DS1511+を活用するためのiOS用モバイルアプリ群を試す

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BUFFALO等の国産NASでもiPhone/iPad/iPod touch向けの連携アプリをリリースしていて、出先からのファイルアクセスをウリにしていますが、DS1511+を含むSynologyのDSMシリーズではファイル、写真閲覧、写真アップロード、音楽、管理と5つもの公式アプリを提供しています(全て無料!)。今回はそれらについて紹介してみます。
(注1:下記の機能をインターネット経由で外出先から使うには、ルーターのポート開放設定を正しく行うか、DiskStation自身をルーターとして利用する必要があります。)
(注2:他にもDS Camという管理カメラの映像をチェックするアプリもあるのですが対応カメラがないので今回は除外)

■DS file(ファイル閲覧)

DSfile1 DSfile2

BUFFALOでいうWebAccess iに相当するアプリです。写真のようにNAS上のファイル/フォルダにリスト画面でアクセスでき、iOSが表示に対応した形式のファイルを開いたり、端末にダウンロードしたりできます。また2枚目の写真にある「電子メール送信リンク」をタップすると、選択したファイルをダウンロードする為のURLが入ったメールが作成されます。例えば出先で「○○のファイルを送って〜」というメールを受け取ったとします。ファイルが小さいものなら一旦手元にダウンロードして転送すればいいんですが、何十MBもある場合は時間がかかって大変です。この機能を使えば一旦手元にダウンロードすることなく相手に直接NASからダウンロードするアドレスだけを送信できるので、iPhoneしかもってない場合でも軽々と対応できる訳です。DropBox等のクラウドサービスにはよくある機能ですがNASで搭載しているものは初めて見ました。

■DS audio

DSaudio1 DSaudio2

文字通り音楽再生の為のアプリです。DiskStation上のMusicフォルダに保存した音楽ファイルを一覧しストリーミングでiOS端末上で鳴らすことができます。ファイルの実際のフォルダ階層は無視され、アーティスト名やアルバム名といったメタデータを元に分類表示されます。管理画面DiskStationManager内で起動するAudio StationというWebアプリで作れるプレイリストにも対応しています。Audio StationではDiskStationに直接接続したUSBスピーカーで再生することもできるのですが、残念ながらDS audioからはそちらに出力することはできないようです。あくまで端末側にストリーミングして再生するアプリで、AppleのRemoteアプリ的な使い方はできません。これができるとDiskStationをPCレスでジュークボックス的に利用できて便利そうなんですけどね。ただしストリーミングで受けた音楽をAirPlayでAppleTVやAirMac Expressに転送して再生することはできます。

2011.10.08追記:Synologyさんからのご指摘で、アプリをリモートモードというのに切り替えると、DS1511+に接続したUSBスピーカーから再生することも可能とのことです。

iOS標準の「iPod」アプリ(iOS5では「ミュージック」)ではLAN内のストリーミングしかできませんが、DS audioはインターネット経由でも利用できます。ただしiPhoneの3G回線でストリーミングを試してみましたが残念ながら途中で何度も途切れてしまう状態でした。高速なWi-Fi接続が必要でしょう。

ちょっとイヤンなのは、DS audioをインターネットから使うために解放するルーターのポートは5000番で、これは管理画面であるDiskStation Managerと共通です。つまり管理画面へのアクセスをインターネット側に晒さなければ音楽も公開できないということです。パスワードを強固にすればいいんですが、ちょっと不安ですね。一応海外の掲示板語られてたワークアラウンドとしては、管理画面へのアクセスを強制的に5001番に回してSSLで接続する、という設定が可能なのでそれをしてかつ5001番ポートを開放しなければ、LAN内からしか管理画面にアクセスできなくなるはず、という指摘がありました。つまりDS audioは非SSLでということになるんでしょうか。ちょっとまだ検証しきれてない部分です。

■DS photo+

名前が似ていて紛らわしいですが、おそらくこちらが写真閲覧アプリです。「おそらく」というのは上手く使えなかったからです。
アルバム作成までは出来たんですが、写真のようにエラーになってしまって先へ進めませんでした。Synologyさんのサポートからフォローがあったら再検証します。

2011.10.08追記:何故か日を改めたら動きました。閲覧、アップロード共にでき、基本的に下記のDS photoは必要なくなりそうです。

IMG_20111008_021550 IMG_20111008_021605

LAN内で使った限り、動きもサクサクです。写真1枚目の右上のボタンをタップして表示されるのが写真2枚目。DS File同様、簡単に公開用URLが取得できるので、出先からある写真を人に送りたい、といった時に一旦端末にダウンロードすることなく相手に通知することができます。

またアップロードは複数枚を一括で行えますが、位置情報使用を許可にしておく必要があるようです。

■DS photo

DSphoto こちらが写真のアップローダーになります。カメラ撮影したものやライブラリにある写真を選択し、タイトルと説明を追加して、保存したアルバムを選択してアップロードできます。アルバムは実ファイルとしてはフォルダに対応付いて保存される他、やはりWebアプリのPhoto Stationで閲覧することができます。Photo Station上でアルバム毎のアクセス権(閲覧のみ/アップ可)を設定できるので、Webアルバムサービスを自宅でホストできる感覚ですね。

個人的にはiPhone上の写真を直接サーバー上のフォルダに保存できる点が便利に感じました。メールで添付したりMobileMe等のWebサービスアップして、またPCでダウンロードするといった手間がない訳なので。残念なのは一度に一つのファイルしかアップロードできない点でしょうか。複数選択して一括アップロードできるようバージョンアップを期待したいと思います。

ちなみにPhoto Stationのポートは5000ではなく80番みたいなので管理画面とは独立に安心して外部に開放することができます。

 

 

■DS finder

DSfinder1 DSfinder2 DSfinder3

こちらは通好みというか管理者向けのアプリです。写真のように各ドライブのステータスをチェックしたり、再起動やシャットダウンなどの遠隔操作ができます。「サーバー検出」というのは本体からピーピー音が出る機能です。企業のサーバールーム等で同型機がたくさんあってどれだっけ?って時に重宝します。「DSM mobile」は管理画面DiskStation Managerのモバイル版がSafariで開くリンクです。

DSMmobile1 DSMmobile2 DSMmobile3

このDSM mobileってのがまたしっかり作り込んであって、写真のように各種サービスの起動/停止はもちろんユーザ管理、はてはリソースモニタまであるとか(グラフはリアルタイムに更新されていきます)、スマートフォンからできる必要あるの?ってくらい何から何まで管理できちゃいます。

とまぁ付随アプリを概観してみて、またまたその実装力に驚かされました。個々の要素技術は目新しいものではないかも知れませんが、1つのNAS製品にこれだけの機能サービスを詰め込んであり、しかもほぼ例外なく日本語化もきちんとされてて、とにかくSynologyというメーカーの開発リソースのリッチさは、国産競合製品に対するそれとは比べものにならないという印象を受けました。

DS1511+のHDD換装と実戦投入

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SynologyのNAS製品には動的にRAIDアレイを編成してデータを保持したまま容量追加ができるSHR (Synology Hybrid RAID)という機能があることは以前の記事で紹介しました。

本運用向けの3TB HDD 5台も手元に揃ったので実際にSHRを使った容量増設にチャレンジしてみました。

手順は簡単。DS1511+はホットプラグ対応なので電源も落とさずおもむろにどれか1台のHDDを抜きます。数秒でブラウザで開いた管理画面(DiskStation Manager)内のストレージマネージャに警告が表示され、本体から警告音が鳴り始めます。管理画面で警告を止め、新しいHDDをセット。また数秒経つと「管理」ボタンが押せるようになるので、クリック。ボリューム修復のウィザードが開くので、基本的に「次へ」「次へ」と進めれば完了です。実際にはバックグラウンドで分散したバックアップデータが新しいHDDに書き戻されるので、しばらく(丸一日以上)は若干パフォーマンスが落ちます。この間に他のHDDが壊れたらアウトです(RAID5の場合)。当然ながらこの修復処理が終わらないと次のHDDを交換することはできないので、5台全部のHDDを交換するのに4日かかりました。

以下の写真はストレージマネージャの換装前です。500GBx5の状態では総量1.77TB(5台で2.5TB。RAID5なので1台分はバックアップに割かれて2TB、あとは単位表記上の誤差ですね)。データは9GBちょっと保存されています。

State0a

↓こちらが5台全て換装が完了した状態。総量は10.73TBに増えていますが、同じ「ボリューム1」が1つ見えるだけで、使用中のデータもそのままです(微妙に使用量が増えてますが)。

State5a

時間はかかりますが非常に簡単にHDDを増やすことができます。換装後のベンチはこちら(SMB)。シーケンシャルリードが若干落ちてますが、HDDの回転数が落ちたせいでしょうか?他はほぼ同じか高速になっています。キャッシュが16MB->64MBに増えたせいでしょう。

State5_bench

■UNIX的に見ると何が起きているのか?

sshでログインして覗いてみます。/proc/mdstatの結果です。

Personalities : [linear] [raid0] [raid1] [raid10] [raid6] [raid5] [raid4]
md3 : active raid5 sdc6[2] sda6[1] sdb6[0]
      4883741568 blocks super 1.2 level 5, 64k chunk, algorithm 2 [3/3] [UUU]
     
md2 : active raid5 sdc5[7] sdb5[6] sda5[5] sde5[4] sdd5[3]
      1934606592 blocks super 1.2 level 5, 64k chunk, algorithm 2 [5/5] [UUUUU]
     
md1 : active raid1 sde2[3] sdd2[4] sdc2[2] sdb2[1] sda2[0]
      2097088 blocks [5/5] [UUUUU]
     
md0 : active raid1 sdc1[3] sdb1[1] sda1[0] sdd1[4] sde1[2]
      2490176 blocks [5/5] [UUUUU]
     
unused devices: <none>

md0とmd1はシステム領域(とリカバリ領域?)でRAID1ボリュームとなっています。これは元のまま。代わったのはmd3が増えたこと。どうやらmd2とmd3がLVMのPV領域になっていて、それが合わさって/volume1というLVとしてマウントされてるようです。つまり、元々1.77TあったRAID5領域はPVとしてはノータッチで、増えた分が同じRAID5で新しいPVとして追加されたってことですね。このようにSHRは既存のオープンな技術を、ユーザを煩わせることなく裏でやってくれるというアプローチなワケです。これは技術に明るくない人にとっても使いやすいですし、下手にプロプライエタリな技術を使ってトラブル時にどうしようもなくなるというデメリットも回避できる良い考え方ではないでしょうか。万一ハードウェアが故障しても、UNIXマシンにHDDをつなぎ替えてSoftware RAIDの知識を駆使すればデータがサルベージできる可能性があるワケです。裏でどう動いてるかわかる、というのはエンジニア肌な人にとっては安心感につながる重要な価値の1つだと思います。

まぁ、今回はせっかく新規で運用を始めるので4日かけて移行したボリュームを一旦消して、まっさらの単一PVを作り直しましたけどw。ちなみにベンチで差は出ませんでした。データを入れてしまって、次にHDDを交換する必要に迫られた時は素直にSHRに頼って交換していくと思います。

■iSCSIボリュームも作成

同時進行中のサーバー移行の一環で、我が家のバックアップサーバーをML115上にXenによる仮想化で動いているWindows Home Server v1からMac mini Server上にVMWareで動かすWindows Home Server 2011にしました。せっかくコンパクトなMac mini Serverなので外付けHDDをぶらさげたくはありません。そこでDS1511+のiSCSIターゲット機能を使用してみることに。

DS1511+(DSM)のiSCSIボリュームは既存ボリューム上にイメージファイルとして作成されます(別パーティションにネイティブに作成も可能)。例えば今回は2TBのイメージを作成しましたが、実際にすぐ2TBの領域が消費されるワケではなく、実際の中身の増加に伴って増えていく仕組みです。我が家ではWHS2011はクライアントのバックアップとしてしか使わないので、RAID5上で冗長性が確保されるのはやや無駄なんですが、逆に今すぐ固定で2TB占有されるワケではないという点がむしろお得な気がしてこの方式を採用しました。

DS1511+はVMWare対応ロゴがついてるだけあって、VMWare上の仮想Windowsサーバーからでもあっさりマウントでき、バックアップ対象ドライブに指定したところちゃんと機能しているようです。

 

ちょうどサーバー群を刷新をしようとしてたこのタイミングで本機が入手できたのは本当にラッキーでした。なんか最近はLinuxサーバーで全て自分でインストール&セットアップするほど元気と時間がないんだよなぁ、と思う一方、市販のNAS製品だとできることが限られていてイマイチなんだよ、、、というσ(^^)みたいなのにはホント絶妙の位置づけの製品だと思います。

DS1511+のメディアサーバー系機能を試す

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今回はDS1511+のメディアサーバー関係を試してみました。なお同じSynologyのNAS製品でOSとしてDiskStation Managerを搭載している機種ならば基本的に同じだと思いますが、以下の記事は開発中の3.2βでの評価になります。

■DLNAサーバー機能

dlna_icon

↑DLNAアイコンはこんな感じ。

とりあえずPlayStation3で普通に動画、音楽、写真と再生できることを確認しました。PT2で録った生tsファイルもOKでした。アクセススピードのせいか心なしレスポンスも良かったような気がします。国産NASではサーバー機能のON/OFFと公開フォルダを選ぶ位しか設定項目がないことが多いですが、本機は以下のように4ページも設定画面があります

dlna_setting1
↑「DMAメニュースタイル」でメニュー階層構造が選択/編集できるようです。使わない項目を消したりして自分の使い方に最適化できるのは良いですね。

dlna_setting2
↑カバーアート画像のファイル名をカスタマイズできるみたいです。いつのまにかこの名前の画像ファイルが生成されてたことがあったような。ちょっと再現できてませんが。

dlna_setting3

↑音楽ファイルのトランスコードや、拡張子とMIMEタイプの対応付け設定等もできちゃいます。実際にはクライアントが再生できる形式なのにMIMEタイプの識別の問題だけでリストに表示されない、ということで煮え湯を飲まされた経験がある人にはビビっとくる機能ですね。実際にこれで再生できなかったファイルをできるようにする、ところまでは検証できてませんが。

dlna_setting4
↑これも興味深い点ですが、DLNA公開フォルダを複数指定できます。権限的に別に管理しておきたいコンテンツを別フォルダで仕分けたままDLNAで公開できる訳で、これも地味に便利です。DLNA自体には認証機能がないですが、例えば家族に見せたくないプライベートなコンテンツのフォルダは夜中にだけこっそり追加するとか(笑)。

■iTunesサーバー機能

iTunesサーバー機能は文字通りiTunesの共有機能をLinuxベースで実装したもので、国産NASでも比較的ポピュラーな機能となっています。iTunesで音楽ファイルを共有してあるとiPhoneやiPadからでも聴けるので便利なんですが、その為にMac/PCを常時起動しておくのは不経済です。そこでどうせ常時起動しているNASに音楽ファイルを保管しておくという案が浮上してくる訳ですが、残念ながらこれらの互換機能は完全なiTunesの代替にはなりません。なぜなら一般的なNASのiTunesサーバー機能ではプレイリストを作ることができないからです。単に専用フォルダに放り込んだ音楽ファイルがフラットにiTunesから見える、というだけで、iTunes上で管理しているプレイリストをそっくり移行は出来ません。

playlist それに対しSynologyのiTunesサービス機能は一定のアドバンテージを持っていました。管理画面上でスマートプレイリストを作成することができるのです(右写真)。スマートプレイリストとはiTunes側でももっている機能ですが、予め設定した条件の楽曲を集めた仮想プレイリストを自動生成するというものです。musicフォルダにiTunes等でメタデータを記入したm4aファイルを放り込んでおき、「アーチスト」が「いとうかなこ」を条件に「いとうかなこ」スマートプレイリストを作っておけば、常にいとうかなこの曲だけが集まったプレイリストが自動生成されるという訳です。指定条件に「ファイルのパス」もあるので、その気になればかなり柔軟なプレイリストが作成できます。もちろん1つのスマートプレイリストに複数条件を複合指定することもできます。相変わらずiTunes上で今まで作ったプレイリストがそのまま移行できる訳ではないし、iOS端末との同期も考えるとこれをマスターライブラリにできる程ではないですが、家庭内向けの公開用サブライブラリとしては充分に活用できるレベルだと思います。

また面白いことに、ここで作ったスマートプレイリストはDLNAクライアント側にも表示されました(下写真)。playlist_dlna

■DS audio(iOS/Androidアプリ)

またiOSやAndroid向けに独自無料アプリDS Audio[公式ページ]を提供していて、DS1511+上に保存した音楽ファイルをスマートフォン上でストリーミング再生することができます。AirPlayでAirMac Expressに飛ばすことも出来ました。機材がなくて試してませんが、DS1511+に直接USBスピーカーを差して鳴らすこともできるみたいですね。その場合、スマートフォンからでなくてもWebブラウザからアクセスしてAudio StationというiTunesライクなインターフェイス(リンク)からも再生制御できるらしいです。なんかもうNASというカテゴリを超越してますね…

■まとめ

全体的に、国産NASと同じレベルの敷居の低さ(機能を有効化して所定フォルダにコンテンツを入れるだけ)を維持しつつ、こだわる人は細かいところまでカスタマイズできるようになっている、というニクイ作りに感心したという感じです。
試していないですが、iOS端末の母艦としているiTunesライブラリの保存先をDS1511+のmusicフォルダにすれば、iTunesライブラリの機能を100%使いつつ、Audio Station、スマートフォン対応、外出先でのストリーミングといったDS1511+側の追加メリットも享受できて幸せになれるんじゃないかと。HDDを本運用向けのもの交換したら実践してみたいと思います。

DS1511+本運用向けHDDを調達

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DS1511+のベンチ用にお借りしていたHDDでの計測が終わったので、いよいよ本運用向けに現時点の最大容量3TBのドライブWD30EXRXを調達。SHRのRAID5で運用する予定なので、同時に2台故障するのを防ぐ為、ロットがばらけるよう5台別々の店で購入してみました。まぁ気休めですけども。

実際に買って見た結果はこんな感じ。残念ながら2台は同じ製造週でした。もう8月だというのにまだ5月製造が並んでるビックカメラって…。まぁ結果としてはバラけ方が広がったので結果オーライなんですけども。

購入店 購入日 製造週 代理店
ヨドバシMM横浜 2011.08.13 14 JUL 2011 CFD
ビックカメラ横浜ビブレ 2011.08.13 16 MAY 2011 CFD
Amazon.co.jp 2011.08.15 27 JUL 2011 CFD
ドスパラ横浜駅前 2011.08.16 27 JUN 2011 不明
ツクモ通販 2011.08.18 06 JUN 2011 SYNNEX

MDLは全てWD30EZRX-00MMMB0でした。

3TB x 5 = 15TB、RAID5で1ドライブ分の冗長性を持たせるので12TB。うち2TBはMac Mini Server上にVMWare Fusionで仮想化したWindows Home Server 2011向けにiSCSIボリュームとして提供予定。ただ論理的に2TB確保しても物理的に即2TB確保するわけではないので、スケーラブルに運用できます。

DS1511+ 集中レビュー ベンチマーク編

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さて、前回設置が完了したDS1511+、いよいよRAIDアレイを組んでベンチマークをしてみたいと思います。

■Synology Hybrid Raidについて

まずはSynology社のRAID製品の特徴であるSynology Hybrid Raid(以下SHR)という柔軟なRAIDシステムについて簡単に紹介してみます。主なメリットはバラバラな容量のHDDを組み合わせた時に無駄を無くせる点と、データを維持して1台ずつアップグレードできる点です。

公式の解説図をお借りして説明してみましょう。500GBx11、1TBx1、1.5TBx1、2TBx2というバラバラな容量のHDDを5台装着した例です。ある程度大きな規模の企業であまりこういうことはしないかも知れませんが、ホームユースやSOHOなどでは不要になったドライブの再利用などおおいにあり得るケースだと思います。

Classic

まずは通常のRAID。最も小さいドライブの容量にあわせてRAIDアレイを組んだ場合、各ドライブの余った領域は活用できず無駄になってしまいます。

shr

一方こちらがSHRにした場合。最低ドライブの容量で5ドライブのRAIDアレイを作成します(青)。次に1TBドライブに余った500GBと残り3台の同容量を使って4ドライブのアレイ(水色)、更に残り3台で500GBx3のアレイ(黄緑)、最後に2TBドライブの500GB領域x2でも(黄色)。おそらく青、水色、黄緑のアレイはRAID5、黄色はRAID1になると思います。このように複数のRAIDモードをパーティション(?)毎に複合して使うことで無駄のない大きなアレイを構築できます。ちょっとパズルみたいでわかりにくいですが「1-disk redundancy」と書いてあるように、どれか1台のドライブが壊れても必ず他のドライブに冗長性が確保されています。

またDSM3.1移行からは2-disk redundancy、つまり2台まで壊れても復活可能なモードも選べるようです(ドライブが最低4台必要)。

shr-2Disk

そして更に便利なことに、後からドライブを足した場合でも自動で最適なRAIDモードに組み替えを行ってくれるのです。例えば今回ご提供いただいたDS1511+には500GBのドライブが2台組み込まれていてRAID1アレイが設定され、その上で同じ500GBドライブが更に3台同梱されていました。こちらで追加の3台をセットした後、管理画面から既存アレイへの結合設定をほどこして一晩放置したところ、あろうことか500GBx5のRAID5アレイに組変わっていたのです。500GBx2 + 500GBx3をlvm結合したものではなく、RAID5の単一アレイです!sshでログインして/proc/mdstatで確認しました。そんなことできるんですねぇ(ちなみに1-disk redundancyと2-disk redundancyの変換は不可だそうです)。

どこまで柔軟に変更してくれるのかデータがパンパンに入ってたらどうなのか、とかよくわかりませんが、これはとても便利だと思います。例えば今使ってる1TBx5のRAIDアレイが手狭になってきたとします。しかし3TBのHDDはまだ高くて5台まとめ買いするのはなーと思ったりするでしょう。しかしSHRなら当座1,2台だけ交換して空き容量を確保し、またそれが足りなくなった頃に安くなった3TBドライブを買い足す、といった運用も可能なわけです。ロットやモデルを違えることで、RAID5の弱点である複数台同時故障発生のリスクが軽減できる点もで安心感が増します。

同じような仕組みにDroboやMicrosoftのDrive Extenderがありますが、Droboは非公開の独自形式らしくハードが壊れた場合に復旧が難しいと聞きますし、Drive ExtenderはWindows Home Server 2011になって廃止されちゃいました。SHRは公式サイトでも「プロプライエタリーな技術ではない」ということを強調しており、実態はあくまで(ソフト?)RAIDなので、最悪でもLinux機などについてデータサルベージができる(可能性がある)ということのようです。

DS1511+は現時点で3TBドライブまでの対応となっていてこの先の容量をサポートするかは不明ですが、とりあえず3TBx5を入れて本運用する時はこのSHRで使ってみようかなと思っています。

■ベンチ

ではお待ちかねのベンチマークのお時間です。前記事にも書いたとおり、SeagateのBarracuda 7200.12 500GBモデル(ST3500418AS)x5台によるRAID5(SHR)設定です。計測したPCはWindows7 64bitのCore i7-2600K搭載機。GbEでスイッチングハブを1台経由しています。JumboFrameはオフ。SMBとiSCSIで計測しました。ちなみにiSCSIとはネットワークドライブを内蔵ドライブのように見せかけてマウントする技術で複数PCからの共有ができない代わりに余計な処理を省いて高速化できるという特徴があります。最近のWindowsやMacは対応していますが、国産のNAS製品だと業務用グレードでないと対応してないので、我が家でも今回初試用です。

・Windowsファイル共有(SMB) ・iSCSI
SMB iSCSI

 

速いです!さすがに公式カタログ値には届きませんがこれはLink AggregationというEthernetポートを2つ束ねて使う機能を使用した場合らしいので仕方ないでしょう。100MB/sというのは計算上Gigabit Etherの限界みたいなので、ほぼ使い切ってる感じです。5台のRAID0アレイに組み替えてテストもしてみましたが、シーケンシャルがRead 96MB/s、Writeが93MB/sというところでした。やはりGbE1本ではこれくらいが限界なのかも知れません。

参考までに同マシンに内蔵しているSAT3(6Gbps)s接続のHDD(WD1002FAEX)による計測はこちら。

SATA6Gbps

シーケンシャルでも肉薄してますし、RAIDなのでランダムは凌駕していますね。NASが内蔵ドライブより速いなんて驚きです。

なおこの内蔵HDDからDS1511+にFireFileCopyで動画ファイルをコピーすると95MB/s位(iSCSIでもSMBでも)。同じファイルをLinkStation WVLのRAID-0領域にSMBでコピーすると53MB/sなので実測でも明らかに速いですね。

■ついでに強制ドライブ挿抜も試験

RAID5はHDDがどれか1台壊れてもデータを失わずに稼働を続けることができます。理論上はそうなのですが幸い我が家では発生したことがありませんでした。今回借り物なのをいいことに(笑)、本当に大丈夫なのか検証してみました。DS1511+はホットスペアにも対応しているので本体をシャットダウンしなくても故障したドライブを交換できるので、サービスを中断することなく修理が可能なはずです。

検証方法は、RAID5アレイをiSCSIマウントしてその上に置いたts動画を再生した状態でドライブを1台引っこ抜く!という方法(笑)。結論から書くとバッチリでした。ドライブを抜くと警告音が鳴り出し、動画がほんの1秒ほどつっかえましたがそのまま再生を継続できました。管理画面には警告が表示されます。再度元のドライブを装着すると自動的にリビルドが始まります。RAIDの仕様上、再装着したドライブのデータは使われず、一旦消去された上で他ドライブからリストアされるので、中身が多い場合は数時間~一晩位はかかりますが、その間も若干レスポンスが落ちる可能性はあるものの普通に使うことができます。利用者はまず気付かないでしょう。もちろん動画もずっと再生したままです。

■SSH

SSHの話が出たのでついでに触れておきます。国産トップシェアのBUFFALOのLinkStationシリーズは一部マニアはファームウェアを改変してSSHログインできるようにしてあれこれいじるのが流行っていますが、本機はコントロールパネルで設定するだけで普通にログイン可能になります。rootにはなれないようなので完全に自由にいじることはできないですが、ワイルドカードを使ったちょっとしたファイル操作をするとか、遠隔からいじるといったことはできます。この辺りも通好みのポイントではないでしょうか。

 

今回は実際にファイルサーバーとしての性能をチェックすることができましたが、さすがビジネス向けモデルだけあって我が家で今まで使って来たNAS製品を軽く凌駕する性能を持っている上に、HDDを柔軟に交換して運用できるという自由度の高さに感心させられました。もはやLink Aggregationを使わないと性能を発揮しきれないという点は悔しいですね。うっかりハブを買い換えてしまいそうです(笑)。