新型クラウンのスペアホールにDタイプスイッチがはまらかなかった話(3Dプリンターで解決)

自動車のスイッチユニットはメーカー毎にサイズが規格化されていて、オプションの有無によって空きスロット(スペアホール)があり、そこに新たなスイッチや最近だとUSB充電器などを取り付けられるようになっています。トヨタ車だとA~Dの4タイプがあるようです。

例えばこういうものがDタイプです。正方形なのが特徴。

今回クラウンのスペアホールにデータシステムのTV-KITの切り替えスイッチを取り付けようとしたところ、元からついてたキャップと同社の付属スイッチTSW016がサイズが全く違って取り付けられませんでした。

右が取り外したキャップ。左がTSW016。
ボタンの大きさは23×23で同じ。紛れもなくDタイプ。

ボタン自体は同じっぽいのですが、後方のスイッチのケース部分が大きく違っています。取り外したキャップの方が大きいので、TSW016がスカスカで固定できません。なにかサイズ変換アダプタのようなものが売ってないか探してみたんですが見つからず。テープなどでグルグル巻きで太くしたり、厚めの両面テープで止めるなども考えましたが、差し込み方向できちっと固定するのは至難の業。

2023.4.28追記:

データシステムさんから返信がありました。やはり仕様として4つあるスイッチパネルのうちの左端には取り付け不可とのことで、その隣につける想定のようです。ただウチの仕様だと左から2番目のパネルは元からウインドウシールドデアイサーのスイッチが入っています。ウインドウシールドデアイサーは寒冷地仕様に含まれるので、寒冷地仕様をオプションでつけた人や(それが標準となる)北海道の人はそもそもこのビルトインスイッチは取り付けできない、ということになります。それは是非適合表にも注釈を載せておいてほしいとお願いしておきました。

アダプタを自作

仕方ないので3Dプリンターで自作してみました。

当該スイッチをセットしたところ

フィラメント(プリント材料)は少しでも熱に強い方がいいかなと思いPETGにしたら色が半透明というかほぼ白なので色を塗らないとかもと思ったんですが、取り付けてみると全然見えないので平気でした。少し奥行きが短いのは単純に時短です。上下の三角の突起で固定されるので、それより後ろはなくても同じのはず。スイッチと作成したケースの固定は、スイッチを前から押し込む形で特にロック機構はなし。普通に使っている分には手前に引き出す方向の力はかからないのでいっかと。

パネル背面から装着した様子(白い部分が本アダプタ)

予定外の作業が発生してすっかり夜になってしまいましたがバッチリ取り付けできました(そのうち昼間に撮り直します)。

もしかしたら見落としているだけで既製品があるのかも知れませんが、とりあえず即日で対処できたので良かったです。クラウンのこのパネルはかなり他のパーツと絡んでいて、ここを取り付けなければ他のパーツも組み戻せず、車両を使えない時間が増えるところでした(翌日乗る用事が控えており焦りました)。

単純なプラスチック部品で済む話なので、データシステムさん含めどこかが商品化してくれるといいんですけどね。もしこんな間に合わせの設計データでも欲しいという方がいらっしゃいましたらDMM.make辺りにSTLデータを公開しようかと思います。

2025.3.13追記 造形パラメーター最適化

久しぶりに頒布希望のコメントをいただいたので、現在もてる材料、装備を駆使して改めて造形してみました。

材料は自分の時のPETG(耐熱性能70℃程度)からASA(耐熱性能100℃)に変更。ノズルも通常の0.4mmから0.2mmに変更し、レイヤー厚0.1mmで造形。小さな突起までかなり綺麗に造形できた気がします。ASAは材料の単価としては少しお高いし、車内使用といっても直射日光が当たる場所ではないのでPETGでもよっぽど平気かとは思いますが、万一変形したりすると面倒くさい位置に使うので、安心代としてはアリかなと。実際2年経ってPETGの部品は少し変形がありました。

印刷レシピは固まったのでバンバン作れます。ご要望の方はお気軽にお問い合わせください。

左右は少しやり方を変えて比較したもの。右の方が綺麗なので出荷版は基本こちらに。

以下個人的造形パラメーターメモ

ASAはPLAやPETGよりも表面が荒れやすいイメージでしたが、今回は(写真左の向きで造形して)トップに面が広くないのであまり粗が出なかったかも。壁面生成ロジックを通常の「クラシック」(右)と「Arachne」(左)で出し比べてみましたが、こういうカチっとした形状だとクラシックで良かったかなという印象。Arachneの方は側面に少しアーティファクト(余計な凹凸)が出来てしまいました。Arachneは動的に壁厚を変化させて局面をなだらかにでき精度も上がるとの話ですが、直線的な形状ではあまりメリットはないかなと(今回たまたま出た差かもですが)。

2025.5.12追記 モデルVer.2

さらに立て続けにお二方より注文いただいたので、もうちょっとブラッシュアップしたくなり、モデルの方もバージョンアップすることにしました。

当初はバラし作業中に必要に駆られて即興で作って「使えればいいや」で済ませていましたが、今回改めてパネルをクロスオーバーから外してきて、バチバチに精緻化してガタツキを排除しました!単に元からついているダミーキャップを完全再現するのではなく、改めて形状をしっかり理解し、揃えるべき点、改良しても良い点を見極めて最適値を追求しています。ご要望いただく方の中には納車時にディーラーにつけてもらう、といった方もおり、その段になって不具合があると納車日程に影響が出たり再施工になって工賃が余計にかかったりというご迷惑になってしまうリスクがあるので、しっかり完成度を上げておきたいところです。

完成体がこちら。上が元からついているダミーキャップ、左下がテレビキットに含まれるTSW016スイッチです。トヨタ用Dタイプという規格のスイッチなので、データシステム製以外でも使える可能性は高いですが、当方では未確認です。

で、右下がVer.2アダプタです。純正パーツにあわせて上下がわかる▲マークを入れてみました。▲が向いている方が上です(といってもさぶん逆さまでも使えます)。全長は影響ないので少し短くしています。

TSW016をアダプターに装着した様子。

Ver.2の改善箇所ですが、例えばこの各面に2本ずつあるレール状の突起ですが、

(左がボタン側)

パネル側の枠に対してガタ付きなく固定するためのもののようです。これをピッチリ造形するのは3Dプリンターでは難しいので、少し傾斜をつけてみました。これで差し込むに連れてキツくなっていく形です。逆に側面からの距離や太さなどはあまり重要ではないことも判明(相手方にこれがささるレールがあるわけではない)。お尻側も3Dプリントの都合で45°傾斜をつけています(こうするとサポート材がいらない)。

その後ろの三角形の突起がパネル側の抑えプレートの穴に引っかかって後ろに戻らないよう固定する役目があります。抑えプレートが弾性で上下から抑えているのですが、あまりこの突起が大きいとプレートを大きく曲げなければならず、破損のリスクが高まります。プレートは0.8mmくらいでとても薄いのです。そこで元パーツよりも少しだけこの山の高さを抑えてみました。

基本的には一度つけたらそうそう外すものではないですが、なんだかんだで純正品ほど強度がないかも知れないし、脱着の手間や破損リスクも抑えています。

造形材料はより寸法精度と強度が上がるASA-CFにしています。ASAの耐熱100℃でも充分ですが、-CFだとさらに110℃まで耐えられ、なにより造形が綺麗になるメリットがあります。サイズ誤差も生じにくいとのこと。ただしカーボンファイバー入り材料はステンレス製ノズルが使えないので、(焼き入れスチール製が存在しない)0.2mmノズルでは造形できず、0.4mmに戻すことにはなりました。それでも現車合わせでしっかり精度が出せるよう各所調整しています。材料原価が1.5倍くらい高いですが、今後ASAを在庫するのは止めようと思っているので、ASA-CFに最適化しています。

■参考: 装着手順

実際にはナビ裏まで配線が必要なので、これよりもっと多くの部分の分解が必要ですが、以下はあくまでスイッチ部分までのアクセスということでまとめておきます。ちなみにそこまでならすべてクリップ止めなのでドライバーでネジを外す必要はありません。

なお全バラシ動画としてはこちらなどが参考になるかと思いますので合わせてご確認ください。

動画内でもやっておりますが、内装剥がしツールは樹脂製のものを使い、差し込む際には養生テープやマスキングテープを貼って傷にならないようご注意ください。以下手順に沿った結果傷や破損が起きても自己責任でお願い致します。

・パネル外し

最初に外すべきパネル部分を確認します。以下のパーツが一体になっており、メーター外周の光沢ブラックのパネルまでまとめて外す必要があります。ステアリングコラムの上の布状のパーツもついてきますので破らないようご注意ください。またこの裏にはグリスがついていて、余計なところに付着させないよう気をつける必要もあります。

手始めにドア側の2つのパネルを外します。ネジは使われておらず基本は引っ張るだけですが、力を入れすぎて破損させないよう丁寧に根気よく作業してください。

赤線のパネルはウィーサーストリップ(ゴム)を外しておいて、適当な隙間に内装はがしを入れててこの原理で剥がします。慣れると素手でも..

緑線の方のL字のパネルは手前(後席方向)に引っ張る感じ。

あとは順番に外周のクリップを外していきます。今回は後付けのカップホルダーがついていたので引っ張るのが楽でした。

まず下側のパネルが上にかぶっているので、少しだけ引っ張って浮かせます。

メーターの上部も丁寧に手前に引っ張ってクリップ(赤)を抜いていきます。

左側はナビ画面下の加飾パーツが上にかぶっているので、そちらを浮かせて隙間を作ります。このパーツは助手席側まで伸びていますが、おおむねボリュームツマミくらいまで浮かせておけば大丈夫そうです。

そんな感じで丁寧に重なるパーツを排除しながら当該パネル全体を引き出していきます。

その下の始動スイッチのパネルも少しだけ浮かせる必要があるかも知れません。

最後にステアリングコラムの上にある布パーツですが、写真のように左右2枚の位置決めプレートと、4本のピンが刺さっていますので、丁寧に外していきます。

パネル全体がフリーになったら、スイッチ裏の2つのコネクターを外します。どれもコネクター上面に固定爪があるので、つまんで後ろ(車両前方側)に引っ張れば抜けます。色(形も?)が違うので、戻す時に間違えないよう覚えておきます。ウチの場合は、手前から黒、白、青でした。さらにこの奥が問題の空きスロットで、ダミーキャップがはまっている区画になります。

コネクターは意外とこの3つだけで、メーター側は電気的な接続はありません。

・スイッチ部品取り付け

アダプター側面の△を上にして、TSW016スイッチのLEDが上になるような向きで取り付けます。

raw

下の写真がダミーのフタを取り外したところです。上下にある四角い穴のあいたプレートで挟み込んで固定しています。四角い穴にはスイッチユニットの▲の突起がひっかかってロックされているので、ボタンを外すにはこの上下の薄いプレートを開いてロックを外してやる必要があります。このプレートが非常に薄くて割れやすいので開く時は薄くて幅広の内装剥がしなどでそっと作業します。

順番としては、まず上側を持ち上げて、スイッチを下に傾けるようにしてパチっと言うまで引きます。片側はおそらく指でもできますが、それによって反対側はピタっとくっつくので、下は薄い板状の内装はがしかマイナスドライバーを使うと良いでしょう。割らないようにそっとそらして下側のロックも外してスイッチ全体を引き抜きます。

ちなみに左右のパネルには2本のレール状の凹みが見えますが、これがスイッチ側の突起と噛み合うかと思いきや、全然ズレた場所にありました。単に曲がりを抑えるためのリブ構造かも知れません。気にしなくて大丈夫です。

スイッチの取り付けは基本真っ直ぐ奥まで差し込むだけです。上下パネルの四角い穴にスイッチの▲毒気がパチっとはまればOKです。少しスイッチが飛び出るところまで差さると思いますが、スイッチ前面を押し込んでやるといいところで止まるはずです。

今回のVer.2を使えば隣の純正ボタンなみにガタつかずに同じ感触でスイッチが押せるようになると思います。

表側を確認して、ツライチで他のボタンと揃っており、ボタンがしっかり押し込めることを確認します。

当方で作成した3Dプリント品の有償頒布を希望される方はコメントにてお問合せください。カスタマイズなどのご相談もお受けしております。

なお記載されたメールアドレスは個別のご連絡のみに使用し、公開されたり他の用途で利用することはありません。

「新型クラウンのスペアホールにDタイプスイッチがはまらかなかった話(3Dプリンターで解決)」への6件のフィードバック

  1. 古田さん
    こんにちは
    私もクラウンスポーツにスイッチを取り付けたいですが、寒冷地仕様なので同じ悩みがありました
    アダプタを購入させていただけませんでしょうか
    お手数をおかけしますが、よろしくお願いいたします

  2. 古田様
    はじめまして、私もクラウンエステート購入で寒冷地仕様なので同じ状態で大変困ってました。
    アダプター購入希望でお願い申し上げます。
    よろしくお願いいたします。

  3. 古田様
    はじめまして
    私もクラウンスポーツ寒冷地仕様なのでスイッチを取り付けできずにに、大変悩んでおりました。
    アダプタを購入させていただけないでしょうか。
    お手数をおかけしますが、宜しくお願いいたします。

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