現在、学校教育系の案件に携わっている絡みで、現在シェアを広げつつあるChromebookを教養として使っておきたいなと考えました。ChromebookはGoogleが開発しているノートPC型端末用のOSで、ベースはAndroidで、元々は文字通りChromeブラウザがベースでGmailやマップ、カレンダーなどGoogleサービスを利用することに特化したシンクライアント端末という趣でした。OfficeアプリもChromeのDocやSpreadsheetを使う感じ。なんでもWebサービスとして提供しているGoogleの強みを生かしたようなOSですね。Windowsの入ったノートPCよりも性能が低くても動くので、いわゆるネットブックと言われていたような最低ハードスペックの小型で安価なハードに搭載された例が多いです。Googleアカウントでログインすれば自動でパーソナライズされるので、職場や学校での一斉配布端末としてとても管理がしやすいのでしょう。そして最近はGoogle Playアプリも入っていてAndroidアプリをインストールすることもできるようになりました(ただし一部動かないものや配布元が除外しているものもあり、100%ではありません)。なのでタッチパネルを使えば準Androidタブレット的な使い方もできるわけです(厳密な違いは後述)。2-in-1やキーボードが外れるモデルならなおさらです。またさらにβ版扱いながらLinuxもインストールしてターミナルはもちろん、Visual Studio CodeのようなGUIアプリも実行可能です。これもマニア心をくすぐるポイントですね。
■防水とは言ってないタフネスモデル達
また教育市場にするにあたり、MIL-SPECのようなタフネス仕様を謳うものが比較的多く、キーボードが防滴でコップの水をバシャっとこぼしても裏面の穴から排水してダメージを抑えるものもあります(執筆時点でAcerとASUSの一部モデル)。ただ本体部分を防水と明確に謳っているものは見当たりませんでした。風呂でキーボード打てる端末があるとちょっと便利かなと思ったんですが、、MIL-SPECでキーボード防滴なものでも本体の防水は保証していないので注意が必要です。Amazonとかだと商品名にしれっと「防滴」と書いてあったりしますが、公式ページをしっかり読むとそんな感じです。MIL-SPECには高湿度環境への耐性なども含まれているので、保証まではなくてもほぼほぼ問題なく、濡れた手でキーボード打っても平気なら安いし買っちゃおうかなー、とか思ったんですが、店頭でそれらのモデルをみたところ、底面には普通に通風スリットがあいていてめっちゃ浸水しそうだったので断念しました。スマホ/タブレット用低消費電力SoCを使っているので発熱も少なく密閉度も高いかなと期待したんですが無理でしたw。ポートをキャップで塞げばいいという次元ではなかった…
ちなみにASUSモデルには「あんしん保証」というシステムがあり、1年間は水没含め原因を問わず初回修理が20%負担で済むことになっています。追加料金14,800円を払えば3年間負担0%に拡大することもできます。これをアテにするのもアリかなとは思いました(笑)。
■Lenovo IdeaPad Duetを購入
防水を諦めるとすると選択肢が広がります。ArmやCeleronなど低性能ハードでも快適に使えるというのが売りのChromebookですが最近はCore iシリーズと搭載した高級機も増えて来ました。Androidアプリもネイティブで実行するならサクサク動くヤツがいいなーとも思ったんですが、同月にiPad Proやminiの噂もあったので、とりあえず「Chromebookを体験する」という初志に戻って今回はコスパ重視のチョイスとしました。定期的にお値打ちセールをやって話題になるLenovoのIdeaPad Duetです。
またより高性能なASUSやAcerのモデルはキーボードがヘコヘコしていて値段なりの価値を感じにくかったのもあります。逆に、Surfaceのようなカバー兼用キーボードである本機はデスクにペタっとしている分、意外としっかりして好印象だったのもプラスでした。ただしレイアウトはこれまたSurface GoのようにQの段とAの段のズレが一般的なQWERTYキーボードよりも大きい変則配置なので違和感というか地味なミスタイプが増える可能性はあります。液晶解像度もそれらの12インチ級モデルが1366×912とHD+(720pに毛が生えた程度)なのに対し、本機は10インチながら1920×1200とフルHD+なのも高解像度厨としては見逃せません(低プロセッサに高解像度だと処理速度が不安要因ですが)。
注意すべきはストレージのeMMC容量が店頭モデルが128GBなのに対してAmazonモデルは64GBのことがある点。価格が安いからととびつくと失敗するかも知れません(後からの増設は不可)。ただし本記事執筆時点のセールではAmazonのものも128GBとなっているようです。しかもクーポン適用で2万円台で購入できる!2021年4月4日までと書いてあります。それまでにこの記事を読まれた方は是非ご検討してみては。
■ハード周り
サイズ的にはSurface GO/2が競合になる感じ。あっちが背面のキックスタンドが本体と一体化していて、キーボードカバーのみ脱着可能なのに対し、こちらは背面キックスタンドもカバーになっており、脱着可能になります。iPadのSmart Forio Keyboardのキーボードと背面が分離できる版といってもいいかも知れない。ともあれキーボード、本体、背面カバー+キックスタンドの3枚下ろしになります。3枚合わせた厚みはSurface Goよりもありますが、本体だけにした時はSurface Goよりも薄いという位置づけ。室内でタブレットとして使う時は有利、という感じでしょうか。
液晶解像度はWindowsやMacのようにスケーリング指定が可能で、10インチを1920×1200で使うとさすがに文字が小さすぎて実用になりませんが、少し倍率を上げることでRetina解像度的に使うことができます。実際デフォルトが「100%」となっており1080×675と表示されている状態です。さすがにそれではもったいない気がして、一段下げて90%=1200×750で今のところ使っています。かなり細かく選択できるので、視力に合わせて選択すると良いでしょう。明るさ、発色は充分。動画も綺麗に再生できます。微妙に色味が緑がかってる印象でしたが、夜間モードを有効にすると色温度調整バーが出現し、それで好みの感じに調整できました。スケジュールを指定しなければ常時夜間モードで使えます。
キーボードは前述の通り、打鍵感は悪くないしキーピッチもリターンキーなど一部特殊キーを除けばそこそこ確保されているんですが、Qの段とAの段のズレが標準的ではないので、若干右手が攣るというか無理してるなって感があります。デスクトップ機なみのタイピングスピードが出てる気はしないです。「A」キーの左はCAPSロックではなく、虫メガネアイコンになっていて、いわゆる押すと検索バーが開きます。Windowsでいうスタートボタンみたいな位置づけです。幸い設定でCtrlキーにアサインを変更できます。せっかくLinuxも動いてそういう使い方をするならばスワップは必須ですよね。Windowsと違ってOSレベル、GUIで簡単に入れ替えできるのは高評価。本機は日本語キーボードなのでスペースの両側に「英数」と「かな」キーがあり、これでIMEのON/OFFができます。Macぽい挙動。最近はWindowsでもこのアサインで使っているので違和感なし。F7を使わないでCtrl + Iでカタカナ変換などもできます。
ポートは充電も兼ねたUSB-Cポートが1つのみ。付属充電器は5V/2AなのでPDには対応してなさげ。付属ACアダプタは開封せず、自宅に既設の充電器を使っておこうと思います。出張などにも余計な荷物をもっていかなくて済みそう。
その他、ハードボタンは音量Up/Downと電源(スリープ)。注意しなければならないのはAndroid用の電子書籍アプリを入れた場合、ページめくりキーとしては使えないらしいという点。Androidタブレットとしてそういう使い方も想定する人は気をつけてください。
各種競合製品との比較写真もふんだんに載っているので、検討している方にはオススメの記事です。
■ChromeOS所感
Androidアプリが動くといっても、完全にAndroidタブレットと同等なことができるわけではありません。気付いた範囲でまとめてみます。
・Androidのようにできないこと
ホーム画面(ランチャー)アプリの置き換えができません。正確にはできなくはないですがやや不安定です。例えば壁紙が指定できず真っ黒になります。おそらく音量Up/Downが使えないのと一緒でAPIがAndroidと異なるのでしょう。Android用として作られたホーム画面アプリ(Microsoft LauncherやNOVAランチャー)から壁紙指定してもロック画面はかわるもののホーム画面は真っ黒です。またChromebook標準設定画面から指定した壁紙も見えないです。同様にウィジェットも置けませんし、ブラウザからショートカットをホーム画面に保存するのもダメそう。そもそも「ホーム」ボタンに相当するものがないので、どんな状態からでも一発でホームに戻るということもできない気がします。
ではアプリランチャーはどこにあるかというと、「検索」キーで検索ウインドウを開き、さらに「△」ボタンでウインドウを展開した中にアイコンがズラーっと並びます。もしくは検索欄にアプリ名を入れて探して選択することもできます。最近使ったアプリだけは一段階目の検索ウインドウに残っている、という感じ。あとは「シェルフ」と呼ぶいわゆるタスクバー上に固定する位。慣れればどうということはないですが、iPadOSやAndroidのようにホーム画面にアプリがズラっと並ぶ感じは(少なくとも標準状態では)できません。壁紙が真っ黒など若干の違和感を許容すれば、ランチャーアプリが使えなくはないというところです。
この辺りのアプリをまたく挙動が通常のAndroidと異なり「Androidアプリが動く」イコール「Android端末である」ではないということだと理解しておく必要があります。
Androidアプリも起動しないものがたまにあります。確認した中では、「うたわれるもの ロストフラグ」は起動してもすぐ落ちてダメ。Steam Linkもエラーが出て使えませんでした。Chromebookなせいかどうかは定かではないですが。またZoomのようにPlay Storeで開こうとしても対応機種でないと言われてしまうものもあります。どうしても使いたいアプリがある場合は事前の情報収集が必要でしょう。
2021.03.08追記:Steam Link、再インストールしたら動きました。ただランチャーというかビックピクチャーモードが真っ黒になったりややあやしいかも。真っ黒状態でも操作は伝達されていて、ゲームが起動した後は普通に見える、という状態。ネットワーク切断みたなアイコンが点滅してるので、解像度を下げたりすればいいのかなぁ。もう少し試行錯誤が必要です。
標準ブラウザの変更も一応できます。私はEdgeにしています。FireFoxも動きました。ただシェルフ(タスクバー)にショートカットがおけるのはChromeのみのようです。またシェルフからChromeアイコンを消すこともできなそう。
・Androidではできないこと
ひとつはマルチウインドウで複数アプリを並べて並行作業ができる点。最近のタブレットOSでも画面分割的なことはできますが、レイアウトの自由度は制限があります。ChromeOSだとその辺りはデスクトップOS並に自由に配置できます。ただまぁハードは非力なので、そういくつものアプリを同時に開いてサクサク切り替えとはいかないかなという感じ。この辺り、Core iシリーズを搭載した機種なら違ってくるかもですが、そこまでするなら最初からWindows機でいいじゃんという気もします。多くのAndroidアプリはスマホ想定の縦長画面に対応しており、画面幅を狭めるとスマホレイアウトになって、例えばブラウザの横にMessengerみたいなレイアウトは馴染みやすい気がします。
またこれは人を選ぶ特徴ですがLinuxが動く点。設定アプリからGUIでオンにするだけです。マルチタブのターミナルアプリも入ります。SSHなどで他サーバーなどのメンテをしたり、Debian系なのでaptでアプリを追加したりもできます。ただし自分の端末のSoC(ArmだったりIntelだったり)は意識しておかないと動かないパッケージもあったりします。例えばVisual Studio Codeの場合、ダウンロードページで大きな.debリンクボタンからダウンロードしたパッケージだとインストールできませんでした。下の小さな「Arm 64」ボタンでから落とす必要がありました。日本語環境もChromeOS標準のIMEは使えないので別途Linux上でインストールの必要があります。これらの手順はググってできるだけ最近の記事を参照するのがオススメです。ChromeOSのバージョンで変わってくると思うので。
とりあえず執筆時点ではこちらの通りにやったらできました。
一応起動すれば普通にVSCodeです。ちょっと感動。ファイルはOneDriveなどを使って同期すれば良さそう。今のことこれさえあれば、サーバー上のPHPファイルをチェックアウトして、SFTPプラグインで上書き保存する度にアップロードするようにしてちょっとしたリモートコード編集くらいは充分できそうです。
■設定メモ
VSCode上でIME ON/OFFを「かな」「英数」キーで行うのが少し苦戦したのでメモしておきます。
IME関係の設定はfcitxとmozcで別個にあります。それぞれ、
|
$ /usr/lib/mozc/mozc_tool --mode=config_dialog |
とすることでGUIが開きます。UIが日本語にならない時は、
|
$ source /etc/default/locale |
しておきます。私のところでは毎回必要だったので.bachrcに書き加えておきました。
で、どちらにもIMEのON/OFFっぽい設定があるんですが、最適化どうかはともかく、以下の感じで設定しました。なお、「かな」「英数」ボタンはIMEのON/OFFにのみ使い、変換操作には用いない想定です。
- fcitx側で「かな」、「英数」ボタンでON/OFF設定をする
- mozc側で「かな」、「英数」ボタンへのアサインを削除する
まずfcix-configtoolを開きまず(既にMozcの登録などは済んでいる前提です)。「全体の設定」タブへ行き、「Show Advanced Options」をチェックすると出現する「入力メソッドをオンに」「(同)オフに」をそれぞれ指定します。左右に2つずつ欄があるのは複数キーを指定できるというだけなので、片側だけ指定すればOKです。設定が完了したらオンに「Henkanmode」、オフに「Muhenkan」が出ているはずです。
次にmozcの設定を開き、「一般」タブで「キー設定の選択」を「カスタム」にして「編集」を開きます。紛らわしいですが”Henkan”が「かな」キーを指すようなので、”Muhenkan”が「英数」キーを意味します(”Kana””Eisu”ではない)。「入力キー」列でソートし、HenkanとMuhenkanの行を全て削除します。
OSを再起動して設定内容が再現されていればOKです。