートメーションを組みました。

ただいずれにせよSesameボット2は照明の物理ボタン(コスモ21)のON/OFFを識別できないので、各アプリが認識するON/OFFを実際の点灯状態は必ずしも一致しないという制約があります。人が手動でスイッチ操作したり、ボットによる押下に失敗したりするとアプリ上のステータスと反転してしまう必要があります。日の出や日の入りでオートメーションをしたら、極力人力で操作しないようにするなどの運用が必要です。またGPSなどと連携して「帰宅したら点灯」みたいなことももし最初から点灯していたら消灯させてしまう結果になるので、あまり上手くないでしょう。これはSwitchbotも同じなんですが。きちんと物理のON/OFFを連動させたければ、壁スイッチ自体をPanasonicのリンクプラスとかに置き換えるか、トグル式ではなくシーソー式のスイッチにするしかないですね。

リンクプラスは無線ブリッジまで含めると高いし、2スイッチモデルまでしかないのでちょっと我が家にはそぐわないんですよね、、

なおシーソースイッチにする場合は、アームセットに含まれるスイッチレゴアームを使う必要がありそうです。シールを貼って引っ張ってオフ動作をする感じ。あれ、でもこれアームの絶対位置を検知しないボット2の仕様だと、連続でONとか連続でOFFしたら簡単にアーム位置がズレでおかしくなるような??公式の動作イメージに載せてくくらいだけど本当に実現できる(実用になる)のかな?

いずれにせよ電気工事士の資格がないと触れない工事内容になってしまうので断念。

■まとめ

重い腰をあげて(オリジナルマウントが)動作不安定なSwitchbotからSesameボット2に移行して、とりあえずは安定して動作するようになりました。これで毎日定時にON/OFFされてくれれば毎日の手動操作からは解放されそうです。ただ日の出と日の入りトリガーだと少しタイミングとして不満があるので、季節毎に時刻を調整しつつ使って行く感じになるのかな?と思っています。

Starlink Miniのモバイルルーター化と実地テスト

山奥でStarlink Miniを使ってみたいということで、伊豆のグランピング施設に宿泊してきました。ついでに前から取り組んでいたStarlink Miniへのモバイルバッテリーマウントがようやく形になってきたのでこちらも実際にテスト。

Starlinkをケーブルレスで運用する

以前の記事でモバイルバッテリーを背面に固定したらケーブルレスで巨大モバイルWi-Fiルーター化できるんじゃね?といっていたアレです。

PD 100Wモバイルバッテリー、INIU P63-E1を固定するマウンターを3Dプリンターで設計、出力してみました。

バッテリーの厚みが突出していましたが、こんな感じでケーブルレスでStarlink Miniを起動できています。

上下分割式でフタを開けるとこんな感じ。

モバイルバッテリーからL字アングルを介してUSB-Cケーブルを出し、Starlink Mini用防水プラグアダプタにつながっています。使用したパーツはこちら。

Starlink Mini電源アダプタはAmazonになく、アリエクでこちら。ショートケーブルではない変換プラグもありましたが、形状的に上手く収まらず、ショートケーブルの方が融通きいて良かったです。

一応、右下側に有線LANケーブルを通せる穴も開けてあります。電源ランプが覗ける穴も。

Starlink Miniには電源スイッチがないので、モバイルバッテリーの電源ボタンを押せる穴もつけたんですが、小さすぎて指が通らずw。今度造形する時は修正します。

これで電源を入れたらあとは北向きに空を見渡せるところに置いて、Starlinkアプリで向きを確認して修正するのみです。

ただバッテリーの膨らみだけでは角度が足りず、結局標準スタンドを下にかましました。将来的にはなにかしらスタンド機構も持たせたいところです。

山の上だから施設付帯のWi-Fiの速度もたいしたことなかろうと侮っていましたが、普通に下り400Mbpsとか出てStarlinkイラネって感じでしたw。

Starlinkもアンテナ内でのスピードテストでは下り250Mbpsくらい出てたんですが、このテントが少し電波を通しにくい素材なのか、室内に入るといっきに速度が落ちて65Mbpsに(下写真)。

やはり有線LANで室内までケーブルを引き込んで、別のモバイルルーターでWi-Fi電波を飛ばした方が良さそうです。ウチで使っているのはこういうの。

ただ今回のテントは外から中にケーブルを通せる穴は見付からず、結局わざわざStarlink使う必要ないわということで1時間ほどで回収。バッテリー残量100%から使い始め、1時間8分ほどで70%でした。3時間くらいは稼働させられそうですね。ただまぁ衛星に向けての電波送信が電力食いでしょうから、上り通信が続く配信などの使い方ではもっと短い時間で電力を使い切る可能性も。

■まとめ

Starlink Miniが届く前からチャレンジしてみたかったモバイルルーター(ケーブルレス)化に一応の目処がつきました。課題もいくつかあって、

  • Starlink本体の設置角度が調整できる足をつける
    • バッテリーを足にすると残量表示窓のクリアパーツが設置してキズが入りそう
  • バッテリーの給電ON/OFFをできるよう穴を広げる→広げました
  • 内部のケーブルも固定したい
  • バッテリー部分に防水性がない
  • 外した時に電源プラグが一緒に抜けない→改善しました
  • バッテリーを充電するためにフタを開けなければならない
  • 斜面は3Dプリント積層痕が目立つので削るとか0.2mmノズルで造形するなどフィニッシュ作業

など。もう少し厚みを出せば色々捗るんですが、なんとなくこのStarlink Mini背面の斜面とつながったデザインが捨てがたく、、、

ともあれStarlink Mini側にフィットする土台モデルはできたので、またもっと良い形のPD 100Wバッテリーが見付かれば上積み部分をそれにあわせて改良してもいいかも知れません。

2025.06.09追記: 汎用モバイルバッテリー版

上記で使用したINUI P63-E1というモバイルバッテリーが一時期Amazonで在庫切れだったり入手性に不安があったので、特定のバッテリーに依存しない汎用カバーを作ってみました。

なんのことはなく、表面を低くフラット化して、USBケーブルを外に出す穴を開けただけですw。

穴はバッテリーの端子位置にあわせて好きなところからケーブルを生やせるよう複数配置しています。ただ無駄に全部開けてしまうのもなんだなと思って、必要なところをバキっと折ってあけられるといいなと思い、分割線だけ入れるチャレンジ。でも厚みのチューニングが難しくてまだ成功していません。これは使うフィラメント材料の強度にもよるので、あんまり現実的ではないかも。開けたい人はドリルでどうぞ、の方が逆に綺麗かな?

バッテリーの固定は両面テープでもいいし、脱着したいならベルクロ(マジックテープ)のバンドが通せるスリットを開けて締め付けるか、いっそMagSafe互換マグネットリングを装着して、MagSafeバッテリーがペタっとくっつくようにするのもアリかも?まぁ、PD100WができてMafSafeなモバイルバッテリーってあんまりない気がするので、微妙かな?

もしMagSafe化するなら、ケース側にこういう非MafSafeスマホやケースをMagSafe互換にするマグネット付きリングを貼って、

バッテリー側はこういうただの金属リングで良さそう。

もちろんMafSafeで給電できるわけでなくあくまでワンタッチ脱着のためですが。

Vブレーキ用(Panasonicハリヤ)用Sesameサイクル2アダプタを改良(Ver.3)

以前、ママチャリ用であるSesameサイクル2(自転車用スマートロック)をVブレーキであるPanasonicの電動アシスト自転車ハリヤ(2016年モデル)に取り付けるアダプタを製作しました。かこの経緯は以下の2記事に。

初期バージョン(Ver.1)

Sesame Touch対応バージョン(Ver.2)

ぶっちゃけ最近は自転車自体パンクを放置して乗ってなかったんですが、コメントで使ってみたいというご要望をいただき、改めて製作してみることに。せっかくなのでこれを機会にいくつか気になっていた課題も改善してみようと。

課題1: 埋め込みナットの強度問題

以前のバージョンではSesameサイクル2を固定するボルトの受け側として、埋め込み金属ナットを使っていました。下の写真のような部品を熱した半田ゴテでプラスチックを溶かしながらグニュっとインサートする手法です。

これでしっかりと金属ボルトを固定できるはずだったのですが、しばらくつかっていると、このナット自体が抜けてきてしまいました。アダプター側のインフィル(密度)が低かったのかも知れません。できるだけ強い力を掛けないようにしてましたが、振動のせいかわかりませんが、だんだんと緩んできて抜けてしまいます。

そこでブログには載せていませんでしたが改良版として下の写真のように受け部分(黒)をアダプター本体(青)と別体パーツにしました。意図としては積層方向をかえること。このアダプターは寝かせるように 造形するのでレイヤーが水平にできるため、ボルト方向に力が入ると剥がれやすいかなと。そこで黒い部分だけ別体でレイヤー方向が垂直になるように作っていました。

一応これにしてから破損することなく使えていたんですが、アイデアとしては「そもそも埋め込みナットやめて、長いボルトを貫通させて裏側にナットつけて両側から締め付ければいいんじゃね?」というのを思いついて、モデルまでは作ってありました。

今度破損したらこれで作り直そう、と思ったまま寝かせてあったので、今回あらためてこちらを試そうと。造形的には1パーツで作れる方が楽ですし。

課題2: 材質と耐候性

3Dプリンターでもっともメジャーなフィラメント素材はPLAですが、難点として熱に弱いというのがあります。60℃くらいでかつ荷重がかかっていると割と簡単に変形してしまいます。上記の青いのはPLA-CFというカーボンフィバーを練り込んで強化した素材だったんですが、今回あらためて外して眺めると軽く歪みが出てきました。

耐熱、耐紫外線などの耐候性の面ではABSやASAがあります。ABSは造形が大変で匂いがキツいというので我が家では未導入。それよりは匂いがマシというASAは使ってるんですが、これが調整が難しく、どうしても表面が綺麗にならずにダマができてしまいがち。ペーパーでヤスって平らにするも今度は黒い色がしらっちゃけてしまい、更に塗装したりと仕上げにかなり手間。

そこで今回は同じく屋外に向いているという高速PETGを採用。曰く、

「高速 PETG は、通常の PETG が持つ強度を維持し、水、紫外線、極端な温度に対する優れた耐性を提供します。PLA よりも丈夫で耐久性に優れており、プランター ポット、鳥かご、水やり缶、自動車部品などの屋外用アイテムの印刷に最適です。さらに、フリスビーやブーメランなど、長期間の屋外使用や衝撃、衝突、落下に耐える必要がある屋外用玩具にも適しています。」

とのこと。実際表面はかなり綺麗に仕上がりました。PLAには及びませんが、ヤスリ掛けまではギリギリ必要無いかなくらい。

課題3: Sesame Touch固定のラッチ機構

上部にSesame Touch(指紋センサー)をとりつける部分があるのですが、上記の青い世代のものはレールの固さだけで固定してました。それがしばらく時間をおいたらガチガチに固着していて外すのに苦労しました。ハンマーで叩いたレベル。

本来はハンドルベース側に小さな突起がついていて少しだけ引っ込むバネ構造になっていてカチっと固定するようになっているので、その構造の再現にチャレンジ。もちろん金属バネを組み込むのは部品管理上手間なので、3Dプリントできる樹脂だけで実現すべく挑戦。

下の白っぽい部分がそれです。別パーツとして造形し差し込んで接着剤で固定しています。

Sesame Touch固定ラッチ
断面図

一応パチっと鳴ってはまるようにはなりましたが、正直強度とか保持力みたいなところは今後モニタリングが必要です。走行してるうちにTouchが緩んで落ちてしまわないかは不安です。

ちなみにSesame Touch単体だけでなく、別売りのタッチホルダー(自転車用)が必要になります。

完成したVer.3

そんなこんなで完成したのがこちらのVer.3です。

ボルトとナットはちょうど手頃なセットがなくて別々に買って組み合わせています。M5で30mmで六角4mmが使えるモノ(自転車いじる人ならHEXレンチの方が都合が良いですよね?)。ナットは別のボルトナットワッシャーのセット商品から取り出しています。

このマウントアダプターにSesameサイクル2をとりつけた状態がこちら。

裏のナット穴側はこんなです。

ボルトの長さが足りなくてナット穴を深めにしてしまったので、締め付けがちょっと大変になりました。この向きにしてナットを先に入れ込んで、下からボルトを差し込んで締め付ける形。

たぶん先にこの2つを合体させておかないと、Sesameサイクル2を最後にとりつける形だと、ナットが重力で落ちてしまうので大変だと思います。もっと長いボルトが調達できるなら、ナット穴をもっと浅くして指で押さえながら締め付けられるようにすればいいかもなんですが、手近なホームセンターでは30mmまでしか売っておらず。

今回は先にこの2つを組み付けたあとでまとめて自転車に取り付けます。なお、このアダプタを自転車のVブレーキ部分に取り付けるのは元からついているボルトで共締めにします。こちらは六角5mmレンチ。同じレンチが使えると楽なんですが、Sesameサイクル側のボルト頭が大きくなると干渉しそうだったので、、

取付時にはマッドガードに若干干渉しますが一度通過してしまえばギリギリ触れないで済むと思います。この辺りは自転車のモデルや年式によっても違うと思うので、今は自分の2016年式ハリヤ基準です。ご要望いただいた方の年式が微妙に違うので、実際にマッチングしてもらって必要なら調整していこうと思います。

今後、長期的に

  • 解錠/施錠がきちんと機能するか
  • ブレーキの動作に支障がないか
  • Sesame Touchの固定が緩んでこないか
  • アダプター全体が屋外放置で変形や劣化していかないか

などをモニタリングしていきたいと思います。ASAで作った試作品もあるので、どちらも日当たりの良いところに吊しておこうかな。

ハリヤ2017年モデル対応

ウチの2016年式とは違う2017年モデルにお乗りの方からご要望いただいたのでお送りしたところ、そのままでは合わず、Sesame受け部分を2cmズラして欲しいとのことでしたので、以下のバリエーションを作ってみました。

これで取付できたとのことです。やはり年式で結構違うものですね。ちなみに写真左のようにSesame受け部分を接合せずバラで造形してお送りし、どの位置が適正化探ってもらうようにもしたのですが、今回は不要でした。

今後また別モデルでお問い合わせがあった際にはこういう検証用バラモデルもお送りしようかなというところです。これで理想の位置を割り出していただきその数値を元に改めて一体版を作るという感じ。またSesame Touch取付部分も写真のように簡単に有無を選べるので、不要な方はスッキリデザインでお使いいただくことも可能です。

バラモデルに目盛りも刻んでみました。ボルト受け具の下端を計測位置とし、0目盛りのところが現在の(ハリヤ2016年モデルでの)基準位置となります。そこから何mmズラせば良さそうかお手元の自転車で調べていただきご連絡いただいた後、本番用を製作するという想定です。

ハリヤ以外のVブレーキ搭載車でもカスタマイズ承りますので、Sesameサイクル2買ってみたけどつかなかった…とお困りの方はコメントにてご相談ください。

[3Dプリント] Panasonic TZ系食洗機の開ボタンを押しやすくするハック

我が家の食洗機はPanasonicのNP-TZ300です。

この系統のモデルは(TZ100/200/300)はドアパネルにタッチセンサーがついていて、点々模様のところを長押し(長タッチ)するとドアが開きます(現行のTZ500では物理ボタン式に変更されています)。

自分はまぁそんなもんかと納得して使っていますが、同居人はこれが面倒でやってられないのだそう。その2,3秒が待ってられないこともあれば、そもそも反応しないこともあるといいます。

で、この機種にはタッチパネル故障時などのバックアップの意味合いでドアの両サイドに「強制開ボタン」というのがついています。

説明書引用

このボタンを5mmほど押し込むことでもドアが開きます。位置的には悪くないですが、内部のロックを外す機構があるので結構強く押し込む必要があります。説明書にあるとおり爪が長い/付け爪の方なんかは気を遣うでしょう。

注意:本来は非常時の“強制”開ボタンなので、常用には向きません。本来のタッチによる操作であれば事前に温水を止める動作も働きますが、強制開ボタンだとその反応も一瞬遅れる可能性がある(止まりはする)ので、普段使いは自己責任でお願いします。洗浄中に開ける時は予め一時停止操作をしてからに。

■今回の指示: ドア強制開ボタンを押しやすくしろ!

ということで今回のお題はこのドア強制開ボタンをもっと簡単に押しやすくせよ、というものです。

当初、こんな感じでボタン自体を押し出す形のパーツを作りました。表面が指に馴染むよう慣れないフォームモデリングを駆使して曲面造形にしたりもしました。

しかし「違う違う!そうじゃ、そうじゃない~♪」とバッサリ。

もっと押せる部分の面積を大きくせよと。「キノコみたいにすればいい」と。

しかしこれでは元ボタンとの接着面は狭いままなので、横から力がかかると“てこの原理”で簡単にポキっと取れてしまうことは想像に難くありません。バラして元の部品と入れ替えたりガッチリ固定するならまだしも、非破壊でボタン表面に両面テープで貼るだけの想定だと厳しいでしょう。

で、考えたのは、余計な方向の力をブロックするベース部品の追加です。

両面テープで止めるのは緑の部分のみ。円柱はパーツ同士のガタツキ防止の補助でメインの角柱より絶妙に短い(抜けないし底付きもしない範囲)。

張り付けはとりあえず手持ちのナイスタック強力タイプ。

ニチバン ナイスタック 強力タイプ NW-K15S

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長期的なことを考えると防水性のある両面テープが理想かも知れません。且つあまり厚みやクッション性がない方が良いのでこの辺りでしょうか。

とりつけた様子がこちら。シルバーのシルクフィラメントを使ったら色もまぁまぁ馴染みました。

結果は大好評。手のひらやグーパンで雑に押しても一発でドアが開きます。タッチの2,3秒待ちもなくコンマ何秒で開くので、なんなら自分もこっち使おうかなと思うくらい。

注意:本来は非常時の“強制”開ボタンなので、常用には向きません。本来のタッチによる操作であれば事前に温水を止める動作も働きますが、強制開ボタンだとその反応も一瞬遅れる可能性がある(止まりはする)ので、普段使いは自己責任でお願いします。洗浄中に開ける時は予め一時停止操作をしてからに。

「絶対ニーズあるから売れ!」と言われます。どうかなぁ。そもそもこの強制開ボタンの存在すら知らない人も結構いるような?まぁでも一応BOOTHにでも出しておきます。もし欲しいという方がいればそちらでご購入いただくか、BOOTH(Pixiv)アカウントもってないという方はコメントでお知らせください(直接購入の場合送付先住所をお知らせいただく形になります)。

TZ300以外の機種での動作確認は取れていませんが、ボタンのサイズが同じならおそらく使える気がします。ざっと説明書みるとTZ100/200/300は強制開ボタンの記載もあり大丈夫そう。現行のTZ500はタッチパネルが廃止されてドアの物理ボタンで開くのでそもそも当てはまらないされた?

ASSA ABLOY製シリンダのドアにSesameを取り付けるキット Sesame 5 Pro編

当ブログの3Dプリント品頒布で一番人気なのがASSA ABLOY製のドアサムターンにスマートロックのSesameを取り付けるための諸々パーツです。

なんだかんだ月イチくらいでお問い合わせをいただきます。このドアというかサムターンはちょっと特殊で360°以上クルクル回転するので、360°までしか対応していないSesameシリーズを普通に設置すると手回しした時にSesameのサムターン角度検出とズレが発生して、次にモーターでサムターンを回した時に正しい位置に戻せなくなり、結果として施錠/解錠に失敗します。

そこで当ブログでは3Dプリンターを使って回転範囲を限定するリミッター(旧称ストッパー)を作成。同じ悩みをお持ちの方にもお分けさせていただいています。

またこの海外のマニアックなサムターンはたいてい木製と重厚なドアとセットになっており、両面テープやネジ止めするのが憚られるということで、サムターン固定ネジと共締めすることでドアに恒久的ダメージを与えずにSesameを設置するバックプレートやサムターンアダプタも人気です。サムターンアダプタはCandyHouse公式でも数百円でセミオーダーしてもらえますが、以前見せていただいた感じだと割と必要最低限のシンプルな形状で、当ブログ製作のものの方がガッチリ三次元形状に沿って固定できるのでご好評いただいています。詳細は上記ポストをご覧ください。

さて、このパーツシリーズは我が家で使用しているSesame 5用に製作しています。Sesame 4以前だと厚み(奥行き)が違うので使用できるかは未検証です(元々はSesame 3用だったので基本は同じのはずですが)。またかなり形状が違う北欧向けモデルも一度相談を受けてモデルまでは作ってあります。そして今回ついに上位モデルのSesame 5 Proをお使いの方からお問い合わせいただきました。「もしかしたらそのうち来るかもなー」と思っていたんですがついにという感じです。Sesame 5 Proはブラシレスモーターで耐久性が上がり、動作音も静かになっている上位モデルで、形状はSesame 5無印とかかなり違います。自分でもちょっと気になってはいたもののわざわざ買い換えるには至っていませんでした。

しかし要望があるならいっちょ本気だしてやったるか!ということで実機を購入。なんとか完成したのが以下になります。

■目次

■サムターンアダプター

Sesame5用と共通で流用可能でした。

■固定用バックプレート

ASSAアブロイのサムターンがついたドアは木製だと思うので、粘着テープでSesameを貼り付けたくない方も多いと思います。そこでサムターンのプレートの下に共締めする形でドアへの恒久的ダメージを残さずに設置するためのツールです。賃貸でも安心!

机上で設計した当初、こんな形をしていましたが、致命的な間違いを犯していました。

固定用バックプレート 取付方向別4パターン

スリムになったSesame 5 Proの幅にあわせて全体を縮小していたのですが、ASSAサムターンの円形プレートサイズは変わらないので、↓こうなるのが正しいですね。

「ASSA」ロゴ刻印ありパターンは、3つの穴位置と四角径部分が3.5mm下がる形になります。

バッテリー下と右、またサムターンのプレートに「ASSA」の刻印があるタイプは我が家では直接検証できていないので、一発で付かないかもですが「何度か試行錯誤にお付き合いしてでも欲しい」という方がいらっしゃればコメント欄にてお問い合わせいただければと思います。

バッテリー左と上パターンの設定写真がこちら。

バッテリー左設置
バッテリー下設置

■回転リミッター

デザインのお好みではなく、実際の施錠、解錠がカチっと動作する回転範囲と、本体取り付け向きの絡みで選択になります。更に針の角度や太さをカスタムする必要がある場合もありますので、お手元のドアでの動作状況をお伺いしてコンサル/カスタムさせていただく形になります。

こちらも机上設計時点よりも針を小さくするなどの微調整を行いました。

回転リミッター a. 側面取り付けタイプ
回転リミッター b.手前面取り付けタイプ
回転リミッター c. サムターン側取り付けタイプ

回転リミッター d. 180°以上回転タイプ[NEW]

a./b./c.タイプは三角形の針を差し込んでいる都合上、その太さの分だけ回転範囲が狭まります。例えば、解錠からキッチリ180°回さないと施錠されないようなケースでは角度が足りなくなってしまいます。これまでご相談いただいたケースでは、写真のようにデッドボルトがフック型をしているタイプだと通常より大きく回す必要があるようでした。

フック型デッドボルトの例

そういうケースのドアに対応したのがd.タイプです。

ツマミ部分にキャップとして被せて片側だけ本体外周から飛び出す形で伸ばすカバー部品Aと、サイド面にピンを生やしてその突出部分を止めるパーツBx2点で構成されています。

この「片側だけ飛び出す」のがポイントで、写真でいうと左側は干渉して回転を止められますが、飛び出していない右側は素通りできます。パーツBの貼り付け位置で微調整可能ですが、右のパーツBをもう少し下に下げれば、3時から9時の180°範囲だけ動く形にできるというわけです。

実際にはもっと違った範囲でピンを出す必要があって、こちらも手前面や上側に貼り付けるBパーツ亜種が必要になるかも知れませんが、現状ご相談いただいたケースではこれでバッチリだったそうです。

実機で精密に採寸できたおかげで、接着不要な位ピッタリ固定できる精度が実現しました。なおカバー部品Aは強度を保つために1mm厚にしているので、標準のツマミに比べてトータルで2mm太くなります。バリエーションとして、こういう奥側のみで手前側はオリジナル状態の開放型キャップもアリかなと思っています。ご希望があればお知らせください。

2025.5.26追記:

「1秒以内に180°以上を回すとSesameが現在角度を誤認識する」仕様だと判明したので、考察記事を書きました。

注意:物理鍵との併用について

本リミッターをご利用の方からのご指摘で気付いたんですが、物理鍵とリミッター付きSesameを併用すると問題が起きる場合あります。ASSAのサムターンは物理鍵の鍵穴と内側のサムターンが独立して回転する機構のため、鍵穴側で回すことでSesameで設定した施錠位置、解錠位置でデッドボルトが動作しない状態に陥るのです。リミッターがない状態ならグルグル回していればそのうちデッドボルト動作位置に来るんですが、リミッターがあることでそこまで回せなくなる、ということです。逆(Sesame使った後に物理鍵)はたぶん大丈夫だと思うのですが、まだ完全に解析ができていません。これは現状で本リミッターを使う上での制約となりますのでご承知おきくださいませ。物理鍵は非常用と割りきって普段は使わないということであれば実用上の問題はほぼないと思いますが、どうしてもSesameに馴染めず物理鍵にこだわるご家族がいらっしゃると厳しいかも知れません。

■動作確認は念入りに、物理鍵の所持も推奨

モノが家の鍵だけに、動作や固定の確認は慎重に行ってください。外出中に外れてしまって解錠できなくなったりする恐れもあるのでバックアップ手段として物理鍵を携行したりどこか宅外の安全な場所に保管しておくことを強く推奨します。

あくまで個人の趣味レベルの制作物なのでご利用は自己責任でお願いいたします

■頒布情報

もろもろご希望の方は問い合わせ&概算見積フォームからお問い合わせください。おわかりの範囲で記入していただいて送信いただければと思います。