3Dプリント造型物に適したフォント選びと限界サイズテスト

3Dプリント品に文字を入れたいことはちょいちょいあります。凹または凸モールドで刻印したり、AMSで色をかえたり。「ON/OFF」のような操作や位置を示したり、最近だと使用したフィラメントの種類(PLA/PETG/ASA等)を入れておくと便利です。

そんな時に使うフォントを決めておきたいというお話。Fusion上で文字を入れて押しだしをする場合、結構な数のフォントはエラーになって使用できません。調べても原因はよくわかりません。.ttfや.otfといったフォーマットの違いでもなさそう。もちろんIllustratorなどでアウトライン化してsvgなどでインポートすればいいんですが、面倒くさいので除外。

第一要件はFusion上でそのまま押し出しコマンドが適用できること。

次の優先事項としては、「小さくしても線が潰れたりせず読めること」です。そのためにはゴシックというかサンセリフ系の飾りが少ないシンプルな字体が良いかと思います。かな漢字はそこまで使用頻度が高くないので、一旦英字のみで考えます。

FDM 3Dプリンターは鋭角コーナーがあるとヘッドの速度が落ちるので、丸っこい字体がいいかも知れませんが、そこはまぁおまじない程度のものかなと。

元々PCに入っていたものでいうと、BahnschriftとOCR-BがFusionでも押し出せてヨサゲ。

■Bahnschrift (Fusion OK)

Bahnschrift(発音はバーンシュクリフト?)はDIN(ドイツの工業規格。日本でいうJIS)フォントという道路標識などに使われる字体が源流でWindows標準で入っているので、なにも考えずにさっと使えるし、プロジェクトファイルを共有するにも面倒くささがなくてヨサゲ。シンプルで大文字の視認性が良いのがありがたい。

■OCR-B (Fusion OK)

OCR-Bは後から自分で入れたものだったはず。文字通りOCR(機械読み取り)用に作られたもので、結果的に人間からしても視認性は上々。Adobe FontsにあるのでCC契約してればインストール可能。EPSONも配布しているようだけど、ライセンスは不明。同社のプリンターユーザなら使用可能?

■WIP MARKS (Fusion NG)

一応探してみると、やはりといういか3Dプリンターで使うことを想定したフォントといものも既にありました。例えば、BOOTHでkj_makingさんが頒布(個人無料/商用500円)されているWIP MARKSです。WIPはWorking In Progress(開発途中)の意味のようなので、最終的にはMARKSという名前になるのかも?STLにした時のデータ量を小さくするのが目的らしく、かなり直線的な字体です。また整列などもしやすいよう文字高が揃えられているそう。かなり小さいサイズで実際に造形してテストされているのが好印象です。ただしトップ面に凹文字はあまり綺麗に出ないと作者自ら書かれてるのが気になる。トップ凸、サイドなら凹凸共に良好とのことですが。これが他のフォントと比べてどうなんだろうというところでしょうか。早速試してみましたが残念ながらFusionで押し出しはNGでした…

■Osifont (Fusion OK)

次にRedditで見つけたスレッド「Give me your favorite fonts to 3d print!(3Dプリント向けのお前らのお気に入りフォントを教えてくれ!」も色々寄せられていました。その中でPrintables.comにこれまた実際に3Dプリンターで造形したものを比較してTier付けをしてくれたポストがリンクされていました。おっとこれは有用。Tier SにランクされているのがOsifontOverpass。Overpassの方がわずかに好みでしたが、OFT形式でFusionでは押し出しNGでした。

このTier表でいうと、OCR-BはTier B、Bahnschriftの源流であるDINはなんとTier Cだそうです。

■造形してみた

実際に造形して比較してみました。

プロファイルはもっともよく使う「0.2mm Standard」。フィラメントはELEGOO PLA RAPIDの黒。

なぜかBahnschriftは不安定でした。同じスケッチ面に描画してるのに、なぜかベース面から距離があいて押し出してもベース面と結合しない。わざわざ0.01mm下げてやらないとならない、みたいな。それでもEとFはくっついてくれず諦めました。また、その問題のE,Fの他にAなども糸引きのように無数の線が発生。これがFusionで問題となる「パスが閉じていない」という状態なんでしょうか?でもAは普通に結合できるのが謎。

ともあれBahnschriftのE、Fは諦めてスライサー(Bambu Studio)へ。個人的によく使う文字高5mm、刻印の深さは0.3mmで、左が凸刻印、右が凹刻印です。トップ面のアイロンも無し。

プレビュー時点で、Bahnschriftは線や内部の〇が欠けてしまっています。「A」の横棒とか「9」の中の〇が出なさそう。osifontとOCR-Bではosifontの方が文間が狭く、より狭いスペースに配置できそう(文字高も違う?)

実際に造形したものがこちら。

凸はosifon、OCR-B共に良好。凹は欠損はないけど周囲の造形線が影響してかなり読みづらいです。パターンを変えたりアイロンをかけるとマシになるかも知れません。

次にフォントをosifontに絞って、サイズの限界値を探ってみました。上のが5mmなので、4/3/2/1.5mmで、凸と凹で。

凸の方はスライサーの時点で3mm以下は消失。Boldにしてもダメでした。凹の方は割と粘ります。

立ててみるとこんな感じ。凸は4mmでも擦れ気味。凹は3mmまでは欠損なさそう。

凹のサイド面を積層ピッチ0.12mmで造形してみました。

小文字は0.3mmが限界ですが、大文字と数字だけなら0.2mmも辛うじて、というところ。材料表示など「目をこらして読めればOK」みたいな表示であれば、0.2とか余裕もって0.25~3mmくらいはアリかな。

ノズルを0.2mmにするとかなり改善します。凸は2mm、凹は1.5mmも一応造形はできそう。

■まとめ

字形が好みなBahnschriftは残念ながらトラブルが多そうで除外。osifontが狭いスペースに書き込めるので良さそうです。スライサー上でのシミュレーションで見る限り、限界値はこんな感じになりそう。実際にはフィラメントや色、アイロン有無、積層ピッチ(レイヤー高)でも視認性が違ってくるでしょうが、とりあえずきちんと形が造形される限界値の目安として。

トップ面凸トップ面凹サイド面凸サイド面凹
0.4mmノズル5mm3mm5mm2.5mm
0.2mmノズル1.5mm1.5mm2mm1.5mm

特にサイド面は積層ピッチで縦方向の解像度は大きく変わります。スライサーのプレビューを見ながら微調整するのが良いでしょう。

また今回はFusion上で描いています。もしかするとスライサーのテキスト機能でやったら違う可能性もあります。

凹凸の選び方については、基本凸だと寸法に影響でるので凹の方が無難ですが、トップ面については造形線が縁取りのように出てしまって表面が荒れるのが悩ましいところ。可能であればサイド面の凹刻印が無難そう。凸でも0.3mmくらいならなにかをスライドして接合する面でもない限り実害はないと思いますが。

[3Dプリント] プリンターのLEDが眩しいのでカバー ~3Dスキャナで曲面形状を採取する

最近、3Dプリント販売品を発送するのにクリックポストのラベル印刷をすることが増えたので、使用頻度が低いので都度電源を落としていたレーザープリンターをスリープ待機させることにしました。プリンターはネットワーク対応のLBP6240です。

ただこのモデルはスリープ中でも高輝度の青色LEDパワーランプが煌々と光っており、寝る時にウザい。パーマセルテープとかで完全に塞いでもいいですが、一応電源が入っているか確認できた方がいいので、3Dプリンターでほどほどに減光するカバーを作ることに。

しかしこのLEDがついているパネル部位はサイドに向かって湾曲しており、単にLEDの外径を元に円柱で押し出すだけではビタ付けができない…

完成したカバーを貼り付けた状態

そこで、3月に買ったばかりの3Dスキャナ、RevoPoint POP3でフロントパネル形状を読み取り、それに沿った背面形状をモデリングする手習い。

スキャンする部位が小さいのでスキャナを動かすまでもなく一発撮りできるし、色も白なのでハードルは低め。練習にちょうどいいかなと。実際にはLED自体が消灯でも点灯でもあまり綺麗にとれなかったですが、フロントパネルの曲面はしっかりキャプチャできたのでヨシ。

RevoScanで読み取ったテクスチャ付きデータ

RevoPoint専用ツールのRevoScanから.3mf形式で書き出し、Fusionに取り込んでボタン背面を削り取ったのがこちら。なおソリッドモデルをメッシュモデルで直接削り取ることは(たぶん)できないので、メッシュモデルに沿ってスケッチで線をなぞってソリッド化しています。今回はパネルが一時曲線なのでサクっとできましたが、上下にも左右にも湾曲している形状だと更に大変。この辺りはもう少し修行したいです。

ともあれ、できあがったのがこちら。曲線のフィット感はバッチリでした。

光の透過具体(部材の厚み)を少し試行錯誤して完成。

このプリンターも2016年購入でもうすぐ10年選手(発売は2014年)。公式にはWindows8.1位でサポートが止まっていますが、普通にWindows10/11でも使えてるので、まだまだ現役で使えそうです。

仕事でA4ドキュメントを印刷することはほぼないので、A6のラベル用紙をメイントレイにセットしてクリックポスト宛名印刷専用機となっていますが、、

[3Dプリント] Sesameフェイス用傾斜設置マウント

CandyHouse製スマートロックSesame5を顔認証と静脈認証(とNFC)で解錠できるSesameフェイスど導入して一ヶ月経ちました。自分が運転して駐車場に車庫入れをする関係上、同居人が先に玄関で解錠することがほとんどで、自分は数日に一度くらいしか使用しませんが、認識率、速度などはほぼ不満なく使用しています。

外出時の施錠もSesame Touchでは未登録指紋をトリガにする関係で、わざわざ未登録の指や手のひらで認識エラーを起こす必要があったのが、本機では専用ボタンがついてスピーディになりました。ボタンは少し小さいですが、我が家では3Dプリンターでボタン大型化カバーをつけて使い勝手を改善しています。

■バッテリー消費と認識不備と設置の問題

Facebookグループを見ているとSesameフェイスシリーズの電池寿命が公式が謳っているほど保たないんじゃないかという言説が飛び交っています。ウチも写真のように3Dプリンター部品製作作業をするために卓上に一日置いてたら激減りして既に一度電池交換していますが、やはり近接レーダーが物体の接近を感知して認識処理を走らせることで電力を消費するため、人通りが多い道路/通路に面していたりすると想定以上にバッテリーが減ってしまうといったこともあるようです。アプリからレーダー範囲を狭めたりもできるので、設定環境にあわせた設定調整が必要となります。

もうひとつは赤外線で物体を読み取る関係上、直射日光が本体センサー部や認識対象の顔/手のひらに強く当たっていると認識しづらいということもあるようです。その場合は、日照条件ごと(例:日が当たる時間帯とそうでない時間帯)に顔や静脈を登録すると良いとアナウンスされています。

■そうだ向きを変えよう

そんな中Facebookグループで、ドアや壁にベタ付けするのではなく、ナナメに角度をつけて設置することで、

  • アプローチアングルに最適化しより早い段階で反応させる
  • 通りすがりの人に反応しにくいようにする

といった仮説でDIYされている方をお見かけしました(リスペクトしておりますが実名参加なのでお名前は出さないでおきます)。その方が「3Dプリンターで作ってくれないかなー」と呟いておられたので、手を挙げてみました。

仕掛けとしてはSesameフェイス背面の取り付けパネルの形状にあわせて介在させる形で、Fusionのパラメトリックデザイン機能(数値変更で形状を自動変化させる機能)を活用して、リア側とフロント側の角度と距離を自在に調整できるようにしました。ナナメにすることでリアとフロントが干渉しうるので距離も調整事項になっている形です。実際のパラメーター変更で様々なバリエーションにしている様子は下記の動画でご覧いただけます。

同じくFacebookグループで直射日光を避けるために上下にもアングルがつけられると良いのではという書き込みがあったので、左右だけでなく上下の角度も変えられるようにしてみました(その組み合わせも可能)。

もし使ってみたいという方がいたら希望の角度を伺ってカスタムオーダーが簡単に受けられる環境が整ったというわけです。実際に角度をつけることでバッテリー消費が抑えられたり認識エラーが減らせるかどうかは環境次第なので保証はできませんが、これらの現象に悩まれている方がいたら同じSesameフェイスユーザとして一助になれればと思います。

なお同グループでの当該の書き込みに対してCANDY HOUSE社CEO自らも「製品化したい!」というコメントを書き込んでおり、いずれ公式からもなにかしらのアクセサリが販売される可能性もあります。それがいつどのような選択肢になってくるかは未知数ですが、アングルをつけるというアプローチ自体はCEOも一定の価値を認めているのかなというところです。

■設置例

テスト用のPLAフィラメントで造形したのでグレーです。本体に合わせるなら黒がいいんでしょうが、日光が当たるところで発熱しやすいと考えると、白寄りの明るい色がいいのかなと思います。我が家はガラス面につけてますが、壁側の色にあわせるのもアリかも知れません。

左に20°傾けた例
下に15°傾けた例

製品付属の背面プレート形状に沿った形で、Sesameフェイス本体の下側は飛び出る形になります。

■頒布情報

期待される効果として、

  • 自身がアプローチする方向に向けることで、より早い段階で認識させる(ノーウェイト解錠)
  • 余計な人通りに反応させないようにしてバッテリー消費を軽減する
  • 日照など強い赤外光を避けることで認識率を向上させる

などがありますが、実際に効果があるかは環境次第なので保証はいたしかねます。あくまでご指定いただいた角度通りに製作してお届けするものとお考えください。設置してみて角度があわなかった場合、1回は無償で再作成をいたします

Sesameフェイスにはイタズラや盗難で持ち去りにくくするための固定ネジ(実測でM1.4×4と推察)が付属しています。本品を使うことで二箇所のネジ止めが必要になりますので、互換性があると思われるネジを添付します。ただし添付品と同等の固定力や盗難防止効果を保証するものではありません。

造形カラーはその時のフィラメント材料の在庫の範囲でご希望に添うように調整いたしますが、太陽光の熱線を吸収しやすい黒の場合は耐熱性の高い素材を使用するため材料費が少しあがります

本品は数字キーのないSesameフェイス用です。現状SesameフェイスPro(数字キー付きモデル)は手元に実機がないので対応不可です。要望が多かったり、設計に必要な採寸にご協力いただける方がいらしたら対応するかも知れません。

角度の考え方

アダプタ無しで壁面に普通につけた状態を0°とします。真左に向けたら「左に90°」で、真正面と真横の中間なら45°となります。坂道の傾斜角と同じで、数字に対して抱くイメージよりも大きく傾くとお考えいただくと良いと思います。10°というと誤差くらいの印象だと思いますが、実際には結構傾きます。

また傾けるほど手前への突き出しも多くなりますのでご注意ください。

以上で問題なければ、コメント欄よりご希望の角度とカラーを添えてお問い合わせいただければと思います。また手数料や送料が少し高くなりますが、匿名でのお取引をご希望の方向けにBOOTHにも出品しておきます。

写真で見るAYANEO Airのスティック交換

少し前にAYANEO Airの右スティックをひっかけて折ってしまいました。キャップが外れたのでなく、レバーのステーが根元から折れてしまい、、、

基本これでFPSとかはやらないので不便がなく半年ほど放置してたんですが、同居人がゲーミングUMPCに興味を持ちだしたので、お試しということでFPSプレイできるように直すことに。

本機のスティックはNintendo Switch LiteやJOY-Conに使う薄型のモジュールが使われており入手性は悪くないです。AYANEOはサポートに連絡すると修理を受け付けるかわりに「自分で交換しろ」とばかりに部品を送って寄越すという話も聞きますが、面倒なので市販品を買うことに。最初、RedditでGuliKitのスイッチが使えたという書き込みをみて、こちらを購入(こちらはダメだったやつ)。

GuliKitはゲーミングコントローラーでは割と知られているブランドだし品質も良いだろうと。しかし、取り付けてみると下にドリフトがある。2つセットなのでもうひとつにも付け替えてみたんですが、そちらは右と下にズレる(下図)。できれば0.1は切りたいところ。

ChatGPTさん曰く、AYANEOだとニュートラル位置の電位がSwitchと異なるので互換性がないかも、的な回答が。ホールスティックではなく従来式の可変抵抗タイプ、特にALPSのが無難だぞ、と言われるも、実際に探してみてもこういう薄型で可変抵抗、ALPS製の物は発見できず。可変抵抗タイプだと調整ネジでドリフトを補正できたりするんですが、そもそも薄型でそんなネジがついたものがなさそう。

他に良いのがないか物色していたら、他の出品者が出している、同じGuliKitのアイテムで、「TMG電磁式」と「ホールスイッチ」が選べるのを発見。

たぶんホールスイッチは所謂ホールエフェクト式のスイッチかな?TMRはトンネル磁気抵抗式という更に新しいモジュールっぽい。この業者では値段は同じ。

自分はたまたま別の業者からTMRの方を買っていたという形。これまたChatGPRさん曰く、TMRの方が高精度だが、AYANEOと相性が悪い場合があり、実績のあるホールセンサー式が無難とのことで、買い直してみることに。最初に買ったTMRは無駄になっちゃいますが、あくまでSwitch用なので不良と決めつけて返品するのもなんだなと思い諦めることに。

結果的に、どちらもまぁまぁドリフトが生じています。ただゲームで実害がでるほどでないので、一旦ホールエフェクトの方で様子見。どうしても問題になるようなら別途安物の可変抵抗式を探すか、メーカーに問い合わせて純正部品が調達できるか聞いてみようと思います。

■写真でみる交換手順

以下自分用の記録です。参考にされる方は自己責任でお願い致します。

ちなみにAYANEO公式の分解動画はこちら。修理を目的としたものではないのでやや見づらいし中国語ですが、参考に。

カバーを外すところまではこちらも参考になると思います。

ではやっていきます。

推奨工具

基本は精密プラスドライバーでOKです。PH0がヨサゲですが、一部PH00の方が回しやすかった箇所も。たぶん軸が充分長ければPH0でいけると思います。自分はこちらの電動ドライバーを使いました。先端にLEDライトがあるので小さなネジを明るく照らせてやりやすかったです。

あと、極小のスピーカーコネクターの抜き差しに、こちらのコネクタ引き抜き工具が重宝しました。一箇所しか使わないのでコスパは微妙ですが、この手の作業をちょいちょいするという方は持っていて損はないツールだと思います。

ENGINEER エンジニア 基板コネクター抜き SS-10

ENGINEER エンジニア 基板コネクター抜き SS-10

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あとはフィルムケーブルの抜き差しにピンセットがあると良いです。最近のお気に入りはこちら。

厳密にはトゲ抜きらしいですが、先端が細いわりにしっかりと掴めて良きです。

ケースのこじ開けにはこういうギターピック型のツールを使用しました。極薄の金属タイプのもあるんですが、傷つけやすいので今回は樹脂製を優先して使用し、充分開けられました。

あとはネジが大量に出るので、その管理にマグネットシートとかあると良いと思います。外した順に並べておくと紛失しづらいし、間違えにくいです。

分解手順

今回の交換ターゲットは赤丸の右スティックです。一度交換したスティックが既についている状態ですが、こちらはドリフトが発生しているので、再度交換していきます。

注意事項として、今回バッテリーコネクターが見当たらず電源が接続されたまま作業をしています。金属の工具などを触れさせるとショートの危険性があります。可能なら先端をテープなどで絶縁するといいかも。また電源スイッチに触れて起動してしまいがちです。慌てずその度にシャットダウンさせてください。バッテリーコネクタを見つけられたら抜いておくのが一番確実です。

まずは上面。センターの細長いパネルと、LT/RTボタンを外します。

LBボタンとの境界の隙間に爪を入れて持ち上げるといくつかのロックがパキパキっと音をたてて外れます。細くて折れやすいパーツなので慎重に。左右のLT/RTボタンも外側から爪を入れて持ち上げると外れます。ここまでは素手でOK。

3つの樹脂パーツを外した状態。赤丸がついていた箇所です。

外した下に4つのプラスねじが出てくるので全て外します。

LT/RTボタンの下にも1つずつネジがあります。

続いて、底側。USB-Cポートの両サイドと、microSDカードスロットのフタの中に矢印の向きにネジがあります。計3つ。フタの中のネジは少し長いドライバーが使いやすいでしょう。

これで外装のネジは全て外せたので、いよいよ背面カバーを外していきます。すべてケースパネル同士の爪で固定されているだけなので、ゆっくり慎重にピックを入れてパキパキと剥がしていきます。

まずはRBボタンのところを両手で開き、できた隙間にピックを入れてこじるとパキっと最初のロックが外れます。そこから徐々にピックを下げてひとつひとつ外していきます。

ぐるっとLBボタンまでいくと背面パネルが外れますが、リボンケーブルがつながっているのいでちぎらないよう注意して開き状態にします。本当はこのリボンケーブルを外した方が安全ですが、ちょっと外しにくかったので自分はこのまま作業しました。うっかり落としたりしてテンションがかかると千切れるかも知れないので安定した広い場所で作業します。

次にスティックスイッチの裏にあるボックス(バイブレーター?)を赤丸のネジ4本で外します。一番左のだけネジの長さが違うので区別しておいてください。

こちらもアンテナ線らしきケーブルがついているので、千切らないよう慎重に除けておきます。

つづけてRTボタンを固定しているネジ2本(赤丸)を外します。

この2本のネジでRTボタンスイッチ基板と、RBボタンは外れます。

次の要所を赤丸で示します。一番下の黒いフィルムケーブルは気をつければ外さなくても作業できます。脱着に自信がある人は抜いた方が無難。むしろ抜き差しで破損させてしまいそうならあえて抜かないという選択肢もアリかなと。

中心辺りの黒いテープの下もあわせてネジが2本。テープの上にジョイスティックモジュールからのケーブル、テープの左にもプッシュ式のコネクタがあります。あと赤丸がついてないですが、右上の赤と黒の線が出ているのがスピーカーケーブルです。

テープの下にあるネジ。

フィルムケーブルを抜きます。抜く前にどこまで刺さっていたか憶えておくか印をつけておくといいかも。

この際、コネクター反対側の黒い部品を起こすのが良いはず。自分は気付かず写真ではそのまま引っ張ってます…逆に差し込む時は差し込んだ後で黒い部品を倒すとロックされるんではないかと。

抜けました。

次はテープ左横のコネクター。上から押しつけて挿すタイプなので、抜くのはピンセットやマイナスドライバー、爪などで真上に持ち上げるだけです。

続いてスピーカーコネクター。かなり小さいのでケーブルを千切らないように。先にピンセットでケーブルを基板の下から取り出して遊びを持たせておくと良いです。写真のコネクター引き抜き工具はマジでオススメ。

これでスイッチ裏の基板はフリーになったはずなので、どかせます。もしRB/RTスイッチ側の黒いフィルムケーブルを抜かない場合には、千切らないように気をつけて手前にパタンと裏返します。

これで目的のジョイスティックモジュールが露出しました。赤丸忘れてますが、写真で左上と右下の2本のネジを外せばモジュールが外れます。

モジュールからフィルムケーブルが生えていて、これが黒い基板の裏側(作業目線で上側)に180°折り返すような形で回り込みます。新品のモジュールのケーブルは下の写真のようになっているはずなので、黒基板取付後に折り返してからコネクターに差し込む形です。

当然ながらスティックが反対側に突き出た状態でネジを締めることになるので、下になにか台をかませて持ち上げて作業すると良いでしょう。

あとは外したのと逆に組み付けていくだけです。

個人的にはバックカバーの脱着が面倒なので、その前に一度電源を入れて動作確認をしました。この時のフィルムケーブルを千切らないよう慎重に。電源スイッチは指紋センサーの下に位置する赤丸のボタンになります。カバーを閉めた後は指紋センサー自体がボタンになってこのスイッチを押し込むのでしょう。フィルムケーブルはつながっているのでログインには指紋センサーも使用可能です。

Windowsが起動したら、ブラウザでコントローラーテストサイトを開いて、動作チェック。スティックを放した状態できちんとセンターが出ているか確認します。AYANEOのツールはデジタルデッドゾーン(中立付近の無効領域)のON/OFFはできるもののキャリブレーションはできないので、この状態でセンターに収まらないようだと厳しいかも知れません。一応WindowsのコントロールパネルからOS側のキャリブレーションはできるのですが、ウチの場合だとあまり効果がなかったようです。

■まとめ

以上、AYANEO Air(初代)の右スティック交換手順をまとめてみました。部品と道具さえ揃っていれば、比較的難易度は低いかなという印象です。ネジとコネクターの脱着のみで、ハンダ付けは不要なのが良いです。ただしバッテリーを外さずに作業するのでショートには注意が必要です。

今回左スティックは交換してませんが、見た感じ同じような手順でできそうに感じました。メイン基板とは独立して作業性は良いです。

X1-CarbonのPTFEチューブ交換記録、Modパーツ装着

BambuLab X1-Carbon Combo(以下X1c)を導入して1年3ヶ月。消耗品であるPTFEチューブ他、消耗品を交換したのでメモ。

■PTFEチューブ交換

要所要所でフィラメントを通しているPTFEチューブですが、摩擦ですり減るので消耗品とされています。摩耗しているとスムーズにフィラメントが送れず詰まりの原因となるようです。一概にどれくらいという指示は見当たりませんが、コネクタの抜き差しをするところの変形などが気になったので交換することにしました。

情報画面によると総プリント時間は1,738時間となっています。公式情報ではないですが、ChatGPTさん曰く、

  • 一般的には 500〜1000時間 程度の印刷ごとに点検するのがおすすめ
  • 高温フィラメント(例えばABS、PC、PA、CF混合素材など)を多用する場合は、摩耗や変形が早く進むため 300〜500時間 くらいでの点検を推奨
  • 交換の判断ポイント
    以下の症状が出ていれば交換した方が安心です:
    ☑ フィラメントの抜き差しが固い・引っかかる
    ☑ チューブの内径にスレや削れが見える
    ☑ チューブの先端が焦げていたり、変形している
    ☑ ノズル詰まりが頻発する
    ☑ 弾性フィラメントの押し出しが不安定

とのこと。-CFフィラメントも時々使うことも考えると、充分な時期は来てるというかむしろ遅いレベル。またノズル詰まりも頻繁に発生しています。こういうアナログ的な消耗は明確に発生を認知しづらいので、1年とか決めて定期的に交換するのが良さそうですね。

交換用のPTFEチューブは公式ストアで販売されています。別に市販品でも内径と外径だけ揃えばいいんでしょうが、公式のは機種毎に必要な長さにカット済みだし安心感を買う意味で公式サプライを購入しました。X1c用は送料別で680円。なにかのついでに買うのが吉ですね。交換手順も公式Wikiに動画が掲載されています。バッファー部分のチューブ交換は本体背面にアクセスする必要があるのでぎりぎりスペースに設置している我が家ではちと大変でしたが、作業自体は10分ほどで終わりました。

これでフィラメント送出トラブルが減るといいな。

■スティック糊の買い換え

BambuLabプリンターには2種類の糊が付属してきます。固体のスティック糊(ビルドプレート専用スティックのり)と液体のり(ビルドプレート専用液体接着剤)です。正直使い始めた当初は2つある理由はわかっておらず、塗りやすさから液体のりを中心に使っていましたし、そもそもビルドプレートのメンテナンス(洗浄)の手間を惜しんで、どうしても定着しない時以外なるべく使わないようにしていました。特にスティック糊は粘度が高くフラットに塗り広げるのが面倒でほとんど使っていませんでした。

ただやはり2つあるのにはそれなりに理由もあるらしく、接着力の液体糊、剥がしやすさ、洗いやすさのスティック糊という感じっぽい。ABS/ASA/PCのような高温素材では液体糊の接着力がないと剥がれて反りが発生するが、剥がしが大変だったり、乾いてしまうと除去が大変。PLA/PETGくらいならスティック糊くらいの接着力が剥がしやすさとのバランスも考慮すると適当らしい。

ただスティック糊はダマになりやすく底面の荒れにもつながるのでChatCPTさんに相談したところ、「そりゃスティック糊が劣化してるわ」という回答。公式では24ヶ月となってますが、ChatGPTさんは12ヶ月で使い切るのが良い、と。まぁ保管環境によっても違ってくるんでしょうが、とりあえず1年経っているので買い換えてみることに。そもそもPLA/PETGだとそこまで反りに悩むことはないですが、今後はこういう観点で使い分けていってみようかと思います。

あと送料無料条件を満たすのに購入アイテムを詰むのに、安い糊製品は便利だったり。単価でいえばAmazonなんかで社外品を買う方が安いかもですが。

■BIQUのワイパーとプープ詰まり防止プレート

みんな大好きBIQU(Panda)のBIQU Purging Reliability Improvement Upgrades Multi Material Printing Enhancement Kit for Bambu Lab P1/X1 3D Printersという社外アクセサリ製品を導入してみました。

同じくX1cの消耗パーツとしてノズルワイパーがあります。フィラメント交換時にノズル先端を擦り付けてゴミを除去する部位で、X1cでは1cm程度の短いPTFEチューブを使ったローラーのような構造になっています。ノズル先端に前の色のフィラメントが残ってたりすると造型物に意図しない色が残ったりするので、確実に先端を綺麗にするのは重要です。これがA1やH2Dなど後発モデルではシリコンのブラシになっています。MakerWorldなどでこのA1用シリコンブラシをX1cのノズルワイパーの代わりに取り付けるモデルがたくさん公開されていて、自分も2つほど試してみたいんですがどれもイマイチでした。微妙に干渉してエクストルーダーが引っかかったり、PETG程度ではノズルの熱で溶けてフィラメントくずと溶着してしまったり。結局純正ノズルワイパーに戻してたんですが、BIQUで完成品のPanda Brush PXが販売されていたのでゲット。さすがの精度でぴっちり取り付けでき干渉もないです。またアルミ製なので熱で溶ける心配もナサゲ。予備のシリコンブラシも付属しています。MakerWorkdのモデルはもともとのノズルワイパーを固定している小さな小さなネジを外して組み付ける方式がほとんどで、ウチのように天面ガラスにAMSが載っていて全開放できない状態では作業性がとても割です。うっかりネジをパージシュートに落として、慌ててプープの山を探したり。その点、Panda Brush PXは横からスライドしてはめこむだけなのも良き。元のワイパーのネジはドライバーで外す必要ありますが、今後シリコンブラシを交換する時には工具無しでできると思います。

またセット商品で、パージシュート(プープを捨てる穴)にプープが貼り付くのを防ぎ、確実に背面から排出するための金属板Panda Purge Sheld付き。確かに、このパージシュートの手前面にちょいちょいプープが貼り付いて排出エラーが出ることあるので、良いかも!と。

MakerWorldで部品を作ってもA1用シリコンブラシを公式で買うと500円くらいするので、それも差し引くと、これらのセットが2,000円程度ならコスパも悪くないかなと。

■まとめ

1,700時間時点でメンテナンスとして消耗品パーツを交換/アップグレードしました。

世の中はH2Dが話題で、個人的にもデュアルエクストルーダーは魅力ですが、お値段的にも設置場所的にも当面は厳しいので、X1cはまだまだ活用してきたいと思います。